ある転生者と勇者たちの記録   作:大公ボウ

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初投稿です。

サイト内の数々のゆゆゆ小説に影響され、思い切って書いてみました。

暇つぶしにでも楽しんでいただければ幸いです!



神世紀の章
プロローグにしてエピローグ


いきなりであるが、俺こと○○は平成の世から転生した。

 

何言ってんのコイツと思うかもしれないが、実際そうなのだからどうしようもない。

 

大学からの帰り道、一人暮らしのアパートへ急いでいたときにいきなり背後から刺され、出血多量で亡くなった……と、思われる。

 

刺された後の事は正直よく分らない。いきなり激痛がして、倒れたあとは急激に眠くなってしまい、起きたら赤ん坊になっていた。

 

そう、フィクションに良くあるアレである。

当時は混乱したものだし、酷く恐ろしかった覚えもあるのだが……俺は深く考えるのを止めた。

 

こんな超常現象、凡人の俺が考えたところでどうにか出来る訳もない。それこそ神様の所業だ。

 

現状を受け入れた俺はさっさと順応すべく努力をした……といっても、殆ど必要なかったが。生前の、つまり現代日本の水準の生活環境そのままだったのだから。

 

どうやらココは四国の香川であるらしい……およそ300年後の。神世紀、といわれている。転生と同時にワープとタイムスリップも体験するとは、波乱万丈の人生である。ちなみに、俺は四国に行ったこと等生前は一度もない。

 

1つ、生前とは違うものが生活に関わることになった。

 

『神樹様』――そう呼ばれる樹木が人々の信仰を集めている。教育機関へ入る前から、ごく当たり前の道徳のような感じでこれを敬うよう親などから教え込まれる。

 

生前は宗教観ごった煮の日本で暮らしていた俺は、そこまで熱心に信仰する気にはなれないでいたが、空気を読んで仲間外れにされない程度には拝んでいる。――くじ引きの時に神樹様にお願いする程度には。

 

まあそんな、300年経ったと言っても転生前とほとんど変わり映えの無い生活を送る俺の話である。

 

……ああ、そういや俺の歳を言ってなかったか。今は讃州中学2年生、14歳だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――そして。

 

「やっと分かってくれたんだね! ○○君はずっとずっとずっとずっとずっとずぅーっと……一生、私達と一緒にいるんだもんね!」

 

 

「ええ、その通りよ友奈ちゃん。○○君はずっと……健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しきときも、その命ある限り、死が私達を分かつまで……永遠に愛し合うのだから」

 

 

「そうそう、東郷の言う通り! いやーモテるねぇ、この色男ッ! このこの! ……ちょーっと重いかもしれないけどさ。でも……アンタも悪いんだよ、○○。あたし達の心、鷲掴みにしてさ……あたしなんて、年上だっていうのに……情けないけど、もう絶対離れらんない。離したくない……だからさ、ずっと一緒にいてよ? お願いだから、居なくならないで……ずっと、一緒に……」

 

 

「○○先輩……私達のこと、す、好きですよね? そうですよね? ……占ったら、私達と先輩の相性は最高だって出たんです! だからきっと、きっと上手くいきます! わ、私なんかが保証しても不安かもしれませんけど……みんなで頑張れば、どんな事だって乗り越えていけます! だから……だから……私と、お姉ちゃんと、そして皆と、ずっと一緒に居ましょう……?」

 

 

「○○……アンタは私達とこれからずっと一緒に居るの。これはもう決定してるの、いい? ……何よ、訳わかんないって顔しちゃって。まったくこれだからアンタは……。放っておいたらその調子で、これからも色んな女子を落とすんでしょうが。……身に覚えがない? ふふっ、今世紀最大のジョークね。ここに居る全員がベタ惚れしてるのが何よりの証拠でしょうが。……そうよ、私もよ、悪い? でも仕方ないでしょ? 理屈じゃないの。言葉に尽くせないの。心がアンタを欲しがってるのよ! でも、アンタは一人しかいない。絶対に結ばれたいけど、みんなと争い合うのも絶対にイヤ。だから――」

 

 

「だから~、みんなで○○君を共有することにしたんだよね~。わーぱちぱちぱち~。あ、もしかして~世間様から後ろ指さされちゃう事を心配してる? な~んにも、心配ないよ~。私の家のこと、ちょっとは知ってるでしょ~? ふふふふふ~、乃木パワーが火を噴くんだよ~。何か言ってくる人がいたら~……ふふふ」

