学園黙示録 ゲンブンオブザデット   作:ダス・ライヒ

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ケストナーの部隊は、西ドイツと東ドイツの装備混同。

ヨルギオスの部隊は、AKのクローン装備です。


反撃

圧倒的な強さを見せるルリとイムカの二人。

部隊本部に居るケストナーは、暫し唖然していたが、直ぐに我に返り、指示を飛ばす。

 

「な、何をしている!?早く攻撃しろ!戦闘ヘリ(ガンシップ)ハインドも投入しろ!左右から突撃した部隊はどうなってるか!?」

 

慌てふためくケストナー達を余所に、ルリとイムカは周りに居た兵士達を攻撃し始める。

 

「オワァ!」

 

「グオァ!」

 

ガスマスク越しから聞こえる断末魔を気にすることもなく、彼女達は作業を黙々と続ける。

毒ガスが薄くなったところで、警察署内に居た小室一行はようやく動けるようになり、双眼鏡から二人の活躍を見た。

 

「なんて奴らだ・・・!たった二人で二個中隊の歩兵部隊とやりあってるぜ!」

 

「そればかりじゃねぇ、戦闘機までと戦ってやがる!」

 

アッシュとコワルスキーは、唖然しており、シュタイナーは、左右から接近してくる部隊の存在に気付く。

 

「呑気に観戦している暇はなさそうだ、全員戦闘用意!!」

 

怒号を飛ばしたシュタイナーは、保管庫から持ち出したMPi-KMS72を手に取り、防戦に向かった。

効力が薄れて動けるようになった者達も、迎撃に向かう。

 

「反撃してきたぞ!毒ガス弾の散布を願う!」

 

警察署からの反撃から身を隠したG3A4を持った小隊長らしき兵士が、無線機を取って、再び毒ガス弾の投入を要請していたが、迫撃砲部隊はカールの奇襲で次々と潰されていた。

 

『狙撃兵だ!発射はガハッ!』

 

「クソッ、何処の何奴だ!?」

 

無線機を地面に投げ付けて、応戦し始めた。

RPG-7を持った兵士が警察署に向けて発射しようとしたが、カールに砲弾を狙撃され、周りを巻き込んで爆死する。

 

『狙撃です!やつら狙撃手を何処かに、ウワッ!』

 

「ど、どうなっとるのだ・・・!?こうもあっさり戦局を逆転されるなんて・・・?」

 

次々と起こる最悪な事態に、ケストナーは追い込まれていた。

一方、森林に潜んでいたカールは、狙撃モデルのスプリングフィールドM19103A4のボルトを引き、空薬莢を排出した後、ボルトを押して次弾を薬室に送り込む。

同じ場所からの狙撃は自分の存在をアピールするような物なので、少し移動した後、スコープを覗いて、旧ユーゴスラビアのAKS-74uのコピー品ツァスタバM92を持ちながら指示を出している指揮官の頭部に狙いを定め、周りの風速と距離を確認した後、引き金を引いた。

飛ばされた7.62㎜×63弾は、指揮官の脳を破壊しながら貫通し、隣でRPDで鎮圧射撃を行っていた兵士に当たって止まった。

次の地点に移動し、狙撃地点に着けば、弾丸を一つずつ入れていく。

再装填が終わった後、上空からルリを殺そうとしているYak(ヤク)3が来る距離に狙いを定め、タイミングを見計らう。

 

「到達時刻は8秒・・・左右とも風速は弱し。距離ともに標的の破壊に異常なし」

 

独り言で計算しながら、戦闘機が照準器に着く前に引き金を引いた。

通常狙撃兵は戦車や戦闘機や駆逐艦など相手にはしないが、追い込まれた場合は別だ。

弱点になりそうな部分を撃ってしまえば、いくら強力な兵器でもライフル弾で倒すことも出来るのだ。

真っ直ぐ飛んだ弾丸は機関部の排出口に命中、機体は空中で大破した。

 

『馬鹿な!何の攻撃も!?』

 

