Fate/Grand Order -Heavenly Holy Grail-   作:Y-SSK

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ブレイドとドライバーの関係ってサーヴァントとマスターのそれに似てる……似てない?


プロローグ -事の発端-

「新たな特異点が見つかった?」

 

「そんな、またですか……」

 

 

 人理継続保証機関フィニス・カルデア。

 天高く聳える雪山の地下深くに作られた工房、その一室で二人の少女――――藤丸立夏(ふじまるりつか)とマシュ・キリエライトは、その眼に不安の感情を浮かべながら言葉を零した。

 

 一方で、二人の前に立つ火急の知らせを告げた美麗な女性――――カルデア所長代理のレオナルド・ダ・ヴィンチは、難しい顔をしたまま二人を見つめている。普段から『万能の人』を名乗り、事実としてあらゆる分野で天賦の才を発揮する彼女がこのような表情をするのはそうあることではない。引いてはそれほどまでに深刻、もしくは困難な問題であるということでもあり、それを察した立夏とマシュの表情もますます穏やかなものではなくなった。

 

 

 ()()()()()()()大事件、魔神王ゲーティアによって引き起こされた人理焼却。

 その未曾有に危機に際し、立夏は人類最後のマスターとして、マシュはその相棒として、数多の英雄(サーヴァント)達との長い旅路の末に焼き払われた人理を修復することに成功。更には魔神王の打倒をも成し遂げた。

 

 しかし、それで全てが解決したわけではない。逃げ延びた魔神王の残党が再び人理焼却を引き起こさんと、未だ何処かに息を潜めている。来るべき戦いに備えるため、両名はサーヴァント達との交流を深めながら心身を鍛える毎日を送っていた。

 

 

「あぁ、ちょっと言い方が悪かったかな。正確には()()()()()()()()()という表現が正しいね」

 

「……? それってどういうことですか?」

 

「ダ・ヴィンチちゃんが曖昧なことを言うのって珍しいよね」

 

 

 再び現れた脅威にざわめき立つ二人を見て、ダ・ヴィンチは難しい顔を崩して優しい声色で話しかける。しかし立夏とマシュの顔から不安こそは薄らいだものの、依然として困惑したまま。

 

 果たしてどう説明したものか。ダ・ヴィンチは頭の中で要点を整理しつつ、その句を口にする。

 

 

「いやぁこう言ってしまうのも何だけど、私自身も測りかねていてね。特異点と断定するにはデータが煩雑すぎるし、何より見つかった時代が時代だから、どうしたものかと悩んでいたのさ。私としたことが顔に出ていたみたいだね」

 

「時代、ですか。ウルクのようにレイシフトが困難な時はありましたけど、それと似たようなものなんですか?」

 

「いいや、それ以上だね。何せ今回見つかった特異点もどきはウルクとは真逆……()()で見つかったものなんだから。しかもその年代は少なくとも、今よりも一万年後ときた」

 

「未来!?」

 

 

 ダ・ヴィンチから告げられた概要に、立夏は驚嘆の声を上げる。未来において特異点が発生するのは始めてのことだ。

 

 ウルクの時は紀元前の時代だったため、レイシフトには多大な労力と失敗のリスクを背負うことになった。それが今回は真逆の時代、それも遠い未来でのことだというのだから、その危険性は比べるまでもないと予想できる。

 

 だがそれでも、特異点の是正は成し遂げなければならない。それが立夏の、人類最後のマスターとしての責務なのだから。

 

 

「待ってください、確か未来へのレイシフトは出来なかったのでは?」

 

「うん、マシュの意見はもっともだ。今のカルデアでは2017年以降の世界にレイシフトするのは不可能。理由はわからないけどね」

 

「じゃあどうやって?」

 

「それなんだけど、実はその問題は既に解決していてね。ダメ元でレイシフトの成功率を予測したら100%に近い数字を叩き出したんだよ。理由は当然のように不明。私の万能を持ってしても全容を解明できないなんて、やっぱり世の中は広いねぇ」

 

 

 そんなことをぼやくダ・ヴィンチを見て、余程異常なことなんだろうと素人ながらに立夏は思う。

 

 今より遥か未来の世界において発生した特異点。それは裏を返せば、それ程の未来においても人類史が存在している、引いては人類が存続していることの証左でもある。人理を修復し、未来に繋げた立夏としては感慨深いものがあるが、今回に限っては厄介なものであることには変わりない。

