Infinite Stratos×For Answer   作:西方有敗

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黒グリント君


第5話 選択(脅迫)

あの後ミッションから戻った俺は早速キッチンに入り浸り食事を作った。

本来であればもっと早く戻ってこれたが、

予想外に荷物が多くなったのと、

多種多様な天然物に目を引かれてついつい買い物が長引いてしまった。

だってしょうがないだろ?

こんな夜間だっていうのに24時間やってる店があって、しかも品揃えが豊富と来た。

あっちじゃとても考えられないさ。

 

「やはりお前の作る食事は美味いな、アレから更に腕を上げたか?」

 

「そりゃあね、出されたものに毒が入ってたら堪らないからな。」

 

まあ、俺等に毒はあまり聞かないけどな。

あの世界で生き抜くために誰しもが大なり小なりナノマシンを注入している。

リンクスになる為の処置でもあるが、一番の理由は…まあ薬に対する耐性だな。

ミッションに失敗し、

捕らえられた後に自白剤で機密事項をペラペラ喋ったらしょうがない。

だからこうやって事前にナノマシンを体の中に入れて対策をしているってことだ。

 

「ふぃー、余はご満悦じゃー。」

 

俺とセレンの間に微妙な空気が流れそうになった瞬間、

だらしなく頬を緩ませている束さんからそんな言葉が聞こえてきた。

 

「いやー、グリントに護衛の依頼出して良かったよー。

こんなに美味しい食事なんて始めてだよー。」

 

「お褒めに預かり光栄だ。」

 

一瞬だけ束さんの方を見てから直ぐに目を逸らす。

何故かって?

束さんははしたなくもスカートのまま両足をテーブルに乗っけている。

そう、スカートのままだ。

結果どんどんスカートの裾が上がり、その…俺には眩しすぎる一枚の布が見えた。

 

「おや、どったのグリント?

顔が赤いよ??」

 

そんな俺の気なんていざ知らず、束さんは俺に声を掛けてきた。

 

「…シャワー浴びてくる!!」

 

別にいけない事をしているわけじゃないが、

何故か居た堪れなくなり俺は部屋を飛び出した。

 

「ん~、変なグリント。」

 

「…おい束、そう言うなら下着を隠してからいえ。」

 

「下着?」

 

グリントが飛び出した後、

不思議そうに首を傾げる束に対してセレンはそう突っ込んだ。

 

「あー、なるほどー。」

 

自分の下半身を見て漸く分かったらしいが、

悪戯を思いついた子供の様にニヤニヤと笑っていた。

 

「意外に初心なんだねー、グリントって。」

 

「…機会が無かったからな。」

 

「まあそうだろうねー、

だって隣に居るのがセレンなんだもんねー、仕方が無いよねー。」

 

「…どういう意味だ。」

 

「い~や~、束さんはまだ何も言って無いよ~?」

 

鼻歌でも歌いだしそうな上機嫌さで同じく束も部屋を後にした。

後に残るは食器が置いてある机と、セレンのみだった。

 

「…分かっているさ。」

 

誰に聞かせるまでも無く、セレンは1人そう呟いた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

食器を片付けた後、

グリントが捕虜として連れて帰ってきた4人を前にセレンは立っていた。

 

「クソ、この縄を解け!!」

 

丁度目が覚めていたのだろう。

4人1括りで縛られているが、隊長格と思われる女はセレンに対してそう吠えた。

 

「ほう?

負け犬の割りに威勢だけは一人前じゃないか。」

 

その様子をセレンは手を出す事無くただ感情の篭っていない表情で見下している。

理由は簡単。

万が一何かしらの行動を起こした瞬間その命を絶つ為だ。

磨けば光る原石とグリントは言っていたが、

態々危険を抱える事は無いと判断したセレンはいつでも行動を起こす準備をしている。

 

「いいや!、

我々はまだ負けては…!!」

 

「何を言っても所詮負け犬の遠吠えだ。

そんな物ではこの私を怯ませる事なんて到底出来はしない。」

 

…まあ、セレンが心の奥底から恐怖するなんて言う事は先ず無いのだが。

勿論そんな事なんて露とも知らない隊長の女はただただ睨みつけ、

必死に暴れている。

 

「暴れるなじゃじゃ馬、

もう直ぐ奴が戻る、それまで精々大人しくしておけ。」

 

本来であれば直ぐにでも命を絶ちたい所ではあるが、

この4人はグリントの言うなれば戦利品だ。

所持者の許可無く勝手に奪うのはルール違反だ。

 

「奴…?

