Infinite Stratos×For Answer 作:西方有敗
「おい。」
「…。」
「おい。」
「…。」
「さっさと起きろ、馬鹿者が!!」
ゴン!!
「イッテェ!?」
突然の(聞き慣れた)罵倒と共に走る激痛で飛び起きた。
「なんだ、敵襲か!?」
慌てて飛び起きながら周囲を素早く索敵したが、
そこには俺をいきなりぶん殴った人以外誰も居なかった。
「はぁ…なんだよ、何もないじゃないか。
何も無いならもう一度寝るか…。」
周囲の状況を把握し、
危険が無い事を確認した俺は再び横になり、眠ろうとするが…。
「ほう?
私が起こしてやったと言うのに、再び寝るとは良い度胸だな?」
俺をぶん殴った人は明らかに怒っている雰囲気でドスの効いた声で言ってくる。
…待て、なんで俺はこんな所で寝ているんだ?
しかも俺はストレイドに乗っていたハズだ。
何故こんな所で生身のまま寝ているんだ?
というか思いっきり何時もの事だったからスルーしたが、
この起こし方は紛れも無い。
あの時俺がこの手で殺してしまったセレン以外あり得ない。
再び勢い良く起き上がり、隣に座るもう1人を見る。
「え…なんで…。」
あり得ない、何故だ。
だが紛れも無い。
「セ…レン?」
「やっと目覚めたか?」
肩まで伸ばしたストレートの黒髪に、
釣り目に青色というよりも蒼色の瞳。
間違いない、セレンだ…!!
そう認識した瞬間、俺はセレンを強く抱きしめ…。
「百年早いわ馬鹿者。」
「グッ…!!」
ようとしたが、
鳩尾にキツイ一発を貰ってしまった。
こみ上げる吐き気を何とか抑えつつ、
「生きて…いた…のか?」
その言葉を口にした。
「フム、生きていた…と聞かれてしまうと答え辛いな。」
「どう…いう?」
「周りを見てみろ。」
「?」
セレンに言われるがまま、周りを見る。
「な…!!?」
その光景に思わず言葉を失ってしまった。
周りには木があり、海があった。
しかも良く見る必要が無いと断言できるほど、
海は澄んでいて、木が生い茂っていた。
「そんな…馬鹿な…!!」
やっとの思いでその言葉だけを搾り出す事ができた。
コジマ粒子によって海は汚染され、
自然と言う自然は破壊されていたハズだ。
だがまるで汚染なんて無かったですよ、と言わんばかりの自然が広がっていた。
「言っておくが私に聞くなよ?
つい先ほど目覚めた時私も同じだったからな。」
セレンに聞こうと思い、セレンを見るが先に言われてしまった。
どうやらセレンも同じ事を思っていたらしい。
しかし、ここである事に気が付いた。
「アレ、セレンってイヤリングなんてつけてたっけ?」
そう、セレンがイヤリングをつけていた。
俺の記憶が正しければ、お洒落にはまったく気を使っていない。
その為企業と通信をする時は最低限の化粧はするが、
それ以外はまったくと言っていいほど何もしていなかったセレンが、
あろう事にお洒落に分類されるイヤリングをつけていた。
…いや、実は興味はあったが懐事情の所為で我慢していたとか?
まったくもって分からない。
「知らん、起きた時には既にあった。
邪魔だから外そうと思ったが、まったく外れないんだよ。」
あ、やっぱり邪魔って思ってたんだ。
「…というかだが、お前も中々面白いものをつけているぞ?」
「ん?」
「首を触ってみろ。」
言われるがまま自分の首を触る。
するとそこには、何故か首輪がついていた。
「なっ!!」
流石にこれには絶句する。
これじゃあただの変態じゃないか…!!
「良く似合っているよ、首輪付き。」
「グッ…。」
その名称は正直嫌いだが事実なだけに何も言い返せない。
「さて…。」
一通り弄ってきて満足したのか、セレンは一度咳払いをした。
それに対し、調査するかと思い立ち上がろうとしたが。
「おい、何を勝手に立とうとしている?」
「え?」
続く言葉によってその作業は中断された。
「この事を調査するんじゃないのか?」
「それも重要だがな、その前にやらなければならん事がある。」
やらなければならない事?