 

 

 

 

――俺は、六人の少女たちに詰め寄られていた。

 

どうしてこうなったのか……。

 

 

 

ある日、学校帰りに何だかよく分からない現実離れした場所に迷い込み、そこを彷徨っていると得体のしれない化け物に遭遇した。

 

わき目も振らずに逃げまくり、精魂尽き果ててもうダメだと観念したとき、妙な恰好をした同じ学年の結城さんがかけ声とともに飛び込んできて、化け物をぶん殴って消滅させた。

 

へたり込んでいた俺に気付いた結城さんは大層驚いた様子でワタワタしていたが、そうしている間にこれまた同じ学年の東郷さん、三好さん、そして勇者部という妙な部活の部長とその妹さんがやって来た。ちなみに全員が現実離れした格好をしていたので、現実逃避気味の俺の頭は勇者部ってコスプレ同好会も兼ねてるのか、なんてトンチンカンな事を考えていた。

 

訳が分からないままでいると、妙な場所はだんだんと姿を消していき、普通の、現実の光景に戻った。

 

余りの出来事に茫然としていると、勇者部の部長である犬吠埼先輩が俺に同情しつつ、しかし有無を言わさずに部室へと連行した。

 

そして、色々なことを説明された。勇者のこと。お役目のこと。敵のこと。――そして、俺の今後のこと。

 

今なら全て忘れて、自分達とは無関係な、普通の日常に戻れると。しばらくは監視されて不自由かもしれないが、この事を口外しないと約束してくれるなら、絶対に俺を日常に戻してみせると。――とても真摯な瞳で、俺に言ってくれた。

 

口封じでもされるのかと戦々恐々としていた俺は、犬吠埼先輩の言葉に意表を突かれた。思わず周囲の面子を見渡すと、みんな先輩に同意しているらしかった。

 

選択を迫られた俺は一日の猶予をもらい――――結局、みんなを手伝う事にした。

 

あんな化け物と、転生した俺の感覚では年下の女の子たちが世界の命運を賭けて戦っていると聞き、さすがに放っては置けなかった。

 

さらに、良い事か悪い事かは分からなかったが、俺にも勇者とやらの適性があったらしい。男に適性ある者が現れた事はこれまで皆無らしかったので、判明したときは大赦という所に連行され、それこそ身体の隅々まで調べ上げられた。俺としては、元々この世界の人間でなく転生者であることがバレやしないかとヒヤヒヤしていたのだが、流石にそんなことまでは分からなかったらしい。

 

判明した俺の勇者としての能力は――――――戦闘力は、前代未聞のゼロ。カケラも無し。当然、身体機能も上がらない。……聞いてて泣きそうになったのは内緒である。

 

しかし、神は俺を見捨てなかったらしい。俺の能力は、サポート特化であったのだ。

 

瞬間的・継続的に勇者たちの能力を向上させることなど序の口。敵の攻撃能力や防御力に干渉し、低下させる事も出来る。さらに、緊急時には勇者たちが受けたあらゆるダメージを肩代わりし、継戦能力を高める事も出来るという。

 

直接の戦闘が出来ないのは無念だったが、この力があれば彼女たちを支えられるはずだと信じ、力の限りやり抜いた。

 

あの訳の分からない世界――樹海での戦闘はもちろん、現実でのサポートも怠らなかった。勇者の役目は投げ出せないし、俺ももちろん理解している。だけどそれでも、この綺麗な、尊い心の持ち主の少女たちが精一杯日常を謳歌できるようにと、影に日向にと手助けした。

 

死にたくなるほどの目に合い、それでも希望を信じて戦い抜く彼女らを、俺は十分サポートできたかは分からない。勇者の能力で、こっそり怪我の肩代わりをやった時に、あっさりバレて死ぬほど怒られ、その後に死ぬほど泣かれたが。それからは俺も妥協(?)して半分だけ肩代わりをすることにした。彼女らはまだ渋っていたが、俺は直接戦えないからせめて負担だけでも半分は背負いたいと説得し、最終的には認めてくれた。……不承不承ではあっただろうが。

 

そんなこんなで色々とあり、お役目を終えた彼女たちは、再び日常に戻っていくことが出来た。

 

 

 

 

 

そして、勇者部の部室に呼び出され、いつもの様に顔を出すと詰め寄られたのである。

 