お前が私達を倒したのだろう!!」

 

「違うな、私はただのオペレーターだ。

お前等とたた…いや違うか。

お前等を一方的に蹂躙した奴とは違う存在だ。」

 

わざと敵愾心煽るようにセレンは言う。

 

「な、ふざけるな!!

お前の様なオペレーターが居てたまるか!!」

 

もっともである。

 

「悪いが事実だ…っと、来たな。」

 

「悪い、待たせた。」

 

「全くだ、あと数分遅ければコイツ等全員殺していた。」

 

「心にも無い事を。」

 

「「「「なっ…!!」」」」

 

目の前に立つセレンと親しげに話す存在を見て4人は絶句した。

 

「さて…まあ見ての通りだ。

君達は俺に一方的に叩きのめされて掴まった憐れな子ウサギだ。」

 

「お、男だと…!!」

 

丁度シャワーから出てきたばかりのグリントの姿を見て、

隊長の女はある一つの言葉で埋め尽くされる。

 

「ば、馬鹿な…!、

ISは男には扱う事が…!!」

 

「そうだな、お前等の常識ではな。

だが…まあ見せたほうが早いか。」

 

そう言ってグリントは少しだけ意識を集中する。

グリントの体が光に包まれ、次の瞬間にはISを纏った姿が表れた。

 

「さて、見ての通りだ。

君達は俺が駆るストレイドにやられた。

そして無様にもISを取り上げられここで縛られてるって所だ。」

 

「な、何が言いたい…!!」

 

ストレイドの姿を見た瞬間、

蘇ってきた恐怖に支配される前に女は吠えた。

 

「そうだな…そこの彼女には一度やったことだが。

君達に二つの道を示そう。」

 

「なに…!」

 

「1つ、

決してこの場所を口外しないと約束するのであればだが…、

君達を無事に家に帰してやろう、

ただしその場合はこの場所の事を喋った瞬間死んでもらう処置を行い、

更に君達が持っていたISはこのまま俺達の物だ。」

 

指を1本出しながらグリントは言い、

今度は2本目を出しながら。

 

「2つ、

君達はおそらくドイツ軍に在籍していると思うが、

そこを除隊してもらいこのまま俺達の仲間になる。

この場合は君達が所持していたISを返却し、

もし家族が居るのであれば連絡を取る許可を与えよう。

ああ、場合によってはこちらに移住してもらうのも良いかもしれないな。」

 

そう提案した。

…否、これは提案という名の脅迫だった。

 

「ああそうそう、

先に言っておくが2番目の条件を飲んだ後に暴れて逃げ出すっていうのは無しだ。

君達も体感した通り、俺はとても強い。

それに加えて人を殺す事にまったく躊躇は無い。

君達が持つ女としての尊厳を徹底的に踏みにじり、

その後惨たらしく殺した後に君達の体の一部を家族に送り届けてあげよう。

それでドイツが敵になるっていうなら仕方が無い。

その時は徹底的にやらせてもらうだけだ。」

 

極めて無表情に、グリントは4人に対してさも当然の様に言い放った。

 

「我がドイツを敵に回して…それでも勝つ自信があるというのか!?」

 

「ああ、あるね。

今回の依頼はあの研究所の破壊で、

人を殺す気は無かったから君達相手にも優しくしてあげた。」

 

「あ…ありえん…!!、

幾ら強いといっても所詮は一個人だ!

それなのに国を相手に…!!」

 

「…ハァ、あーセレン。」

 

「好きにしろ、と言ってある。」

 

そう言った後にセレンは部屋を出た。

ここから先は、

なるべくならセレンに見て欲しくないと思っていたグリントにとっては好都合だった。

セレンが完全に部屋を出たのを確認した直後、

 

「ガッ!!」

 

「た、隊長!!」

 

グリントは先ほどから吠えている女を躊躇無く踏みつけた。

それも女の命とも言える顔を狙って。

 

「ギャンギャン喚くな小娘、発言の自由を誰が与えた?

今のお前等に許される行為は一つ。

俺が出した2つの提案に対してどちらが良いと答える事だけだ。」

 

「ガ、ガアアアアアアアアア!!!」

 

グリントは女の顔面を踏みつける力を更に強くして行く。

ミシミシミシと音を立てながら、女は絶叫を上げていた。

 

「や、やめてください!!