それはこの異常現象を調査する以上に重要な事なのだろうか?
「まさか私が言った事忘れているんじゃないだろうな?」
「セレンが言った事?…ハッ!!」
必死に脳内を探ると該当することが一つあった。
「どういう状況であれ、私とお前は奇跡的に生きているらしいな?」
「うっ…。」
通信越しの会話で言われた事を思い出す。
…覚悟しろ、奇跡的に共に生きていたら山ほど説教してやる。
「さて、取り敢えずは軽く半日ほど説教してやる。」
取り合えずと言う事は、本当はもっとしたいんだろうな。
だがこれを言ってしまうと更に時間が伸びそうだから決して口には出さない。
その後、その場で座らされ延々とセレンの説教を受ける事になった…。
「…分かったか?」
「わ…分かりました…。」
時刻は分からないが、既に夕日が沈もうとしている。
あの後本当に半日程一瞬も休まずにひたすら説教を喰らった。
時折勢い余って暴力が飛んでくるが、
それを避けようものなら更に時間が伸びることは明白。
ただただ黙って耐えるしかなかった。
「フン、まだまだ言いたい事は山ほどあるが今はこれくらいにしてやる。」
「か、寛大な処置大変痛み入ります…。」
この時のセレンには大人しく従ったほうがいい。
反論すればどんな理不尽が飛んでくるか分かったものじゃない。
「さて…。」
まだまだ言い足りない様子だが、
一先ずは満足したセレンは木が生い茂ってるほうを見た。
「そこで隠れている奴、出て来い。」
視線の先には木以外何も無い。
それなのに、セレンは確信を持って言葉を放った。
…実を言うと俺もとっくに気が付いている。
それでも指摘しなかったのはそれを指摘すると話を逸らすなと言われ、
更に理不尽な事を言われかねないからだ。
正直ミッションで出撃している時だったらどんな事が起きるか分からないが、
何時まで経ってもこちらを攻撃してこない為、
危険性は低いと判断し後回しにしていた。
「おっかしいなー、完全に姿を隠していたんだけどねー?」
そう間の抜けた声を出しながら、木の間から女性が姿を表し…。
「…へ?」
たんだが、
その珍妙な格好に思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。
えーっと…アレはなんだっけ?
確か…エプロンドレス、とかいう服装だったか?
それにあの頭のアンテナ。
訳が分からない。
だが、セレンにとってはそんなの関係が無いらしい。
「種は明かせないがこちらに隠蔽の類は通用しない。
数時間前よりずっと見ていたようだが、何故直ぐに姿を表さなかった?」
油断無く相手を見つつセレンはそう質問を投げかけた。
「いやー本当は直ぐにでも声を掛けたかったんだけどねー。
怒り方がちーちゃんにすっごい似てたから私も思わず正座しちゃったよー」
ちーちゃん?
恐らく人名だとは思うが…良く分からないな。
「それで、私達に何の用だ?」
俺がそんな事を思っていると、セレンは続けてそう声を掛けた。
「あ、そうそうー。
私が隠れているこの島にいきなり反応が出てねー。
束さん特製の接近センサーの反応が無しでいきなりだったからねー。
面倒臭かったけど一応見に来たんだよー。」
束さん。
それが恐らくこの人の名前か。
しかし…掴みどころが無い人だ。
声や雰囲気はのんびりしているくせに、
こちらがどんなアクションをとってもすぐさま行動できるように構えている。
俺はセレンに目配せをする。
「(ここでひと悶着を起こすのは得策じゃない。)」
「(分かっている、此処がどこか分からない以上安易な行動は控えるべきだな。)」
短く意思疎通を終え、
「実は私達も分からない、
目が覚めたら既にここに居てな。
見覚えの無い場所だったから途方に暮れていた。」
そう正直に答えた。
この束さん…という人から可能な限り情報を収集したい。
それが今の俺達の共通認識だった。
「目が覚めたら?」
「ああ。」
「ふーん…。」
そう言うと同時に束さんは考え込んでいる。
