学園黙示録 ゲンブンオブザデット   作:ダス・ライヒ

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能力発動回&友情出演最終回です。


生き残れ!

韓国空挺部隊が待ち伏せする住宅街へと進むタカ達は気付かずに進む。

直ぐに足の治療が必要になってきたポンチョを抱き抱えながらタカはあることを思い出した。

 

「なぁ、ミキ」

 

「なにタカ」

 

ポンチョの左肩を担ぐ光稀が、タカの問いに答える。

 

「シンクロは使わないのか?」

 

「あぁ、そう言えば忘れてたわ。今から使うからちゃんと持ってよ?」

 

「あ、あぁ・・・」

 

少しポンチョを担ぐ力を抜いた光稀は、シンクロを使い始めた。

周りの空気と振動に感覚を共有し、その先の異物と違和感を感じ取ろうとする。

 

「後ろに凄まじい違和感に、前方に妙な感覚・・・あそこの住宅街に何か潜んでいるわ」

 

「流石俺の嫁だ、完璧だぜ」

 

「タ~カ~///」

 

その知らせにタカが褒めた後、光稀は顔を赤らめて照れる。

そんな彼女にお構いなくダッチが本当なのかを問う。

 

「ホントなのか・・・?」

 

「はい、もちろん。数は二個分隊ほど潜んでいます」

 

「二個分隊か・・・しかし相手は良く訓練された兵士、しかも空挺兵だ。実戦経験がないとはいえ、マフィアやジャンキーを相手にするのとは訳が違うぞ」

 

「迂回しようにもゾンビが彷徨いてますし・・・それに敵に衛生兵が居たら得です。行くしか無いでしょう」

 

戦闘を避けたいダッチは否定するが、ビリーの言葉に納得し、攻撃準備をする。

 

「よし、お漏らし娘、お前はポンチョを守れ」

 

「お漏らし娘って・・・」

 

指示をするダッチが付けたあだ名にショックを受ける希、それでもダッチは気にせず続ける。

 

「ビリー、ジェイダー、タカ、ミキ、お前達は俺と来い。それでミキ、敵の正確な位置は?」

 

「近い場所に七名、右三名、左四人です。後十七人くらいは外で待ち構えてます」

 

「煙幕を巻いて駆逐だ。お漏らし娘はちゃんとポンチョを見てろよ」

 

「あ・・・はい・・・(私って、そんなに漏らしてるのかな・・・?)」

 

希はダッチの付けたあだ名をまた言われ、困った表情になり、頭を悩ます。

そしてタカ達は攻撃を開始する。

その頃、待ち伏せていた韓国陸軍空挺師団の兵士達はと言うと。

 

「クソッたれ、早く来やがれ!小便が近いんだ!」

 

K2アサルトライフルを構えながらぼやいていた。

隣の同じ突撃銃を構える兵士も、落ち着けないでいる。

道路にM18発煙手榴弾が投げ込まれた。

勘違いした兵士が発煙手榴弾に銃口を向け、引き金を引き、発砲してしまう。

 

「馬鹿野郎!誰が発砲した!?」

 

「間違えたんだよ!」

 

「これでバレちまった・・・!」

 

道路に煙が広がる中、タカ達は相手の視界が塞がるまで待つ。

 

「よし、そのまま、そのまま・・・行け!」

 

自分達の姿を隠しきれるまでに成った後、煙の中に入っていった。

韓国語が聞こえる民家や建造物に、M26破片手榴弾を投げ込む。

 

「うわぁぁぁぁ!?」

 

小規模な爆発が起こった後、悲鳴が聞こえ、敵兵が持っていたであろう血が付いたK2ライフルがタカの足下に落ちてくる。

 

「お、ラッキー!」

 

K2ライフルからFNCと同じ弾倉を取り、ポーチに入れた。

左側に居た韓国兵等もあっという間にダッチに片付けられる。

 

「待ち伏せ班が攻撃を開始したぞ!」

 

「おいおい、情報違いのゾンビ共が集まってくるぞ。静かにやれ」

 

「それが、待ち伏せ班は全滅したらしい・・・K2の発砲音が聞こえね・・・!」

 

「畜生!仇を取るぞ!」

 

廃工場で集まっていた残りの兵士達もタカ達が居る住宅街に向かっていった。

一方、待ち伏せ班を全滅させたタカ達はと言うと、ビリーがK3分隊支援火器を持ち上げ、向かってくる韓国兵達に向かって引き金を引いた。

前方に立っていた兵士は蜂の巣となり、死亡。

後ろの兵士が足を負傷し、衛生兵に遮蔽物まで引っ張られていく。

衛生兵の存在を確認した光稀は、全員に衛生兵の存在を知らせる。

 

