まぁ、元ネタを知っていればいいや・・・
着いた矢先
死者が溢れる高城邸から脱出し、新たなメンバーを加えた小室一行。
新しい休息地を、既に先客が居るショッピングモールに定めた彼等は、直ぐにそこへ向かう。
気が付けば天に朝日が昇り、一日が始まっていた。
モールの屋上で、自然公園での戦闘で壊滅したアルベルト戦闘団の敗残兵の一人、肩にkar98kを担いだドイツ国防陸軍擲弾兵が、双眼鏡を覗きながら、小室一行を捉えていた。
「なんだ、あいつ等は。もしかしてさっきの婦警が呼んできた応援か?」
屋上にいたもう一人が、彼から双眼鏡を奪って、小室一行を見る。
この男が来ているのは、降下猟兵用の迷彩服を纏い、FG42を担いでいる。
「新しい客人のようだ。マイヤー少将に報告だ!伝令!」
小室一行の存在を確認した先客達は、一番階級の高いクルト・マイヤーに知らせた。
「
司令室の代わりになっている部屋で、伝令から報告を聞いたマイヤーは、近くにいたパイパーと相談する。
「パイパー、今度は枢軸国軍に続いて近代的な軍用車に乗った一団が来ている。少し様子を見るか?」
「ヤー、何名かに向かわせ、包囲し、正体を確認します」
直ぐに兵士等を集め、停車位置を予想し、遮蔽物になるような場所に身を潜め、小室一行のハンビィー二台とジープ・軍用バギーを待ち伏せる。
待ち伏せ配置が完了したところで、小室一行が到着。
もしもの事を考えて、銃の安全装置を外しておき、構える。
「これが未来のショッピングモールか・・・大きいな」
ハンビィーから降りたリヒターは、70年後のショッピングモールに驚きを隠せない。
ジープから降りた馬鹿4名は、早速モールに突撃していく。
「ヒャッハー!食料に水だぁー!」
もちろん待ち伏せしていた先客達に銃を突き付けられ、大人しくなる。
「なっ、なんだテメェ等は!?」
海兵隊員の男が手を挙げながら叫ぶが、その銃三十八式歩兵銃を突き付けているのは、大日本帝国陸軍歩兵だからだ。
逃げようとしても、後ろも枢軸国の兵士達に包囲され、袋の鼠状態となり、モールへ手を挙げながら入った。
暫し時間が経ち、多数のベットがある清潔な倉庫部屋で、一つのベットに眠っていたルリは目覚める。
「あ、気が付いた?」
赤いスカーフを頭に巻いた小柄な女性、アリシアがルリが目覚めた後、寄り添う。
「あれ・・・ここ・・・何処?」
「まぁ、貴女がここに運ばれて5時間ってところかな。女医さんを呼ばないと」
ルリの質問に答えた後、アリシアは、壁に凭れ掛かって寝息を立てながら寝ている鞠川を起こす。
「あれ・・・宮本さん。もうお昼ご飯?」
「違いますって!ルリちゃんが目覚めたんですけど・・・」
ツッコミを入れたアリシアに、鞠川は「あっ!」と叫んで、慌ててルリの側に向かう。
「大丈夫~ルリちゃん!?突然幼女に成ったりして、そんでもって戻ったり・・・」
「僕・・・なんでこんな所に居るんだっけ?たしかもう一つの人格が確か、お高い豪邸に居たんだっけ?」
突然体格が戻った挙げ句、一人称が僕に変わった為、鞠川は大変驚き、アリシアは何が何だか分からないでいた。
「まぁ、今度は僕っ娘に変わった!みんな~大変よ~!」
大慌てで鞠川は部屋を出て行った。
これを見ていたルリと鞠川は唖然し、お互いの目を見て、両手を上げる。
そしてルリも部屋から出ようと、ベットを起き上がろうとしたが、身体に余り力が入らず、ベットから転げ落ちる。
「あ、大丈夫?まだ寝ていたほうが・・・」
「大丈夫。力は少しずつ戻ってるから・・・」
寄り添ってきたアリシアの手を拒み、ルリは机に置かれた着替えを取り、身仕度を始める。
それが終わった後、部屋を出る。
このショッピングモールは吹き抜け天井の二階建ての構造、天井は大半が半円状のガラス窓と成っており、EMPの影響で照明はともされてはいないが、幸いにもガラス窓天井のお陰様で充分な光は確保されている。