こちらとしては一応勝つ自信があるとはいえ、
なるべくならば穏便に済ませたい。
そう思いつつ束さんの次の言葉を待つ。
「…いやまさか、そんな事はないよねー。」
「「?」」
束さんの頭の中で出された結論に対し、俺達は揃って首を傾げる。
「まあ、物は試しに聞いてみようかな。
殆ど知られてる事だから別に変じゃないし。」
「知られている?」
「ああ、こっちの話。
そうだねー…ISって知ってる?」
「「IS?」」
束さんから紡ぎだされた言葉に俺達は揃って疑問形で口にした。
その反応を見て束さんの目が煌いた…ように感じた。
「これは面白くなりそうな予感!!」
「おいどういう事だ、説明してくれ。」
「別に良いけど、
ここじゃちょっと場所が悪いからついてきてー。」
そう言いつつ束さんは踵を返しどんどんと歩いていく。
「どうする?」
ついていく以外の選択肢は無いが、一応確認の意味でセレンに聞く。
「ついていくしかないだろうな、今は少しでも情報が欲しい。」
「了解。」
予想通りの答えが返ってきた。
俺は力強く頷きセレンと共に束さんの後を歩き始めた…。
一頻り歩いた後、屋敷の様な場所に到着した。
束さんは迷わずにそこに入り、
再び少し歩いて研究室の様な所で適当な椅子に腰掛けた。
「そうだねー、まずは自己紹介からしようか?」
「…セレン・ヘイズ、こいつの元オペレーターだ。」
元、と言う所をセレンはワザと強調して言った。
なるほど、分かっていたけどこれは堪える。
「元?」
「元だ。」
「何か深い事情がありそうだねー、
まあ束さんにとってはどうでも良い事だから別に良いけどー。」
良かった、
流石に詳細を聞かれたときはどうしようか迷っていたからだ。
…まあ、手放しで喜べるものじゃない。
「そっちの彼は?」
「…俺は。」
そういえば名前なんて考えた事が無かった。
企業からの依頼の時はセレンが対応していたし、
袂を分かちオールドキングと行動していた時は相棒としか呼ばれなかった。
そもそも個人名はリンクスにおいてあまり意味が無い。
大体は機体名で事が済む話だった。
「…ストレイド、とでも呼んでくれ。」
一瞬セレンから凄い目で睨まれるが軽くスルーする。
しょうがないだろ、名前なんて考えた事が無かったんだから。
「やだ。」
「は?」
しかし意外にも束さんから却下されてしまった。
「だってそれ明らかに偽名じゃん?
そんな人に対してこれから話なんてしたくないよー。」
「うっ…。」
全く持ってその通りだ。
束さんと立場が逆だったら俺でも嫌だ。
とすると困った。
「…ハァ、すまない。
コイツには名前が無いんだ。」
俺がどう返答するか迷っているとセレンが助け舟を出してくれた。
しかし、そのセレンの言葉を聞き束さんは眉を潜めた。
「名前が無い…孤児って事?」
「そうだ。…他言はしてくれるなよ?」
セレンは一度そう前置いた後、俺の境遇を話し始めた…。
「なるほどねー、それなら束さんも納得だよ。」
一頻り話し終わった後、束さんはうんうんと頷いていた。
「理解が早くて助かる。」
「人それぞれ事情があるしねー、
まあいいや、それならちゃんとした名前を考えてね?」
「ちゃんとした名前…か。」
名前…名前…。
ダメだ、良い物が思い浮かばない。
ネクストとかは論外。
その事を口に出したらセレンからどんな攻撃が来るか分からない。
オッツダルヴァとかテルミドールも勿論無し。
あんな奴の名前は借りたくも無い。
となると…。
「…あ。」
ここで脳裏にある一機の機体を思い出す。
ホワイトグリント。
ランクは9だが最強と呼ばれていた完全ワンオフのネクスト。
事実、敵対した時はその圧倒的な実力であわや撃破される寸前まで追い込まれた。
…いや、起死回生のあの一撃が無ければ確実にやられていた。
それほどまでに圧倒的な実力を有していたネクスト。
折角だ、アイツの名前を借りるとしよう。
「グリント…レイヴン・グリントなんてどうだ?」
「無いな。」
「センス無いね?」
「解せん。」
