甘いものって全然飽きが来ないんですよね……不思議だなぁ(すっとぼけ)
という訳で、今回は角砂糖のち練乳、所によりハチミツが降るでしょう(???)
……いかん、テンションがおかしい。
と、ともかく!
ではでは、今回もどうぞ~。
学期末テストも終わり、夏休みまで残すところあと僅かとなった七月上旬。
テストを無事に乗り切った勇者部一同は、テスト期間中停止していた部活の依頼を精力的にこなしていた。
「でも、偶然とはいえ連続して幼稚園とか保育園から依頼があるなんてね。子どもたちの元気の良い事と言ったら……正直めちゃくちゃ疲れた……」
そう言ってこわった身体をほぐす様に腕をぐるぐると回している○○に、一緒に歩いていた友奈は苦笑しながら言った。
「○○君は男の子たちに大人気だったもんね。私達じゃ付き合えないようなちょっと荒っぽい遊びにも引っ張りだこだったし」
「一緒に遊ぶだけだったらまあいいんだけど、怪我とかさせない様に注意しないといけないしね。向こうの先生たちも協力してくれたおかげで、かなり助かったけど」
友奈と○○の言う通り、テストが終わってからの数日、勇者部は幼稚園等からの依頼を連続してこなしていた。
連日子どもたちに付き合い、振り回されていたお陰で勇者部の全員が少々疲れ気味であった為、今日は依頼も無いという事で休養日にする事を樹が決定した。
そんな経緯で今日は解散、という事になったのだが――
「でも悪いね。わざわざ俺の家まで来てマッサージしてくれるなんて事になっちゃってさ」
「ううん、気にしないで。体力的に一番大変だったのは絶対○○君だし。前に皆にマッサージをした時はキミは居なかったから、私のマッサージを味わってもらうチャンスだから」
そう言って、胸の前で両拳をグッと握ってニコリと笑う友奈。
実際、○○は他の部員が友奈のマッサージを体験した日、都合が悪くてその場に居合わせる事は無かった。
後日にどうだったのかと皆に尋ねた○○だったが、何故か全員顔を引き攣らせて言葉を濁し、ハッキリとした事は何も言わなかった。
ならばとマッサージをした友奈に訊いてみたのだが、○○が彼女に尋ねた瞬間に他の皆が電光石火もかくやという機敏さで友奈を連れ出し、なにやら口止めを行なったらしかった。
そういう訳で、○○は友奈のマッサージについてほぼ何も知らないという状態である。
唯一、今回マッサージを受けるにあたって友奈以外の皆から、凄いから覚悟していた方が良いという、忠告と言うか警告というか、そのようなものを受け取っていた。
ただ、○○としては首を傾げるしかない言葉だったので、皆の真剣さはいまいち伝わっていなかったのだが。
ともあれ、○○は友奈を伴って自宅へと帰り着いた。
「それじゃ、俺の部屋で待っててくれるかな。飲み物を用意したら俺も行くから」
「うん、分かった。――ねえ、○○君」
「ん? どうかした?」
○○はグラスにジュースを注ぎながら、横目で友奈の事を見やった。
「初めてだね、○○君の家で二人きりになるの」
「ああ……そう言えばそうか。今までは大体二人以上でウチに来てたしね」
何気ない調子で言った○○だったが、友奈の方を改めて見ると多少の緊張が見て取れたので、出来るだけ呑気に言葉を続けた。
「それじゃ、今日は改めてよろしくね。――はい、ごろーん」
結局友奈と一緒に自室に入った○○はテーブルに飲み物を置くと、おどけた口調でベッドへとうつ伏せに寝転がった。
「あはは、そんなに急がなくても私は逃げないよ。でも期待してくれて嬉しいし、早速始めるね?」
自分の分のジュースを一口飲んで緊張を解した友奈は、早速○○の腰の部分に手をかけて、ゆっくりと擦る様に動かし始めた。
「あ~……何かポカポカしてきたかも……」
「まずはマッサージする部分を擦って血行を良くして、解しやすくするんだよ。どうかな?」
「すごい気持ちいいよ……実際、これだけでも相当リラックスできそう……」
既に声が少し緩んでいる○○だったが、まだ先があるらしいので内心では楽しみにしていた。
それから数分、友奈は腰の部分を丁寧に擦って準備を整えていき、遂にその時が訪れた。
