ある転生者と勇者たちの記録   作:大公ボウ

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ヤバかった、マジでヤバかった……!

もう今月は投稿できないかと思いました……。

皆さんも、夏バテからくる体調不良には十分注意して下さい!(時期的に既に遅い)

ではでは、始まりです!


大人なキミ、子供なキミ

「冷蔵庫に残っているのを考えると、これと……あっ、あれも要るかな?」

 

夏休みが始まってからしばらく経ったある日、風は夕食の買い物を行なっていた。

 

夏バテ対策にとスタミナの付く献立を頭の中で思い浮かべつつ、手早く買い物を済ませていく。

 

「さーて、買い物はこれでお終い。今日は○○も来てるし、張り切らないと!」

 

そう言って、目に見えて機嫌の良い風は、鼻歌でも歌いそうな弾んだ足取りで帰路についた。

 

先程風が考えた通り、今日は姉妹の家に○○がお邪魔して、樹と二人で夏休みの宿題に勤しんでいる。

 

買い物に出るまでは風も一緒に勉強していたのだが、○○が家に来たからには自分の料理をどうしても食べて貰いたいという、乙女心によって一時抜け出して来ていた。

 

「ただいまー」

 

買い物から帰った風はそのままリビングまで行くと、食卓に夕食の材料を置いて一つ息を吐いた。

 

「さーて、マイシスターと○○はどうしているのやら……?」

 

そんな事はふと頭に浮かんだ風は、樹の部屋で勉強をしている二人の様子を見に行ってみる事にした。

 

「あれ、ちょっとだけ開いてる?」

 

風の言葉通り、樹の部屋の扉は完全に閉まっておらず、外から中を覗いても簡単にはばれないと思われる程度に開いていた。

 

閉まっていたなら風もそのまま普通に入ったのだろうが、中途半端に覗ける程度に開いているという事が、彼女の悪戯心を動かした。

 

「ふっふっふ……二人はちゃんと勉強しておりますかねぇ~?」

 

悪戯っぽい笑みを浮かべながら、扉の隙間から中を窺う風。

 

様子を見るに、○○は樹の解いた問題の答え合わせをしているらしく、赤ペンを持って樹の答えと模範解答を見比べている所だった。

 

「ど、どうですか、○○先輩……?」

 

「んー……よし、終わり。しっかし本当に凄いね、樹ちゃん。また満点だよ」

 

「やったあ!」

 

「これで何連続かな? 十回越えてから、数えてないんだけど……」

 

(十回以上連続で満点!? 樹ったら凄いじゃない!)

 

部屋の中の様子を窺いつつ二人の会話を聞いていた風は、妹の成績がこのところ急上昇していたのは知っていたが、ここまでとは流石に知らなかった。

 

そんな風の考えを他所に、二人の会話は続いていく。

 

「それじゃあ先輩、満点取ったから約束のご褒美下さい!」

 

「分かった分かった、分かったからそんなに引っ張らないでって。……にしても、そんなに嬉しいもの?」

 

「すっごく嬉しいですよ! ……先輩はそうじゃないんですか?」

 

不安そうな表情で言う樹に慌てたのか、○○は早口で否定の言葉を紡ぐ。

 

「いや、そうじゃないけど! でも、ご褒美と言いつつ俺の方も得をしているような感じだし……」

 

「なら良いじゃないですか! 私はご褒美貰って嬉しいし、先輩もちゃんと得をしていると感じてる……何か問題ありますか?」

 

「そう言われると……何も問題ない、のかな?」

 

「そうです! はい、この話はこれで終わり! ご褒美の時間ですよ!」

 

「分かりましたよ、お姫様。それじゃ、隣に座るよ」

 

(ご褒美……? ○○の方も得をしていると思ってる……? どういう事かしら?)

 

テンションがかなり高い樹に苦笑していた○○は、テーブルの対面に座っていた彼女の隣へと移動する。

 

樹の隣で胡坐をかいた○○の隣に樹もくっ付く様に座り直し、彼の方を見上げる。

 

そんな樹を○○は抱き寄せると、彼女は心持ち顎を上げ、目を閉じて何かを待つようにじっと動きを止める。

 

(え……? あれ、これって……? …………え、まさか)

 

今や悪戯心から覗いていた事も忘れ、固唾を呑んで二人の様子を見守る風。

 

そんな風が覗いている事など知る由も無い○○は、樹の唇に自分のそれを重ねた。

 

(――――――っ!? えっ、ちょっ、…………………………えぇ!?)

