Tales of Grasces f ~守るために殺す少女~   作:白黒狼

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長い間お待たせ致しました。
執筆用の新しいデータを作りましたので、執筆を再開します。
お待ち頂いた皆様に心からの感謝を……!!


ありえない邂逅

速く、もっと速く。

地面を、木の幹を、枝を、全てを足場に街道をひた走る。

今の私は一体どんな顔をしているのだろうか。怒りに歪んでいるのか、それとも冷酷な無表情なのか。そんなどうでもいいような考えとは裏腹に体は動く。ひたすらに駆け、立ちはだかる障害の先に目的の人物を見つける。

 

「フレデリックさん!!」

 

私の叫びと、奴らが振り返るのは同時だった。縛られたフレデリックさんもこちらを見て驚愕している。見た感じ彼に外傷はなし。ただ拘束されているだけだと判断し、最初の狙いをフレデリックさんの両側で縄を握る兵士二人に定める。

周りの兵士達が次々と武器を構えるのを視界に入れつつ、袖の内側に仕込んでいた投擲用ナイフのホルダーを指を動かして二本分だけ外す。手の平へと滑り落ちてくる両刃のナイフを掴み、腕を振り上げつつ一本を投擲。続けて振り下ろしながら二本目を投擲。放たれたナイフは寸分違わずフレデリックさんを拘束していた兵士二人の頭部に命中した。

 

「て、敵襲ーーーがはぁ!?」

 

先頭のフェンデル兵の一人が我に返って襲撃を告げる叫びをあげるが、言い終わる前に私の蹴りを受けてその場に崩れ落ちる。間髪入れずにその場を離脱し、次のターゲットへと向かう。

どうやら敵はライフルを持った者が多く、接近戦用の武装は少ないようだ。ライフルの先端に銃剣が装着されているが懐に入ってしまえばこちらのものだ。

七夜の体術を使う私にとって彼等の行動は遅すぎた。彼等が銃を構える間に隊列の中へと突っ込んで銃撃による相打ちのリスクを高めさせる。ほんの一瞬の迷いが行動を遅れさせ、私はそれを最大限に利用する。

 

「……斬る」

 

一番近かった兵士のライフルの〝死〟を視て半ばから断ち切った。同時に呆然とした顔面に回し蹴りを叩き込む。白目を向いて倒れる兵士を踏み台に空中に飛び上がり、同時に輝術の詠唱に入る。

 

「走れ疾風、エアスラスト」

 

詠唱の終了と同時に私の真下に風で作られた刃が無数に現れ、四方八方へと弾け飛ぶ。本来は敵を囲んで斬り刻む術なのだが、今回は敢えて敵の隊列の中心に発生させ、風圧で兵士達を大きく吹き飛ばした。同時に私はその勢いを利用してフレデリックさんの目の前に着地すると、彼を隠すように身構える。

吹き飛ばされた兵士達の中で意識が残っていた二人が起き上がり、臨戦態勢となる。お互いに睨み合っていると、私が駆けてきた道から数人の人影がやってきた。ラントからやって来た援軍だろう。その中にはシェリアの姿もあった。

 

「おじいちゃん!!姉さん!!」

 

「フレデリック、無事か!?」

 

シェリアの隣には白い服を着た赤混じりの茶髪の青年の姿があった。姿は成長しているが領主邸の絵画に描かれた少年の面影があり、更にはフレデリックさんを知っているとなれば彼がアスベル君なのだろう。

ラントからの援軍と挟み撃ちの形になり、焦るフェンデルの兵士達。位置的には私とシェリア達に挟まれた形になるのだから焦るのも無理はない。

まぁ、私にはフレデリックさんを捕まえたこいつらを許す気はない。すぐさま背後に回って蹴りを放ち気絶させた。

 

「くっ……仕方ない、アヴァクームを出せ!」

 

奥にいた隊長らしき人物の声が合図となり道の奥から大型の兵器が現れた。

 

「フェンデル軍の兵器だ!」

 

「フェンデルはあんな物まで持ち込んでいるのか!?」

 