何機の戦闘機が警察署に攻撃を仕掛けたが、PTRS1941を構えていたアッシュに一機が狙撃されて撃破された。

 

「やったぜ!」

 

構えていたアッシュが、隣でMG34を担いでいたコワルスキーにハイタッチする。

 

「今度は俺の番だぜ!」

 

コワルスキーは、通り過ぎていくYak3の編隊に対空射撃を行い一機撃破に成功、次の戦闘機に攻撃するも、逃げられてしまう。

 

「逃がしちなったぞ!」

 

「旋回してくるぞ!挽肉にされちまう!」

 

急いで逃げる二人であったが、Kord重機関銃を持ったセルベリアが現れ、旋回して再び攻撃しようとした戦闘機の編隊に対空射撃を加え、全機撃破してしまった。

 

「「す、すげぇ・・・」」

 

セルベリアも、ルリとイムカに負けていないと思うアッシュとコワルスキーであった。

右から攻撃してきた部隊は、シュタイナー達の銃撃に寄って抑え付けられており、M46パットン中戦車は保管庫にあった使い捨てのM72LAW対戦車ランチャーで撃破された。

 

「せ、戦車が撃破されちまったぞ!」

 

「クソったれ!RPGをぶち込・・・ガッ!?」

 

退却を指示しようとしていた指揮官は、シュタイナーの射撃で頭部を撃たれて死亡した。

 

「指揮官と熟練の兵士を優先的に始末しろ。連中の士気を削る!」

 

弾倉を変えながら、シュタイナーは指示を出す。

 

「了解、お前等!動きの良い奴を狙っていけ!」

 

「敵兵はどいつもこいつも動きが良いぞ!?誰を狙えば良いか分からん!」

 

「良いから指示を出している奴と対物火器を所持した奴を殺していけ!」

 

ローバックがどれを狙って良いか分からないと告げたので、ブルクハイトが怒鳴りつけるように答え、パンツァーファウスト44を持った兵士をG3A4のフルオートで排除した。

 

「子供が来るぞ!」

 

「撃ち殺せ、奴も化け物だ!」

 

左から警察署ごと潰そうとしていたM46パットン中戦車にルリが接近してきた為、キューボラに付けられたM2重機関銃で排除しようとしたが、スターリングMk7の銃撃で機関銃手が殺される。

 

「グハッ!」

 

「プレゼント!」

 

砲頭に上ったルリは、安全栓が抜かれた大量のミルズ手榴弾を開けぱっなしのキューボラに落としていったから、飛び降りた。

乗員達は直ぐに戦車を捨てて、脱出用のハッチを蹴り当てて逃げ出していく。

 

「助けてくれ~!」

 

ルリも向かってきた兵士を排除しながら、爆発しそうな戦車から離れた。

数秒もすれば戦車は大爆発を起こし、何名かの兵士が飛ばされた破片で死亡する。

機銃を撃ちながらケストナー部隊の全てのコンドル装甲車がイムカに突っ込んでいくが、あっさりと潰されていく。

 

「オワァ!」

 

二台ほど潰した所で、遮蔽物に身を隠したイムカだが、BA-64装甲車が彼女の後ろから襲ってきた。

 

「クッ、邪魔だ!!」

 

肩に銃弾を掠めたイムカは、ヴァールの対戦車弾頭でBA-64装甲車を撃破した。

燃え盛る車両から、火達磨となった乗員が飛び出してくる。

 

「熱い、熱い!助けてくれ~!」

 

「なんという恐ろしい女なのですか・・・!これは逃げた方が良さそうですね」

 

今も戦っているケストナーや自分の部下を放置して、ヨルギオスは自分一人で逃げようとしていた。

丁度その時、ケストナーが要請していたMi(ミル)-24Dハインド二機が現れた。

もちろんパイロットは全員男である。

 

「おっと、まだ勝敗は分からないようですね・・・!」

 

頭上を通過していくMi-24Dを見ながら、ヨルギオスは笑みを浮かべながら呟いた。

 

「シュタイナーさん!ハインドです!!」

 