俺としては会心の閃きだったのにセレンと束さんにバッサリ切られてしまった。
何がいけなかったんだ。
「グリントは良いとして、レイヴンは無いよねー。」
「同感だな、貴様だと精々オールド・グリントが関の山だろうよ。」
「あのセレンさん、何か棘ありません?」
思わず敬語になってしまった。
いやまあ仕方ないけどここまで毒を吐かれるのは久々だから、ちょっと戸惑う。
「棘があると感じるのであれば、
それはお前自身に後ろめたい事があるからだろう。」
プイッとそっぽを向きながら追撃を忘れないセレンさん。
「あ…あはは…。」
正直身に覚えがありまくる為乾いた笑いしか浮かべられない。
「なんだか面倒臭くなってきたからさー、
もうこの際ストレイド・グリントとかで良いんじゃない?」
「それだ!!!」
「ひゃ!?」
俺の突然な大声に束さんはわざとらしく悲鳴を出した。
恐らく適当に言ったのかもしれない。
だが…凄く良い。
今の名前はかなりビビっと来た。
「今日から俺はストレイド・グリントって名乗る。
別にいいよな?」
「…先ほどまでの奴に比べたらマシだな、好きにしろ。」
好きにしろとか言ってさっきまでバッサリ切ってた癖に。
そう思うが口には出さない。
「それじゃあセレンにストレイド…は長いからグリントって呼ぶねー。
私は天才科学者の篠ノ之束だよ!、
ISを作ったすごーい科学者なのだー!」
両手でピースサインを作りつつに束さんはにこやかに自己紹介をしてきた。
…なんだろうか、酷く歪だな。
「(…まあ、俺も人の事は言えないか。)」
1億もの人間を殺したし、あの戦いで勝利を収めていたらもっと殺していた。
テルミドールの手によって未然に防がれはしたが、
正直まともな感性じゃないとは自分でも思う。
「さて、お互い自己紹介は終えたし色々と話し合おうかー!」
束さんが一度手を叩いた後、
俺達は先ほど…いや、今もか。
この汚染されきったハズのこの世界に何故自然が溢れているかという情報を、
代わりに俺とセレンが持つ開示しても問題無いと思われる情報を共有するべく、
長い時間話し込むことになった…。
ちなみに主人公は大量虐殺ルートの最後で敗北した設定です。
その為人類種の天敵になるギリギリで踏みとどまっている状態です。
しかし結構難しいんで書ききれるか心配・・・
主人公
名前 ストレイド・グリント
性別 男
年齢 ??
愛機 ストレイド
紹介
ACの世界に置いて1億人もの人間をオールドキングと共に虐殺した張本人
その後インテリオルユニオンからの依頼を罠と承知で受諾、
アルテリア・カーパルス占拠においてカラードの上位ランク達と熾烈なる戦いを演じ、
全て撃破したかと思ったが、水没詐欺をしていたテルミドールにより撃破。
死亡したかと思われたがISの世界にセレンと共に転生した。
セレンの事をかなり大事に思ってはいるが、必要であれば切り捨てる事を厭わない。
天敵と呼ばれる前に討たれた事によりギリギリで踏みとどまってはいるが、
覚悟は既にしている為容易な出来事で再び大虐殺を決行する可能性も残している。
家政夫としてもかなり有能。
名前 セレン・ヘイズ
性別 女
年齢 殺すぞ?
愛機 シリエジオ
紹介
ストレイド・グリントの元オペレーター。
1億もの人間虐殺したストレイドを見限り、
せめて自分の手で凶行を止めようとリンクスに復帰、
アルテリア・カーパルス占拠にてストレイドとの一騎打ちを行い、
最後は自分でも理解が出来ない行動を行い、
ストレイドのMOONLIGHTを受け死亡したかと思われたが、
その直後にテルミドールの攻撃で死亡したストレイドと共に転生した。
自身が見出したストレイドが何故虐殺という道を辿ったか理解が出来ず、
またそれを聞くに聞けない現状にやきもきしている。
ストレイドの事を大切に思っているが、いざとなれば切り捨てる事も出来なくは無い。
料理下手、整理整頓できない、捨てられないという典型的な駄目人間
それを指摘すると烈火の如くキレる為、ストレイドは諦めているようだ。