 

二人の行為によって、混乱の極みに陥る風。

 

そんな彼女の様子など露知らず、樹と○○は唇を重ねたまま身じろぎもしない。

 

正確には樹の方は少し肩をぴくりと震わせているが、心で処理できない幸福感が身体を震わせているのだろう。

 

そして、永遠とも取れる様な長い一分間が終わり、何方ともなく唇を離した二人だったが、樹の方は熱に浮かされてそのつぶらな瞳が潤んでいる。

 

それを察したらしい○○は自分の胸に樹を軽く抱きとめて、落ち着かせるようにその背中を撫でさすった。

 

(な、なんか○○も樹もすっごい慣れてるような……? ていうか、さっき十回連続とか言ってたし……え、こんな事を十回以上もしてるってこと!?)

 

ほぼ真実にたどり着いてしまった風の頭は、それはもう面白い位に混乱した。

 

取りあえず、落ち着くためにすぐさま覗くのを止めてキッチンに急ぎ足で戻る風。

 

喉がカラカラになっているのにやっと気付いた彼女は、蛇口からコップに水を注いで一気に飲み干し、多少は落ちついた頭で先程の事について考えを巡らす。

 

(樹と○○は……えーと、その……き、キスをしていたって事で……いい、のよね?)

 

そこまで考えて、風は思わず自分の考えに苦笑した。アレがキス以外の何だと言うのだろうかと。

 

(で……見た限り、樹がせがんでいて○○はそれに応えていた感じだったわよね? ……というか、ご褒美って言ってたし、樹が要求した可能性の方が高いだろうし……)

 

○○の方がご褒美の内容を提示した可能性も無い事は無いが、風が知る限り彼はそんな事をするとは思えなかった。

 

(でも○○も、満更じゃないみたいだったし……ま、まあ樹とキスできるなら、そりゃあ嬉しいでしょうけど?)

 

可愛い妹の艶姿を思い出して一人納得する風だったが、そこではたと気付いた。

 

(キスを何度もしている妹に対して、碌に手も繋げていない姉……。どこでこんなに差が付いたのかしらねぇ……フフフ……)

 

食卓に手を突いて、がっくりと肩を落とす風。

 

乾いた笑いが零れ出て少々不気味だが、そんな事を気にする余裕は今の彼女には皆無であった。

 

そんな感じで自分の考えに没頭していた風だったが、彼女が帰ってきた事に気付いた樹と○○の二人が部屋から出てきた事を察して、慌てて取り繕って二人を迎えた。

 

「あっ、えっと……た、ただいま。い、今から夕飯を作るから、もう少し待っててね?」

 

だが、上擦った声を上げてしまい、それを不思議に思った二人は顔を見合わせて首を傾げた。

 

「お姉ちゃん、何か変だけど具合でも悪いの?」

 

「樹ちゃんの言う通り、何時もと様子が違いますけど……何かあったんですか?」

 

「う、ううん、何でも無いわよ? あたしは至って普通だし! 具合も悪くないし!」

 

明らかに通常とは違うテンションを見せながら言っても説得力は皆無だったが、樹と○○はお互いに顔を見合わせながらもこれ以上の追及はしない事にした。

 

風さんの事、気にかけておいた方がいいかもという意図のアイコンタクトを○○が樹に送ると、彼女も分かりましたとばかりに軽く頷く。

 

そんな、目と目だけで通じ合ってしまっている様に見える二人を目にした風は、二人の仲の深まりをひしひしと感じて、少しだけ胸が痛んでしまい、そんな事を思ってしまう自分が少し嫌だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな、風の心の平穏が若干乱れる事があった日から一週間ほど経ったある日。

 

「お姉ちゃん、本当に大丈夫……? やっぱり私、行くの止めた方が良いんじゃないかな……」

 

「あー、良いから良いから。……樹、あんたはみんなとの約束通り、お祭りを楽しんできなさい」

 

ベッドで横になった風は樹にそう言って、送り出そうとしていた。

 

