榊野町住宅街を走る一台のSUV、しかし、前方の道がワルキューレの部隊に寄って封鎖されていた。
「ん?なんだあいつ等?」
運転席に座る中村は、前方で止まれと指示する女性兵士の指示に従おうとしたが、佐藤が中村の頭を蹴る。
「突破しろ、中村」
「え?でも連中、重火器を所持してますよ?」
「いいから走れカス」
佐藤は中村をまた蹴り、車を無理矢理進ませた。
そのまま前に出た憲兵を轢き殺し、バリケードを突破。
封鎖している女性兵士等は即座に銃の安全装置を外し、佐藤等が乗るSUVに発砲するが、運転する中村は殺せることができずその場を急いで離れる。
狙撃銃ウルティアマラティオを持つ狙撃兵は発砲しようと構えるが、走行中の車の窓から上半身を出した佐藤の銃撃で狙撃兵は射殺された。
「へ、ちょろいちょろい」
佐藤は上半身を車の中に戻しM4A1カービンの残弾を確認する。
「(これで回収は難しくなるな。まぁ、あいつがヘリを用意してるハズだな。このSUVは捨てるか)」
再び後部座席に腰を下ろし、全部座席に足を乗せると、葉巻を咥え、先に火を付けて一服した。
そしてコンビの目的地である榊野学園、Zbvの擲弾兵中隊から引き抜かれた一個分隊程度の偵察部隊が学園内を探査していた。
「高校時代を思い出すな、俺の母校はこんな風な設計だったんだぜ」
MP40を構え、先頭に立った国防陸軍兵が思い出話をする。
他のKar98kやMP41などを装備した兵士達が退屈そうに話を聞いていた。
「こいつの思い出話はウンザリするぜ」
「ああ、そうだな。ちゃんと調べて偵察しねぇーと、シュタイナーの野郎に殺されちまうよ」
長距離無線機を背負い、Kar98kを抱えた兵士が、愚痴をこぼした兵士に答える。
一歩一歩廊下を進んでいると、銃声や悲鳴が近くで聞こえるように成ってきた。
そんな彼等の目の前に、一体の高校生ゾンビが現れた。
「見ろ、死人だ」
「どうする、殺すか?」
「弾が勿体ない、ストックで殺せ」
「了解(ヤヴォール)」
殿の兵士に指示されたKar98kを持った兵士は、銃座で高校生ゾンビを殴り殺した。
彼等は何も口にせず、黙って前進し続ける。
途中、女性の呻き声が耳に入り、彼等は至急、聞こえた方角に向かった。
道中にゾンビと何度か出会したが、一切発砲もせず、銃剣や銃座で倒すだけであり、決して無駄弾を使わない。
そして現場に着くと、ワルキューレの軽歩兵が腰を抜かして倒れ込んでいるのが見えた。
「スッコチ!見ろ、女兵士だ」
「ホントだぜ、何か怯えているように見えるが・・・」
スコッチと言う兵士が喋り終えた後に、その軽歩兵は長い黒髪の少女に刃物類で滅多刺しにされて絶命した。
目撃した偵察部隊は、一歩下がり、MP40やMP41、Kar98kを少女に構える。
「
もちろんこの少女は桂言葉、先程手に入れた銃器は、血を浴びて使えなくなったか、弾薬が底を尽きたかである。
手に持ったテーブルナイフを銃を構えた兵士達に向け、襲いかかった。
銃を構えていた兵士達も銃爪を引き、発砲したが、言葉が早過ぎて狙いが付かず、MP40を持っていた兵士が喉を指されて絶命した。
言葉を近づけまいと、残りの兵士達は弾幕を張るが、素早く回避され、奪われたMP40で4名が射殺されてしまう。
「なんだこの子娘は!化け物か!?」
「兎に角逃げろ!この嬢ちゃんには勝てない!」
残り5名の兵士達は銃を撃ちながら後退するが、言葉は逃げることを許さない。
そして死んだ兵士からナイフを取ると、それをMP41を持った兵士に投げ、殺す。
