Infinite Stratos×For Answer 作:西方有敗
「ふぅ。」
楯無さんとの話を終えた後何とかホテルが取れてよかった。
2週間と言う長期間にも関わらず良く空いていたと思う。
「・・・にしても、奇妙な事になった。」
元々IS学園に行くつもりではいた。
アメリカという地に彼が居なかった以上、
彼を捜す為にもっと大きなところにいくつもりだったから。
この日本という地の面積はアメリカに比べたら全然小さい。
だけど・・・あのISというパワードスーツを開発したのは日本人。
そのお陰で今この日本と言う地は世界の中心になっている。
それにIS学園は世界で唯一と言っても過言では無いISを教える学園。
通っているのも色々な人種。
情報を集めるにはここが一番早いと思ったから。
「それにしても守って欲しい・・・ね。」
なんていう皮肉だろう。
かつて私が彼に押し付けた守護者という立場を今度は自分でやる事になるなんて。
彼にあったら笑われ・・・。
「ない・・・か、彼はそんな人では無いし。」
唯一の手荷物と言っても過言では無い写真を取り出す。
そこに写っているのは、3人の人。
中央には私が、左には彼が・・・そして右には・・・。
「・・・ジョシュア。」
友人でもあり、
彼と文字通りの死闘を繰り広げ死亡した・・・ジョシュア・オブライエン。
その3人がぎこちない笑みを浮かべていた。
もう戻ってこない幸せだった日々がその写真に込められている。
その写真を仕舞い、鏡を見る。
そこには目の下にハッキリした隈がありどこか影がある私の顔が浮かんでいた。
「・・・フフ、酷い顔。」
思わず笑いがこみ上げてしまう。
そういえばこちらで目覚めてからまともな睡眠を取っていない。
寝首を掻かれるかもと思うとどうしても眠れなかった。
「少し休もう・・・、これからはきっと忙しくなる。」
でも・・・なんだろうか。
このIS学園で私は掛け替えの無い物を見つける。
そんな気がした・・・。
「お、お腹すいた・・・。」
あの後眠りについて、目が覚めたら時計が4週していた。
目が覚めた瞬間派手に鳴り響く私のお腹の音。
その音を聞いて何も食べていなかったのを思い出す。
それにしても眠りすぎた。
恐らくアメリカとの時差の関係もあるのと、
純粋に殆ど寝ていなかった。
それが原因でこんなに長時間眠ってしまったのだと思う。
「と、とりあえず・・・何か食べ物を・・・。」
手荷物として殆ど何も持ってきていなかった為、
この部屋には食べ物と呼べる物は無い。
しかもここはビジネスホテル。
呼べば運んでくるルームサービスも無い。
つまりは・・・ここで外に買出しを行かなければ私はこのまま餓死する。
「ハハ・・・それは、笑えない。」
まだ彼を探し出せていないというのに、
こんな下らない理由で死んでたまるものか・・・!
私は財布を取り出し、若干フラつきながらもホテルを後にした・・・。
「ダメ・・・もう・・・限界・・・。」
外に出て数十分後。
取り敢えずは歩いているけれど、
始めてきた場所でそう都合良く食べ物が売っている場所が見つかる訳は無い。
結局当ても無く歩いている内に空腹が限界に達した。
「こんな所で・・・倒れるわけには・・・。」
まだ・・・私には・・・やる事が・・・。
「痛てて・・・もう少し加減してくれよ。」
「加減なんてしないわよ、したら一夏のためにならないじゃない。」
「そうだな、
ストレイドのお陰で幾らか様になっているとはいえ、
お前はまだまだ未熟だ。」
日課の鍛錬を終えて寮への帰宅途中、
俺達はそんなことを話している。
にしてもストレイドはどこに行ったんだ?
