学園黙示録 ゲンブンオブザデット   作:ダス・ライヒ

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装備を取り戻せ!

「なっ!何をするだァーーーーーッ、ゆるさんッ!!」

 

セルベリアを押し倒して、整った鼻先に銃口を突き付けるイムカに、怒りを表すバウアー。

愛らしい声で叫んでいる為に、大した迫力もないが。

 

「お前ぇ・・・!何故ここに居る!?」

 

殺意に満ちた表情で、セルベリアに問い掛けるイムカだが、銃口を向けている彼女の表情は至って冷静だった。

沙耶と他の者達は驚いている。

 

「あ、あんた等・・・会った早々仲間割れなんてそんなに仲が悪いの・・・!?」

 

「引き金を引けば私を殺せるだろうが、次は貴様が死ぬぞ」

 

告げられたイムカは、後頭部から伝わる堅い感触に気付いた。

そこには、後頭部にワルサーP38を向けるシュタイナーの姿があった。

ローバックも拳銃を奪おうとしたが、ミーナにP7自動拳銃を向けられている事に気付き、手を引く。

 

「動かないで。武器を奪おうとした瞬間、貴方を射殺します」

 

「ちっ、お前等もドイツ野郎の手下かよ!」

 

舌打ちしながらローバックは手を挙げる。

BJの方は、全員が持っている武器を見渡しており、いつ行動を起こすか分からない。

このままでは「ここで仲間割れを起こして、銃撃戦となり、その音を聞き付けた奴らに全員が殺されてしまう」と、察した孝は口を開いた。

 

「仲間割れなんて今はしてる場合じゃないかと思います」

 

彼が言ったことにBJは納得、その後、ローバックが便乗するように言う。

 

「確かに、今はこんな事をしても何の意味もない。ただ歩く死体の仲間入りをしているような物だ」

 

「その通り。この小僧の言うとおり、ここで殺し合いをしても何の意味もない。そう言うことだろ?坊主」

 

「は、はい。その通りです!」

 

孝はローバックが言ったことが自分の言いたい事と全く同じである為、少し動揺するが、何とか持ち直す。

ここでの復讐は無意味な行動と判断したイムカも、銃口をセルベリアから離し、リネットにFNハイパワーを返した。

 

「返す」

 

「あ、ありがとう・・・」

 

「ここでの復讐は得策とは言えない。全員を危険に晒さすだけだ・・・生き残るには協力するしかない」

 

そう言った後にセルベリアに手を出して立たせた。

シュタイナーも拳銃を腰のガンホルスターに戻し、これからどうするのかを孝に問う。

 

「丸く収まったところだが、新顔に渡す武器は無いだろう。それに我々はそれなりの音を立ててしまった。死に損ない共が仲間に入れようと集まってくるだろう・・・」

 

彼が言った後に、ドアの窓から見える奴らの影を数体見つけた。

しかも真っ直ぐと、休憩室に向かってくる。

 

「どうするんだ、リーダーさん。新参の俺達は手ぶらだぜ。素手で歩く死体と戦えってのか?」

 

孝に向かって、ローバックが告げた。

次にBJが口を開く。

 

「装備はみんなポリ公に取られちまったんだ。ここは強行突破と行くか?坊主」

 

「どうするのよ、孝」

 

BJが言った後に、麗に問われた孝は、強行突破を判断した。

 

「ここは突破しましょう!麗、押収品とか証拠品の保管庫とか知ってるか!?」

 

「えぇ、確か小さい頃に見せて貰った記憶が・・・」

 

「もう!ハッキリしなさいよ!」

 

ヒステリックに沙耶が言った後、麗は思い出した。

 

「そうだ!確か一階の東側にあったとおもうの!」

 

言ったことに、BJは早速行動を起こす。

 

「そうか!そこに俺達の装備があるんだな?そこのグラマラスなお嬢さん、今座っているパイプ椅子を貸してくれ!」

 

「えぇ・・・はい!」

 

鞠川からパイプ椅子を貰ったBJは、両手で持つ。

横からブルクハイトが、大丈夫なのかを問う。

 

「そんな武器で大丈夫なのか?」

 

