……はい、言い訳です済みません<m(__)m>
仕方ないんですよ! 私という人間は、どうも発作的に甘いのが書きたくなるんです!!
……という訳で、お話を始めましょう(強引)
では、どうぞ~。
冬が終わりを告げて春になり、年度も明けて勇者部の面々もそれぞれが進級した。
お花見などのイベントがありつつも穏やかな日々を過ごしていたが、四月が明けて五月になり、ゴールデンウィークも最終日と言う事になると、学生である以上逃れられない行事が刻一刻と迫ってくることになる。
五月の中旬に予定されている、一学期中間テストである。
楽しいゴールデンウィークから半月もせずに行われる、恐怖のテスト週間である。
と言っても、勇者部の面々は基本的に学業に関して優秀なものが多い。
美森は苦手な教科など無いどころか、全教科に渡り高得点をコンスタントに叩き出すマルチプレイヤーであるし、夏凜は普段からコツコツとした努力を欠かさない勤勉な努力家。
風は、高校進学前は勉強の成績的にヤバい状態が続いていたが、受験勉強での積み重ねが功を奏したのか、勇者として役目を果たす以前の成績を取り戻しつつある。
園子については、先輩である風にすら指導できる程に冴えた頭脳を誇っており、冗談抜きに讃州中学で一番成績の良い生徒と言ってもいいかもしれない。
黒一点の○○は、これまでの定期テストでは平均を少しばかり上回る結果をコンスタントに出しているので、今回も調子を崩さずにやっていきたいと思っていた。
そして、友奈と樹の二人は……成績は悪くはないのだが、胸を張って大丈夫だと請け負える程には自信を持っていなかった。
という事で、高校の都合で来られなかった風を除いた全員で、部室で勉強会を行う事になった。
主に不安を抱えている友奈と樹の指導がメインだったが、成績優良組も小さな疑問点や苦手を潰していける、意義のある集まりになったと言える。
そうして勉強会が終わり解散になったが、疲れでヘロヘロになってしまった樹を心配した○○は、彼女を家まで送って行く事になった。
姉妹の家に着いた○○はそのまま帰ろうとしたが、せっかく来たのだから少し上がって行きませんかと樹に誘われたので、お邪魔させてもらう事になったのだった。
風はまだ帰ってきていなかったので珍しく二人きりだったが、勉強疲れもあるはずの樹がどうしてか張り切っていたので、○○もそれに付き合って彼女の部屋で勉強をしていた。
「ど、どうですか……?」
「もうちょっとで終わるから、少し待ってね。……正解、バツ、正解、正解――――」
問題集の巻末に付いていたテスト形式のものを樹が解き、○○が答え合わせをしていく。
少し不安そうにしている樹だったが、○○の表情を見るに悪くは無さそうである。
採点が終わった○○は答案を樹の目の前に置き、笑みを浮かべながら所見を述べた。
「ジャスト80点! ――という事で、この教科は特に致命的な問題は無さそうかな。もうちょっと頑張れば5、6点くらい伸ばす事も出来ると思うし」
「ホントですか! よかったぁ……」
安堵の表情を浮かべる樹と、それを微笑まし気に見詰める○○。
「他の教科も軒並み80点を越えてるし、これなら余程の事が無い限り平均点は越えられると思うよ」
彼がそう太鼓判を押すと樹は明るい表情で喜んだが、何故か少し俯いて考え込むような仕草を見せた。
どうしたのだろうかと○○が不思議に思っていると、樹は俯けていた顔を上げて真剣な表情で話し始めた。
「あの、先輩……お願いがあるんですけど、聞いて貰えませんか?」
「お願い? まあ内容によるけど……どういう事をしてほしいのかな?」
「もし、今度の中間テストで平均点が90点を越えていたら……ご褒美がほしいんです」
「平均90を越えていたらのご褒美かぁ……うん、良いよ。90点を越えるっていうのは結構……というか、かなり厳しいと思うけど、大丈夫?」
○○は結構な難関だと思い、彼女を気遣うような表情を見せたのだが、樹は○○がご褒美を請け負った事で満面の笑みを浮かべ、胸の前で両手をグッと握って張り切っている様子を見せた。
「ご褒美、くれるんですね! やったぁ! 犬吠埼樹、全力で頑張ります!!」
余りの浮かれっぷりに○○は苦笑して樹を見やっていたが、一体何が欲しいのか気になったので彼女へと問いかけた。
「ご褒美をあげるとは言ったけど、俺に用意できる物なの? あんまり無茶なものを言われても困るんだけど……」
「ふふっ、大丈夫ですよ。お金も何も要りませんから。ただ先輩が居てくれればいつでも貰えるものなんです!」
「へえ……?」
稀に見る機嫌の良さでそう言った樹を、○○は更に不思議そうに見つめた。
お金が要らないということは、金銭的な意味で欲しいものがあるという事ではないのだろう。
となると、より正確にはしてほしい事がある、という事だろうか?
