初めまして、ホグワーツ
ホグワーツ魔法魔術学校の前にその者はいた。茶色い旅行鞄を傍らに下ろし、巨大な城を見上げる黒いローブに身を包んだ女性は感嘆の声をあげた。
「にしても、でっか」
すぐ側に佇むひょろりと伸びた木の枝より一羽の梟がその双眼を光らせ、女性の様子を伺うように見つめている。
話には聞いていたホグワーツ城、見る者を圧倒するその荘厳な造りはまさに絶対要塞。休暇中ということも相まって静まり返った周囲の灯りは乏しく言われない限り学校だとは思わないだろう。
パンフレットを見せられた際にはキラキラと灯りが灯され明るい雰囲気を醸し出していたのだが、実際に足を運んで見ると空気は冷たく歓迎されているようには感じない。聞くところによると4人の創始者によって創られたこの学校、城そのものが意思を持っているとかないとか。
「ロンドンでのんびりし過ぎたな」
春から夏へと移り変わる季節の変わり目で段々と日が長くなっているにも関わらず太陽は山脈の向こうにとうの昔に消え、辺りは暗闇に包まれていた。本当ならば昼過ぎには到着している予定だったのだが、たまたま入ったパブの店主がなかなかに気さくで話し込んでしまったのだ。
「トムさんのビーフストロガノフが美味しかったんだからしょうがない。なんであんなに美味しいのか不思議なくらいアバウトな調理だったけど」
調味料の量なんて気にしていないのではないかと思う程には適当で、食材も大雑把に切り鍋に投入していたところを見ると何か魔法でも使っているのではと疑問に思うが料理人に隠し味を尋ねるような無粋な真似はしない。
どんな料理でも美味しくなる魔法なるものがあるなら是非ともご教授願いたいものだが断腸の想いでその考えを切り捨て、ホグズミードという魔法使い達で賑わう村について情報を仕入れていた。時間ができた時には是が非でもゾンコという店に行こうと決意したことは記憶に新しい。
「どんな面白いことがあるんだろう?私を教授として招くなんて、校長先生はよっぽど変わった人なんだろうな」
1人呟く女性の表情はその場にそぐわず明るく、声音は弾んでいた。
興味を失ったかのように視線を逸らした梟は小さく一声鳴くと音も無く飛び去っていった。後に残されたのは微かに揺れる木の枝と風に運ばれる軽やかな羽。
「さてと、いっちょ乗り込みますか」
女性は鞄を手に取り意を決して扉を開き光の中へと足を踏み入れた。魔法という名の神秘を探求する学び舎へ。
「初めまして、ホグワーツ」
手探り状態で取り敢えず1話目でした。
右も左もわからず全身プルプルしてます。冗談です、寒さに震えてます。
思いついた話を可視化したくて始めたものですので続くかはわかりません。