「大丈夫だ、パイプ椅子でも人は殺せる」

 

「他の奴らはまともな奴を持ってるけどな」

 

ツッコミを入れるかのように、バルクホルンが言った。

他の三人を見れば、モップや角材などを武器にしており、BJだけがパイプ椅子だ。

今更武器を変えるのは恥ずかしいだけなので、そのままで戦うことにする。

 

「準備は整ったよ、小室!」

 

「よし、行くぞ!!」

 

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全員が応じた後、孝は勢い良くドアを開けて、目の前にいた奴らの頭をイサカM37のストックで叩き割る。

開けた先には数体の奴らが待ち受けていたが、お構いなしに麗と冴子が突っ込んで、一瞬で片付ける。

それを見ていたBJとローバックが感激の声を上げた。

 

「熟練の兵隊並みに動くな・・・!」

 

「M14に銃剣を付けた触手の嬢ちゃんと刀を持った大和撫子の嬢ちゃんはすげぇな!」

 

その二人の後ろから、アッシュとコワルスキーが声を掛ける。

 

「ショッピングモールからこんな感じだぜ!」

 

「怒らせると怖いぞ~!」

 

そのまま残りの奴らを鉄パイプやバールで倒す。

ドラムマガジンのルガーP08を持つ沙耶は、不慣れでありながらも、奴らの頭を撃ち抜いていく。

そしてBJとローバックに振り向き、告げる。

 

「言っとくけど、私は天才だからね!」

 

流石にその言葉に動揺を覚える二人であった。

それなりの重さがある自動小銃M1918A1BARを持つシャーロットは、単発(セミオート)射撃で確実にヘッドショットを決めていき、ローバックを驚かせる。

次にフランチェスカが、高い運動能力を生かして、奴らを蹴り倒し、イムカを驚愕させた。

武器を持たない鞠川とありすは、リネットに守られながら、先行する孝と麗の後へとついていく。

新参者のハインツは負けじと角材で奴らの頭部を次々と叩き割っていた。

ルリは銃身が短いSG553のセミオートにして周囲の奴らを片付けている。

 

「女子供に負けるわけにはいなかんな!」

 

孝達に負けじと、BJはパイプ椅子を振り回しながら奴らを退けた。

その次に、鞠川とありすが背後から奴らに襲われる。

 

「いけない!」

 

気付いたリネットは、ブレン・ガンを向けようとするが、狭い通路では取り回しが悪く、間に合わない。

直ぐにイムカはペリーヌのレイピアを奪い、鞠川とありすの元へ急ぐ。

 

「あれ?ちょっと、返しなさい!」

 

レイピアを取られたペリーヌは怒るが、イムカは無視して、鞠川とありすの後ろに居た奴らを手早く排除した。

 

「ありがとう~ツンツンな娘!」

 

「ありがとね、お姉ちゃん!」

 

「今は抱き付いている場合じゃない!」

 

二人に急に抱き付かれたイムカは、鞠川の大きな胸囲が身体に押し付けられている感触を覚えて、引き離そうとする。

次にペリーヌがやって来て、レイピアをイムカから強引に奪い返す。

 

「貴女ね!角材じゃ我慢できないからって、私の剣、ましてや人の武器を奪うとはなんてr」

 

「話は後!早く小室君達についていく!」

 

後ろからM4A1カービンを持ちながら来るアリシアに止められ、仕方なくペリーヌは孝と麗の後についていくことにする。

その後、イムカに向かって舌を出して挑発行為をした。

暫し奴らを倒しながら前に進んで行くと、ようやく押収品や証拠品が納められた保管庫が見えた。

 

「あれよ!あったわ!」

 

麗が指を差しながら保管庫があったと皆に告げた。

MP5FKを単発で撃っていたコータは、直ぐに保管庫のドアに近付き開けようとしたが、鍵でも掛かっているのかびくともしなかった。

 

「鍵が掛かってますよ!」

 

「俺に任せろ、暫く時間をくれないか?」

 

「分かりました。では針金を」

 

BJが保管庫のドアの鍵をピッキングで開けるので、コータは懐から針金を出して、それを彼に渡す。

 

「早く済ませてくださいよ!?」

 

