学園黙示録 ゲンブンオブザデット   作:ダス・ライヒ

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裏切られる形で。

ガイコツの集団に行く手を阻まれたルリとユリ、狙いを頭に向けて撃つも効果無し。

 

「頭を撃っても死なない!?」

 

ユリが試しに光る心臓を撃つと、ガイコツはバラバラになった。

 

「あの光ってる心臓を撃てば!」

 

弱点が分かったルリはM67破片手榴弾の安全栓を抜いてから投げ、多数のガイコツを撃破、辺りにバラバラになった骨が散らばる。

心臓を中心に狙いを定め、一連の作業のように次々と片付けていき、全滅させた。

 

「これで終わりかな・・・?」

 

ルリは手に持つSG553の弾倉を新しい物に取り替え、辺りを警戒する。

 

「襲ってくる気配はない見たい」

 

周囲に以上はないと分かったユリは、ルリに伝えた後、市内の出入り口まで行き、空を見上げる。

夜は明けつつあり、不気味な霧も晴れつつあった。

だが、彼女達の試練はまだ終わらない。

地面からゾンビが次々と這い出てきて、魔法陣が浮かび上がり、ガイコツや自爆ゾンビが召還される。

 

「いっぱい出て来たよ!」

 

「ここを突破すれば・・・!」

 

小室一行との合流を急ぐルリは全力疾走でやって来る自爆ゾンビを先に狙い、周囲のゾンビを纏めて排除する。

ルリに続いてユリもSG551を撃ち始める。

続々とゾンビの死体が増えたりガイコツがバラバラになっていく中、MG42を撃ってくるマシンガンゾンビまで現れた。

銃弾がユリの左腕を掠め、激痛で射撃を止めてしまう。

 

「痛い、も~う!」

 

SG551は片手でも射撃が可能な為、マシンガンゾンビの頭に向けて撃つ。

その間にゾンビが何体か近付いてきたので、ルリはベネリM3に切り替えて手際よく片付けていく。

弾切れになれば、再装填を行わずにゾンビから拝借したスコップで次々と倒して、それから銃の再装填を行う。

何発かの銃弾でマシンガンゾンビが倒れた後、またゾンビの集団が地面から這い出てくる。

 

「また出て来た!」

 

何とか構えて撃つユリはゾンビの腰に付いていたM24柄付手榴弾を撃って爆発させ、周囲のゾンビを巻き込んで始末できたが、それでもゾンビは増えるばかりだ。

終いには複数のマシンガンゾンビが現れ、弾幕で右脚を負傷し、倒れ込む。

ルリはゾンビを近付けまいと奮闘するも、数が多すぎる上に弾幕が激しく、まともに近付けず、銃弾の前でルリも負傷してしまう。

片手でも射撃可能なSG553を構えてユリに近付いてくるゾンビを片付けるも、数が多すぎて守りきることも出来ない。

 

「(このまま終わりか・・・)」

 

そうルリが心の中で思った瞬間、機関銃の銃声や戦車の砲声が聞こえてきた。

小銃や短機関銃の銃声も聞こえ、頭が砕けたゾンビが次々と地面に倒れる。

マシンガンゾンビも戦車の砲撃で吹き飛び、二人を襲ってきたゾンビが全滅した。

倒れ込むルリの近くまでやって来たP-40戦闘服と女性用ズボンを着用し、イギリス兵の象徴的なMk2皿形ヘルメットを被った英陸軍歩兵装備な童顔の女性兵士がリーエンフィールドNo4Mk1の着剣された銃剣の刃先を顔に向ける。

周囲を見渡せば、同じ小銃にステン・ガン、ブレン・ガンなどの第二次世界大戦の英陸軍装備の軽歩兵が何人もいる。

 

「立ちなさい」

 

銃剣を向けられながら、ステンMk3を持った軽歩兵に立たされたルリは立ち上がり、衛生兵に抱えられているユリが見えた。

マシンガンゾンビを全滅させた戦車は五両のM3A5リー中戦車で、道を塞ぐ整列している。

その後ろには兵員輸送用のトラックやユニヴァーサルキャリアが数台ほど見え、中隊規模の軽歩兵部隊と分かる。

ハンビィーも数台ほど見え、AEK-971を持った防護服の集団も居り、ゾンビの死体を担ぎ、死体搬送用のトラックに載せている。

 