臨海学校が終わって宿に戻ったら千冬姉からグリントは暫く休みだって言われ、
学校に行ったら本当に来なかった。
あの白いISの事を聞きたかったんだけど・・・。
「一夏、聞いているのか?」
色々と話しかけてきていたのだろうか。
箒は少し不機嫌な顔で俺に言ってきた。
「あ、ああ。
聞いているよ、確かに俺はまだまだ弱い。
もっと力を付けないとな。」
箒の声で考えを中断してから返答する。
・・・そう、俺はまだまだ弱い。
あの時俺にもっと力があれば箒との2人だけで福音と戦ったときに勝てた。
皆を守る為にはもっと鍛錬を積まないと・・・。
「・・・ん?」
そう決意を新たに前を見ると、
そこには金髪のショートカットの女性だろうか?
人が倒れていた。
「箒、鈴!!」
「どうしたの?」
「どうした?」
それを見た瞬間、俺は箒と鈴に叫びながら前方を指差す。
「あそこに人が・・・!」
「何・・・!!」
「なんですって!!」
俺の指差した方向を見た2人は慌てて走り出す。
「だ、大丈夫ですか!!」
倒れている人の元へと駆け寄った俺達は直ぐに声を掛ける・・・が。
反応が無い。
息はしてるから生きているけど顔は真っ青だ。
一体何が・・!!
「箒、直ぐに救急車を!
鈴は何か拭くものは無いか!」
失礼だとは思いつつもおでこを触り、
熱が無い事を確認しながら2人に指示を出す。
「分かった!」
「ちょっと待って!」
普段反目しがちな2人だけど、
緊急事態の為直ぐに行動を起こしてくれる。
「どうしたました、大丈夫ですか!!」
俺は倒れていた人に対して声を掛ける。
「・・・お。」
反応した・・・!
倒れていた人は搾り出すかのようなか細い声で、
「お腹が・・・空きました・・・。」
「・・・へ?」
そう言ってきた・・・。
「お、お恥かしい限りです・・・。」
まさか空腹の余り倒れてしまうとは・・・。
このフィオナ一生の不覚。
もし見つけてくれたのがこの善良な人たちでなければ危なかった。
「え、と。
本当に大丈夫ですか?」
私を見つけてくれた子は心配そうに私を見てくるが。
「ええ、大丈夫です。
一昨日から何も食べていなくて・・・、
空腹の余り倒れてしまっただけなので。」
小柄な女性から渡された食料(カロリーメイトという物)を食べながら答える。
うん、美味しい。
少し味気無い物だとは思うけど、
それでも私にとって2日ぶりの食料。
味わって食べないと。
「お、一昨日から!?
一体何をやっていたのよ!?」
私に食べ物を渡してきた女性が驚きつつ聞いてくる。
「仕事が一段落ついたのが一昨日でして・・・、
それまで一睡もしていなくて寝て起きたら今日になっていました。」
うん、嘘はついていない。
福音撃破の依頼が終わったのは一昨日。
その報告をしてからWGで飛ばしてこの国に来て楯無さんとの話をした。
その後ホテルに戻ったから・・・。
・・・時差の所為であまりハッキリしないけどまあ良いか。
「仕事とはどういう物をしているんですか?
見たところ私達と余り変わらない様に見えますが・・・。」
「企業秘密なの、ごめんなさいね。」
流石に怪しいと感じたポニーテールの子が聞いてくるけど、
申し訳ないけどそれを言う訳には行かない。
守秘義務があるし、血生臭いことを言う訳にはいかない。
「・・・ふう、落ち着いた。」
食料を食べ終えて一息ついた私は、
「本当に助かりました。
貴方達に見つけてもらえなかったらこのまま行き倒れていました。」
そう3人に言った。
「大丈夫ですよ、
それよりも本当にお送りしなくて大丈夫ですか?」
「大丈夫ですよ、
少し元気になりましたのでこのまま買出しをして戻り・・・。」
・・・しまった。
重大な事を忘れていた。
「・・・あの、実は一つお聞きしたい事が。」
「俺達で答えられるものであれば大丈夫ですよ。」
「・・・この辺りに食べ物が買える場所はありますか?」
買出しをするにも、どこに何のお店があるか知らない。
このままでは先ほどと同じ状況になってしまう。
「あ、ああ。
それでしたらこの先にありますが・・・。」
「・・・一夏、
時間はあるし案内したほうが早いと思うぞ?
