良い職場の条件として、同僚と仲睦まじくとまでは行かずとも当たり障りのない関係以上を築ける事は必ずと言っていい程に挙げられる要素だと思う。ホグワーツでの暮らしにも慣れ教授としても授業が順調に軌道に乗り始めホッと一息つこうと思った矢先のこと。授業がなく一休みしようと中庭でのんびりしていた帰り道にそんなことがふと頭に浮かんだ。
なぜ、私がこんなことを考えているのか。
それは、まさに私が同僚との仲に問題がある(私が一方的にそう感じている)からだ。その同僚の名はギルデロイ・ロックハート。彼が私と同じ様に教授となる前は冒険家だったことも相まって話題は豊富だろうと話しかけて見たのだが、その後から何処か避けられている様に感じる。
「ロックハート教……」
「すみません、私生徒とこの後約束がありまして!!!」
「え、あ、そうですか」
別の日も──
「ロックハー…」
「失礼、どうにも私は人気者でしてね。あぁ、こんなにもモテる私罪な男!!」
なんて、まくし立てられて本題にすら入らせてもらえない。私が何か気に障ることをしてしまったのだろうかと通りすがりのスネイプ教授に尋ねるも鼻で笑われて一蹴される
「スネイプ先生、真面目に答えてくださいよ。結構本気で悩んでいるんですから」
「我輩はいつだって真面目だ。それともミス・フォードの目にはふざけている様に映っているのですかな?」
バカにした様な声音でこちらに見向きもせず食事を続けるスネイプ教授にウィズリー双子のように悪戯で反撃してやろうかとも思った。が、ここは私が大人にならなくてはとグッと思いを押し込めてやり過ごす。
「そうは言ってませんけど。あ、先生はお友達がいないから助言のしようがないんですね。失礼しました」
行動には移さない、という面で大人になろうとしただけで口は淀みなく言葉を紡いでいく。
「貴様、余程叩き潰されたいと見える」
「いーえー、我らが魔法薬学のスネイプ教授に怪我させちゃマズイですから」
ピキと額に青筋を浮かべるも余裕の表情を浮かべて睨みつけて来る。
「ほう、口だけはよく回るようですな」
睨まれたくらいでへこたれてるようじゃ冒険家は名乗れない、挑発するように笑みを浮かべて見上げ応戦するのだ。
売り言葉に買い言葉な攻防はミネルバに止められるまで続いた。
「アリシア、セブルスここにいたんですね」
副校長ともなれば陰険教授の扱いもお手の物、さらりと教室へ向かうよう促し私には羊皮紙の切れ端を渡してウィンク一つと意味不明な言葉を残して去っていった。
「彼はレモンキャンディが好きなんですよ」
何を言ってるのかサッパリな言葉は、羊皮紙に目を落として言葉の主語を知った。"校長が貴女をお呼びです"と短く走り書きされた羊皮紙は読み終わると淡く光りながら細かい粒子へと姿を変え9月のうっすらと肌寒さを感じさせる風に吹かれて消えていった。
羊皮紙がなければ今頃私はスネイプ教授がレモンキャンディ好きだと思っていただろう。爽やかレモンが好物な彼は想像に難いものだ。
あれはもしかして、校長からのお誘いの手土産としてレモンキャンディを持っていけというミネルバなりのアドバイスだろうか。時刻は書いてないが本日の私の空き時間は今を含める連続の2コマ、校長ともなれば一介の教授の時間割なぞ把握済みだろうから疑問に思うまでもなく今なのだろう。
一つ疑問なのは、私は何か呼び出されるようなことをしただろうか?
ホグワーツの教授に就任する前に私は校長であるアルバス・ダンブルドアとホグワーツで働く際の契約を交わした。校長が教授として私に求めるモノと私が雇用主に求めるモノ、それらを擦り合わせ交わされた契約。その契約を違えた覚えはないがゆえに疑問なのだ、何故校長は私を呼び出したのか。
もしや、今朝の朝食の席で教員席のデザートの一つを独り占めしてしまったことだろうか。それか、教室の天井を破壊して(真上の部屋は空き部屋だった)部屋を広くしたことだろうか。それとも、フクロウ便が届く時間に大広間に入ってきて大混乱を巻き起こしたことだろうか等と考えてみるも直接会って聞いてみないとわからない。
一つの場所にじっとしているのが苦手な私でも毎日楽しんでいる程、新しい出来事には事欠かないホグワーツを追い出されちゃたまらんとスタコラサッサと話に聞いていた校長室へと向かった。正確にいうと聞いていた場所のガーゴイルの前に数分後の私は突っ立っていた、校長室の場所がわからずに。
アリシアの前職は冒険家ですが、それは彼女の同じ場所に長くいると飽きるという性格が一つの決め手となっています。お陰でそれを知る家族は定職に就いたと知って驚き半分、(職務放棄して国外逃亡しないか等)心配半分です。