「衛生兵が居ました!」

 

「よし、生かしたまま捕らえろ!」

 

AK107を撃ちながらダッチは命令した。

ジェイダーは光稀のサポートで、出てくる兵士達を次々と撃ち抜いていく。

 

「そこの右にいる!」

 

「OK!ヒュー!ホントにいる!」

 

タカもサポート受けながら、敵空挺兵を駆逐する。

次々と仲間がやられていくのを見た空挺兵達は、混乱状態に陥る。

 

「まるで俺達の動きを呼んでるみたいだぜ!」

 

「クソォ!日本人如きがどうしてこんなに優秀なんだ!?」

 

「おい、増援を呼べ!近くに小隊が居たはずだ!」

 

通信機を持った兵士が受話器を取り、増援を要請する。

僅か数秒の間に衛生兵と三名の兵士となってしまった空挺兵達、彼等は応戦するが、歴戦錬磨の元兵士や能力持ちのコントラクターに勝てるはずもなく、衛生兵しか残ってなかった。

一人になってしまった衛生兵は、近付いてきたビリーに英語で手を挙げながら命乞いをする。

 

「う、撃たないでくれ!俺は衛生兵だ!条約は知ってるだろ!?」

 

「残念だが、俺達はPMCのコントラクターだ。俺達が戦死者に加えられないと同様、条約を守る義理はない」

 

このビリーの言った事に、衛生兵は顔を真っ青にして、失禁し始める。

 

「それでも空挺兵か、このション便たれ!早く治療道具を持ってこっちに来い!」

 

ダッチに胸ぐらを掴まれた衛生兵は、直ぐさまビリーにインベルMDを向けられたまま、ポンチョの元へと向かう。

そして希が守る負傷したポンチョの元へと着いた衛生兵は、早速治療を開始する。

全員が睨みを効かせて見守る中、衛生兵は怯えながら治療に専念する。

 

「どうだ・・・ポンチョの様子は?」

 

「だ、駄目だ・・・!この怪我は野戦病院か設備が整った医療所に運ばないと、足を切断しなきゃならない・・・!」

 

「なんだと!?どうにも出来ないのか!」

 

衛生兵のポンチョの状態を聞いたビリーが胸ぐらを掴む。

 

「うわぁ!落ち着け、応急処置はしておいた。これで暫くは安心だ・・・」

 

胸ぐらを掴みながら「そうか」と呟いたビリーは、ゆっくりと衛生兵を下ろす。

 

「ふぇ・・・まぁ、病院を探す時間は稼いでおいた」

 

衛生兵は息を整えた後、その場を去ろうとするが、ジェイダーにベレッタM92Fのクローン、ブラジル製タウロスPT92を眉間に銃口を突き付けられる。

 

「何処へ行こうというの・・・?」

 

「ヒッ!?」

 

「知ってるよね・・・?ここであんたを逃せば、仲間を呼ばれちゃうわ。それを防ぐための最善の方法・・・分かるよね?」

 

周りにいるタカ達は、止める気配など無かった。

衛生兵は笑みを浮かべて、ジェイダーに偉そうに言う。

 

「お、俺は正規兵で衛生兵だぞ!お前等傭兵如きが正規の軍隊に逆らうのか!?」

 

「お前達に殺されるよりマシだ」

 

ダッチの言った言葉で、衛生兵はまた失禁し始める。

それを見ていた希は、韓国陸軍の衛生兵を見て、自分よりだらしがないと思った。

いつ撃鉄が引かれるか分からない状況に、緊張する中、光稀が「敵が来た」と皆に知らせる。

 

「この感覚は・・・!?一個小隊分、住宅街に向かってる!」

 

「クソッ!ハメたわね!?」

 

衛生兵の眉間に強く押し付け、ジェイダーは睨み付けながら叫ぶ。

 

「ち、違うんだ!」

 

「俺が行きます」

 

突然タカが言った言葉にその場に居た全員が驚く。

 

「お前、何を言ってるのか分からないのか!?」

 

「いえ、俺にもミキと同じく能力を持ってます。行けますよ」

 

このタカの自信に、ダッチは許可した。

衛生兵に銃口を向けていたジェイダーは足を蹴った後、睨み付ける。

そして俯せにして、自分達を見えないような状態にする。

小隊の迎撃に向かったタカは、警戒しながら向かってくる空挺兵達を見ながら懐から出したチョコバーを食べる。

 

「大体四十五人って所か・・・スローモーでも使うか」

 