見た目は4本足の戦車だが前方に二本の腕が付いている。砲撃だけではなく戦車の弱点である主砲射角内の至近距離での戦闘にも対抗できるようにしてある。

すぐさまフレデリックさんを連れてシェリアの元へ移動した。

 

「シェリア、フレデリックさんをお願い。あの戦車は私の〝眼〟を使わなきゃ厳しい」

 

「姉さん、おじいちゃんを助けてくれてありがとう!」

 

「俺からも礼を言わせてくれ。フレデリックを助けてくれてありがとう」

 

シェリアとアスベル君からお礼を言われたが、正直なところ今の状況はかなり不利だ。すぐさま行動しなければならない。

 

「貴方はアスベル君ですね?詳しい話は後にしましょう。先ずはこの兵器を片付けます」

 

「なら、俺たちが囮となって裏山へ誘導しよう。あそこに誘導すればフレデリック達が逃げる時間は稼げる筈だ。それに、崖から突き落とせば破壊できるかもしれない」

 

「決まりね。シェリア、フレデリックさんを……」

 

「ううん、私も行くわ」

 

「シェリア?」

 

「もう、置いていかれるだけの私じゃない。役に立ってみせるわ」

 

「……シェリア」

 

「……いいわ、シェリアも来て。貴女の光の力はとても頼りになるから」

 

「……ッ、はい!」

 

袖口からナイフを一本取り出すとアヴァクームに投げつける。当然〝眼〟も使っていないナイフがアヴァクームを貫ける筈もなく弾かれて地に落ちる。〝眼〟を使っても良かったが、ここは人が多すぎる。アレの異常さは見せびらかす様なものではない。

今ので標的を私に絞ったのか起動音が大きくなり、私にカメラが向く。

 

「フレデリックさん、他の皆さんと撤退を」

 

「わかりました。アスベル様、ヒトハ様、シェリアもお気をつけて」

 

街に撤退していくフレデリックさん達を見送り、同時に裏山へ駆ける。背後にアスベル君とシェリアがついてきているのを確認しつアヴァクームを誘導する。

裏山の道は思ったよりも広く、できれば山道の途中で崖下まで転落してくれればという期待はしない方がよさそうだ。

 

途中にある湧き水で喉を潤し、最後の準備をする。

投げナイフは残り十本。この四年間ですっかり手に馴染んだアストンさんのナイフも刃毀れ無く問題なし。アスベル君とシェリアも準備は整っている様で、視線で互いに頷き最後の坂道を登りきる。

木々の隙間を抜けると視界が一気に広くなり花畑が目の前に広がった。

私が、この世界に来て最初に降り立った場所。

しかし、今はそんな余韻に浸っている場合ではない。すぐさま二人に指示を出して散会する。広い場所なら固まるより散会した方が敵の不意をつきやすい。

 

「こっちだ、かかってこい!!」

 

アスベル君が挑発して戦車の一台を崖まで誘導し、アームを伸ばしてきた瞬間に真横に跳んで回避する。から振ったアームの勢いのままアヴァクームは崖の下へと落下していった。

 

「よし、やったぞ!!」

 

作戦がうまくいって安心したアスベル君の背後にもう一台のアヴァクームが迫っていた。咄嗟に彼の手を引いて後ろに下げる。

 

「アスベル君、危ない!!」

 

「しまった……!」

 

アスベル君に攻撃が当たらずに済んだものの、勢いのまま下がった私達は崖のすぐ側まで追い詰められていた。

 

「そんな……!」

 

シェリアが弱々しく呟いたのを聞き、流石に出し惜しみをしている場合ではないと〝眼〟を使おうとしたところにアヴァクームが砲弾を放ってきた。

 

「アスベル君、シェリア、伏せて!!」

 

「うわあああ!?」

 

「きゃあああ!?」

 

強烈な爆音と衝撃にアスベル君とシェリアが吹き飛ばされた。私はなんとか体勢を立て直したけれど、二人は衝撃によって上手く動けないのかフラついている。

どうする、敵は四体。いくら直死の魔眼と七夜の体術があっても一瞬で全ての敵を殺すのは無理だ。精々二体殺したあたりでアスベル君とシェリアが狙われる。

二人を崖の下に落とす?いや、ダメだ。戦闘経験があるアスベル君なら受け身のとり方もわかるだろうがシェリアが耐えられない可能性が高い。

 