「分かっている!そう焦らすな!」

 

孝がイサカM37を構えながら言った後、BJは返答しながら作業に取り掛かった。

感知魔法が使えるミーナは、直ぐに近付いてくる奴らの数を特定作業に入る。

 

「銃声の所為か、かなりの数が集まってくるわ。外部からも数体が入ってくる!」

 

「えぇー!?そんなに相手できないよ!おじさん早く開けてよ!」

 

「弱音を吐くな!それでもカールスラント軍人か!?ハルトマン大尉!!」

 

「煩いぞ!黙って死人を始末しろ!!」

 

ハルトマンとバルクホルンが余りにも煩い為か、ピッキング最中のBJに怒鳴られる。

数分したら、保管庫のドアの鍵が外れ、中に入れるようになった。

 

「開いたぞ!みんな早く入り込め!」

 

「死人の仲間入りになりたくなければ早く入れ!」

 

BJの知らせの後に、ブルクハイトが保管庫に入るよう急かす。

全員が保管庫に入った後、最後に入ったリエラが閉める。

数体ほどの奴らがドアに殺到し、暫くは耐えられそうもないと判断して、アッシュとコワルスキーがバリケードになるような物をドアの前に置いた。

 

「この感じ、学園の思い出すな」

 

「あぁ、そう言えばあの時と同じね」

 

冴子が言った後、沙耶が思い出したかのように、学園からの脱出前の職員室のことを思い出す。

 

「お二人さん、昔話をしている最中に悪いが」

 

ハインツが水を差すように、沙耶と冴子に話し掛ける。

二人は同じく学園にいた孝、麗、コータ、鞠川、ルリが話を聞いていない事に気付く。

 

「ここは本当に押収品や証拠品の保管庫か・・・!?」

 

「前に見せて貰った時は、こんな物無かったのに・・・」

 

「これが警察署の保管庫・・・?ランシールにあった武器庫と同じだ」

 

「まるで武器庫じゃないか・・・!」

 

保管庫の中を改めて見ると、そこには様々な小火器と兵器がなどがあり、武器庫と化していた。

差し詰めタイムスリップしたのか異世界から転移してきた物を、ここに勤務していた警官が回収していたのであろう。

新参者の四人は、自分の装備を探す。

 

「あった!ポリ公共が、慌てて逃げやがったようだな」

 

前まで東署に居た警官達の文句を言いながら、ローバックは自分のM1A1トンプソンやコルトM1911A1と各種長期任務用装備品を自分に装着し始めた。

最後に迷彩カバーを施したM1ヘルメットを被った後、コータに似合ってるかを問う。

 

「どうだ、決まってるか?坊主」

 

「似合ってますよ。とても!」

 

「ありがとう坊主。そう言えば、まだその他の奴らに名乗っていなかったな。俺はジャック・ローバックだ。合衆国海兵隊曹長、武装偵察部隊通称フォース・リーコンの所属だ」

 

海兵隊(マリーンズ)か・・・」

 

ローバックが所属している軍の名前を聞いたシュタイナーが小さく漏らす。

次に、M1トンプソンを肩に担いだBJが出てくる。

左手には、OSSの隊員が特殊作戦で用意られるISRBウェルロッドMkⅠ消音拳銃が握られている。

 

「貴様・・・その拳銃は・・・!?」

 

「この拳銃を持っていることが示すとおり、俺は工作員だ。お前達は信用できると判断して所属は言わないが、名前は教えてやろう。ウィリアム・J ・ブラコヴィッツだ、気軽にBJとでも呼んでくれ」

 

BJが名乗った後、シュタイナーはウェルロッド消音拳銃を見て、彼は工作員と直ぐに気付いた。

装備品を探していたハインツは自分の装備を見つけ、身体に装着していく。

43年型規格帽を鞄の中に入れ、42年型シュタールヘルムを被った後、kar98k小銃を右肩に掛け、首に7.92㎜弾の束を巻き、MG42汎用機関銃を担いで皆の前に姿を現す。

 

「申し遅れた、自分はドイツ国防軍陸軍第352歩兵師団所属のハインツ・ゼーフェロー伍長です。機関銃手をしております」

 

「イェェェェイィ!!」

 