「うん、もう十分かな。それじゃあ、これからしっかりと解していくけど、もし痛かったらすぐに言ってね?」
「りょーかいでーす……」
そんな間延びした返事が出て来るほど、○○は擦るだけのマッサージでリラックスしきっていた。
そして友奈が本格的なマッサージを開始した時――
「――――んっく!?」
そんな、今まで○○と接してきた中で友奈が聞いた事も無い様な声が彼の口から漏れ出たため、彼女は驚いて解していたその手を止めてしまった。
「ご、こめん! 痛かったかな?」
友奈は申し訳なさそうな表情で○○に尋ねたが、その声に応えてのろのろと首だけ彼女の方へと振り返った彼は違うと答えた。
「いや、痛くは無かったよ。まぁ……今まで以上に気持ちよくて、変な声が出たけどさ……。痛いときは痛いって言うから、友奈は俺の変な声なんて気にせずに続けてね……?」
そう言った○○の表情は本当に気持ちよさそうで、嘘を言っている様には全く見えない。
ただし、完全にリラックスしきったその表情は友奈も見た事が無いもので、彼女をドキリとさせるものだったのだが。
「う、うん、それなら良かった。それじゃあ、続きをしていくね?」
「お願いしまーす…………うっあ……んんっ……はぁ~……」
友奈が一つ揉む毎に、○○の口から快感を示す呻き声が漏れ出て来る。
それだけならまだ良かったのだろうが、先程見た○○の完全にリラックスしきった表情と合わさって、友奈の心臓が早鐘のように打ち始めた。
「あぁ~……ゆうな……すごい、きもちいい……うあぁっ……」
「あ、あはは……うん、それなら良かった」
さっき言った事と全く同じ言葉を、繰り返し言っている友奈。
普段の友奈ならもう少し嬉し気な声音でお礼を言っていただろうが、今の友奈にそんな心の余裕は消え失せていた。
先程も言ったが、友奈が一回揉む毎に○○も呻き声などで反応を返すのだが、それはもう一年以上の付き合いになる友奈も聞いた事が無い、完全に気の抜けた、緩んでいる声だった。
もう少し言えば、完全に無防備な、100%油断している姿である。
友奈のマッサージで完全に伸びている○○は、無自覚にトロンとした声を上げ、友奈の事を褒めていた。
友奈はその事を嬉しく思いつつも――――内心では、理性が少しずつ削られているのを自覚していた。
「うぅ……はっぐ……んんっく……は~っ……あぁ~……」
(平常心平常心……落ち着いて、落ち着いて、私……!)
間延びした、気の抜けまくった声を漏らしながら友奈のマッサージを満喫する○○。
そんな彼の様子を嬉しく思いつつも、一方では理性がガリガリと削られていく友奈。
そんな、彼にとっては至福、友奈にとっては天国と地獄の双方を同時に味わう事になったこのイベントも、段々と終わりが近づいてきた。
「それじゃあ、肩もみをするから後ろに回るね?」
「はーい……」
相変わらずぼうっとした声で返事をした○○は、うつ伏せになっていた身体を起き上がらせてベッドサイドに腰かけ、友奈はそんな彼の背後に回る。
そうして最後の行程である肩もみを行なっていたのだが、やはり○○の気持ちよさげな呻きは無くならず、友奈の理性を削っていた。
「う~ん、お客さん凝ってますねー」
「あはは、友奈それ本職さんのマネ? ……うあぁ……っくぅ~……あ~、すっごい良いよ~……」
(○○君、可愛いなぁ……って、何考えてるの私!? 平常心平常心……!)
もう止めておかないと、本格的に拙いことになる……そう思いつつも、友奈は○○へのマッサージを止める事が出来ずにいた。
彼女も自覚していなかったが、今まで見た事が無かった想い人の姿をもっと見たいと、そう言う考えが無意識に働いたのだろう。
そういう無意識の思いが、友奈に予定外の行動をとらせた。
「それじゃあ、正面から肩を揉んで終わりにするね」
「うん、分かった……」
正面から肩を揉む事はあり得ない事ではないが、珍しい事とは言って良い。
○○も普段であれば疑問を呈しただろうが、この時の彼はマッサージのお陰でぼうっとしており、碌に頭が回っていなかった。
対して、友奈も自分が言った事ながら困惑していた。
(あ、あれ……? こんな事する予定は無かった……よね……?)
