閃の軌跡の果てに   作:キクイチ

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つい、設定が浮かんでしまったので書いた。後悔は若干している。


トールズ士官学校 Chapter1
赤銅の髪をもった少年


 ――――酷い、夢を見させられている。

 

 瞼を開けくと、そこは―――地獄だった。

 

 視界は赤々と染め上げられ、炎がいたるところから吹き出している。

 土色だった地面は赤く焦げ、赤土と化している。うめき、いや、死骸と化す断末魔が割れんばかりに響き渡る。阿鼻叫喚のその後。

 なんでこうなったのかわからない。でも、多くの。多すぎる命が。貴い命が無残に。何の意味も無いとばかりに焼却された。―――ここが地獄でなくてなんと言うのか。

 

『はぁ……はぁ…! よかった、生きてる…!生きて、ああ―――そんな……!』

 

 そう、顔を歪めて俺の顔を見る少女がいた。

 黄金(こがね)色の髪を後ろで結い上げた見目麗しき少女がそこにいた。しかし、いつもの天真爛漫さは見当たらず、涙を流しているようだった。

 俺の体を見て―――助からないと、思ったのだろう。

 絶命必至。俺の体は真っ当なところが一つも無い―――ずたぼろの状態だったのだから。

 ―――死に近づいたせいか、痛みももう感じれないせいか。

 やたら心は揺れなかった。死が、意識が消失することに恐怖がなかったわけではないが……それでも、落ち着いていた。笑みすら浮かべる余裕があった。

 その時の心情は――今でも強く覚えている。

 

 ――――よかった。君が生きてて。

 

 そう思って笑っていた。どうか、気にしないでほしい。そう彼女笑いかけたつもりだったのだが――より辛い、悲痛さをにじませる顔になった。

 

『―――れ――は、わ――のせ――――』

 

 そんな言葉が聞こえたが――出血量が現界を迎えたのか、意識が薄れ始めた。

 

 でも、意識が落ちる最後。

 

 耳が拾った言葉だけは、憶えている。

 

『生きることを諦めないでください…!貴方は、何も悪くは無いのですから――!』

 

***

 

 

 がたん、と強い揺れが起き赤銅の髪の青年―――シロウ・ニルソンは目を覚ました。

 

 彼は周りを見渡す。

 

 席に座って歓談する男性と老女。あるいは、自分と同じくらいの年の女性や青年も歓談している姿。

 左手の窓から、景色がそれなりのスピードで流れ、振動が一定のリズムで伝わってくる。景色からは春の様子がほどよく伝わってきた。

 

 ―――ここは、列車の中。ああ、俺は列車に乗ったのだった。となると――彼女は…?

 

 シロウが、はっとして右を見れば―――すやすやと眠る金髪の少女、いつもは凜とした空気を纏っている少女があどけない顔で自分の隣で寝ているのが分かった。

 彼女の名は、アルトリア・ペンドラゴン。幼い頃からの縁がある―――所謂、幼馴染みというヤツである。

 歴史的には、このエレボニア帝国の皇帝――かのドライケルス大帝時代から仕えたと言われる名家ペンドラゴン――つまり、彼女は貴族である。まあ、爵位は辺境伯らしいが。

 どういうわけか幼少の頃から縁があり、それが今に続いている。――そう今も。

 しかし、じっと見れば見るほど美少女ぶりがわかる。

 透明感のある肌に、艶やかな黄金の髪。触れれば壊れてしまいそうな華奢さを持っていながら、その実自分より何倍も強い。

 

 シロウは気恥ずかしさを隠すように、頭をかく。そして、窓から見える景色をみて―――ここにいる記憶を振り返る。

 

 ――――トールズ士官学院。

 

 帝国中興の祖、かのドライケルス大帝によって創出された伝統ある士官学校。帝都からほど近いトリスタという街に在り、200以上続く学校である。

 そこに俺達は入学した。士官学校の生徒として。

 

 あ、そういえば。

 そう思ってシロウは赤い外装のついた導力器(オーブメント)を取り出した。

 

 それは、赤い制服と共に送りつけられたもの。説明書もなく、導力器らしいということしかわからない代物だ。ちまたでは流通してないもののようだが、教材かなにかだろうか?

