学園黙示録 ゲンブンオブザデット   作:ダス・ライヒ

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床主空港がほったらかしだったので、その視点を前編に・・・
後半はワルキューレ&奴らの襲撃直前です。


空港はほぼ壊滅×モールに危機迫る。

あさみがパニックを起こし、孝達とマイヤーを悩ませている頃。

床主空港では、危機が迫っていた。

上空で起きた電磁パルスの影響で電子機器の殆どが使用不可能に至っており、使えるとすれば非常用バッテリーで生き存えた全国瞬時警報システムだけだ。

空港を守っていた特殊急襲部隊SAT並び少数の海上保安庁の特殊部隊SSTの隊員達の顔に疲労が見える。

もちろん空港を守るのは彼等だけではなく、軍事結社ワルキューレの部隊も居るのだが、中国・韓国・北朝鮮の突如行われた侵略に対抗するべく、EMPが終わって再び来たが、最新装備の部隊並び成人女性で編成された部隊は全てその侵略国家群の迎撃に増員され、残ったのは老婆や12~15歳の少女で編成された二級戦部隊にも劣る三つの大隊で編成された連隊であった。

そんな拠点防衛専門の連隊本部にある連隊長室へと、SATの司令官が入ろうとするが、M1ガーランド半自動小銃を持った老婆に止められる。

 

「そこの中年、今は入っちゃ駄目だよ!」

 

「退いてくれ婆さん!こっちは一大事なんだ、新しい避難民がやって来たんだ、それも銃を持ったな」

 

第二次世界大戦時の米軍の作業服のような戦闘服を纏い、M1ヘルメットを被った老婆達はお互いに顔を合わせる。

 

「鉄砲を担いだ避難民だって?」

 

「連隊長に知らせましょうか」

 

視線を司令官に向けると、右側に立っていた老婆がドアをノックして、中にいる連隊長に知らせた。

 

「鉄砲担いだ避難民がやって来たと言う報告が」

 

ドアの向こう側から、別の老婆の声が聞こえてくる。

 

「へっ、鉄砲担いだ避難民?マリア、ドアを開けてSATの司令官を入れておやり」

 

部屋の中の向こう側に居る老婆が喋り終えた後、ドアが開かれた。

ドアを開けたのは、まだ12歳であろう少女だ。

童顔で将来が楽しみだが、着ているのは老婆と同じデザインの戦闘服で、略帽ギャリソンキャップを被っている。

司令官は連隊長室に入った後、書類作業を続ける老婆に敬礼する。

 

「SATの司令官です。昨日、武装したPMC社の傭兵三名が空港に避難してきました。私としては、彼等を仲間に引き入れたい、それには貴女達の許可が必要だ。ご返答を」

 

老婆は眼鏡を何度も掛け直しながら、彼の話を聞いていた。

 

「仲間に引き入れたいね・・・家は信用できないって言うのかい?」

 

「そんな意味で言っては居ません!私の部下達は疲れておるのです、貴女達の様な老婆と少女で編成された部隊との協力は難しいのです・・・!」

 

「そうかい。老人と子供にはこれ以上付き合えないと」

 

書類を纏めた老婆は椅子から立ち上がり、司令官の目線に合わせる。

 

「先程、日本で展開する我が組織の支部から指令が届いた。この空港に空輸部隊に輸送された機甲師団が到着する。それまでに、滑走路に居る奴ら(ウォーカー)を全て始末しろと。あんた達にも付き合って貰うよ」

 

司令官に告げた後、受話器を取って、各部隊に知らせる。

そして待合室で待機していた鞠川の友人で、SATの狙撃手で、小麦色の肌の特徴な美女南リカが寝ていた簡要ベットから起き上がり、知らせに来た同僚の顔を見る。

その同僚は相棒である観測手の田島だ。

 

「起きろよ南。司令殿から新たな指令だぜ」

 

「えぇ、そうらしいわね」

 