自分で自分の言った事を訝しんでいる友奈。
しかし、○○の正面に回って彼の表情を見た時、そんな細かい疑問は消し飛んでしまった。
マッサージ中は見られなかった○○の気持ちよさげな表情が、真正面から友奈の瞳を直撃する。
男の、気持ちよさで緩んだ顔など見ていて面白いものでは無いはずだが、そこは想いを寄せている相手への補正が成せるワザだろうか。
(か、可愛い……っ! ○○君、すっごく可愛い……っ!!)
そんな感想が、ひたすら友奈の頭の中を駆け巡り――そして、遂に。
――――――――――プチッ
そんな彼の表情を見てしまった友奈は、ここまでで削られていた理性がプツンと切れるのを自覚した。
「……ん? どうしたの、友奈?」
正面から肩を揉んでいた友奈の手が唐突に止まった事を不思議に思った○○が、気の抜けた声で尋ねる。
だが、友奈はそれには答えず、○○の肩に手を乗せたまま俯き、身体をブルブルと小さく震わせている。
「……? あの、ゆ――」
友奈、と言おうとした○○だったが、最後まで言う事は出来なかった。
○○の肩に乗せられていた友奈の手が、軽く前に、つまり○○の方へと押し出されたからである。
「へ……?」
そんな気の抜けた声と共に、重力に従って仰向けにベッドへと倒れ込む○○。
普段ならこんな風に軽く押された位で倒れる事など無かったのだが、今はマッサージのせいで完全に脱力している状態。
故に、本当に無抵抗で倒れてしまった。
「友奈……?」
仰向けに倒れ込んだ○○は再び友奈に対して疑問の声を上げるが、友奈はそれにも答えず、覆いかぶさる様に○○の上から身体を寄せてきた。
近づいて来る、友奈の顔。
そして、友奈の顔が近づくにつれて、影になっていて良く見えなかった彼女の表情がはっきりとしてくる。
そして、○○には今現在友奈がしている表情に心当たりがあった。
あの日、樹と初めてキスをした時の彼女と瓜二つな目をしている――と。
そんな事が○○の脳裏を過ぎったが、友奈の行動は今さら止まらないし、当の本人にも止める意思は無かった。
「○○君……」
友奈は熱の籠ったドロリとした瞳で、同じく熱の籠った声音で想い人の名前を呼ぶ。
彼女は仰向けの○○の首に抱き着くように腕を回し、そのまま圧し掛かる様にして自分の顔を○○へと近づけていく。
そして――――自分の唇と、彼のそれとを重ねた。
「んぅ……っ」
「…………!?」
押し倒されてから僅か数十秒という早さで行なわれた事であった為、○○の鈍った思考回路では着いて行けていない。
友奈は口付けをしつつも甘い吐息を漏らしているが、○○はと言えば疑問符が頭の中に乱舞している。
ともかく、いきなり氷水をぶっかけられるレベルの衝撃を受けた○○だったが、押し倒されているという状態では、出来る事など最早何もなかった。
友奈を突き飛ばすなど論外であるし、今まで生きてきた中で最高に驚いたと言えるが、それだけとも言える。
(樹ちゃんとの事が無かったら、心臓が止るくらい驚いたかもな……)
○○本人がこう考える通り、樹とのキスの経験が多少の冷静さをもたらしたのは確かだった。
実際あの日以来、彼は樹にねだられて度々彼女とキスをする様になっていたのだから。
それは兎も角。
○○は自分の理性が飛んでしまわないように心を強く持ちながら、友奈が冷静になるのを待っていた。
友奈は○○を抱き寄せながら、彼の唇を自分のそれで甘噛みする様にして吸い付いている。
「んぅ……ちぅ……ん、ふぅ……ぁむ……」
断続的なリップ音が、何度も何度も部屋に響いているのだから、どれだけ彼女が夢中なのかは推して知るべしである。
「ちぅ……ぷはっ……はあっ、はあっ、はあっ……」
そうして五分ほど夢中で○○とキスをした友奈は、遂に息が上がってしまったのか、彼の唇から自分のそれを離すと、呼吸を整える様に何度も息継ぎを行なった。
「はあっ、はあっ…………え、あ……あれ……?」
