Infinite Stratos×For Answer 作:西方有敗
「改めましてこんばんは、
更識楯無・・・アナタをここへお呼びした本人よ。」
先ほどまで校内を案内してくれていた、
楯無さんが扇子を広げながら自己紹介をしてきた。
・・・その扇子には自己紹介と書かれている、どういう仕組みだろう?
「フィオナ・イェルネフェルトです、よろしくお願いします。」
少し不機嫌ではあるけれど、
これから先は依頼の為の話し合いをするからそれを表には出さない。
「それで、ここに来る前に校内を案内した意図をお聞きします。」
楯無さんが私を呼んだのであれば、
先ほどの校内案内も決して無駄な物ではないはず。
そう判断して楯無さんに確認をする。
「・・・この学園、良い所だと思いません?」
扇子を閉じて、目を細めながら私に言ってきた。
案内された場所は生徒達が笑顔を浮かべながら部活に励んでいた。
平和という物をあまり知らないけれど、きっとこう言う事を言うんだと思う。
「・・・そうですね、ここに居る人たちは皆笑顔で活気に溢れていると思います。」
例えそれが女尊男卑という歪な物が土台にあるにせよ。
ただ滅びに向かっていくよりは全然良い。
楯無さんは私の返答に満足したのか笑顔を浮かべていた後に、
「・・・イェルネフェルトさん、アナタにお聞きしたい事があります。」
そう前置きしてきた。
「私で分かる事であれば。」
ここの前に居たことの情報は出すつもりは無いけれどね。
「・・・
その名前は少しだけ聞いたことがあるけど詳細は知らない。
裏の世界で暗躍する組織だけど、その目的は一切不明。
私が知っているのはそれくらい。
「名前だけであれば聞いたことがあります。」
「・・・実はその
理由は分からないけれど、嫌な予感しかしない。
「最近になって男性のIS適正者が現れたと言う話はご存知?」
「・・・勿論です。」
世間でアレ程騒がれているもの。
知らないわけが無い。
1人は世界最強の称号を持つ「ブリュンヒルデ」を姉に持つ男性。
そしてもう1人は・・・、私も知っている黒い鳥。
今の所はその2名って聞いている。
「その男性IS適正者なのだけれど、
この学園の生徒で・・・実は狙われているの。」
「・・・理由は?」
「分からないわ、ただ色々調べて漸くその事だけが分かったの。」
理由は不明・・・。
考えられるものは幾つかある。
一つは今まで女性しか使えなかったISが男性でも使えるという事実。
この人物を拉致して研究して、あわよくば他の男性も使えるようにする。
もう一つは純粋に邪魔になるから消す為。
おおよそはこの2つになると思う。
対象が分かっていれば重点的に護衛をすれば良いけれど、
厄介なのが目的が読めない事。
ただ単純に消す為ということであればただ守れば良いけれど、
もし拉致が目的の場合だとそうは行かない。
流石に四六時中護衛しているわけには行かない為、
どうしても穴が出てきてしまう。
そこを狙われたら護衛は相当厳しいものになる。
「・・・その男性の護衛が楯無さんからの依頼ですか?」
楯無さんからの依頼内容を推測して試しに言ってみる。
別に当たっていなくても良い。
少しでも情報が引き出せれば・・・。
「残念ながら違うわ、
勿論見ていて欲しいと言うのはあるけれど、
自分の身は自分で守れる力を身に付けても欲しいからね。」
「ですね、四六時中見ている訳には行きませんし。」
「その通りよ、
・・・さて、じゃあ依頼の話をしましょうか。」
楯無さんは一度咳払いをする。
・・・来た。
この依頼内容によっては私はこの場を直ぐにでも離れるつもり。
あくまでも依頼は生活をしていく為に必要だからやっているだけ、
私の主目的はあの人を探す事だから、時間を取られすぎるのは良くは無い。
「イェルネフェルトさん・・・、
アナタには私の下について欲しいの。」
・・・え?
