職員室前にいたゾンビを全滅させた後、全員が自分の名を名乗り出す。
「鞠川校医は知っているな?3年A組毒島冴子だ」
「小室孝、2年B組」
「去年全国大会で優勝された毒島先輩ですよね、わたし槍術部の宮本麗です」
「あ、に、2年B組平野コータです」
「そこに軍服の子は?」
「知らない、階段を上がったらそこに居た」
「私ですか・・・?えっと・・・」
小室に質問された少女は首元の認識票を取り出したが、そこに刻まれているのは男性名だった。
仕方なく少女は自分の名を口にする。
「ルリです・・・」
「愛らしい容姿に愛らしい名か・・・」
毒島と呼ばれる女性はルリの容姿を見て納得したかのように頷く、そこにツインテールの少女が立ち上がり、ブツブツと喋り始めた。
「なにさ・・・そんなちんちくりんのコスプレ娘の言うことなんか信じて」
「なに言ってんだよ、高城」
「私はその気になれば誰にも負けないのよ!」
強がった発言の後、高城と呼ばれる少女は泣き崩れた。
それを毒島は彼女に近寄り、抱きしめる。
「もう充分だ、辛かっただろう・・・」
高城は少し泣きながらも自分の着ていた制服を見た。
「どうしよう・・・こんなに汚しちゃった・・・ママにクリーニング頼まないと・・・」
その後一同は職員室に入る。
「よし、こんな物か・・・?」
出入り口にバリケードを築き上げて、孝は額の汗を拭く。
「みんな息が上がっている。少しここで休憩しよう」
毒島が言った後、ルリは幾多もの戦闘で疲れ果てて、その場に座り込み、水筒の水を飲んでいる。
孝と平野は変わりなく、麗と毒島は一休みの感じで息を整えている。
鞠川の方は椅子に座り込み、机にベッタリと倒れていた。
平野は高城の姿が見えないことに気付いた。
水の音が鳴る方へ行ってみると、高城が洗面台で顔を洗っている。
先の額にドリルで顔に血を浴びたのでそれを洗っているのだろう、洗い終えた高城は眼鏡を掛けた、平野にとっては異様な光景だ。
「高城さん、視力が悪いんですか・・・?」
「普段コンタクトレンズだからずれるのよ・・・て、なに?」
「ツインテールに眼鏡っ娘・・・萌え・・・!」
叱られながらもこの眼鏡を掛けたツインテールの少女に萌える平野であった。
一息ついた所で毒島が口を開く。
「所で鞠川校医、全員乗せられる車なのか?」
その言葉に鞠川はショックを受けた。
「うぅ、コペンです・・・」
「その言葉からすると仕方がないな。バスはまだあるか?」
「は、まだ在ります!」
平野が窓から見える駐車場のバスを発見する。
「バスのキーはあるか?」
「はい、まだ在ります」
孝が鍵掛けにあるバスのキーを見せる。
「バスは良いけど、何処へ?」
鞠川の問いに孝は答える。
「家族の無事を確かめます。近い順にみんなの家を廻って、可能ならば一緒に連れて行って、その後は安全な場所を探してそこに逃げ込みます。ルリちゃんは・・・どうしようか・・・?」
孝はルリの方を見た、そのルリは首を横に振った後、口を開いた。
「私この辺に親戚も親友も居ません、と言うかこの地区は初めてです。迎えは、いつになるか分からないけど」
「そうか、じゃあ探す必要は無さそうだな・・・」
安心しきって孝は言う。
「安全な場所って、あるのかな・・・」
平野の発言に高城は答えた。
「在るに決まってるでしょ、警察も自衛隊も動いてるようだし、地震とか台風みたいに避難所とか・・・どうしたの?」
高城は麗の様子がおかしいことに気付いた。
「な、なによこれ・・・!?」
麗はテレビを見ながら絶望している。
そこへ一同の視線がテレビに向けられ、毒島はテレビのリモコンを手に取り、音量を上げる。
『各地で頻発する暴動に対し政府は緊急対策の検問を始めました。しかし自衛隊の出動に対し野党から反発が相次ぎ』
「暴動ってなんだよ!暴動って!?」
孝が怒りの声を上げる中、毒島はチャンネルを変える。
『米政府はこの暴動に対し、ホワイトハウスを放置。海上で待機している空母へと政府拠点を移転しました』
『ドイツでは武装親衛隊の軍服に身を纏った多数の過激派が無差別に人を襲っております。連邦政府は事態収拾の為に軍の出動を許可しました』
『地域住民の被害は拡大しつつ、あ!発砲です!警官隊が発砲し始めました!発砲した状況は分かりませんが・・・・・』