 わからないのは導力器、だけではない。この制服もだ。

 獅子の紋章の刺繍があることから、トールズ士官学生として認められたのは確かだろうが、赤というのは聞いたことがない。

 というのも、トールズ士官学生といえば、貴族であることを示す白の学院服か平民であることを示す緑の学院服、そのどちらかなのだ。周りに乗っているのは緑の服の学生ばかりである。

 まあ、単に新しいクラス、と言われれば納得するしか無いのだがやはり聞いたことはない。

 

 そう、思考を広げていると―――ピンポーンとアナウンスがなり響いた。

 ぴくり、と隣の彼女も反応し薄く瞼を開いた。少し眠そうだが……そうも言ってはいられない。

 軽く揺すって起こす。

 

「シロウ……? ああ、もう着くのですね。ふぁ――」

 

 と小さなあくびを手で隠す。

 

『本日はケルディック経由、バリアハート行き旅客列車をご利用頂きありがとうございます。次は、トリスタ。トリスタ』

 

 そんな案内が流れる―――到着の時は近い。

 

 

 列車の長旅を終え、トリスタ駅に降りて――そのままトリスタの街に出た。

 

「これは……綺麗ですね、シロウ。たしかこの花は――」

「ライノの花って言うらしい。トリスタの名物って話だ」

 

 見渡せば、白をベースに薄く桃色に染まった花が咲き乱れている。優しげな風に揺られて花びらが軽く散っていくさまは、幻想的でもあった。

 

 中央にある広場――というより公園のようなところの真ん中から空を見上げれば、幻想的な風景はより魅力的に見える。

 

 と、夢中になるのはここまで。

 そう思ってシロウはアルトリアに振り返って―――――はたと気づく。

 

 そこにいたはずのアルトリアが何処かへ消えてしまったのだ。しかし、ここで慌てるシロウでは無い。伊達に、彼女の幼馴染みを十年もしていないのだ。

 

「さては――」

 

 彼女は―――腹ぺこ魔人。列車で長旅になると思い、それなりのお弁当を作ってきたのだが、乗った瞬間に蓋をあけ、完食していた。『今、食べたらおなかすくぞ』と念を押したのだが。

 とかく、恐らくだが彼女はお腹をすかせて何処かによろよろと歩いて行ったのだろう。ならさっきから良い匂いの漂ってくる手前に見える料理店(カフェ)だろう。

 普段は凜としているくせに食事が関わると途端にポンコツになるのが玉に瑕である。

 

「見つけた――!」

 

 視線を向け、軽く探れば―――開いているかな、と店内をのぞき込む黄金の髪が。

 

「まだ、開いていない、だと……!」

「ごめんなお嬢ちゃん。今日の開店は昼からなんだ」

 

 と、入店を断られている始末。

 

「シロウ!お腹が減りました!」

「……だから、言っただろう? お腹減るからよしとけって」

「ぐぬぬ……! ですが、このままでは…!」

 

 このまま放っておけば、入学式の最中に彼女のお腹が鳴るのは必至というものである。

 さすがに、それはかわいそうだ。

 

「はぁ……、ほら――」

 

 箱形のバケットを取り出し、蓋を開けば―――こんなこともあろうかと、昼食ようにと詰め込まれたサンドイッチをアルトリアに見せる。

 

「ほら味わって喰えよ―――」

「――ごちそうさまでした」

「早い!予想の三倍早かった!」

 

 サンドイッチを掴めば最後、彼女の口に秒単位で滑り込むのだ。――さよなら、俺の昼食。

 

「まあ、それぐらい食べれば――お腹がなることはないだろうし。じゃあ、行こうか士官学院に――」

「まあ、少し心配ですが……」

 

 ここでちらりとアルトリアは上目遣いで見てくる―――。

 俺は知っている。この動作は、他の食料はないかとねだる目だ。

 

「――そんな目をしても、ないものは出せないぞ」

「………」

 

 じぃー、となお見つめてくるが此処で折れてはだめだ。長い戦いをいていると彼女は諦めた。ただし、負けセリフを吐いて。

 

「けち」

「なんでさ」

 

 今日も、アルトリアは平常運転だ。

 

 

 

 

「――それでも、大帝が遺した“ある言葉”は今でも学院の理念として息づいておる」

 

 壇上に上がった老人と呼ぶには若々しい筋肉隆々の人は驚くことに学院長らしい。何十の席にいる生徒全員が彼の老人に視点を合わせている。緊張感がほどよくあり、眠気が起きない。まあ、少し視線をずらせば――うとうとと出来ている娘もいるようだが。

 