田島が滑走路に出る通路へと向かっていった後、リカはH&KPSG-1狙撃銃と装備を調え、滑走路へと続く通路に向かった。

外へ出れば遠くの方で、奴らが複数蠢いているのが分かる。

他のSAT隊員達もMP5N短機関銃を持ち、待機している。

ワルキューレの方は、一個大隊程度のWWⅡ時の米陸軍の装備や小火器を持った老婆と中学生くらいの少女が指令を待っているだけである。

これを見ていた田島は、顎を左手の拳で抱えながら、口を開く。

 

「あれ程居た若いねぇーちゃんと、海に浮かんでいた駆逐艦二隻は何処行ったんだ?今は婆さんに中学生位の嬢ちゃんしかいねぇーぞ」

 

「二千人位残してくれたからマシじゃないの」

 

「それもそうだな。それと、PMCの避難者は?」

 

「疲労が溜まって寝込んでるわ。あの表情から見て、今日も寝込んでるわね」

 

冗談まじりで行った田島の言葉にリカが応え、それに彼が笑みを浮かべながら頷く。

ワルキューレの大隊長らしい老婆がホイッスルを咥えて鳴らした後、老婆と少女達が一斉に動き出し、そこら中に居る奴らに発砲し始めた。

前大戦の小火器の銃声が響き渡る中、SATの隊員達も行動を開始する。

 

「発砲を許可する!周囲にいる奴ら(ターゲット)を殲滅せよ!」

 

「了解!」

 

「リカ、こいつを取れ!」

 

田島は背中に抱えていたM4に似た騎兵銃をリカに渡す。

 

「これは?」

 

89(ハチキュー)騎兵(カービン)型だとよ。俺は本物の89式があるんで!」

 

手に持っている89式小銃を見せびらかしながら、田島は弾倉を六つ程リカに渡した後、他の隊員達と共に奴ら掃討に加わる。

リカはM4風89式小銃の安全装置を外した後、先に奴ら掃討に向かった彼等の後に続く。

掃討作戦は順調に進んでいる様子だが、前より奴らの数は多くなっており、時間が掛かっている。

 

「前より数が多くない?」

 

弾倉内の弾丸が切れて再装填しているリカは、隣にいる田島に話し掛ける。

 

「気のせいじゃないのか?まぁ、気のせいでも無いらしいがな!」

 

近い距離にいた奴らの頭部を言い終える直前で撃ち抜いた田島、リカは再装填を終えれば、直ぐ標的に狙いに定め、撃ち抜き、それを終えれば次の標的に狙いを定める。

こうして次々と奴らは葬られていくも、未だに数は減らない、ワルキューレの拠点防衛大隊の損害が増えるだけだ。

それを見ていた田島が口を開いた。

 

「あの婆さんと嬢ちゃん達、やられてるぞ」

 

「前に出過ぎよ。ちゃんと戦闘訓練は受けてんのかしら!」

 

田島が撃ちながら喋り終えた後、リカは13歳の少女に噛み付こうとしていた奴らの頭部を撃ち抜いた。

暫し銃声が連続して響く中、田島は目に入った給油車を見て、何かを思いつく。

 

「リカ、あれが見えるだろ?」

 

引き金から指を離したリカが、田島が指差した給油車に目線を向ける。

 

「あんた何考えてんの?あれは動かないのよ。上空で起こった事をもう忘れたの!?」

 

「違うって!あの給油車に爆弾くっつけて、何人かに協力して貰って、奴らの大群のど真ん中に放り出すんだよ。丁度あの婆さんと嬢ちゃん達からくすねた爆弾を持ってる」

 

懐から爆弾を出して、アピールする。

この策に、溜息を付きながらリカは納得した。

 

「仕方ないわね、その策に乗ってあげるわよ!」

 

「ありがとよ、相棒!」

 

笑顔で礼を言った田島は、給油車まで向かう途中、ドラムマガジン型のM1928A1トンプソン短機関銃を乱射している老婆に声を掛けた。

 

「あの婆さんが良さそうだ。おーい、婆さん!」

 