そうして息を整えていると、自分が何をしてしまったのか正確に理解が及んできて、固まってしまった。
目の前には仰向けに倒れた○○がいて、自分はそれに上から圧し掛かっている。
仰向けのまま、ぼうっとした表情で自分を見つめる○○の口元は涎でべとべとになっていおり、そして自分も同様に口元はべとべと。
何より、先程彼から顔を離した時に、自分の口元からつうっと一筋の銀糸が伸びて、プツリと切れたのを目にしたばかりである。
「え、え……あれ、そ、そんな……ウソ……っ」
友奈は自分が何をしてしまったのかを察し、上気して火照っていた顔は殆んど一瞬で青ざめた。
そして、飛び上がる様にして○○の上から身体を退けると、○○の部屋の床で土下座を敢行した。
「う、ううん……よっこいしょ、と……あれ?」
そう言いながら身体を起こした○○の目に飛び込んできたのは、小さく震えながら土下座をしている姿であった。
いきなり押し倒されてキスをされたかと思ったら、今度は自分に向けて土下座をされている。
控えめに言って訳が分からないと思った○○は、どうしてそんな事をしているのかと現在進行形で土下座中の友奈に尋ねた。
「えっと……どうして土下座なんてしてるのかな?」
「だって、私は……○○君に無理やりキスなんてして……そんなの絶対ダメな事なのに……ごめんなさい……本当に、本当にごめんなさい……っ」
今にも死ぬのではないかと思うような蒼白な顔色で、非常に深刻な声音で彼に謝罪している友奈。
その様子を見ていた○○は、無理やりなキスで俺の事を傷つけたのだと思っているんだろうなと考えを巡らせた。
○○の目の前の友奈は、可哀想なほど小さくなって震えている。
嫌われるかもしれないという、彼女にとって最悪の結末が頭を過ぎって離れないのだろう。
(こうなったら、いくら言葉を並べ立てても効き目は薄いだろうな……)
そう考えた○○は、覚悟を決めて一つの行動を取ることにした。
百の言葉よりも一つの行動――彼の父が、生前によく言っていた言葉である。
「ねえ、友奈。そんな土下座なんてしてないでさ、頭を上げて欲しいな。そうじゃないと話も出来ないし……ね?」
「……うん」
彼のその言葉に、友奈が恐る恐る、おずおずとその頭を上げた時――
「えっ――――んぅっ!?」
○○は友奈を抱き寄せ、今度は自分から彼女にキスをした。
「んっ……ふぁ……ちぅ……っ」
急にキスをされて心底驚いた友奈だったが、数秒後にはその瞳はトロンとして潤み、おそるおそる自分の腕を彼の背中に回した。
そうしても拒絶されなかった事に友奈はポロリと涙を零し、彼の優しさに心から感謝した。
そうして優しいキスが終わると、顔を離した○○が友奈に視線をしっかりと合わせて、こう言った。
「俺は気にしてないから。その……恋人とキスをしたいと思うのはごく自然な事なんだし……俺もその、嬉しかったから」
そう彼女に告げて、自分の胸に抱き寄せた。
○○に抱き寄せられた友奈は、彼の温かさを感じながら今この瞬間の幸せを噛みしめていた。
「こんなに○○君が優しいから、私達は離れられなくなっちゃうんだよ?」
溢れる様な幸福感を覚えながら○○に向けて言った友奈の言葉に、彼も間を置かずに返した。
「ずっとみんなの……友奈の傍に居るんだから、問題ないよ」
「うん……うん……っ」
使い古された様な、陳腐な言葉だが……そんな事は、友奈には関係が無かった。
○○の胸の中で夢見心地になりながら、友奈はぼんやりと考える。
今はほとんど貰いっぱなしだけど、そう遠くない未来に私たちの全てで○○君を幸せにしたいなぁ、と。
その日を夢見て、友奈は微笑む。
愛する人と過ごす、幸せな日々を噛みしめながら。
これを読んだ人はどの位糖分を摂取するんでしょうかね?(唐突)
因みに私は何を食べても甘く感じます(病気)
……とまあ、冗談はさておき!
何か樹の時より描写が過激になってるような……?
あと四人……大丈夫でしょうかねぇ……?(予定は未定)