タカはFNCの弾倉を新しい物に変えた後、神経を集中させ、自分が持つ能力スローモーを発動した。

手榴弾のピンを抜き、それを投げ込み、警戒しながら進む小隊に突っ込む。

 

「なんだあれは!?猪か!」

 

「し、手榴弾!」

 

爆発が起こり、何名かが破片で死亡したのを確認すると、引き金を引き、前にいた数名を殺害する。

 

「うわぁぁぁぁ!前にいた味方が殺された!!」

 

何が起こったのか分からない韓国兵達は、銃を撃てずに次々とタカに射殺されていく。

フォールディングナイフを引き抜き、その場にいる兵士達の喉元を切り裂き、スパス15に切り替え、複数同時に射殺する。

もちろんタカの姿など、敵である韓国兵達には捉えられない。

次々と殺されていく戦友達を見た兵士達は、その場から逃げようとする。

 

「に、逃げるな!たかが劣等人種相手だぞ!」

 

小隊長は逃げようとする部下達を止めようとしたが、タカに頭を飛ばされ、頭がない死体はその場に倒れる。

部隊長を失った小隊は混乱を極め、兵士達も冷静さを失い、戦意消失。

その場から散り散りに逃げていく。

三分が経過すればタカのスローモーは終了し、その場に倒れ込む。

 

「クソォ~きつい!!」

 

息を整え、懐からチョコバーを出して、それを食べた。

それで体力が戻れば、壊滅した韓国兵から弾倉を回収し、パンツァーファウスト3を四本ほど回収した。

ダッチ達の元へ戻れば、一個小隊を全滅させたタカに驚きを隠せない。

 

「お前ぇ・・・どうやって・・・?」

 

「えぇ、俺の女と同じ能力を使いました」

 

「ちょっと、タカ!大丈夫なの!?」

 

心配そうにタカに寄り添う光稀。

 

「大丈夫だ、ミキ。それであの衛生兵は?」

 

それにダッチが答える。

 

「目隠しをして解放するところだ」

 

言ってから指を差した方向を見れば、目隠しをされた衛生兵が怯えている。

 

「なぁ・・・頼む。目隠しを外してくれ・・・!」

 

「駄目よ。そうでもしない限り私達が危ないわ」

 

ジェイダーの冷酷な返しに、衛生兵は怯えながら前に進んだ。

その直後である、ジェット航空機のエンジン音が響き渡り、衛生兵が木っ端微塵に爆発した。

 

「航空機の攻撃だ!」

 

全員が住宅街へ向かい、敵航空機の正体を探る。

 

「見つけた、F-5EタイガーⅡだ!」

 

ビリーが言った後に一同は空を見上げ、敵機の数を計る。

 

「一機か・・・希、能力使う?」

 

光稀に聞かれた希は小首を傾げて、疑問に思う。

タカがいつの間にかパンツァーファウストⅢを希に渡そうと待機していた。

 

「あ、はい・・・使えますが・・・何に使うので?」

 

「あの戦闘機を撃墜するんだよ」

 

上空から獲物を探すF-5EタイガーⅡを指差しながらタカは言う。

希は頭を抱え、数秒間考え込むと、パンツァーファウストⅢを受け取り、決意する。

 

「やります!」

 

「バケはそこら辺に居るゾンビがやってくれる。安心しろ」

 

タカが頭を撫でながら告げると、希は意気揚々とパンツァーファウスト3を抱えて外へと出て行った。

ダッチとビリー、ジェイダーは、タカ達が何を考えているか分からない。

外に出た希は能力の発動準備をする。

F-5Eが自分の範囲に来るまで、構えたままずっと待つ。

 

「(私には出来る・・・絶対に出来る・・・!)」

 

ゾンビを掃討していたF-5Eが、希に気付かず、その真上を通ろうとする。

タイミングを見計らった希は、直ぐに能力ロードチェンジを発動。

安全装置を外して、引き金を握り、速度1459㎞/hの低空飛行で迫るF-5Eに向けて引き金を引いた。

放たれた成形炸裂弾は進路変更を受け、F-5EタイガーⅡの下部に命中、戦車ほどの装甲を持たないF-5Eは大破し、墜落する。

能力を使った希はその場に倒れ込み、やって来たタカ達に抱き抱えられる。

戦闘機を撃墜した少女に、ダッチ達は驚きを隠せない。

 

「はぁ・・・お前等は超能力者か・・・?」

 

ポンチョがビリーに抱えながらタカ達を見ながら問う。

 

「さぁ?高校生の時に気付いた能力ですから」

 