突然カメラが落ちて映像が一瞬止まったが、また映し出された。
『きゃ!いや、なに、嘘!?助け、きゃあああああああ!』
女性のキャスターの悲鳴が聞こえた後、画面にはしばらくお待ちくださいのテロップが映し出され、スタジオに変わる。
『現場で何か起こった様です・・・引き続きスタジオで』
孝がまた怒りの声を上げる。
「それだけかよ・・・!どうしてそれだけなんだよ!」
「パニックを恐れているのよ」
「今更・・・!?」
高城は孝に答える。
「今だからこそよ!恐怖は混乱を生み出し、やがて秩序の崩壊を招くわ。そしてどうしたら動く死体に立ち向かって言うの?」
この答えに孝は何も言えない、少しはマシな情報は無いかと毒島はチャンネルを変える。
『えー、現在のドイツ各地では武装親衛隊に扮したネオナチが各地で暴動を起こしています。既に死傷者は多数出ておりその数は計り知れません。現在、政府では治安部隊を送って対処してますが、未だ沈黙しておらず、ますます、事態が悪化しそうです。こう言った現象がアメリカやロシアでも起こっており、アメリカでは州軍、ロシアでは治安部隊を送って対処しております・・・・・・・』
これ以上は無駄と判断したのか毒島はテレビの電源を消した。
「信じられない・・・朝、ネットを覗いた時はいつも通りだったのに」
「たった数時間でこんな事に成るなんて・・・」
絶望感に満ちた麗は孝にしがみついた。
「ねぇ、そうでしょ。安全な場所が在るわよね・・・?きっといつも通りに・・・」
「あるわけないしー」
その高城の言葉に孝は怒鳴る。
「そんな言い方無いだろう!」
「パンデミックなのよ、仕方ないじゃない」
「パンデミックって・・・」
「感染爆発のことですか?」
「頭が悪そうな子にしては良い答えね」
高城はルリを見ながら言う、そして続ける。
「インフルエンザの様な物よ、まさしく1918年のスペイン風の様にね」
ルリはそのスペイン風と言う言葉に記録があったが、敢えて何も言わなかった。
「最近だと鳥インフルエンザがあるわ、スペイン風は6億人以上感染して、死者は確か、5000万人くらい?だったと思うわ」
「それだったら14世紀の黒死病に近いかも・・・」
「どうやって流行が終わったんだ?」
「いろいろ考えられるけど、人間死にすぎると終わりよ。感染する対象が居なくなるから」
「でも、死んだ奴ら動いているよ」
平野は外の窓を見ながら言う。
「これから暑くなるし、肉が腐って骨だけになって動かなくなるかも?」
鞠川が口を開く、毒島はそれに質問する。
「どの位で動かなくなるのだ?」
「夏なら二十日で在る程度一部が腐るわ、冬だともっと掛かるかも・・・・」
「腐るかどうか、分かったもんじゃ無いわよ」
異議があるのかまた口を動かす高城。
「どういう意味だよ?」
孝の質問に高城が答えようとしたがm代わりに鞠川が答える。
「普通死後10分後、死後硬直が起きて加速的に腐る。でも、それがあの・・・奴らには見られないから・・・」
「そう言う事よ。動く死体なんて医学の対象じゃないから、下手するといつまでも・・・」
「なんだか良く分からない話に成ってるです~」
ルリの言葉に毒島はいつまでも続くと判断し、中断するような発言をした。
「家族の無事を確認した後、小室君の言う通り何処か安全な場所に逃げ込むしか無いな。好き勝手に動いては生き残れん、ともかくチームだ、チームを組むのだ!」
この言葉に一同が納得し、話を止めて出入り口を塞いでいたバリケードを取り除き、職員室を出た。
出た先には3体かゾンビが待ち伏せていたが、ルリは難なく手に持つワルサーPPkで仕留める。
「最後に確認しておく。無理に戦う必要は無い、避けられるだけ避けろ転ばすだけでいい!」
「連中、音だけには敏感よ!それから普通のドアを破れるくらい腕力があるから掴まれたら喰われるわ、気をつけて!」
毒島と高城は一同に釘を刺す、だがしかし階段の方から少女の悲鳴が聞こえた。
「早速、大きな悲鳴を上げてますが?」
「生き残りは出来るだけ連れて行こう。行くぞ!」
こうして一同は悲鳴が上がった階段に向かった。
やっと書けたぜ!
次は脱出かな?
これはどうみても8月中には終わらないな・・・