「何をしてるの?早く歩きなさい」

 

ステン・ガンを構える軽歩兵に急かされたルリは、装備を剥がされたまま、手を挙げてユニヴァーサルキャリアに向かう。

M3リーを見れば、子供の戦車兵がハッチから上半身を出して死体を担いでいる防護服の集団を珍しそうに見ている。

輸送車両を見張る歩哨は美少女の捕虜が珍しいのか、ルリに視線を向けていた。

銃を突き付けながら、ユニヴァーサルキャリアに乗せられたルリは目の前に座るベレー帽を被った士官がFNハイパワーを向けている事に驚く。

隣に銃剣付きのリーエンフィールドNo4Mk1を向けた戦乙女が座り、二名ほどの戦乙女が乗った後、ユニヴァーサルキャリアはエンジンを鳴らし出発した。

空を見上げれば朝になっており、上空をホーカーハリケーンやタイフーンが飛び回っている。

オープントップな車両に揺られるルリが外の様子を見れば、大戦時に使われていたイギリス連邦軍の様々な車両が列をなして道路の上でエンジンを鳴らしながら止まっていた。

その横を歩兵が列をなして徒歩で行軍する。

どうやら車列の真ん中のM3ハーフトラックがエンジントラブルを起こして、前に進むことが出来ずに渋滞になってるらしい。

証拠に工兵がエンジンを必死に直そうと努力している。

 

「目の前で渋滞が起きて師団本部に向かえません。ユズコ軽師団の本部に向かいます」

 

「そうして。それと何台かの護衛をこっちに」

 

運転手が告げて士官がサイドカーに乗った女性兵士に指示を出した。

行き先をユズコ軽師団の本部に変えたルリを乗せたユニヴァーサルキャリアは、二台のサイドカーを護衛に付けて向かった。

コメット巡航戦車を通り過ぎた後、ワルキューレの兵士が一人も見えない道路に入ったユニヴァーサルキャリア、茂みにリヒター達が待ち伏せている事も知らずに。

一方、茂みで待ち伏せていたリヒターは双眼鏡を覗いてルリを確認する。

 

「居た・・・あそこの少女だ」

 

リヒターは隣でステンMk6を握る大戦下のイギリスコマンド部隊SASの将校に告げる。

 

「あれだな、可愛らしい嬢ちゃんだ。ドイル、お前はあの娘はイングランド系かスコットランド系、ウェールズ系だと思うか?」

 

赤いベレー帽を被った将校は、ドイルと呼ばれるデリーズルカービンを持った下士官に問い掛ける。

 

「どう見てもギリシャ系だと思いますが・・・」

 

双眼鏡を見ながら答えるドイル、将校は溜息を付きながらウィンチェスターM1912に持ち替える。

民間使用のG3A3を持つリヒターは攻撃に出ると将校とドイルに告げた。

 

「私が援護射撃を掛ける。イングラム少佐とドイル軍曹は突撃してくれ」

 

「分かったフリッツ」

 

「少佐、それはいけませんよ」

 

M1A1トンプソンを構えたドイルはイングラムと呼ばれた自分の上官を注意した。

 

「分かっている。紳士として女と味方の装備を撃つのは気に食わないが、捕まっているお姫様の為だ。女王陛下、お許し下さい」

 

ドイルに答えた後、独り言を呟いて、ルリを乗せたユニヴァーサルキャリアの前に飛び出た。

前に武装した男が出て来た為に、オープントップな装甲車は停止し、サイドカーが前に出てドイルとイングラムを始末しようとしたが、茂みに潜んでいたリヒターが操縦者を撃つ。

操縦者を撃たれてコントロールを失ったサイドカーは横転し、トドメをドイルとイングラムが差す。

もう一台のサイドカーも、ドイルのM1A1トンプソンの連射で運転手と機関銃手が射殺されて運転手が居なくなったサイドカーは横転する。

ユニヴァーサルキャリアの機関銃手は二人を蜂の巣にしようと安全装置を外したが、M1A1トンプソンを単発に切り替えたドイルに撃たれて沈黙、装甲車から降りた二人の戦乙女はイングラムの散弾銃によって同時に射殺された。

士官はFNハイパワーを二人に向けて発砲してくるが、呆気なくイングラムに射殺され、運転手はドイルに殺される。

ルリを人質に取ろうと小銃を持つ戦乙女がエンフィールドNo2を取り出して、彼女の頭に突き付けようとしたがイングラムの方が早く、彼が取り出したウェブリーリボルバーMk6で頭を撃たれて死んだ。