「『若者よ―――世の礎たれ』“世”という言葉をどう捉えるのか。何をもって“礎”たる資格を持つのか。これからの二年間で自分なりに考え、切磋琢磨する手がかりにして欲しい」

 

 そう言って、ヴァンダイク学院長は話を締めた。

 

 若者よ―――世の礎たれ、か。これは、自分にとっての大きな命題になるだろう。世と礎。その二つに答えを探してほしい。それがどんな答えであれ、君たちの大きな力になるだろう。そう言うエールなのだと俺は受け取った。

 

「以降は入学案内書に従い、指定されたクラスへ移動すること―――」

 

 解散と言われ、周りにいた生徒達は次々に立ち上がり何処かへ歩いて行く。

 

 すると、いつの間にかアルトリアが近くに来ていた。

 

「……入学案内書? 送られてきた案内書にそんなこと書かれていましたか?」

「いや、記憶に無い」

 

 周りを確認すれば――自分達と似たような格好、赤い学院服を着た者達だけが遺されていた。

 

「送られてきた入学案内書にそんなの書いてあったっけ?」

「いや、なかったはずだ」

 

 黒髪の青年と橙色の髪をもった青年がそう話しているのが聞こえてきた。どうやら他の人も書いていなかったようだ。

 

「はいはーい。赤い制服の子達は注目~!」

 

 突然、明るい女性の声が響き渡った。

 そちらに視線をむければ。

 

 明るい紫の髪をもった女性教官が立っていた。もしや、この人が――?

 

「どうやらクラスが分からなくなって戸惑ってるみたいね。実は、ちょっと事情があってね」

 

 なるほど。自分達は何かしらの意図をもって集められたらしい。

 

「―――君たちにはこれから『特別オリエンテーリング』に参加してもらいます」

 

 特別オリエンテーリング?

 

「なんでしょうか、その特別オリエンテーリング?というのは」

「まあ、すぐに分かるわ」

 

 アルトリアが疑問を教官風の女性に問いかけるが、返ってきたのは曖昧な言葉だった。

 

 教官風の女性は、ついてこいと言って、そのままスタスタと歩いて行った。しかし―――歩行が綺麗だな。士官学校の教員とあらば――戦闘技能は持ってるだろうし。だが、相当な技能をもっているとみた。

 

「取り敢えず行くしかなさそうだ」

 

 と誰かが言って、そのまま流れるように移動した。

 

 

 

 やたら年季の入った建物へ誘導された。かなり古い建物のようだ。ガラス窓を()()()()()、下に向って厚くなっていることがわかる。年代までは流石に分からないが100年は前の建物だろう。

 

 女性教官は鼻歌を歌いながら厚く重たそうな扉を開く。

 

「こんな場所で何を……?」

「くっ……ワケが分からないぞ……?」

「まあ、考えても仕方在るまい」

「私達も行きましょうか、シロウ」

「あ、ああ。―――っ」

 

 不意に視線を感じ、振り返ってしまう。

 何というか、ねちっこくこちらを観察しているような―――アレは、人か?

 誰かが、高台からこちらを見下ろしていた。

 ――ただ、こちらを見に来ただけのようだ。悪意も殺気も感じない。

 

「どうしましたか?」

「いや、何でもない。いこうか」

 

 その古い建物に入るのは、俺達で最後だった。

 

 

 

 

「―――ほっほう、あれが俺達の後輩ってわけだな?」

「まあ、名目こそ違うが似たようなものだろうね」

 

 バンダナの青年と黒いツナギの娘が彼らを見て話していた。

 

「しかし、アンゼリカ。あの赤銅頭の後輩。完全にこっちに気づいてたぜ」

「将来有望そうでいいじゃないか。しかし、アリサ君といい、可愛い子ばかりで嬉しいな」

 

 ジョークや挑発をこめた会話であり、青年と少女の仲の良さを物語っていた。

 そこに新たな少女の声。

 

「も~、二人とも喧嘩しちゃダメじゃない」

 

 近づく背の低い少女と隣には太った青年。彼らも又、気を置かない関係なのだろう。背の低い少女は会長職をしているらしく、新しく入学した面々に対しての意気込みを新たにする。

 

「―――それで、そちらの準備も一通り終わったみたいだね?」

「ああ、教官の指示通りにね」

 

 黒いツナギの娘は少し同情的な目をした。

 

「しかし、何というか……彼らには同情を禁じ得ないな」

「ま、それは同感だぜ。本年度から発足する“訳アリ”の特別クラス……せいぜいお手並みを拝見するとしようかね」

 