分かりました、お答えしますから足を!!」

 

「初めからそうしてくれ、

俺はこれでも疲れているんだ。」

 

懇願を聞き入れたグリントは女の顔から足をどけた。

 

「さ、どうする?

君達にとってはどちらもメリットがある話しだとは思うが?」

 

今度は優しく微笑みながら、グリントは再び聞いた。

 

「(何がメリットだ、この悪魔め…!!)」

 

走る激痛に顔を歪ませながら女は心の中でそう毒付いた。

この2つの提案は、どちらもメリットがあるようだが。

その実はどちらもデメリットしかない。

前者を選び無事に国に戻ったとしても、

待っているのは軍からの厳罰。

貴重なISを奪われ、逃げ帰ったと知ったら何をされるか分かったものではない。

ならばと後者を選べば確かにISは返してもらえるかもしれない。

だが、その後はドイツに戻る事は許されない。

それは生まれ育った故郷に二度と帰れない事を意味している。

それに加え、仲間になれと言った。

下手をすると捨て駒として扱われ、そのまま死んでしまう。

…いや、ただ死ぬだけであればまだ良い。

生かさず殺さずの状態で一生を慰み者として過ごす事になる可能性だってある。

 

「さ、どうする?」

 

どちらを取るか、女は慎重に考えるがグリントは待ってはくれない。

脅迫するようにもう一度聞いてきた。

 

「…2つ、確認させてください。」

 

震える声のまま、最後に己の意思で立ち向かった女がグリントに質問した。

 

「何かな?」

 

「…本当に、家族と連絡を取る事を許してくれるのですか?」

 

「ああ、嘘は付かない。」

 

「分かりました…では、もう一つ……この取引…個人ですか?

それとも4人一緒ですか…?」

 

「そこに気が付くとはね、俺の思った通り君は聡い子だ。

その質問に対しては個人…と答えよう。」

 

「…分かりました、では私は2つ目を選びます。」

 

「その答えに後悔は?」

 

「するかもしれません…ですが、

お父様やお母様を悲しませない為には…これしか…。」

 

「…良い覚悟だ、君は素晴らしい人物になるよ。」

 

グリントはそう言って、約束通りISを返した後に拘束を解いた。

 

「ここから左に3つ行った部屋に食事を用意してある。

場所が分からなければ先ほどの女性に聞くと良い。

多少…いやかなりキツイが連れて行ってくれるだろう。」

 

グリントはそう促した後に、

あくまでも優しく最初に覚悟を示した女性を丁重に扱った。

 

「さあ、1人は既に選んだ。

君達はどうする?」

 

部屋を出た事を確認した後、

再びグリントは3人に向き直った。

 

「私は…家族なんて居ないから…。」

 

最初にグリントに攻撃を仕掛けた女がポツリと呟くように言った。

その呟きは隣に居る2人だけではなく、確かにグリントにも届いていた。

 

「なるほど、だからどちらでも構わないと?」

 

「…。」

 

返事の変わりに女は首を縦に動かした。

その目は既に絶望し、完全に濁りきっていた。

 

「ふむ…ならば2番目をオススメするよ。

勿論愛国心があるのなら1番目でも構わない。

理由は…そうだな。」

 

もっともとらしくグリント言葉を区切った後に、

 

「家族が居ない、確かにそれは悲しい事だ。

だけどね…君は生きているだろう?」

 

「…え?」

 

「確かに先ほど俺が出した条件はメリットがある…とは言ったが。

気付いてるかもしれないが、その実はデメリットしかない。

だけど君はそれを選択する自由が与えられているんだ。

正直な所、俺にはそれが羨ましい。」

 

「…羨ましい?」

 

「ああ、俺には選択肢なんて初めから無かった。

殺される前に殺す、盗まれる前に盗む。

そんな世界で生きてきた。

まあこの年齢になって多少は選べるようにはなったが…。

っと話が逸れたね。

君達にはこれから先を少しだけ選べる自由があるんだ。

勿論行動に対する責任はある。

だが、この2つの道を君達に示した時点で俺にも責任はある。

だから…その何だ。

君次第だけど、もしかしたら家族になる事も出来るかもしれない。」

 

「…どういう。」

 

「今はまだ内緒だ、

さ、話は終了だ。

そろそろ選ぶ決心は付いたかな?」

 