そんな予想を○○は頭の中で巡らしたが、よりやる気を出して勉強を再開した樹を見て、自分も頑張らないといけないなと気分を切り替えて、自習を始めたのだった。
時間は飛んで、テスト期間明け。
テスト明けの開放感を味わいつつも、結果発表という一種の審判の日を勇者部は迎えた。
――――と、大袈裟な表現をしたが、赤点は全員回避したし、平均点すらも大きく上回る結果を叩き出していた。
そして肝心の樹であるが、結果発表の日という事で○○を自分の部屋に招いて、その成果を伝えようとしていた。
「それで、今回のテストの結果なんですけど……えへへ」
「うん、まあ何というか……結果は達成したみたいで何よりだね」
「えっ!? ど、どうして分かったんですか?」
「それはまあ……ここまで帰ってくる時からかなり機嫌よかったし、もうニッコニコだし……バレバレです」
「え、そ、そうでしたか?」
そう言って、自分の顔面をペタペタ触る樹。
そして自分を微笑ましく見ている○○の視線が恥ずかしくなったのか、誤魔化すように咳ばらいをするとテストの結果が記された用紙を取り出して彼に見せた。
「平均点は……91点!? うわっ、すっごいなぁ! 本当に平均が90点台に乗るなんて……俺もこの位あればなぁ」
「先輩はどのくらいだったんですか?」
「俺は平均86点。一応、過去最高ではあったんだけど……平均で5点も負けたかぁ。樹ちゃん、凄く頑張ったんだね。おめでとう」
「えへへ、ありがとうございます! でも、先輩たちが勉強を見てくれたからこんなにいい点が取れたと思うんです。ですから、私からもお礼を言わせて下さい。ありがとうございました!」
そうして暫らくお互いの健闘を称え合っていた二人だったが、それも一段落すると樹が約束していたご褒美の件を切り出した。
「それで、先輩。ご褒美の事なんですけど」
「うん、約束通り平均90以上だったしね。それで、樹ちゃんのお望みは?」
「は、はい! えっと、あの……っ」
気楽な調子で返事をした○○に対し、樹の方はどうにも歯切れが悪い。
顔を赤くして落ち着きがなくなり、あからさまにソワソワした様子である。
そんな彼女の様子に○○も首を傾げたが、樹は一つ深呼吸をすると、姿勢を正して彼の目を見詰め、自分が欲しいものを○○に告げた。
「――――先輩。私と、き、キスを……キスをして下さい!」
「……………………え?」
少々声を震わせながらも、はっきりと自分の望みを言った樹。
それに対し○○は、気の抜けたような反応しか返せなかった。
内容が内容なだけに、自分の自意識過剰なのではないかという、一種の自己防衛めいた思考が働いていたのだ。
「えっと……俺の聞き間違いじゃないなら、あの……キスしたいって言った? 俺と?」
「そうです。……ご褒美に、先輩とキスがしたいって……そう言ったんです」
「…………」
間違いではないと証明されはしたが、何と言っていいか分からなくなった○○は無言で樹の顔をじっと見つめる事しかできなかった。混乱してしまい、それしか出来なかったというのがより正確な所であるが。
黙りこくってしまった○○に不安を感じたのか、樹は今回の事を言い出した経緯について話し始めた。
「みんなで先輩に想いを伝えて、先輩はそれを受け入れてくれてすっごく嬉しかったです。これからずっと楽しい日々が続くんだって思って。でも、私は年下で、それにこんな……ちんちくりんな体形だから、自分だけ置いていかれないか不安で……」
そこで一旦言葉を切った樹は、胸の前で合わせていた両手をぎゅっと握った。
そんな不安を誤魔化す様な仕草を見た○○は、黙って真剣に彼女の話に耳を傾けていく。
「だから、今回のテスト結果でのご褒美に託けて、先輩との関係を一歩進められたらなって……そう思ったんです」
不安そうにしながらも真剣に言葉を紡ぐ樹を、○○も静かに見つめていた。
そして、話し終えた樹に対して彼も自分の考えを述べ始めた。
「樹ちゃんの想いは分かった。で、俺の事なんだけど……そういう事は今までした事なくて……上手に出来るか分からないけど、それでも良いなら、その……お相手を……務めさせてもらえればっていうのが、俺の意見……です」