今楯無さんは何て言ったのだろう?
・・・楯無さんの下について欲しい?
「お断り致します。
楯無さんの下について私にはどんなメリットが?」
私はそうハッキリと言った。
馬鹿馬鹿しい、話にならないにも程がある。
「・・・ごめんなさい、この言い方だと勘違いしてしまうわね。
正しくはこの学園を守る為に行動して欲しいの。
勿論アナタ自身の都合を優先してもらっても構わないわ、
それでも有事の際に、その力を奮って欲しい。」
・・・この口ぶりからして楯無さんは知っている。
私がWGを扱っている事を。
「一応確認しますが、
その依頼を受けたときの私への報酬はなんですか?
一つ言っておきますがお金・・・という事であればお断り致します。
手持ちには困っていませんので。」
お金は幾らあっても困らないけれど、
それでもこの学園を守ると言う、
下手をしたら一生物の依頼になる可能性がある。
それをお金に換算する事は出来ない。
「当然ね、無茶なお願いをしているのは分かっているわ。
・・・聞けばアナタ、人を探しているそうね?」
「・・・その情報をどこで?」
私が人を探している事を知っているのはナターシャくらい。
それ以外では決して話はしていないのに、それでも楯無さんは知っている。
その事実は、私の警戒度を上げるには十分過ぎる理由になった。
「少しアナタの事を調べさせてもらったの。
4年くらい前かしら?
突然アメリカの地に現れて国を左右する問題を莫大な報酬で解決してきた。
だけどそれ以外は一切不明、
普通それ程の腕前を持つ人であれば何かしら情報が出回ってもおかしくないのに、
素性から経歴まで何も分からなかった。
苦労したのよ? アナタの事を調べるのに。」
「御託は良いので理由を言ってください。」
「ここまで調べた事を少しは褒めてくれても良いのに・・・。
まあ良いわ・・・ある時不思議な情報が入ったの。
ショートカットの女性がある男性の事を捜しているって言うね。
それを知って私は疑問に思ったわ。
その女性が探している人はどういう人物なのだろうって。
・・・でもまさか、その捜している女性っていうのがアナタだとは思わなかったわ。」
・・・女狐。
今のセリフを聞いてそんな言葉が思い浮かんだ。
カマをかけられて、私はそれにまんまと乗せられてしまった。
・・・まったく情けない。
暫く人ととの関わりを避けていたからその辺りの能力が落ちているのかも。
「・・・話が逸れたわね、
報酬はその人を捜すのを手伝う・・・というのはどうかしら。」
・・・なるほど、確かにそれは魅力的な提案。
素性を殆ど明かしていない私を断片的とは言え調べた情報力。
正直彼を捜すのに少し限界を感じていた。
個人で個人を捜すには、この世界は大きすぎる。
下手をしたら一生かかっても見つけられない可能性だってある。
それを見つける手助けをしてくれる。
これを断る理由は無い・・・けれど。
どうしても一つだけ気になる事があった。
「楯無さん・・・アナタの依頼を引き受けるに当たって一つだけ聞かせてください。」
「どうぞ。」
「・・・この学園に、黒い鳥は居ますか?」
・・・実はもう居ると言う事は知っている。
それでも敢えて聞いている。
ここで嘘を付くのであればこの依頼は断る。
彼を捜しだせる可能性が低くなるけれど、それはしょうがない。
私より先に彼を見つけられても、
私を手放さない為まだ見つかっていないと嘘をつかれるから可能性があるから。
「・・・正直に言うと、黒い鳥は居るわ。」
恐らく言うべきか言わないべきかで迷ったのだろう。
だけど楯無さんは正直に言ってくれた。
その言葉を聞いて私の腹は決まった。
「・・・分かりました、更識楯無さん。
アナタの学園を守って欲しいという依頼、お受けいたします。
報酬は先ほどアナタが言ったある人物の捜索です。
アナタが言った以上必ず守っていただきます。」
「・・・交渉成立ね、それじゃあこの後は事務的なお話をしましょう。
まずアナタの学園内の身分だけど・・・。」
そう言って楯無さんは安堵の表情を浮かべながら話を始めた・・・。
「と、いうところだけどどうかしら?」
「妥当な線ですね、
私からの補足は特にありません。」
話を聞き終えた私は楯無さんにそう返事をする。
「了解よ、・・・最後に私から聞きたい事があるのだけれど。」
「なんですか?」
「アナタが持っている専用機・・・NEXTなの?」
やっぱりその名前が出てきた。
それもこれも黒い鳥が悪い。
あんな派手にNEXTの名を宣伝すれば嫌でもそう思われてしまう。
「分類で言えばそうですが、
決して篠ノ之束から貰ったわけではありません。」
WGはこの世界の物では無いし、私の物でもない。
いつか彼に返す為に身命をとして私が守っているだけにすぎない。
「ああそうです、この子を調べたいなんて事は言わないでくださいね?