彼女たちの表情を見る。……言っている事は本当に滅茶苦茶で、ともすれば病んでいるとしか言いようが無い。

 

 

 

結城――いや、名前で呼ぶように言われてたんだった。友奈は、満面の笑みを浮かべてこちらを見つめている。人に元気を与える、彼女らしい笑顔。……一見そう見えるが、瞳の奥が揺れている。自分が滅茶苦茶を言っている自覚はあるらしい。それでも止められず、そして拒絶されたらどうしようと不安定になっている。それを笑顔で覆い隠しているようにしか見えない。

 

美森は、先ほどの結婚の宣誓の様なセリフの後にうっすらと笑みを浮かべてこちらを見ている。正直、女神の微笑と言われても信じられるレベルである。……微妙に身体が震えていなければ、完璧だったと思う。この中では一番普通に見えるが、やはり情緒不安定になっている様子である。

 

美森の言葉に同調しつつ、まくし立てるように言葉を続けた風さんは、本当に分かりやすく普段と違う。あんなに自信無さげに、弱弱しく、縋る様に言ってくるとは……。こんな様子では俺が拒絶した場合、どうなってしまうのか、ある程度想像できてしまう。失うという事を病的に恐れているのだろうか。

 

樹ちゃんは、普段の控えめな言動を維持しようとしているように見えるが……明らかに声が上擦っている。努めて平静でいようとしているのだろうが、瞬きはしっぱなし、息も荒い、極めつけに最後の最後にしゃくり上げるようにして言葉を締めた。去年まで小学生だったのだから、こんな愁嘆場で冷静になれるはずもないが。

 

夏凜は、淡々と、俺のこれからについてを述べていく。まるで教師が生徒に言い聞かせるように。だが、すぐに化けの皮が剥がれ、感情をむき出しにしてまくし立てていく。直截さでは友奈と同レベルのストレート加減である。その言葉の意味は、勘違いしようも無い。

 

園子は――ある意味、一番怖い。彼女もほとんどいつも通りに微笑んでいる。……その口から発せられる言葉は、常軌を逸していると言うしかないが。実家の権力を、たった一人の、俺という人間と結ばれるために使うと、そう言ったのだから。しかも自分だけではなく、勇者部の面々丸ごと一緒に。……スケールが違うと言う他ない。流石は大赦の名家ツートップの片割れと言うべきなのだろうか?

 

 

 

 

 

 

「ねえ―――」

 

友奈がいつも通りに見える、だがいつもと違う笑顔で言う。

 

「○○君――――」

 

美森さんが、不安を隠した女神の微笑みをうかべて言う。

 

「あたし達を―――」

 

風さんが、壊れそうな、弱弱しい表情で言う。

 

「受け入れて――――」

 

樹ちゃんが、今にも泣きだしそうな声をあげながら言う。

 

「くれるわよね?――――」

 

夏凜が、まっすぐな、だが揺れる瞳でこちらを見つめながら言う。

 

「―――――ふふっ」

 

園子だけが、何も言わない。――――――その瞳に、俺だけを映して。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結果的に、俺は彼女たちを拒めなかった。

 

あんな思いをしてきた女の子たちを拒絶するなんてことは、出来なかった。

 

拒めば、彼女たちは壊れる――――――あの時の姿は、そう確信するには十分すぎるほど衝撃的だった。

 

不道徳と言われようが、後ろ指を指されようが……彼女たちが平穏に、心安らかに過ごせるのなら、それでいい。

強がりではなく、本心からそう思う。

 

左右を見ると、彼女らが俺を真ん中にして両側に三人ずつ。全員が幸せそうに微笑んでいる。あの日の壊れそうな笑顔ではない、本物の笑顔。

 

彼女たちの笑顔を見るたび、こんな俺でも転生した意味はあったのかなと、思ったりする。

 

 

 

そんな風にして、俺はこれからも生きていくのだろう――彼女たちの笑顔を、守りながら。

 

 

 

 




あー、ホントに書くの難しい!
ちゃんとキャラクターを表現できてるかが一番心配です(震え声)

こんなの友奈ちゃんじゃない! とか、風先輩がこんなになるわけねえだろゴルァ! なんて思う人もいるでしょうけど、そんな人たちには伏してお詫び申し上げます(土下座)

あと、主人公が名無しなのは仕様です。あえて名付ける必要もないかなー、と(適当)


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