今日は夏祭りが行なわれる予定であり、勇者部のメンバー全員で行こうと計画していたのだが、当日になって風は風邪をひいて熱を出してしまい、参加できなくなってしまった。

 

前日に少し寒気を感じたので用心していたのだが、それも空しく、朝起きたら熱が出ていたという顛末である。

 

こんな有様ではとてもお祭りに行く事なんて出来ないと落胆した風だったが、それを表には出さず、樹にはみんなと楽しんでくるようにと言い含めて見送ろうとしていたのだった。

 

結局樹も最終的に折れたが、もし本当に風を一人きりにしてしまうのなら断固として出かける事は無かっただろう。

 

「それじゃあ先輩……お姉ちゃんのこと、よろしくお願いします」

 

「うん、分かった。今回の事は残念だけど、また機会はあるんだし。次はきっと全員で行こうって、みんなにも伝えてね」

 

「はい。それじゃあ行ってきます」

 

「楽しんできてね。その方が、風さんも絶対に喜ぶし」

 

お互いに気遣い合った樹と○○はそう言って彼女を送り出すと、彼は風の部屋へと引き返した。

 

「風さん、気分はどうですか?」

 

「今は特に問題ないかな。……ごめんね、○○」

 

普段と違う気弱そうな表情を浮かべながら、風は中腰になって自分を心配そうに覗き込む少年にぼそりと言った。

 

「俺が祭りに行けなかった事について謝ってるんですか? そんなの気にしないで下さいよ。樹ちゃんにも言いましたけど、また機会はあるんですから」

 

「ごめ……ううん、ありがとう」

 

「はい、こちらこそ。それじゃあもういい時間ですし、夕食の準備をしてきますね」

 

風の言葉を聞いた○○は優しく微笑むと、言葉通り夕食の準備に取り掛かるべくキッチンへと向かった。

 

ここ一年ほど風や美森の料理の手伝いをしてきた○○は、簡単な料理なら一人でも問題なく作れるレベルに達していた。

 

中学三年生という事を考えれば、十分と言えるだろう。

 

そして、本日の夕食は煮込みうどんである。

 

これなら、麺を柔らかく煮込めば風邪をひいている風にも食べやすい。

 

という訳で、早速料理に取り掛かる○○。

 

たまに料理の手を止めて風の様子を見に行くが、○○が持ってきたスポーツドリンクを飲む以外は大人しくしている。

 

暫らくして煮込みうどんを完成させた○○は、小さな土鍋にそれを入れて風の部屋へと向かった。

 

部屋のテーブルに土鍋の乗ったお盆を置いた○○は、風を助け起こして食べやすい体勢にしてあげた。

 

そして、小さな器に麺と具、そして出汁を移してから風の傍に行き、手ずから食べさせようとする。

 

「それじゃあ口を開けて下さい。はい、あーん」

 

「え、ええっと……あ、あたしは自分で食べられるから、そういうのは遠慮しようかな~……」

 

顔を赤くしながら断ろうとした風だったが、この場では○○の方が一枚上手だったらしい。

 

「風さん……自分が弱っている時くらい、他人に頼ってもばちは当たらないですよ? ……それとも、俺は風さんが頼れないと思うほどダメな男ですか?」

 

「うぅっ……わ、分かったからそんなしょんぼりしないでって。あ、あたしは……○○の事、とっても頼りにしてるんだから……」

 

「あはは、ありがとうございます。ではどうぞ、あーん」

 

「くうぅ……あ、あ、あーん……」

 

してやったりという表情をしている○○を、恨めしそうに見やりながら彼にうどんを食べさせてもらっている風。

 

想い人とはいえ、年下の少年に甘えているという状況に年上としての意地が少々疼いたが、それ以上に女心が擽られていた。

 

○○は普段から六人全員に対してきっちり平等に接していて、誰かを特別に贔屓したり、逆にないがしろにしたりすることは絶対に無い。

 

そんな○○が、今だけは自分だけを見て、甘やかしてくれている。

 

多少引いたとはいえ熱に浮かされた頭に、そんな○○の態度は優しく染み渡っていた。

 

普段よりも格好良く見えてしまう○○の姿にぼうっとしながら食べさせてもらっていた風だったが、食事の時間はいつまでも続くものでは無い。

 