笑顔で答えるタカ、光稀と希も苦笑いで答える。

次の瞬間、銃声が響き、突然ポンチョが倒れ、胸から血が噴き出し、息を引き取ってしまう。

 

「奴だ!奴が来たんだ!!」

 

叫んだダッチはライフルを小山の方へ向け、臨戦態勢を取る。

だが、ビリーが装備を捨て、銃を構えるタカ達を止めた。

 

「あんた達は逃げてくれ。俺は一人であいつと戦う」

 

「何を言ってるの!?あれに適うわけが・・・!」

 

「いや、倒せる自信がある・・・!構わずに行ってくれ」

 

もう二度と戻らないと判断したダッチはビリーを残し、ポンチョの認識票を取った後、タカ達と共にその場から去っていった。

 

「一緒に戦わなくて良いんですか?」

 

希が光稀に抱えながら質問したが、ダッチの返事は無かった。

そんなタカ達を、さらなる悲劇が襲う。

周囲から銃声や爆音が響き、上空では空中戦が開始される。

後衛を担当していたジェイダーの気配が消えたことにタカ達は気付く。

 

「ジェイダーさんは何処に?」

 

振り返った先にはジェイダーは居らず、ビリーの断末魔が戦闘音に混じって聞こえてきた。

死んだと判断したタカ達は、再び走り始める。

一方のジェイダーは落とし穴に落ち、直ぐに這い上がろうとしたが、深く落ちた為に這い上がれない。

そのままタカ達に死んだと思われてしまう。

暫ししてから、穴から這い上がり、ジェイダーは双眼鏡を取り出し、状況を確認した。

 

「あの戦乙女達が戻って、侵攻軍と戦ってる。そして私もどうやら潮時ね・・・」

 

侵攻軍とワルキューレが戦闘を行っているのを見ていたジェイダーは、後ろから近付いてきた複数の軽歩兵に気付く。

腕に縫いつけられたワッペンを見ればワルキューレが描かれていることから、ワルキューレの戦闘員と分かる。

さらにM3A5リー中戦車が来た後、彼女は武器を捨て、降伏した。

タカ達は言葉から逃れるべく足を速める。

 

「大分距離は離せたみたいだが・・・?」

 

「いや、奴はお前達の能力を遙かに凌いでいる。お前達は生き残れ・・・!」

 

「それってどういう・・・」

 

ダッチの言った言葉にタカ達は良からぬ事を予想した。

 

「まさか・・・死ぬ気ですか・・・?」

 

希の問いにダッチは「そうだ」と頷く。

 

「私達と一緒に・・・!」

 

「お前達にもう会うことはない。確か地図で見た時に、洋上空港の連絡橋があったな?そこへ行け。そこへ奴は近付いてこない」

 

「待ってくれ!あんたも一緒に!」

 

「俺が止めなければお前達は死ぬ・・・その為にも行かなくてはならない」

 

止めようとするタカ達にダッチは覚悟をねじ曲げない。

そんな彼に希が近付き、タカから渡されたパンツァーファウスト3を渡す。

 

「ありがとう。お漏らし娘など言って悪かったな、もし次に会う時が来たらその泣き面とお漏らしは直して置けよ?」

 

笑顔で希に言うダッチは、パンツァーファウスト3を受け取った後、数秒後には来るであろう言葉に向かっていった。

その背中はビリーが残るの際に見られなかった覚悟を決めた勇士その物であった。

湧き出る涙を堪えるタカ達が空を見上げれば、いつの間にか夕焼けはもう夜空に変わっていた。

各地で起こる光はマズルノッシュや爆発、見知らぬ銃声や砲声が響く中、ダッチの雄叫びが耳に入ったが、彼等が邪魔する権利はない。

数時間走った後、遠くの方角で橋が見えた。

地図を取り出し、確認すればあれが床主洋上空港の連絡橋だ。

橋のあちこちでは事故を起こした自動車類が入り口を塞ぎ、周囲や上には奴らが多数彷徨いている。

電磁パルスの範囲に入っていた為か、照明は全て消えていた。

様子を見ていた光稀と希は立ち尽くすタカにどうするのかを問う。

 

「タカ・・・」

 

「鷹山さん・・・」

 

「行くしか無いだろうな・・・!」

 

二人の問いにタカはそう答えた後、迷わず床主空港へと足を進めた。

そして自分より遙かに凌ぐ言葉へ立ち向かったダッチの消息は不明と表され、タカ達は無事に空港に展開していた警察特殊部隊に救助された・・・・・・




終わりました・・・
白石さん、キャラ提供感謝いたします!!

次回はカンプグルッペZbv壊滅編です。

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