緊張して敬語で締めてしまった○○だったが、樹は特に気にしておらず、むしろ別の部分を気にしていた。
「え……先輩って、もう誰かとキスを済ませているのかと思っていました……」
「いや、普通に無いからね? ていうか、誰とやるって言うのさ?」
「お姉ちゃん、友奈さん、東郷先輩、夏凜さん、園子さん……誰かとやった事があるものとばかり思っていたんですけど……」
「…………」
樹の言い分が余りにも正当過ぎて、○○は閉口せざるを得なかった。
確かにあの告白を受け入れた時点で、そう言う行為を受け入れる土壌は整っていたと思われても仕方がない。
ただ、幸いと言うべきか何というべきか……今まではそういう事も無く、至って平和に日常を謳歌していた。
それ以前が極めて非日常過ぎたので、本当に普通に過ごすだけで彼女たちを満足させていたのだろうかと○○は考えた。
そんな事をつらつらと考えていた○○だったが、樹の言葉に思考を引き戻された。
「それじゃあ、私達は初めて同士で……えっと、その……本当に……本当に嬉しいです。初めて同士を交換できるなんて……幸せです」
樹の言い方に、本当に恥ずかしくなった○○は彼方此方に視線を彷徨わせ、見るからに落ち着きのない様子になってしまった。
たまに樹と目が合うと、慌てて下を向いて赤くなった顔を誤魔化していたか、それは樹も同様で、ある意味似た者同士な二人なのであった。
そんな中で決心を固めたのは樹の方で、やっぱり彼女は精神的に成長したよな何ていう少しずれた感想を○○は抱いたのだった。
「じゃあ先輩……私はいつでも良いので、お願いします」
「……分かった」
そう言って樹の傍に寄った○○だったが、すぐ傍まで近づいた事で彼女の身体が微妙に震えている事に気付いた。
何時でも良いと言いつつも、緊張していたのだなと分かってしまう彼女の反応に彼も僅かながら緊張が解れた。
そうして少し余裕が出てきた○○は、そっと正面から樹を抱きしめ、その背中をあやす様に優しく叩いた。
「ぁ……先輩……」
○○は言葉は何もかけなかったが、目に見えて身体のこわばりが解れた樹の様子を確認すると、抱きしめるのを止めて、正面から彼女を見詰めた。
「……」
「……」
お互いに何も言わず、無言で正面から見詰めあう。
そして、期待と緊張で顔が紅潮し、瞳も潤んでいる樹の肩へと彼は手を置いた。
ぴくりと樹の肩が震えたが、それも一瞬の事ですぐに収まる。
そして、瞳を閉じて心持ち顎を持ち上げている樹の唇に、彼は自分のそれを、ゆっくりと合わせた。
お互いの唇に柔らかな感触が奔り、次いでその温かさを感じ、頭の中がそれらの事だけで一杯になっていく。
ただ唇をくっ付け合っているだけのキスだというのに、今まで感じた事の無い様な幸福感に包まれた樹は、この時間がいつまでも、永遠に続けばいいのにと願っていた。
そうして、時間にして十数秒ほどの口付けは、○○が唇を樹のものから離した事で終わりを告げた。
「――――はあっ……はい、それじゃあこれでお終いです」
「――――んぅっ……もう終わっちゃったんだ……」
心の底から名残惜し気に樹は呟いたが、ふと○○の表情を見た途端、そんな感傷的な気分は吹き飛んでしまった。
彼は、もうどうやってもこれ以上は赤くならないのではないかと言う程に紅潮した表情をしており、二人で合わせ合った唇をそっと撫でながら俯いてしまっている。
そんな○○の様子を目の当たりにした樹は、心の奥底から溢れ出てくる彼への愛おしさが止められなくなってしまっていた。
「ねえ先輩……もう一回しませんか? さっきは先輩から私にしてくれましたから、次は私から先輩にしてあげますよ?」
「えっ……いや、それは……」
これ以上やったら心臓が持たないと、そう言いたかった○○だったが……樹の不安げな表情に折れて、結局は彼女の提案を受け入れてしまった。
「えへへ……それじゃあ失礼します」
「えっ、ちょ、待って樹ちゃん!?」