「なに!?クソッ、まさか戦闘ヘリまで戦うことになるとは・・・!」

 

コータの知らせにシュタイナーの顔付きが変わる。

 

『こちらハボス中隊所属のハボス5とハボス6、現場に到着しました』

 

ケストナーは縋るように受話器を取った。

 

「お前達は私の救世主だ!助かったぞ!!味方ごとでも構わん、暴れ回る悪魔共と警察署にいるクソ共を吹っ飛ばせ!!」

 

「しかし味方ごとは・・・」

 

「煩いぞ!兎に角適当にぶっ放せ!!以上!」

 

部下の言葉に耳を貸さず、ケストナーは受話器を強引に戻す。

指示を受けたMi-24Dは、搭載機関とロケット砲を撃ち始めた。

標的はルリとイムカだが、パイロットは地上にいる味方の兵士諸共無差別に撃つ。

 

「み、味方だぞ!うぉわっ!!」

 

手を振って味方だと示す兵士であったが、ロケット攻撃で吹き飛ぶ。

一機のMi-24Dはホバリングをしながら搭載機銃はルリを捕捉し、凄まじい早さで12.7㎜弾が飛ばされる。

 

『なんてすばしっこい餓鬼だ、誘導ミサイルをケツにぶち込んでやれ!』

 

パイロットが、ガンナーの男に誘導ミサイルを使いよう指示した。

照準器を覗いて、ルリにロックオンしようとするが、中々狙いを付けられない。

 

『駄目だ、捕らえられない!もっと接近しろ!』

 

ガンナーは捕らえられないとパイロットに告げ、ルリを追うように指示する。

その指示に従い、パイロットはルリの追跡を始める。

もう一機のMi-24Dは、イムカを始末しようと搭載機銃で排除しようとしたが、中々捕らえきれない。

 

『クソっ、遮蔽物に逃げられた!』

 

『ロケットでぶっ飛ばせ!』

 

破壊されたコンドル装甲車の残骸に隠れたイムカは、対戦車弾頭を装填する。

その時、一個分隊程度の敵兵がイムカを見るなり、手に持つ銃で攻撃してきた。

 

「撃てぇ、撃ち殺せぃ!!」

 

「しまった!」

 

直ぐにヴァールを機銃に切り替え、こちらに向けて撃ってくる一団を撃った。

何発か身体を掠めたが、敵兵は排除することに成功した。

 

「あの空飛ぶ兵器は?がッ!?」

 

ロケット砲で残骸が爆発し、イムカが巻き込まれる込まれる形で吹っ飛ぶ。

身体を地面に叩きつけられたイムカは、血反吐を吐き、何とか立ち上がろうとする。

 

「負けない・・・!」

 

ヴァールを杖代わりにして立ち上がり、まだ戦おうとしていた。

そしてルリのロックオンに成功したMi-24Dのガンナーは、誘導ミサイルのボタンを押そうとした。

 

『誘導ミサイルをぶち込んでやるぜ!』

 

笑みを浮かべながらガンナーはスイッチを押そうとしていたが、その前にカールが誘導ミサイルを狙撃した。

 

『うわっ!?ミサイルが!』

 

『どうした?う、うわぁぁぁぁぁぁ!!』

 

搭載されていた誘導ミサイルが突然爆発を起こした為、爆風に呑まれたパイロット達は断末魔を上げる。

空中爆発を起こしたハインドを見て、ルリは一息つく。

 

「た、助かった・・・」

 

そんな彼女をヨルギオスは、手に持っているAMD65のサイトを覗き、狙いをルリに定めていた。

 

「ヒヒヒ・・・後ろががら空きですね・・・!それではお命を頂戴させていただきます・・・!」

 

自分の存在に気付かない少女に、ヨルギオスは何の躊躇いもなく引き金を引いた。

首を撃たれたルリは、血を吐いて、苦しみ出す。

笑みを浮かべながらヨルギオスは、苦しむルリに近付く。

 

「苦しそうですね。ヒヒヒ・・・では、トドメを・・・!?」

 