 

 一万年も後の未来。果たして人類はどのような進化を遂げているのだろうか。

 それを想像することは楽しみでもあり、また恐怖でもあった。

 

 

「何はともあれ特異点が見つかったのですから、早速レイシフトの準備をしないといけませんね、先輩」

 

「そうだねマシュ。ずっと未来の世界だから、入念に準備する必要があるね。同行者(サーヴァント)の編成も考えないといけないし」

 

「まあまあ二人共、話は最後まで聞くものだよ。 ……実は私としては、今回の件は後回しにするべきだと思ってるんだよね」

 

「え、どうして?」

 

「今回の特異点の年代は今よりもずっと未来の話だ。人理焼却は人類史、つまり()()()()()()()()()()()()()()()()で起きるもの。今回発見された特異点が私達のいる現在に対して、直ぐに影響を与えるとは考えにくい。もちろん可能性はゼロじゃないけど、魔神柱達に対処するリソースを割いてまで注力するのは危険だ。全て事を終えた後に取り掛かっても十分間に合うし、隙を見せるような行動は控えるべきだと思う。

 

 あぁそれと、今回の特異点に魔神柱が関わっているのかだけど、その可能性は無いと断言できるよ。それが出来るなら最初からやっているはずだしね」

 

 

 確かに、ダ・ヴィンチの言うように魔神王の残党が何時、何を仕出かすか判らない以上、迂闊な行動を取るのは愚の骨頂。それに加え、日々休まず魔神柱の捜索に奔走しているカルデアのスタッフに対し、さらなる負担を強いるのは憚られる。ダ・ヴィンチの言うとおり、この問題は後で対処するのが正解だろう。

 

 

 その筈なのだが、何故だろうか。

 

 立夏の心の中には引っ掛かりのようなものがあった。

 言葉にできない、纏わりつくような違和感が。どうしても振り払うことが出来ない。

 まるで()()()()()()()()()ような――――

 

 

「私、行くよ。いや、行かなきゃ駄目な気がする」

 

「先輩……?」

 

「なんでかな、気持ちが抑えられないんだ。こんな漠然としたことしか言えないけど……」

 

「ふむ……」

 

 

 怪訝な顔をするマシュと、悩ましい顔をするダ・ヴィンチ。

 

 自分がどんなにお粗末な言葉を口走っているのかは、立夏自身よく理解している。普通であれば叱責とともに一蹴されるような弁明だ。しかしそうとしか言えないのだから、こればかりはどうしようもない。

 

 

「…………よし、わかった。レイシフトを許可しよう」

 

「えぇ!? いいんですか!?」

 

「他ならない立夏君の頼みだしね。彼女が行きたいと言ってるんだ、それを押さえ込んでフラストレーションを抱え込ませるのはあまり良くない。それに、緊急時には戻ってくればいいだけだからね」

 

「……ごめんなさい」

 

「謝らなくてもいいよ。それに私としても、未知なる世界には興味が尽きないからね!」

 

 

 そんなことを言いながら笑顔でサムズアップするダ・ヴィンチ。先程まで立夏がレイシフトすることに否定的であったというのに、許可した途端に知的好奇心(ほんしょう)を曝け出すのは実に彼女らしい。そんないつも通りの万能の人に和みながら、二人は今回の特異点についての説明を受ける。。

 

 

「では説明しよう。今回の特異点は一万年以上後の未来。なんと()()()()()()()()()()()()()だ! 幾つか陸地らしきものが見つかったから、その内の一つをレイシフト先に指定するよ。

 

 それと注意してほしいことだけど、未来の特異点だから今までとは違って人類史と言う名の教科書はまるで役に立たない。全て一からの手探りになるから気をつけてほしい」

 

「雲の海ですか」

 

「ロマンチックだね。緊急事態じゃなきゃ観光でもしてみたいんだけど」

 

「先輩っ! もどきでも特異点なんですから気をつけないと!」

 

「わかってるよマシュ」

 

「うんうん、どんな理由であれ、やる気が出るのはいいことだね」

 

 

 そんな会話を交わしながら、二人はレイシフトに必要な設備がある部屋へと訪れる。

 

 カルデアの技術の粋を集めて制作された、人間を現在とは異なる時間、異なる位相へと送り込むことが出来るタイムマシン。そのカプセル部分である『霊子筐体(コフィン)』に乗り込み目的の時代へとレイシフトするわけだが、立夏とマシュ二人だけでは当然心許ない。立夏の身体能力は人のそれとは変わらず、デミ・サーヴァントであるマシュもまだ未熟なところがあるからだ。