 

 

 

 古い建物の中はやはりというか、暗かった。

 

 壇上に教官らしき女性が立ってこう言った。

 

「―――サラ・バレスタイン。今日から君たち《Ⅶ組》の担任を務めさせてもらうわ」

 

 よろしくお願いするわね、と微笑んで挨拶をした。

 しかし、《Ⅶ組》とは初めて聞くクラス名だ。

 

 周囲にも動揺が走っている。

 

「あの…サラ教官? この学院の一学年のクラス数は五つだったと記憶していますが」

 

 と眼鏡をかけた女子が言った。

 

 各自の身分や、出自に応じたクラス分けになっている。そのせいか、最近のトールズ士官学院では平民と貴族による対立が起こっていると聞く。

 

 サラ教官が言うには、それは去年までの事らしい。

 

「今年からもう一つのクラスが新たに立ち上げられたのよね~。すなわち君たち―――身分に関係なく選ばれた特科クラス《Ⅶ組》が」

 

 さらっととんでもない事を言った。

 この帝国では貴族と平民の対立が意外に深刻化している。二つの勢力が国内で対立したからなのだが―――。

 

「特科クラス《Ⅶ組》……」

「み、身分に関係ないって……本当ですか?」

「―――じょ、冗談じゃない!」

 

 このように、対立がある以上この状況に反発する者が出るのも無理はない。水と油のようなものだ。

 まじめそうな―――眼鏡をかけた少年が苛立ちを込めて反発した。

 

「身分に関係ない!? そんな話は聞いてませんよ!?」

「えっと、たしか君は……」

「マキアス・レーグニッツです!」

 

 ほう。レーグニッツといえば確か――。

 

「それよりもサラ教官!自分は納得しかねます! まさか貴族風情と一緒のクラスでやって行けって言うんですか!?」

「うーん、そう言われてもねぇ。同じ若者同士なんだからすぐに仲良くなれるんじゃない?」

「そ、そんな分けないでしょう!」

 

 サラ教官はまともに取り合う気は無いらしい。

 

「フン……」

 

 すると、マキアスの横合いから鼻で笑って返す、金髪の男子。

 一気に緊張感が増した。

 

「……君。何か文句でもあるのか?」

「別に。“平民風情”が騒がしいと思っただけだ」

「これはこれは……どうやら大貴族のご子息殿が紛れ込んでいたようだな。その尊大な態度……さぞ名のある家柄と見受けるが?」

 

 そんなマキアスの挑発に動揺する様子も無く、自信ありげに答えた。

 

「ユーシス・アルバレア。“貴族風情”の名前ごとき、覚えてもらわなくても構わんが」

「!!!」

 

 ――アルバレア公爵家。帝国内の四大名門と言われる大きな影響力を持つ貴族だ。貴族の中の貴族。文字通りのトップの家柄出身か。

 しかし、なお吠え立てるマキアス。家族でも殺されたとばかりの剣幕だ。

 

「だ、だからどうした!その大層な家名に誰しもがひるむと思ったら大間違いだぞ!いいか、僕は絶対に――」

「はいはい、そこまで」

 

 と軽く拍手して注意を自分に向ける。

 

「色々あるとは思うけど文句は後で聞かせてもらうわ」

 

 ―――結局、オリエンテーリングとは一体何なのか。やっと教えてくれるらしい。

 

「もしかして、門の所で預けたもと関係が?」

「あら、いいカンしているわね」

 

 そう言えば。

 言われて思い出す。

 アルトリアは剣を、俺は弓と双剣を預けた。小柄だったが、たぶん先輩だろう。

 

 サラ教官少しずつ後ろに下がって――。

 

「じゃあ、早速始めましょうか!」

 

 そう言うとサラ教官は何かのスイッチを押した。

 何をしようと――うおっ。

 

 床が振動し、大きくぐらつく。

 

 これ、は――――。

 

 まるで、床下が落ち込もうとしているような――――。

 

「―――くっ」

 

 体を床に押しつけるようにして滑り落ちる。

 

 一体なにが始まろうとしてるんだ―――!?

 

 

 




ニームソンは、名前が無い、と言う意味だったり。

シロウとは言ったが、Fateの彼ほど壊れてはおらず、別人です。しかし、壊れかけてはいるので■■の■■になろうとするかもしれないのですが、さて。
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