気分良いぜぇっ、昔を思い出さぁ!
また仲間を失ってしまったタカ達、しかし彼等は仲間の死など気にする暇はない。
何故なら恐るべき敵がタカ達を狙っているからだ。
周囲を警戒しながら回収地点へと向かう。
「あの・・・?」
希が突然、前方を歩くダッチに声を掛けたため、ダッチは銃を構えながら、彼女の話を聞く。
「なんだ?」
「お襁褓を変えても宜しいでしょうか・・・?」
この言葉に全員が呆れた顔をする。
「おいおい、お襁褓なんて今変える暇はあるのか?何処から襲ってくるか分からないんだぞ!」
ポンチョは希の頼みを否定、しかし、光稀とジェイダーが「自分達が面倒をみる」と言う。
これに対し、ダッチとジョージは呆れた顔をしながら承知した。
「4分で仕上げろ。もし4分を過ぎたら置いていく」
「
敬礼した後、女性陣等は茂みへと向かった。
未だ空には航空機やヘリの大編隊が覆い尽くしている。
公道の方からエンジン音も聞こえ、それに混じって銃声も聞こえる。
光稀は、ゾンビや暴徒が居ないか辺りを見渡し、居ないと確認した後、待機していた希とジェイダーに合図を送った。
「一人で変えられる?」
肩に掛けていた雑嚢からお襁褓を取り出す希にジェイダーは手伝うかと聞いた。
「すいません・・・手伝ってください///」
顔を赤らめて口を開く希に光稀は、ジェイダーに見張りをするように頼み、野戦ズボンを脱いだ希のお襁褓に手を付けた。
紙製のお襁褓は既に希の尿で湿り、意味はなさない。
直ぐに湿りきったお襁褓を外し、そこらに投げ捨て、雑嚢に入っていたお襁褓を希に履かせた。
「出来た・・・時間は?」
「3分って所ね。急ぎましょう、置いてかれるわ」
ジェイダーが言った後、光稀と希は直ぐに荷物を纏めて先行くジェイダーの後に続いた。
そしてタカ達と合流する。
「後20秒だったな」
ジョージが口を動かしながら左腕の腕時計を見た後、女性陣に視線を向ける。
到着したと同時に、回収地点へと歩みを再開する。
気が付けば、上空を飛んでいた航空機の群れは消えていた。
公道や道路を走っていた戦闘車両やトラックも一台も見当たらない、見えるのは後を追う“奴ら”だけだ。
「嫌な予感がする・・・」
ビリーが歩きながら呟いた。
後衛のマックはかなり殺気立っている。
そんな疲弊しきった彼等に、言葉は容赦なく襲い掛かった。
「ッ!?」
茂みの音に気付いたマックは、手に持つM240の引き金を引き、音がした方へ発砲した。
「出て来いクソたっれぇぇぇ!!」
「待て!マック、マッーク!」
静止を聞かず、そのまま手に持つ軽機関銃を撃ちながら茂みへと向かう。
ジョージがマックが向かった方向へと行く。
「俺がマックを連れ戻す。ダッチ、こいつを持って行け」
研究所で回収したアタッシュケースを渡した後、マックの後を追っていった。
一方、マックを誘い出した言葉は、殺気立った瞳で探す彼を、木の上から見ていた。
「(フフフフ・・・機関銃を持っているのが来て、ホントに助かりました)」
AW50のスコープを覗きながら、マックの頭部へ狙いを付ける。
だが、気付かれたらしく、マックを見失う。
「おや、何処へ・・・?」
スコープから目線を外し、獲物を探し始める。
そこへ、ジョージがSA58を構えながら向かってきた。
「マック、マック!何処にいる・・・?」
周囲に視線を配らせながら、見渡すが、マックは居ない。
突然、何者かに口を塞がれ、倒木へと引きずり込まれた。
もちろん正体はマックである。
「デカイ声で言うな。奴に見つかっちまう」
「済まない・・・で、奴は何処だ?」
「あそこだ・・・」