この人は見た所ここに初めて来たようだ。
また行き倒れたら目も当てられない。」
・・・本当の事だけど耳が痛い。
それにしてもこのポニーテールの子は遠慮を知らないの?
「それもそうだな、
俺はこの人を案内するけど2人はどうする?」
「勿論行くわよ。」
「勿論行くぞ。」
男の子が2人に聞くと直ぐに返答が返ってきた。
なんだろう、今2人は視線を合わせてムッとしたような・・・?
「分かった、それなら早速行くか。」
しかし男の子はそんな2人の様子に気がつかないのか、
直ぐに立ち上がって、
「あ、そういえば名前を聞いていませんでした。
俺の名前は織斑一夏です。」
そう自己紹介してきた。
・・・見た所IS学園の制服を着ているし、
ここは正直に答えても問題無いかな?
「フィオナ・イェルネフェルトです。
そちらのお2人は?」
「篠ノ之箒です、よろしくお願いします。」
「凰鈴音よ、よろしくね。」
私が自己紹介をしてから2人も名前を教えてくれた。
織斑君に篠ノ之さん、それに凰さん。
この3人はきっと親しい仲だと思う。
距離感に遠慮と言うものが見えない。
「よろしくお願いしますね。」
「よし、それじゃあ案内しますよ。」
自己紹介が終わった後、織斑君は先導して歩き出した・・・。
「そういえばイェルネフェルトさんはさっき仕事で来てたっていってたけど、
暫くはこちらに居るんですか?」
道すがら流石に暇を持て余したのか、
織斑君はそう話を振ってきた。
「そうですね、
どれくらいになるかは分かりませんが・・・暫くは居ますよ。」
流石に君達の学園を守る為に暫くは居るとは言えない。
そもそも空腹で行き倒れていた私がそんな事を言って信じられるとは思えない。
・・・自分で思って悲しくなってきた。
「最近物騒ですからね、ちょっと心配ですよ。」
「そうなんですか?」
「ええ、この前も・・・。」
「一夏、その事は秘密なはずだが?」
何かを言おうとした織斑君に対して篠ノ之さんは直ぐに遮る。
「あ、そういえばそうだった。
すいません、今のは忘れてください。」
織斑君はアッとした表情で口を塞いでから謝罪をしてくる。
・・・多分福音の事だと思う。
私もその場に居ましたとは言えない。
「気にしないでください、忠告ありがとうございます。
でも大丈夫ですよ、伊達に1人で生きていませんから。」
「それ、さっき空腹で倒れていた人のセリフとは思えないわよ?」
「うっ・・・。」
凰さんに痛い所を突かれた。
正論だから何も言い返せない。
「1人で生きてきた?