 

「クリア!」

 

「クリア!敵影無し!」

 

「流石はSASだ。手際が早い、総統閣下(マインフューラー)が恐れるわけだ」

 

「だろ?さぁ、立つんだ嬢ちゃん」

 

ルリに手を伸ばしたイングラムは、ルリがその手を掴んだのを確認した後、彼女を装甲車から降ろす。

自分も降りた後、ドイルも誘って自己紹介を始める

 

「おじさんはジェラルド・イングラムでイングランド人なんだ、よろしく嬢ちゃん。そしてこいつが」

 

「自分で名乗りますよ。自分はアイルランド連合王国陸軍、第1SAS連隊所属、ジェームズ・ドイル軍曹です。宜しくお願いします、お嬢さん」

 

ドイルは敬礼しながら名乗り、自分も自己紹介を始めた。

 

「ルリです。姓名は言えないけど・・・よろしく」

 

「姓名を名乗らないとは、謎だな!宜しく頼むよ、ルリちゃん」

 

お互いに握手をするルリとイングラム、リヒターが声を掛けた。

 

「そろそろ出発しなければ、近くの戦乙女が確認に来る」

 

「そうだな。少し揺れるから我慢してくれよ」

 

イングラムは笑顔でルリに告げ、自分達が乗ってきたジープに案内する。

 

「これが馬車だ。さぁ、ドイル。エンジンを掛けるんだ」

 

言われたとおりドイルはSAS仕様のウィリージープのエンジンを掛け、全員が乗ったのを確認した後、アクセルを踏んで元来た道を戻ろうとした。

だが、目の前からM3リー中戦車が現れ、行く手を塞ぐ。

 

「前方に敵戦車!M3リー中戦車です!」

 

「植民地人の輸入品か!」

 

「参ったな、こちらには対戦車装備が無い」

 

「呑気に言ってる場合ですか!揺れますから捕まってください!」

 

ハンドルを切って、M3リー中戦車の攻撃を交わす。

目の前から一体の奴らが出て来たが、M3リー中戦車の75㎜砲の徹甲弾でバラバラになる。

 

「榴弾だったら俺達死んでたぞ」

 

「そのようだな」

 

「この二人は!」

 

ドイルがリヒターとイングラムのやりとりに呆れながら、ジグザグに動いた。

機関銃を撃ってきた為、風除けガラスが割れる。

 

「風除けは倒しておけ!」

 

「無茶言うな!」

 

屈んでいるイングラムが注意すれば、頭を下げながら運転するドイルが敬語を忘れてツッコミを入れた。

その時、目の前からバウアー達のティーガーⅡとパンターG型、ティーガーⅠが見えた。

 

「うわぁぁぁ!ロイヤルタイガーだ!!」

 

「ロイヤルタイガーだと!?うわっ、パンターとタイガーも居るぞ!避けろ!!」

 

「アレは味方かもしれんぞ」

 

リヒターが言ったことが耳に入ってなかったのか、ドイルはハンドルを右に切り、道路を外れた。

彼等を追っていたM3リーは二門もある砲を撃ったが、ティーガーⅡの前面装甲を貫ける筈も無く、あっさりとヴィットマンのティーガーの砲撃で撃破された。

破壊されたM3リーから少女の戦車兵が出て来て、ドイルとルリが撃とうとしたが、イングラムに止められた。

 

「撃つな!逃がしてやれ」

 

バウアー達との偶然にも接触できたルリ達、ティーガーⅡからバウアーが降りてきて、リヒターと握手する。

彼等のやりとりを見ていたイングラムは、同じくやりとりを見ているイーディ達とSTG達の格好を見て、ルリになんなのかを問う。

 

「嬢ちゃん、あそこに居る奴らは何処の国の軍隊だ?」

 

「知りません」

 

手早く交渉を済ませたリヒターが帰ってきて、待っているルリ達に告げた。

 

「彼等も我々の一団に加わる事となった。早速案内しなければ、彼等は弾薬が不足している」

 

早速バウアー達を案内する事にしたリヒター達は、新たに加わった彼等に手伝って貰ってSASジープを道路に戻し、案内を開始した。




バウアー達と合流しました。

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