○○から許可を得た樹は早速○○とくっ付くと、彼の首に自分の腕を回して抱き着く姿勢を取った。
急に互いの吐息がかかる近さまで距離を詰められた○○は大いに戸惑ったが、そんな彼の様子を他所に、樹は自分の唇と彼のそれとを重ね合わせた。
眼を閉じる暇も無かった○○は、比喩ではなく目を白黒させていた。
「んぅ……ふぅ……っ」
そんな彼に対し、樹はその唇の感触をより感じたくて、自分の唇を擦りつけていた。
その度に、彼女の頭の中が多幸感で一杯になっていく。
そのまま自分の身体を彼に擦りつけるようにしてきた樹だったが、○○はこれ以上続ければ歯止めがかけられないと心の底から危機感を覚え、何とか樹に怪我をさせない様に注意を払いながら自分の身体から引き剥がした。
「むぅ……やっぱり先輩は、私が相手じゃ不満なんですか……?」
「違う……違うよ、樹ちゃん。今から俺の言う事をよく聞いて欲しい」
熱に浮かされてドロリとした瞳をしている樹は、心の底から不満そうにしていたが、○○はそんな彼女に対して懸命に言い聞かせた。
「俺たちはまだ中学生で子どもなんだから、勢いだけで突っ走って責任の取れない様な行動は出来ない」
如何にもな正論を述べる○○に、樹はそれが正しいのだと認めつつも、唇を尖らせて不満そうにするのを抑えられなかった。
しかし、次に彼の口から出てきた説得の言葉に、樹の不満は瞬く間に鎮火していくことになった。
「それに、これが一番大事だけど……樹ちゃんは、まだ身体が出来上がっていないから、そういう事をしたら身体に重大な影響が残ってしまう可能性がほんっとうに高いんだ。俺とそういう事をしたいって思ってくれたのは正直言って光栄だけど、まだそういう事は出来ない。……分かってくれる?」
「先輩……ごめんなさい、私が自分勝手でした……」
真剣に、そして真摯に自分を想ってくれている○○の態度に反省した樹は、少しだけ残念そうにしながらも、○○の言葉を全面的に受け入れた。
「はあ……良かった、分かってくれて。風さんに顔向け出来なくなる所だった……」
反省した樹の態度に○○はホッと息を吐いたが、樹は樹で今まで以上に彼への想いを募らせてしまっていた。
(責任の取れない内はそういう事はしないって先輩は言ったけど……じゃあ、責任が取れるようになれば問題は無いっていう事だよね?)
人によってはお堅いと煩わしく思うかもしれないが、そんな○○の真面目さが樹には魅力的に映っていた。
そして何より、自分の身体を心配してくれた事が樹は嬉しかった。
(あのまま流されても全然おかしくなかったのに……私の身体の事を心配して、理性で必死に自分を押し止めて私を言い聞かせてくれたんだ……先輩……好き……大好き……)
息を吐いている○○を見詰めつつ、彼への想いを募らせていく樹。
そして樹は、先輩と一緒に居れば絶対に幸せになれると確信していた。
それと同時に、絶対に先輩を幸せにしたいとも強く思った。
未だに紅潮している顔を、ノートを団扇代わりにして扇いでいる彼に愛おし気な視線を送りつつ、樹はそんな事を思うのだった。
「……? どうしたの、樹ちゃん。何か、じっと俺の方を見てたみたいだけど?」
「ううん、何でもありませんよ、先輩♪」
「そう……?」
樹の返事に○○は微妙に納得がいかない様な表情で首を傾げたが、そんな考えも次の樹の言葉で吹き飛ぶ事となった。
樹は○○の手を取って、こう言ったのだった。
「先輩、これから先もずっと……一生一緒に居ましょうね?」
「え、あ……う、うん。俺で良ければ……」
「えへへ、ありがとうございます♪」
樹の逆プロポーズ其の物な言葉にも気の利いた言葉が○○は出て来ず、極めて平凡な返ししかできなかったが、そんな彼の反応さえも好ましく思った樹は、幸せそうに――――
――――本当に幸せそうに、笑っていたのであった。
……………………っ(砂糖ダバー)
……さて、遂にやっちゃいましたね(震え声)
何というか、甘い話は書く度に糖度が上がっている気がします……
そして、この手のキスを交えた話も、あと五人分作らないといけないのかなぁ(遠い目)