指を差した方向には、身体に合わぬボルトアクション方式のライフルを持った少女が居た。
「あの小娘めぇ・・・俺達を鹿か猪と思ってやがる・・・!」
「そうか・・・では、俺達だけでやるぞ・・・!」
「ああ、二人であいつを仕留めて、ブレインの仇を取る。そして身体に俺の名を刻んでやる・・・!」
自分達を捜す言葉に気付かれず、近付くジョージとマック。
額に汗を滲ませ、銃把を握る手から汗が浸り落ちる。
ここで言葉が姿を暗ましたが、二人は慌てることもなく接近する。
「(気付かれましたか)」
向かってきたジョージとマックに、言葉は普通の少女では持てない対物ライフルの照準をマックの頭部に定めた。
レーザーサイトがマックの頭部を照らしたと共に、引き金を引いた。
大きな銃声が響き、12.7㎜弾はマックの頭部に命中し、彼の人生に終止符を打った。
銃声に気付いたジョージは、銃声の音源に向かって大口径自動小銃を乱射する。
「ッ・・・!?」
弾丸は言葉の頭部を掠めたが、傷口は一瞬で塞がる。
手応えを感じたジョージはさらに引き金を引き続けたが、気付かれた言葉の対物ライフルで左腕を吹き飛ばされる。
「うぁぁぁ!!あぁぁ・・・!」
それでも言葉から目線を外さず、自動拳銃ベクターSP1をガンホルスターから取り出し構えたが、ボルトを引いた言葉が早く、腹に大口径の弾丸を喰らい、断末魔を叫びながら息絶えた。
獲物を仕留めた彼女は携帯を取り出し、現在位置を確認し始める。
「もう、隣の県ですか・・・」
言葉が自分の位置を確認している間、タカ達はもう回収地点へと着いていた。
「あそこにヘリが見えます!」
上空を飛行しているアーミット社のマークが入ったMi-8を確認したタカは、ダッチ等に知らせる。
直ぐにM18発煙手榴弾のピンを抜いて、着陸出来そうな場所に投げ込む。
そこへ、ポンチョがダッチにジョージ等がまだ来てないと知らせる。
「ジョージとマックがまだ来ておりません!」
「先程対物ライフルの銃声が聞こえた。もう二人は助からん、俺達だけでも生き残ろう!」
ダッチの答えに納得したポンチョは、ビリーと共にヘリに合図を送る。
だが、またタカ達に悲劇が襲い掛かる。
上空を見ていた希は、中国から発射され、迎撃に失敗した核ミサイルが爆発する所を目撃したのだ。
「なんだあの爆発は!?」
警戒していたタカは、空中に上がるキノコ雲を見て驚く。
爆発から数秒後にヘリは、撒き散らされた電磁パルスを受け、機能が停止し、コントロールを失う。
「ヘリが墜落するぞ!!」
こちらに向かって墜落してくるMi-8を見たポンチョは、タカ達に向かって叫び、その場から直ぐに離れる。
「伏せろぉ!!」
そのままヘリは地面に直撃し、大破。
間一髪タカと光稀、希、ダッチ、ビリー、ジェイダーは地面に伏せ助かったが、ポンチョは飛んできた破片を食らい、負傷する。
「グオァァァ・・・ア・・・!」
「ポンチョがやられた!」
細かい破片が足に刺さり、そこから血が噴き出してくる。
直ぐにジェイダーがポンチョに寄り添い、突き刺さった破片を抜く。
「誰か、手伝って!」
タカと光稀は直ぐにジェイダーに従い、ポンチョに応急処置を施す。
辺りを警戒する希、ダッチ、ビリーはふと上空を見上げると、多数の輸送機が空を飛んでいることに気付いた。
「隊長、あれは・・・?」
「間違いない・・・あれは韓国軍の空挺部隊だ・・・!」
ダッチは輸送機からばらまかれる大多数なパラシュートを見ながら希の問いに答える。
歴戦錬磨の戦士達が恐怖する姿とこんな状況にも関わらず、侵攻に来た韓国軍の空挺部隊を見た希は、ますます不安が募るばかりであった。
韓国軍と中国軍を本州に侵攻させてしまった・・・