ルリがスターリングMk7を自分に向けていた事に驚きを隠せない。

この目でルリが苦しみながら死んだのを見ていたので、信じられない目付きをしている。

 

「まさか不死身だと・・・!?グァァァァァァァァ!!」

 

それがヨルギオスの最後の言葉となり、後は断末魔を上げながら死ぬまでルリに撃たれ続けた。

最後のハインドは、僚機が空中爆発を起こしたことに気付き、カール探索とイムカの始末の為、着陸して機内にいた歩兵部隊を下ろす。

 

『野郎共、この煙では確認できない!小娘とスナイパーを代わりに排除してこい!』

 

AKS-74uを持ったヘリボーン部隊の兵士達は、負傷したイムカとカールの探査を始める。

上空に戻ったハインドは、警察署で抵抗をしている小室一行を排除しようと向かった。

 

『俺達はサツの砦で抵抗している奴らを片付けてやるか』

 

地面に降り立った兵士達は、お互いの死角を補うようにイムカとカールを探し続ける。

 

「向こうで銃声が聞こえたぞ!」

 

一人の兵士が言った後、八名の兵士達はルリの居る場所へと向かった。

爆風の煙で視界が限られている中、イムカはヴァールを白兵専用に切り替え、後ろから分隊を襲う。

 

「後ろからあの餓鬼が!ギャッ!!」

 

「生きてたぞ!」

 

後衛の兵士がやられた後、手に持つカービンライフルでイムカを撃ち続けるが、盾に切り替えたヴァールの装甲で防がれる。

 

「なんだあの武器は!?一体何が・・・!」

 

恐れながらも引き金を引き続けるが、兵士の一人がカールに狙撃される。

 

「狙撃兵だ!散会・・・」

 

指示を出そうとした分隊長をカールは狙撃し、指揮官を失った兵士達は散り散りに逃げようとしたが、イムカに次々と倒されていく。

 

「うわっ!」

 

「フベェ!」

 

「うわぁ、に、逃げろ!」

 

ライフルを撃ちながら逃げようとしたが、機銃で全員始末された。

一方、警察署に爆撃しようとしていた最後のハインドだったが、思わぬ抵抗を受けた。

 

『なんで警察署にRPGがあるんだ!?』

 

『知らん、これでは接近できん!ロケットで吹き飛ばそう!』

 

距離を取ってロケット攻撃をしようとしたが、バルクホルンが投げた梱包爆弾でコントロールを失う。

 

『ウワァァァァ!!操縦系をやられた!コントロールができん!』

 

そのままケストナーが居る部隊本部に向かっていく。

 

「な、何ということだ・・・!?たかだか一個小隊分の戦力に、我が部隊が・・・!」

 

「退却しましょう!これ以上の我が部隊に戦闘力はありません!」

 

絶望するケストナーは、副官の声に耳を貸した後、退却の準備を始める。

 

「クゥ・・・その案に乗ろう・・・!全部隊退却だ!早くしろ!」

 

その指示で部下達も安心したのか、凄まじい早さで撤収作業を終えた。

警察署に攻撃を掛けていた歩兵部隊も退却し始める。

 

「敵が引いていく・・・?」

 

「助かった・・・」

 

BJは引いていく敵を見て、口を開き、コータは壁にもたれ掛かり、安心感に浸る。

逃げようとしたコンドル装甲車は、警察署から放たれたRPG-2の攻撃で横転し、乗員が車両を放置してそのまま逃げ出していく。

そしてケストナーの部隊本部に、コントロールを失ったMi-24Dが来た。

 

「うわぁ!!」

 

「なんたる様だ!!」

 

Mi-24Dはそのままケストナーの本部に墜落し、弾薬箱に命中して大爆発。

運良く生き延びてボロボロになったケストナーは、警察署に向けて怒りの声を上げた。

 

「覚えておれよ、異世界人共!必ず皆殺しにしてやるからな!!」

 

そう言った後、ケストナーは乗用車に乗り込み、敗走する残存部隊と共に去っていった。




次は黒騎士編でも書こうかな・・・?

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