家族は居ないんですか?」
「・・・居ませんね、もう全員亡くなってます。」
流石に死んでいるとは言えない。
他人行儀な言葉だから詮索される。
「あっ・・・すいません。」
私の言った言葉でしまったとばかりに謝ってきた。
「事実なので気にしないでください。」
今の行動で分かった。
織斑君は底抜けなお人好し。
いつかそれで足元を掬われなければ良いけど・・・。
私達の間に少し気まずい空気が流れる。
「・・・そういえば3人は同じ学園なのですか?」
こういう時は話題を転換させるに限る。
下手にこのまま分かれても再会の時に気まずいだけだし。
私が振った話題に対して渡りに船とばかりに織斑君は乗ってきた。
「そうですよ、箒はファースト幼馴染で鈴はセカンド幼馴染です。」
「ファースト・・・セカンド?」
なんだろう、意味が分からない。
幼馴染にファーストもセカンドもあるのだろうか。
その言葉を聞いて篠ノ之さんは嬉しそうに、
凰さんは若干悔しそうな表情をしている。
・・・もしかしてこの2人は織斑君に好意を抱いているのだろうか。
だとしたら申し訳無い事をした。
「成程・・・あ、もしかしてここですか?」
とりあえず納得をした後に、
目の前にコンビニエンスストアが見えた。
「あ、そうです。
あとは大丈夫ですか?」
「ええ、大丈夫ですよ。
ありがとうございます、とても助かりました。」
どうやら間違いではなかったらしい。
私は頭を下げてお礼を言った。
「分かりました、それじゃあ俺達はこれで。」
そう言ってから織斑君は、
「あ、そういえば・・・ここで会ったのは何かの縁ですし、
・・・これ、俺の連絡先なんで何か困った事があったら遠慮無く連絡してください。」
そう言って連絡先を渡してきた。
・・・無用心すぎると思う。
行き倒れていたとはいえ、会って間もない私に連絡先を渡してくるなんて。
本当にお人好し。
「在り難い話ですが遠慮しておきます。
・・・それを受け取ったら後ろの2人に刺されてしまいそうなので。」
ちなみに篠ノ之さんと凰さんは織斑君の行動を物凄い形相で見ている。
・・・うん、これで確定した。
あの2人はやっぱり織斑君に好意を抱いている。
「え、何で箒と鈴に刺されるんですか?」
「・・・本当に分からないのですか?」
「ええ、さっぱり。」
織斑君の返答を聞いて思わず溜息が出てしまう。
これは、なんて言うのだろう?
確か・・・朴念仁?
「・・・はぁ、篠ノ之さん、凰さん。」
「はぁ・・・なんでしょう?」
「はぁ・・・なに?」
今の言葉を聞いてやはり2人も溜息を出していた。
「・・・大変ですね。」
「・・・今に始まった事では無いので。」
「・・・そうね。」
「???」
知らぬは亭主ばかりなり。
確かそんな諺もあった気がする。
その後、何故か篠ノ之さんと凰さんと連絡先を交換して3人と別れた・・・。
「・・・さて、これで当面の食料は大丈夫。」
3人と別れた後、
私はコンビニエンスストアで買い物を済ませてホテルへの道を歩いている。
それにしても、やはりコンビニエンスストア・・・略してコンビニは素晴らしい。
色取り取りな物が安価で手に入るなんて、これを考えた人は天才だと思う。
前に居た場所ではとてもじゃないけど考えられない。
「・・・それにしても、いきなり会うなんて思わなかった。」
両手に買い物袋を持ちながら、先ほど会った3人の事を思い出す。
あの3人、あの時は暗くて顔が良く見えなかったけど。
福音撃破の依頼の時に居た専用機持ちで間違いない。
・・・とすれば、恐らく
連絡先を手に入れたのは僥倖だけど・・・少し考えて動かないと。
要らない事をしてこちらが足元を掬われたら笑い話にもならない。
楯無さんの依頼を受けている内は敵ではないけれど、
関わるのは必要最低限にしておいたほうが良いかもしれない。
・・・
「・・・それにしても笑っちゃう、
あの2人の好意に織斑君たらまったく気付いていないのだから。」
織斑君の最後の表情は本当に面白かった。
本当に何が何だか分からないって顔だったから。
それを羨ましいと思いつつも、どこか妬ましいとも感じてしまう。
それは・・・私には許されなかったことだったから。
私には・・・彼しか居なかった。
そんな彼を私は戦場に送り出すことしか出来なかった。
もし、争いが無くて平和な世界で彼と生きられたら・・・。
それはとても・・・。
「・・・考えても仕方が無い事。」
そう思ったけど、それは既に過ぎたこと。
今の私に出来るのは、
その為なら・・・私はどんな事でもする。
そう覚悟を再び固めた・・・。
その後彼に関する情報を集めたけど、やはり思うように行かず。
・・・2週間の時間が経った。
フィオナさん、まさかの行き倒れ間近を味わう。