「この軍オタは・・・!」

 

ハインツが名乗った後、コータは興奮し、沙耶はそれにツッコミを入れる。

自分の装備品を身に付けていたイムカの後ろから、フランチェスカは這い寄って、胸を鷲掴みする。

 

「な、何をする!?」

 

「うわぁ~胸無いぞ?こいつ」

 

「こらこら、あんまり言うな」

 

「そんな物、邪魔な物にしか過ぎない!」

 

シャーロットとフランチェスカが、イムカの胸のことに対して言うが、彼女が巨乳の女性陣に対してトンデモない事を発言した。

それを聞いていたありすが、鞠川に胸の事を聞く。

 

「先生~先生のおっぱいは邪魔なの?」

 

「ちょっと下が見えづらいけど、大丈夫よ」

 

全くイムカが言ったことが聞こえていないか、あえて無視したのか、鞠川は普通にありすの問いに答えている。

セルベリア、リエラ、麗、沙耶、リネットのダメージは大きかったらしいか、膝をついてショックを受けていた。

それをアリシアやバウアーが宥めている。

アッシュとコワルスキーは、イムカの発言に対して、話し合う。

 

「コワルスキーよ、あれは貧乳の戯言だな」

 

「その通りだな。HAHAHAHA」

 

笑いながらアッシュとコワルスキーが語っていたが、何処からか殺気を感じて黙り込む。

青いネームレス専用の戦闘服を着たイムカは、近くに置いてあった自作の愛用武器「ヴァール」を持った。

その異様な武器に、シャーロットが興味を示す。

 

「おい、なんだそのバズーカみたいな奴」

 

シャーロットが聞いた後に、フランチェスカも興味を示すようマジマジとイムカのヴァールを見ている。

 

「おっきいな武器・・・サーニャの持ってる奴に似てる・・・」

 

フランチェスカがヴァールを触りながら感心する。

 

「これか、これはライフルと対戦車火器の機能を持ち合わせた武器だ。白兵専用の剣も装着している。私自作の武器だ、故郷の狩猟具を参考にした」

 

「す、すげぇな・・・」

 

イムカが答えた後、シャーロットとフランチェスカは、ヴァールに対して驚きを隠せない。

最後にイムカが、シャーロットとフランチェスカと共に皆の前に姿を現した。

 

「これは、俺を襲ったときの・・・!」

 

「ちょっと懐かしいわね、イムカ」

 

面識があるBJは、最初にイムカと出会ったことを思い出し、戦友であったリエラは、懐かしの日々を思い出す。

 

「その通りだ、リエラ。しかし、かつて共に戦っていた私ではない。ヴァールはあの時から格段に強くなった。戦車付きの一個中隊を一人で相手に出来る。実力次第では味方の援護はいらない。私はイムカ、元の所属は言えない」

 

「あの時よりかなり強くなってるわね・・・」

 

「今戦ったら、危ういな・・・」

 

リエラはイムカのヴァールの性能強化と成長に関心を覚え、セルベリアは命の危機を覚える。

大きなヴァールに、冴子とエイリアスが「重くないのか」を聞く。

 

「少し聞くが、重くはないのか?」

 

「こんなの対戦車槍よりも重そうだぞ?」

 

「大丈夫だ、毎日丸太を抱えて鍛えている。問題はない」

 

イムカの答えに、全員が感心を覚える。

その後、保管庫の武器を拝借することにした。

 

「平野、この散弾銃、ポンプの部分が無いけど」

 

孝は見つけた散弾銃ベネリM4自動散弾銃をコータに見せた。

 

「あぁ、これ。イタリアの散弾銃メーカー、ベネリ社の軍用散弾銃だよ、アメリカ海兵隊に採用されてM1014として採用してるよ」

 

トカレフ自動拳銃を持っているコータの解説に感心した孝は、予備弾倉と共にベネリM4を取った。

イサカM37をどうするか迷っていたが、ブルクハイトに渡すことにした。

 

「散弾銃は最近使ったこともないが、貰っておくか」

 

一行は保管庫で、押収品の武器で装備を調える事にする。

それが終わり次第、彼等は署内の調査を再開するであった。


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