 

 そこで一緒に同行するサーヴァントをどうするか考える必要があるわけだが……

 

 

「ふむ、起きていることは理解した。しかし私などよりも適任が他にいるのではないか?」

 

 

 部屋に一人呼び出された白髪で褐色肌の男、エミヤは状況の説明を聞いて眉間に皺を寄せる。

 

 エミヤはカルデアに居るサーヴァントの中にあって、そこまで強い存在ではない。決して自身を卑下しているわけではないが、かと言って過信する愚を冒すつもりもない。あくまでも彼の発言は、自身の力量と任務の難易度を熟慮した上でのものである。

 

 しかしそんな彼の思考とは裏腹に、立夏はエミヤの同行を強く希望する。

 

 

「エミヤって未来の英霊なんでしょ? それなら未来人とも上手くやっていけるんじゃないかなって」

 

「未来と言っても十数年そこらなのだが……まぁ確かに、君の言葉は正鵠を射てはいるか。現在から一万年以上も時間軸が離れているのだから、倫理観や価値観がまるで違うことは十分に考えられる。現地住民といざこざを避けるためには、常識は真っ先に捨てる必要があるだろう。

 

 私は生前世界中を旅していたから、柔軟性はそれなりにあるつもりだ」

 

「それに加えて地理を把握するために斥候の技能も重要になってくる。エミヤ君なら身なりも軽いし、投影魔術のおかげで有事が起こった際も対処しやすいだろうしね」

 

 

 未知の場所で活動する上でまず必要なのが地理の把握だ。自分達が今どのような状況に置かれているのか、それを迅速に知れるかどうかが、その後の行動を大きく左右する。千里眼のスキルを持つエミヤであれば地理の把握もしやすいだろうし、戦闘力も防衛戦や撤退戦に徹するのであれば申し分ない。そして何より、投影魔術のおおかげで他の様々な状況にも対応しやすいというのが大きい。

 

 偵察目的であれば、これほどまでに頼りにあるサーヴァントはそうはいないだろう。だがエミヤは少しばかり納得の行かない表情でダ・ヴィンチを見ている。

 

 

「斥候なら私よりも優れた者がいくらでもいると思うがね、レオナルド。他のメンバーはどうする?」

 

「実はエミヤ君一人だけにしようかと思っている。何せ向こうの状況がまるでわからないんだ、大勢で行って相手側を刺激する事態になることは避けたい。今回は様子見だけにして、ある程度情報を集めたら改めて編成を考えるつもりだよ」

 

「急ぐ必要がない以上は慎重に事を運ぶのが得策ということか。だが私一人では何かあった時に不安だ。せめてセイバーやランサー辺りの武に秀でた者が居たほうがいいと思うが?」

 

「もちろん理由はあるよ。一万年後に私達英霊の伝承が残っているのか定かじゃないから、()()()()()()()()()()が同伴するのは避けたほうが良いと思うんだ。知名度補正の関係で大幅な弱体を強いられるのもそうだけど、何より自身の伝承が遺失したことに不満を抱くサーヴァントもいないことはない。

 

 そういったことを考えると、未来の英霊で知名度の影響をあまり受けない君のほうが、他の著名な英霊よりも十全に力を発揮できるはずさ」

 

「褒め言葉として受け取れるかは微妙なところだな。それに、他には聞かれたくない言葉でもある……了解した。精々期待に答えるとしよう」

 

「よろしくね、エミヤ」

 

 

 今回レイシフトするのは立夏、マシュ、エミヤの三人。

 レイシフト先の情報収集のみに努め、目的を達成次第帰還する。

 現地民との戦闘は極力行わないようにする。なるべく対話による解決を心がけること。

 

 レイシフトした後の予定を頭の中で反芻しつつ、立夏は『霊子筐体(コフィン)』の中へと乗り込む。小さな窓から見える外の光景。スタッフたちが忙しなく計器を操作するいつもの様子を見ていると、スピーカーからアナウンスが聞こえてくる。

 

 

 《アンサモンプログラム、スタート。霊子変換を開始します》

 

 

 果たして今回はどんな出来事が待っているのだろうか。

 自身が今まで歩んできた道程。それはけして平坦なものではなく、数多くの苦難を伴うものだった。

 だがそれらの経験は決して得難いものであり、その時の光景は今尚も鮮明に思い浮かべることが出来る。

 

