「この店で一番高い酒を持ってくるがよい」
「か、かしこまりました」
ライダーに血を吸われていた少女は命に別状はなかったため傷を治した後、病院につれていった。
その後、まずは腹を満たそう、という事でギルガメッシュに連れてこられた、滅茶苦茶高そうなレストラン。
財力をこれ見よがしに見せつけてくる、AUO。
テーブルマナーなど一応知ってはいるが、正直こんな堅苦しい店に来たくはなかった。
それにしてもさっきから何故かギルの機嫌がいい。
「む? ああ、なに、月の裏側には娯楽というものが皆無に等しかったであろう?
それが何の因果か再び現世に召喚されたとあらば、楽しまなくては損であろう」
そういうことか。
ん? 再び現世に召喚された?
「うむ、我は以前、第四次聖杯戦争に召喚されている」
そ、そうだったのか…!
ここに来て新事実である。
しかし、英霊は戦いが終わればその戦いの記憶はリセットされるのではなかっただろうか?
「ふん、この我をそこら辺の英霊と一緒にするでない。
記憶を失わないのはこの我が最古の英雄王だからだ」
そ、そうか、最古の英雄王だから記憶を失わないというのはよく分からないが、ギルが俗世間に無駄に詳しいのはこのためだったのか。
「しかし、月では裏側から表に戻るために戦い、此度は元の世界に戻るために戦う……
貴様ほど、奇妙な人生を送っている奴などそうはいまい」
好きでこんな人生送っているわけじゃない。
やはり今回も戦う事になるのだろうか?
戦わずに済むならそれに越したことはないのだが……
「それは無理であろうよ
この街は今宵、最後のサーヴァントが召喚され、第五次聖杯戦争が始まる
我らはイレギュラーだろうが、マスターとサーヴァントなのだ、必然的に狙われるだろうな」
やはりそうなるのか……?
そういえば、この聖杯戦争は何人のサーヴァントが召喚されるのだろう?
「7人だ」
7人なのか…
少ないんだな。
「馬鹿者、月の聖杯戦争が多すぎるのだ
あれがもしトーナメントでなく、乱闘であれば一体何日かかるというのだ」
ムーンセルの聖杯戦争は往来の聖杯戦争と違ったのか……
「貴様が経験した聖杯戦争と同じに考えていると痛い目をみるぞ、常に気を張っておけ
まあ、現時点で我らの事に気付いているのは、あの阿呆とライダーだけだがな」
そうか、サーヴァントと一緒にいたということはシンジもマスターなのだ、自分の知っている彼とは違うとしても、またシンジと戦わなくてはならないのだろうか。
それはなんというか、とても嫌だ。
「相変わらず甘い奴だ。
まあ、この聖杯戦争は月と違い、サーヴァントを失ったとしてもマスターが死ぬという事はない、戦争が終わるまでの間、教会にて保護を受けられる」
そ、そうなのか。
月とは本当に色々と違うんだな。
「マスターを生かすか殺すかは貴様に一任するとしよう
ま、貴様の事だ、殺すという考えなど欠片もないであろうが」
そうだ、死ぬ必要がないのなら、トドメをさしたくはない。
ただ自分にその覚悟がないだけかもしれないが……
ランサー……エリザベート・バートリーの事を思い出す。
彼女との戦いに打ち勝ち、彼女が氷の牢獄に閉じ込められる寸前の絶望に染まった顔。
そして、一時的にパートナーとなり、神話礼装を手に入れ、アイドルごっこは終わりと去って行った彼女の無念に満ちた横顔。
それが未だ、頭から離れない。
どんな事があっても、あのような顔はもう見たくないのだ。
「……………。
そういえば貴様、以前、リンに奴が封印されているデータフォルダを貰っていただろう?
アレはどうしている?」
勿論、何時も持っている。
何故、このデータフォルダが現実世界にもあるのかは分からないが、冷凍睡眠から目覚め、気がつくと持っていたのだ。
「確かそれは呪い系アイテムと言っていたな。
このような事態になったのはそれのせいではないのか?」
そ、そんなことあるわけ……ない、と思いたい。
「ふ、まあよい、話はこのくらいにしておくか。
そろそろ食事がくるであろう」
そうだった。
ここはレストランだった。
…………何が楽しくて、初レストランが男と二人きりなんだろうか。
-----------
食事も終えて、次に来たのが、ホテルである。
言っておくが何かがあるわけではない。
断じてない。
やはり上機嫌のギルガメッシュが意気揚々とスイートルームをとってしまったのだ。
恐るべし金の威力。
しかし、ベッドはギルガメッシュが、自分はソファーで寝るという。
相変わらずこのスタイルは変わらないらしい。
まぁ、気にしない、気にしないが……
何故、初スイートルームも男と二人きりなのだろうか。
「……さて、では行くか」
唐突にギルガメッシュがそんな事をいう。
行く? 行くってどこへ?
「今宵召喚される最後のサーヴァントを見物しに、だ」
え……
←Next 召喚されるサーヴァントを見に行く