立ったままではなく、目線を合わせて会話をする。

暗く濁りきった女の目は、グリントの目を見た時に気付いた。

…いや、気付いてしまった。

決して嘘は言っていない事に。

 

「…2番目を…選びます。」

 

「分かった…先ほど言った部屋と同じ場所で食事を取ってきなさい。」

 

選択をした女に対し、

同じ様に拘束を解き同じ様に優しく部屋から出した。

 

「さあ、後は君達2人だ。」

 

「…私も…2番目を。」

 

「ああ、分かった。」

 

そして、最後に残ったのは隊長の女だけだった。

他の3人は既に食事を取らせている。

ああ、毒?

そんなもの入れる訳が無い。

これから共に行くんだからな。

それに毒を入れて殺したら約束を反故にしてしまう。

それだけはしてはいけない。

信用が第一のビジネスにおいてその信用を自ら壊す。

そんな馬鹿はさっさと死んでしまえ。

 

「…一つ聞かせろ。」

 

「ああ、良いぞ。」

 

流石に芝居がかった口調が疲れてたのか、面倒になってきたのか。

グリントは元々の若干乱雑な口調に戻した。

 

「先ほどの優しさを見せたお前と、

私を足蹴にした時の無表情のお前…どちらが本当何だ?」

 

隊長格の女が最後まで選ばなかったのはこれが理由だ。

グリントは少しだけ驚き、同時に少し考えた後に。

 

「何馬鹿な事言ってんだ?

どっちも俺に決まってるだろ。

戦場において情けを掛けると言う行為はそのまま死に直結する事にもなる。

ならばどうするか?

答えは簡単だ。

徹底的に非情になってしまえば良い。

ただそれだけの事だろう?」

 

ただそれだけの事だろう?

その言葉にはこれ以上の無い程の重さが感じられた。

 

「(私とそんなに変わらないように見えるのに…

どうしてそこまで歪んでいるんだ?)」

 

女がグリントに感じたのは、酷く歪な人間性。

どうしたらそんな考えが出来るようになるか。

その事を思った瞬間、女は有り得ないほどに興味が湧いてしまった。

 

「…お前の名を聞きたい。」

 

「一番か二番かを答えろって言ったんだけどな…まあ良いか。

ストレイド・グリントだ、ああ言い難かったらグリントで良い。」

 

「そうか…ではストレイド。

私も2番を選ぶ。」

 

「へぇ。」

 

女の答えに対し、グリントは意外そうな声を上げた。

 

「なんだ?」

 

「いや、アンタだけは1番目を選ぶと思ったからな。

一応聞いても良いか?」

 

「…ストレイドに対して興味が湧いた、お前の行く末を見てみたい。」

 

「…は?」

 

女が言った言葉が余程予想外だったのか、

グリントは鳩が豆鉄砲を喰らった様な表情を浮かべた。

その余りの場違いな表情に対して…。

 

「…プッ。」

 

女は噴出してしまった。

 

「…あーったく。良いからさっさと拘束解いて飯食って来い。」

 

バツが悪いのか、グリントは頭を掻きながらさっさと部屋を出ようとする。

 

「あ、コラ待て!

拘束解いてって両腕をギチギチにされてるんだぞ!!」

 

「知るかバーカ!、

んなもんテメエで何とかしろ!!」

 

グリントは大股で部屋の出口に向かいながら捨て台詞をはきながら進み。

 

「フン!!」

 

「ゴフッ!!」

 

ドアの入り口前で待っていたセレンの強烈なレバーを受けて倒れた。

 

「セ・・・セレ…ン…出会い頭の…レバーは…。」

 

「さっき行動に対する責任云々言っておいてお前は放棄するのか?

全く持って私には理解が出来んのだが?」

 

「そ…それ…は…。」

 

「ほう?、口答えするのか?」

 

「め…滅相も…。」

 

全ての言葉を言い切る前にグリントは気を失った。

突然の出来事に対し女はフリーズするしかない。

 

「すまんなウチの馬鹿が。

待ってろ、今解いてやる。」

 

「あ、すいません。

ありがとうございます。」

 

その日女は理解した。

この人にだけは逆らっちゃいけない…と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なおこの後グリントはセレンの手により、

縄でギッチギチに固定された状態で部屋に捨てられていたのはまた別の話。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




多分後2、3話くらいで学園編にいけるかなぁと
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