引き金ねから指を離した老婆は、リカと田島に視線を向ける。

 

「なんだい、若いの?」

 

「あんた力持ちか?」

 

「あぁ、毎日鍛えてるよ」

 

「よし、じゃあ来てくれ!」

 

トンプソン短機関銃を持った老婆を引き入れた田島にリカは、何故老婆を入れるのか問う。

 

「なんでお婆ちゃんなんか入れたの?他に同僚が居るはずじゃ・・・」

 

「考えたが、全員SATやSSTの隊員で固めようとしても、時間が掛かる。ここは手っ取り早くここらにいる奴に声を掛けるのさ」

 

「ああ、そうなの」

 

田島の答えに、リカは近付いてきた奴らの頭を移動しながら撃ち抜いた。

給油車に向かうまで二十人ほどの人手を集めた田島は運転席に座り、リカは給油タンクの上によじ上って近付いてくる奴らを撃ち抜いていく。

給油車を動かすのは声を掛けられたSAT隊員三名とSST隊員一名、老婆九名に少女七名だ。

田島が「押してくれ」と叫べば、全員が給油車を押し始めた。

近い位置で銃を撃っていた者達は、彼等が何をしているのか分からないでいる。

 

「なにやってんだ?」

 

「さぁ?」

 

MP5A5短機関銃を撃っていたSAT隊員達は、互いに顔を合わせた後、射撃を再開する。

リカ達が乗る給油車の周りには奴らが大量に集まってくる。

タンクの上に乗っている彼女が銃を撃っている所為なのだろう。

押しながらMP5kを片手で撃っているSAT隊員も居る。

 

「充分に集まってきてるな・・・良し、みんなもう良いぞ!後は俺が爆薬をセットするまで援護してくれ!」

 

運転席から降りた田島は爆弾を取り出し、給油車の下部に設置しようとするが、M3A1短機関銃を撃っていた少女の後ろから複数の奴らが来ているの見て、直ぐに助けようと89式小銃を向けるが、弾倉の中身が肝心なときに無かった。

 

「クソッ、後ろだ!」

 

SIGP226自動拳銃を取り出して撃つ。

何体かの奴らは倒すことが出来たが、まだ奴らは残っている。

彼は、少女の後ろに居る奴らを体当たりで弾き飛ばした後、再び発砲して少女の退路を作った。

 

「早く行け!」

 

「あ、は、はい!」

 

田島が作った退路に向かった少女、しかし、彼は這いずってくる奴らに気付かず、左足を噛まれてしまった。

 

「ぐああああ!!こいつ!」

 

空かさず手に持っていた自動拳銃で這いずってきた奴らの頭を撃ち抜く。

田島の声で、彼が噛まれた事を知ったリカは、タンクから降り、周囲にいた奴らの頭を次々と撃ち抜き、彼に寄り添う。

 

「そんな・・・嘘でしょう・・・!?」

 

「グッ、残念だけどこれは嘘じゃない・・・俺はもう駄目だ・・・」

 

足を噛まれた田島は、笑みを浮かべながら爆弾を給油車の下部に設置し始める。

それを残ったメンバーがカバーしつつ、彼が設置を終えるまで目に写った奴らを片付けていく。

 

「設置完了だ!みんな離れてくれ!」

 

「分かった、離れるぞ!」

 

SATとSSTの隊員達は給油車から離れていき、老婆と少女達も銃を撃ちながら後退する。

 

「リカ、お前も離れないと奴らに噛まれちまうぜ・・・」

 

「・・・・・・・・」

 