終わってしまった食事の時間を残念に思いながら再び横になった風だったが、食器を片付けて戻ってきた○○はこんな事を言ってきたので歯止めが外れそうになってしまいそうだった。

 

「何かしてほしい事とかありますか? 何でもいいですよ」

 

「何でも……?」

 

彼の言葉を聞いた風の脳裏に、この間見た○○と樹が行なっていた行為の光景が過ぎる。

 

自然と風は○○の唇に視線が吸い寄せられてしまうが、ぼうっとした様に何も言わない彼女を不思議に思ったのか、○○が彼女の目の前で軽く手を振って声をかける。

 

「風さん? 風さーん?」

 

「え……あっ。ご、ごめん、ちょっとぼーっとしちゃって……えっと、手を……」

 

ハッと我に返った風は、取り繕う様に言い訳をすると、視線を伏せて恥ずかしそうにお願いをした。

 

「手……握って欲しいなぁ……」

 

「分かりました。はい」

 

「あっ……」

 

ぎゅっと自分の手を包み込むように握ってくる○○に、風の心臓が高鳴っていく。

 

○○に聞こえやしないかと思うほどに暴れる心臓に風は緊張してしまったが、彼は薄く微笑んでいるだけで普段と変わりない。

 

自分の気持ちに気付いたあの日と同じく、自分よりもよっぽど余裕のある、別の言い方をするなら大人な態度でいる○○。

 

そんな○○の雰囲気を感じ取ってしまった風は、急に恥ずかしくなってチラチラとしか彼の顔を見られなくなってしまうのであった。

 

暫らくそうしていた二人だったが、外が完全に暗くなったころに風を促して、リビングに移動してきていた。

 

食卓から持ってきた椅子をリビングの窓の前に持って来て、二人で並んで陣取る。

 

「急にどうしたの?」

 

「まあ、見てて下さいよ。俺の予想通りなら、ここから良いものが見られる筈なんです」

 

「良いもの……?」

 

風は疑問符を浮かべて○○を見詰めたが、彼は悪戯っぽく笑うだけでそれ以上は何も言わない。

 

何があるのかと思っていた風だったが、○○の言う通り暫らくすると、遠くで何かが空に向けて打ち上がった。

 

それはある一定の高さまで上がるとパッと光の花を咲かせ、余韻を寄越しつつも消え去っていった。

 

思わず風が○○の方を見ると、ホッとした様な表情を浮かべつつも子供のように笑っていた。

 

「○○、これって……」

 

「はい、みんなが言っている祭りで打ち上げられている花火です。この場所と祭りのあっている場所を考えて、もしかしたら見えるんじゃないかなって思ったんです」

 

続いて打ち上がっている花火に目をやりつつ、○○が説明していく。

 

「でも良かったですよ、ほんとに。風さんをここに連れてきて、実際は見えません、音しか聞こえませんでしたー……なんて事になったら、カッコ悪すぎますからね……ああ、良かった」

 

「……ありがとう、○○」

 

「ふふっ、喜んでもらえたなら良かったです」

 

○○の心遣いに胸が詰まりそうになった風だったが、何とかそれだけは言う事が出来た。

 

そして、○○の表情を見た時に、また改めて自分の気持ちに気付いた。

 

――自分は、○○の大人っぽい所が好きなんだと思っていた。実際に彼のそういう頼りになる所は本心から好きだし、そこに嘘は無い。

 

――でも、そんな彼が子供っぽい笑顔を見せてくれるところ。一番好きなのは、そういう無防備な表情なんだと。

 

打ち上げ花火を見ながら、子供のように、歳相応の笑顔を見せる○○の表情を横目で見ながら、風は自分の心の一つの側面に気付いた。

 

風が自分の方を見ている事に気付いた○○はどうしたのかと問うが、風は軽くはぐらかした。

 

「どうしたんですか、風さん?」

 

「ううん、何でも無い。ちょっと気付いた事があっただけだから」

 

「そうですか……? なら良いんですけど」

 

窓の外に打ち上がる花火を、二人で並んで見ている風と○○。

 

肩が触れ合うような二人の距離は、近づいた二人の心の距離そのものの様で、風は確かな幸せを感じていた。

 

そんな、風にとって夢心地の様な時間も過ぎ去り、樹がお祭りから帰ってきた後。

 