「うわぁぁぁぁぁぁ!化け物だぁ!助けてくれぇ!!」
そう叫んだ兵士を含めて残りの兵士達は皆テーブルナイフで動脈部分を斬られて絶命し、偵察部隊は全滅した。
言葉は直ぐに、全滅した偵察部隊の死体から使える物を探り始める。
見つけた物はMP40専用弾倉10本に国防軍支給ナイフ、Kar98k用の銃剣、腕時計、折りたたみスコップ。
後のいらない物を捨てると、「何故この時代にドイツ第三帝国の国防陸軍の兵士が居るのか?」という推理を始めた。
「(何故ここにドイツ軍の兵士が居るんでしょう・・・しかもナチス・ドイツの方の・・・ゾンビ発生事件にナチス関連の物も在りますけど・・・これは・・・)」
不可解な事に頭を悩ませる中、後ろから女性の声が聞こえた後に、銃声が鳴った。
直ぐに振り返ると、ワルキューレの軽歩兵数名が、近くに居るゾンビを手当たり次第に掃討していた。
「(気付かれたらまずい事に成りそうですね・・・知られる前にみんな殺さないと・・・)」
言葉はMP40の弾倉を新しい物に替えると、そのまま銃声の発生源の方へと向かう。
その頃、榊野学園前ではSUV一台がその学園前に止まった。
それに乗る佐藤は降りてM4A1を構え周囲を警戒する。
「中村、降りてこい」
佐藤が指示すると中村は運転席から降り、FNミニミを持って出てくる。
「ありゃ~こりゃ地下研究所の奴ら死んでるんじゃないですか?」
中村は学園の中庭に止まっているトラックを見て口にする。
その中村の言葉を聞いた佐藤は「これだから学のねぇ奴は」と呟く、すると銃声が学園内から激しく聞こえ、同時に悲鳴や断末魔も絶え間なく聞こえてくる。
それを耳にした佐藤と中村は銃を構えて、警戒態勢に入った。
「あの女兵士共、最初からこうする気だったのか。先を越されるぞ!急げ、中村ァ!」
「了解です、佐藤二佐殿!」
意気込んだ2人は中庭に入った。
すると、G36Cなどで武装した男がこちらに向かって手を振っていた。
「なんだぁ、あいつは?」
中村は不審に思いその男の元へ向かう。
「あんたがミスターサトウか?」
男は中村に質問してきた。
「俺、サトウじゃない。ナカムラ」
肌の色を見る限りアジア辺りの国の男だ、そこへ佐藤が現れ、中村を押しのけ、男に「自分だ」と告げる。
「俺がダイスケサトウだ。お前は?」
「オレ、雇われた警備兵。話は後、こっちだ!」
武装した男は佐藤と中村を学校の裏庭に案内した。
裏庭で男は何かの石像を触り始める、その行動に中村は「なにやってんだ?」と思う。
石像が突然動き、石像があった元に出入り口が現れた。
「秘密の出入り口か・・・何処かであったな、こういうの。中村、周囲を警戒しろ」
佐藤は中村に周囲を警戒させる、男はその出入り口に入っていき、それに佐藤も入る。
「おい、何やってる?置いていくぞ」
佐藤に背中を叩かれ、中村も後に続いた。
その後、石像は元の位置に戻り、何事も無かったかのようにそこに佇んだ。
そして学園に偵察部隊を送り出したZbvは、その偵察部隊から連絡が途絶えたこと知った。
「少佐殿、偵察部隊から連絡がありません・・・」
報告を聞いたシュタイナーは、学園を見ながら答えた。
「全滅したな。先程MP40の銃声はするが、Kar98kの銃声は一切聞こえない。奪われたな」
その冷徹なシュタイナーの答えに無線手は肝を冷やす。
そして学園からは様々な銃の銃声や悲鳴と断末魔が未だに響き渡っていた。
次回は佐藤と中村VS言葉にしようかな?
その次はパイパー大佐とヴァルキュリアーズだ。