歯を食いしばりながら、リカは田島が助けられない事を悔しがっていた。

彼の89式小銃と弾倉を持って、その場を立ち去ろうと努力したが、目から涙が溢れる。

近付いてきた奴らを全て葬った後、彼女は給油車から走って離れた。

リカが離れるのを確認した田島は、起爆ボタンを押して、周辺から集まってきた奴ら諸共自爆した。

周囲にいた奴らを焼き払う炎を見ていたリカは、仲間達の為に自爆した田島を敬礼で見送った。

他のSATやSSTの隊員達も彼の勇姿に敬礼する。

彼に助けられた少女が敬礼した後、他のワルキューレの拠点防衛大隊の兵士達も敬礼、田島の勇姿を称えた。

その後はワルキューレのP-47サンダーボルトを中心とした航空爆撃機が空から来襲し、対地攻撃で奴らを一掃した後、何処かへ去っていった。

奴らが一掃された滑走路から、戦乙女の絵が描かれた大型輸送機が着陸してきた。

空港防衛に当たっていたワルキューレの拠点防衛専門連隊は安心感を抱き、大型輸送機から降りてくる第三世代戦車や装甲車、輸送トラックと兵士達を出迎える。

海を見れば、駆逐艦が三隻に増えて戻ってきた。

しかし、避難民救出は行われてはいない。

避難民は輸送機に群がるが、自動小銃を持った重装備兵に止められ、空港内の建造物に戻されて行く。

そんな慌ただしくなった空港を、リカはただじっと眺めるだけであった。

一方、モールは不穏な空気に包まれていた。

パニックを起こしたあさみを説得しているコータであったが、自分達に頼り切っているモールの避難民達を見て、ここから脱出しようと考えていた。

 

「そろそろ、潮時かな・・・」

 

孝が言った後、腕組みをしていた沙耶がそれに答える。

 

「そうね・・・居ればいたで、ここの先客達は私達に頼ってくるし。いい加減に出て行かないとやばそうよね」

 

丁度その時、あさみの説得を終えたコータが彼等に近付いてきた。

 

「はぁ~、終わった」

 

「どうだ、平野君。彼女は落ち着いたのか?」

 

疲れた表情を見せるコータに、冴子はあさみの状態を問う。

 

「何とか落ち着きましたよ。それと、高城さん。あさみさんを連れて行っても宜しいですかね・・・?」

 

この問いに、沙耶は溜息を付いて良いと答えた。

 

「はぁ・・・今度はドジッ娘に婦警・・・良いわよ。取り敢えずあんたが面倒見なさいよ」

 

「ありがとうございます!」

 

腕組みをしていた沙耶に、コータは頭を下げて礼を言う。

鞠川と一緒にいたありすは、新しい仲間が増えて喜んでいる。

 

「鞠川ちゃん、また新しい仲間が出来たね~」

 

「うん♪今度は婦警さんか、なんだかアニメみたいね~」

 

隣に居た鞠川も、新しい仲間に喜んでいるようだ。

そんな新しい仲間が出来た彼等に、マイヤーがやって来る。

 

「随分と楽しそうじゃないか。それと先程耳に入れたのだが、ここ出るそうじゃないか」

 

マイヤーの問いに、孝は答える。

 

「はい、準備ができ次第出て行くつもりです。出来れば拠点にしたかったのですが・・・」

 

「良いさ、彼女をサポートできなかった我々が悪い。それと我々も出て行くつもりだ、出て行こうにも行き先が無くてな、出来れば君達と同行させて貰えないか?」

 

この言葉に沙耶とコータが、孝に耳打ちでマイヤー達を進める。

 

「あんだけ歴史上の人物で、強いのがいっぱい居るんだから乗った方が良いじゃないの?」

 

「高城さんの言うとおりだよ。あの人達と協力してもらえば、小室と宮本の両親なんて見付かるし、安全な場所だって・・・」

 

「そうだな・・・是非歓迎します」

 

孝とマイヤーはお互い握手する。

これを知ったありすはかなり大喜びしていた。

そしてモールの外では、新たな仲間達を引き入れた孝達の危機的な動きがあった。

FN P90を持った黒ずくめの少数の集団と、迷彩服と最新装備を纏った少年少女がモールへと向かっている。

周辺にいた奴らはモール内へと入っていき、出入り口に建てられていたバリケードに群がり、中に入ろうとしていた。

もうじきモールも地獄と化す。




次回は襲撃回です。

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