そろそろいい時間だという事で、○○も帰宅することになった。

 

「泊まっていってもらっても、全然いいのに……」

 

「こーら、樹。あんまり○○を困らせちゃダメよ?」

 

「はぁーい」

 

唇を尖らせてすねたような表情で○○を引き留めようとする樹と、そんな彼女を宥める風。

 

二人の姿を微笑ましく見ていた○○だったが、今日はもうお終いである。

 

「それじゃあ、今日は――」

 

「あ、ちょっと待って、○○」

 

玄関まで見送りに来ていた二人に別れを告げようとした○○だったが、風に言葉を遮られた。

 

「どうかしたんですか、風さん?」

 

「うん。今日のお礼にあげたいものがあるんだけど、受け取って欲しいなって」

 

「お礼ですか? そんな、気にしなくていいのに」

 

「ダーメ。受け取り拒否は不可! 絶対に受け取ってもらうからねー♪」

 

冗談めかして言う風に、○○も観念したという表情で頷く。

 

「分かりました。では、ありがたく」

 

「うん、よろしい。じゃあ、目を瞑ってくれる?」

 

風の言葉に従って、彼女の方を向いてから目を瞑る○○。

 

何だろうかと思っている○○を他所に、風は短く呼吸を整えてから彼の首元に腕を回して抱き着いた。

 

何事かと○○は思い、姉の突然の行動を目の前で見ていた樹はこの後の行動が予想できてしまい、思わず両手を口元にやってしまう。

 

そして風は○○に抱き着いたまま、自分の唇を○○のそれに重ねた。

 

「んっ……」

 

そんな音が風の口元から漏れ出るが、いきなりの事に○○はそれ所ではない。

 

思わず目を開けてしまった○○の目前には、瞳を閉じつつもうっとりとしている事が分かる風の顔。

 

一方、風の後ろに居た樹は姉の突然の行動に思い切り動揺して両手で自分の顔を隠していたが、指の隙間からしっかりと二人の口付けを見ていたのだった。

 

僅か十秒ほどのキスであったが、三人ともそれ以上に長く感じていた。

 

「――――はぁ……。ふふっ」

 

名残惜し気に唇を離した風は意味深に微笑むと、今度は○○の耳元に唇を近づける。

 

「あたしのファーストキス、大事にしてね♪」

 

「…………は、はい」

 

熱の籠った声音で囁かれた風の言葉に、○○は混乱しながらも何とか頷き、ギクシャクとした動作で犬吠埼家を後にしたのであった。

 

○○を見送った風は後ろに居る樹の方を向いたのだが、彼女の愛する妹は○○と同様に顔を赤く染めて恥ずかし気にしていた。

 

「……お姉ちゃん、すっごく大胆だったね」

 

何とかそれだけ言葉を絞り出した樹だったが、次に風の口から出てきた言葉に唖然とする羽目になる。

 

「ま、あたしも○○とのキスを見せたし、これでお相子ね」

 

「え……?」

 

樹の頭にいくつもの疑問符が浮かぶが、姉のその言葉を吟味すると、出て来る結論は一つしかない。

 

それに思い当たった樹は先程以上に顔を真っ赤にするが、済んでしまった事なのでもうどう仕様も無い。

 

「わ、私と先輩がキスしてた時、お姉ちゃん見てたの!?」

 

「部屋のドアはちゃんと閉めた方が良いわよ~?」

 

「~~~~~~~~~~っ!! も~~~~~~~っ!!」

 

「あっはっは! ごめ、ちょっ、ごめんってば! あたしも見せたんだから許してって!」

 

風に詰め寄ってきた樹が、駄々っ子の様な仕草で彼女の胸元をポカポカと叩く。

 

そんな樹を宥めつつ、風は心の中で願う。

 

 

 

 

 

こんな幸せな時間が、いつまでも続きますように。十年後も、二十年後も、その先もずっと――




前回と比べると、大分甘さ控えめ……?

何か感覚が麻痺している様な……どの程度か判断つかない……(重症)

ダダ甘なのか、それとも甘酸っぱいのか……分かりません!(断言)

こちらの話は、書く毎にその辺が曖昧になっていくですハイ……

残り三人……ヤベー奴が二人も残ってるんだよなぁ……どうしよ?(困惑)
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