あくまでも借りているだけですし、この子の情報を公表する気はありません。
模擬戦等で情報を集めるのは構いませんが、
私は決してこの子のフルスペックを晒す気は無いですよ。」
正しくは晒す気は無い・・・ではなく、
私ではWGのフルスペックを引き出すことが出来ない。
どんなに良く見積もっても5割が限界。
それ以上を引き出すには、私の腕が未熟すぎる。
彼か・・・それ以外であれば黒い鳥が引き出せるかも。
・・・死んでも使わせませんが。
「分かっているわ、
全てのスペックが分かったところで再現できないだろうし、
それをやってアナタが立ち去る方が私としては痛いもの。
許可無く調べる事は絶対にしない。」
「ありがとうございます、
差し当たって私がこの学園に入学するのはいつになります?」
「そうね・・・手続きもあるから早くて2週間後かしら。
私の方から教員の方々には話しておくから、
その間にこの学園に立ち入っても問題ないようにするわ。」
「心遣いありがとうございます、
それでは私はホテルの確保等がありますので・・・。」
「ええ、時間を取ってくれてありがとう。
何か連絡する事があればこちらにお願い。」
「分かりました。」
楯無さんより連絡先を貰い、その連絡先に私の連絡先を送る。
「それでは失礼します、
どのくらいの期間になるか分かりませんが、よろしくお願いします。」
「こちらこそよろしくね、イェルネフェルトさん。」
「言い辛ければフィオナで構いませんよ。」
「分かったわフィオナさん。」
「それでは今度こそ失礼致します。」
最後に楯無さんに一礼をして、私はIS学園を後にした・・・。
生徒会室
「ふぅー、流石の私も緊張したわ。」
完全にフィオナさんの姿が見えなくなった後、私は思い切り息を吐いた。
それにしても危なかった。
ああもハッキリとお金は要らないって言われるとは思わなかった。
もし事前に人を捜しているという情報を得られなければ、
この交渉は失敗に終わった可能性が高い。
昼夜を問わずに東奔西走してくれた皆には感謝しないと。
・・・いま、この学園には不確定要素が多すぎる。
織斑先生を疑うわけではないけれどもし黒い鳥という強大な力が襲ってきた場合、
この学園は為すすべなく蹂躙される。
勿論ただでやられる気は無いけれど、
未だ黒い鳥の力の全容は把握できていないし、何よりもその目的が分からない。
この学園と生徒達を守るには少しでも戦力を整えておきたい。
「・・・何を弱気になっているの楯無、
例え茨の道だとしても、私はそれを進み続けるしか道が無いのよ。」
願わくば・・・、フィオナさんの捜し人が見つかっても共に居てくれますように。
そう思わずにはいられなかった・・・。
フィオナさん、楯無さんサイドに加入。