何人かの一般人も居るが、一番目に入るのが軍服を纏っている男達だ。
第二次世界大戦の枢軸国の兵士達であり、21世紀の市販の物を物珍しそうに眺める者、煙草を吹かせる者、辺りを彷徨いている者が居る。
二階に行っても、サバイバルに向いた服装をしている少女が椅子に寝転がって寝ているだけだ。
未だに小室一行の誰一人とで会っていない。
「駐車場に居るのかな?」
そう呟き、位置を確認した後、駐車場に向かう。
そこには時代に合わない第二次世界大戦中の戦車があった。
一番目に入るのはヤークトティーガー重駆逐戦車、128㎜の砲身が柱に引っ掛かりそうだ。
次に実戦に出る前に戦争が終わり、アメリカ軍に研究用に持ってかれた三式中戦車チヌ。
砲頭部に日の丸が描かれた為に、ルリは口を開けて唖然している。
他にはSdKfz251、鉄十字が入った軍用トラックに入ってないトラック、BMW/R75、ケッテンクラート、そして脱出の際に乗っていたハンビィー二両とジープ、軍用バギー。
出入り口を見れば、奴らが侵入できないようにバリケードが配置されており、内側から開けるように工夫されていた。
ここにも居ないと判断したルリは、モール内に戻り、小室達を探す。
「え~と、何処に居るんだろう?」
辺りにいる人の顔を確認しながら、小室達を探す中、何者かに後ろからぶつけられ、倒れ込む。
「あっ、ご、ごめんなさい!本官の不注意でぇ!」
声からすると女性であり、しかもルリの頭部にその女性の胸が押し付けられている。
床に顔を押し付けられている彼女は、苦しみながらジタバタし、それに気付いた女性は直ぐに立ち上がる。
「ひぇ~!だ、大丈夫!?お嬢ちゃん!それとご免なさい!」
必死にルリの身体を揺さぶりながら謝る童顔で巨乳な女性、服装と口調からして婦警であろう。
向こう側から見ていた白人の若い男と大男が大笑いしながら、彼女等を見ていた。
「ぼ、僕は大丈夫だよ・・・それじゃあ」
「え?あ、はい。無事で何よりです!」
婦警は敬礼し、ルリは再び仲間を探すべく歩みを始める。
そして直ぐに帽子を深く被り、首が見えないほどコートを羽織った軍人シュタイナーと共に居る自分の仲間を見つけた。
「あ、みっけ!」
「ルリ・・・って!あんたいつの間に戻ったの!?」
椅子から立ち上がった沙耶は、ルリが戻ったことに驚き、周りにいた孝と麗も驚いている。
「うん、でも今までの私の方じゃないよ。僕の方だよ」
「はっ?え、ちょっと、口調変わってない?」
「君は本当にルリなのかい?」
沙耶がルリの変わりように混乱する中、孝は彼女は本人かと質問する。
それに彼女は可愛らしい笑顔で答えた。
「そうだよ。大丈夫、記録は共用しているから」
「いきなり僕っ娘って・・・貴女二重人格者なの?」
次に麗の質問に、ルリは表情を変えずに頷きながら答える。
「うん、でも僕だけじゃないよ。この僕には十人くらいの人格が居るんだよ。多重人格者って呼んだ方が良いかもね」
「あ~、マジで混乱してきたわ。それとこのおっさんが言ってること分かる?」
頭を抱えながら沙耶は、シュタイナーに指を差して、彼が言っていることを翻訳するように頼む。
「〔このお嬢さんと少年少女に何のようで?〕」
流暢なドイツ語で質問してきたルリに、シュタイナーはこう返した。
「〔君達が乗ってきた車両の種類を知りたいっと言ったのだ〕」
「僕達が乗ってきた車両の種類が知りたいんだって」
翻訳したルリに沙耶は頭を抱え、「平野に聞けば分かる」と告げた。
ルリが翻訳した事を聞いたシュタイナーは、孝から英語でコータの居場所を聞いた後、そこへ向かっていった。
その後、ルリは他の者達が何処にいるのか、孝に聞く。
「所でみんなは?」
「確か、向こうのバルコニーでパッキーさん達が集まってるよ」
「他にも、銀色で髪の長い娘も居るけど」
麗の付け足しを聞いた後、礼を言ってから、ルリはそこへ向かっていった。
戦車兵やリヒトーフェン達は、発電所の再生に全力を注いでいます。