魔法少女まどか☆マギカ 別編~再臨の物語~(第2部) 作:マンボウ次郎
螺旋階段の行き止まり。
ゆう子は「出口」と書かれた案内灯の明かりが灯る扉を開けると、そこに広がっていたのは中世の舞踏会場のような大広間だった。高い天井からは豪華なカーテンが垂れ下がり、大きな鏡、キャンドル、壁掛け時計、そして中央には巨大なクリスマスツリーが煌びやかに飾り付けられている。さっきまでの真っ暗な階段とはまったく異なる部屋。というよりも、ここは見滝原市内のショッピングモールのはずだが、モール内の施設とは思えないような広い、広い空間。室内には誰もおらず、機械仕掛けの兵隊のようなブリキ人形がずらりと整列していた。
「ショッピングモールにこんなところあったかな……?」
まるで昔の西洋の世界にタイムスリップしてしまったかのようで、ゆう子は驚きと不安に包まれる。恐る恐る部屋の中に足を踏み入れると、後ろの扉が音もなく閉じられた。
「あの、誰かいますか?」
ゆう子が細々と声を出すも、返事は返ってこない。あの少女はどこへ消えてしまったのか。
すると突然、壁に掛けられている大きな時計が時を告げた。
ボーン
ボーン
ボーン……
見上げると、時計の針が12時を指している。不気味な鐘の音と共に、どこからともなく優美で軽快な曲が流れ始め、機械仕掛けの兵隊人形が
カタカタ
と揺れ始め、人形たちは一斉に目を開けた。
「ひゃっ」
ゆう子は何が何だかわからず、恐怖で足がすくんだ。ゆっくりと後ずさりしていくと、それらはまるで意思があるように動き出し、音楽に乗って踊り始めた。赤い服に黄色のズボン、王冠のような帽子と黒のブーツ、目は青く、鼻下と顎に髭を蓄えた機械人形は、カチャカチャと優雅に踊る。
「ここはおとぎの国? それにしては人形が怖いよ」
ステップを踏み、くるくると回り、隊列を組んだり入れ替えたりしながら踊るブリキの兵隊人形。しかしその人形たちはとても不気味で、おとぎの国という可愛らしいものではなかった。
やがて軽快な音楽がピタリと止み、同時に人形たちも動きを止めた。
辺りが一瞬、シンと静まり返ると……
機械の兵隊人形たちの口がガクン! と大きく開いた。開いたというよりも顎の仕掛けが外れた感じで、顎から上は白骨化したドクロのような恐ろしい顔になった。
動きを止めていた人形たちはギョロっとゆう子に目を向け、そのまま一列になって近づいてきた。
もうこれは、現実の世界ではない。
人形が動き、踊り、ゆう子に迫って来た。
ゆう子は慌てて引き返そうとするが、この部屋に入って来た扉が見当たらない。
「ええっ!? どうなってるの?」
見当たらないのではなく、扉は消えてしまっていた。カチャカチャと近寄ってくる兵隊人形たちは、ゆう子に向けてゲベール銃のような古いライフル銃を構えた。おもちゃの銃のようだが、ゆう子は反射的に身を屈めた。
ダダーン!
と、銃撃音が鳴り響き、銃弾がゆう子の頭の上をかすめる。まるで本物の銃撃だった。人形たちが放った銃弾は壁に掛けられている大きな鏡に当たり、鏡面はバラバラに割れてしまった。
ゆう子は目を見開き、割れた鏡を見て青褪めた。所々割れ残った鏡面に、キャンドルの光が万華鏡のように反射している。
幻想的な部屋とは裏腹に、ここはおとぎの国などではない。
『これは魔女の結界だ!』
ゆう子の頭の中に声が聞こえた。
『ゆう子、早く魔法少女になるんだ』
声の主はキュゥべえだった。姿は見えないが、キュゥべえの声がテレパシーで伝わってくる。
「頭の中に直接声が……? でもそんなこと言ったって、どうすればいいの?」
人形の銃撃が何発か飛び交う中で、身を低くして逃げまどいながらゆう子が叫ぶ。
『左耳のソウルジェムを掲げるんだ、早く!』
「こ、こう?」
そう言って左耳のイヤリングを外し両手で高く掲げると、ゆう子は赤紫色とオレンジ色の光に包まれ
胸元には大きくふたつに割れた赤紫色のリボン
白ベースに赤い縦ラインの入った燕尾服のようなジャケット
赤紫色のショートパンツ
黒いニーソックスに赤紫色のロングブーツ
腰の後ろには短槍を装着した
魔法少女へと姿を変えた。再び左耳のイヤリングに納まったソウルジェムが、赤紫色に輝いている。
「やった」
ゆう子は初めて自分で変身できたことに嬉しさを見せるが
『気を付けて、そいつらはおもちゃの人形なんかじゃないよ』
キュゥべえの言葉でハッとすると、兵隊人形たちがゲベール銃で狙いを定めている。ゆう子はすぐにまばたきで瞬間移動し、一瞬で人形たちの真後ろに姿を現すと
「えいっ!」
っと声を出して、短槍を片手で振り下ろし人形一体を叩き潰した。潰れた人形は壊れるというよりも、ヘナヘナと足元に沈むように消えてしまった。
続く
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