 

(どうか、今度も素敵な出会いがありますように)

 

 

 湧き上がる期待と不安を胸に、立夏はその瞳を閉じた。

 

 

 《レイシフト開始まで、3,2,1――――》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日、楽園を夢見る少年は星を見た。

 

 

「じっちゃん! あれ!」

 

「む……? ほう、彗星か。 あれ程の大きさのものは実に珍しい」

 

「へぇ、あれが彗星なのか。 始めて見たよ」

 

「それよりもまだ終わらんのか? そろそろ寝る時間じゃぞ」

 

「後もうちょっとだけ。 今日のうちに終わらせないと明日のサルベージに間に合わないからね」

 

「まったく、程々にな。 疲れて倒れてしまっては意味無かろうて」

 

「わかってるよ、じっちゃん」

 

(ふむ、しかしあの彗星……ワシの記憶では、今の時期に彗星は来ないはずなんじゃがのう……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日、心の絆を求める少女は星を見た。

 

 

「おー、あれが彗星ってやつ?」

 

「えぇ、数年から数百年おきに周期的に飛来する星ですね。一部では不吉の象徴として忌み嫌われているようですが」

 

「忌み嫌われている、ね……ただの流れ星に何を怖がってるんだか。ほんと、バカみたい」

 

「お嬢様?」

 

「何でもない。で、いつアヴァリティアに着くって?」

 

「ここからだと2日ほどかかるようです」

 

「わかった。そろそろ戻らないと何言われるかわかったもんじゃないし、部屋に行こっか」

 

「承知しました」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日、戦士に憧れる男の子は星を見た。

 

 

「あ、でっかい流れ星だも! 願い事考えなきゃ……そうだも!」

 

「あまあまういんなたくさん食べたいも、あまあまういんなたくさん食べたいも、あまあまういんなたくさん食べゅっ――――舌噛んだも……」

 

「あっどっか行っちゃった……父ちゃんも何処かで流れ星を見てるも……?」

 

「よーしっ、休憩終わり! 人工ブレイド完成までもうひと踏ん張りだも!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日、国を、世界を憂う者達は星を見た。

 

 

「彗星か、久しぶりに見るな。前に見たのは6年前、グーラに進駐していた時だったか?」

 

「えぇ、あの時は空が澄んでいたので綺麗に見えました」

 

「今回は砂塵が邪魔してよく見えないか……ところで、明日の任務はテンペランティアへの査察だな?」

 

「前線の状況をつぶさに報告、兵士の士気向上に努めるように、と」

 

「インヴィディアとの戦を間近に控えている現状、先走った行動をしないように釘を刺す必要もあるな」

 

「それに元老院の動向にも怪しいものがあります。彼らの介入にも注意を払わなければなりませんね」

 

「しかし、彗星は良くないことが起きる前触れだと聞く。何も起きなければいいが……」

 

 

 

 

 

「あっ、王子! 見て見て! 彗星や!」

 

「ありゃかなりでかいな……おおっ、いい(アーツ)を思いついたわ! 『極限神聖天墜破弾(スーパーセイントメテオインパクト)』! これでどうや!?」

 

「王子のせいで雰囲気が台無しやわ~」

 

「なんでや! めっちゃイケるやろが!」

 

「も~そないなことやから王子はモテないんや。 せっかくのいい顔が勿体無いわ」

 

「フンッ このセンスを理解できひん奴らなんざこっちから願い下げや!」

 

「それじゃあ王子と一緒に居られるの私しかいなくなるやないか」

 

「なんや、嫌か?」

 

「別に嫌っちゅうわけやないけどなぁ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 様々な者達の思いを抱えて、世界の歯車は廻り始める。

 その道の果て、どこに辿り着くのかはまだ誰も知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

         「天の聖杯」「世界樹」「朽ちゆく揺り籠」「鏡写しの絶望」

        「忌避されし者共」「言葉と精神と本質」「償えぬ(カルマ)」「(■■■)

 

 

                  人理■■地点

                  人理定礎値: N/A

 

            A■.*?#&0$3! 因果繚乱雲域 アルスト

 

 

                “天趣(ソラ)を目指す少年少女”

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




Q.どうしてサーヴァントがエミヤだけなの?
A.作者がキャラを動かしきれないから。こんな不甲斐ない作者ですまない……
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