「くそ……また俺は……何も守れないで終わるのか?」

 

私の背後で倒れていたアスベル君が呟いたのが聞こえた。同時に強い力も。アスベル君の気持ちに応えるかの様に徐々に強くなっていく。

 

「……これは」

 

よく見ればシェリアからも光が徐々に溢れ出している。それは彼女が光の力を使う時に発する感覚に似ていた。

 

「そんなのは……嫌だ!!」

 

アスベル君の叫びと同時に二人の体から光が溢れ出してアヴァクームの砲撃を弾き飛ばした。

その光は私達の前に集まると、徐々に人の形へと変わっていく。その姿は14歳程の可愛らしい少女の姿になった。薄紫の髪をツインテールにした少女は一瞬強い光を発したかと思うと四体いたうちの三体のアヴァクームを衝撃で吹き飛ばした。

 

「あれは……ッ」

 

「ソフィ!?」

 

二人の声に反応するかの様に瞼を開けた少女は少しだけ浮いた体を地面に落とすと、残ったアヴァクームに視線を向けた。敵も少女をターゲットにしたのか警戒しながら近付いてくる。

 

「まさか、一人で立ち向かうつもり!?」

 

「アスベル君、シェリア!!」

 

「助けるぞ!!」

 

アームを伸ばして殴りつけてくるアヴァクームの攻撃を少女がバックステップで回避する。追撃しようとするアームに袖口から取り出した投げナイフを投げた。直死を発動しているので抵抗なく貫通しアームの片方を損傷させる。当たりどころが良く内部機構を破壊できたのかアームは完全に動かなくなった。

 

「一閃!!」

 

アスベル君が追撃で剣を抜刀しアヴァクームに斬り掛かるが、硬い装甲に弾かれてダメージはあまり無いようだ。

 

「なら、これならどうだ!!……雷斬衝!!」

 

振り抜いた剣を返して振り下ろすと同時に彼の手から光が溢れ出し、雷となってアヴァクームへと叩きつけられた。やはり機械ということもあり雷とは相性が悪いのだろう。動きが鈍くなり明らかに標準がズレているのがわかる。

その隙を逃さないように一瞬で近付き脚部のパーツの接合部分を直死で断ち切る。すぐさまバランスを崩した機体の背後にあるタンクへと投げナイフを投げつけた。恐らく燃料が入っているであろう場所だ。そこを破壊できればこいつを止められるかもしれない。

 

「シェリア、ナイフが刺さった場所を狙って!!」

 

「わかったわ……この名を持ちて裁け!リリジャス!」

 

タンクの位置に落雷が発生し、衝撃でタンクが大きく凹む。そこへ追撃する様に少女が大きく飛び上がって蹴りを放った。

 

「鷹爪襲撃!!」

 

タンクが更に大きく凹み軋む音がした。もう少しで破壊できそうだ。少女が流れる様な動きで今度は手甲を付けた腕で殴りかかる。

 

「双撞掌底破!!」

 

ついに限界を超えた装甲に裂け目ができた。しかし、動きが回復したアヴァクームが激しく暴れ出し、少女を振り落としてしまう。少女は空中で体勢を立て直し軽やかに着地した。どうやら身体能力は高いらしい。

その少女の横をすり抜けてアスベル君が再び敵へと向かっていく。

 

「これで止めだ!!」

 

残ったアームで殴りかかるアヴァクームの攻撃を飛び越え、真下に突き刺す形で剣を構えると、そのままタンクの場所まで落下した。

 

「崩雷殺!!」

 

タンクの裂け目に剣を突き刺し、同時に雷の力を発生させる。その衝撃で限界を迎えたのだろう。アスベル君が離脱すると同時にタンクが爆発し、アヴァクームは完全に沈黙した。

 

特に怪我をした者もおらず、無事に戦闘を終えられたことに安堵した。心の中で安堵の息を吐きながら、私は少女の姿を見て固まっている二人の元へと歩みを進めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

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