全寮制であるホグワーツも9月の新学期までの数ヶ月間は嵐の後のような静寂が訪れる。新学期も始まらないうちからやって来て何をするんだと思う人もいるかもしれないが、教授達は新学期の準備に追われるとても忙しい時期の1つである。休暇中にも関わらず仕事はてんこ盛り。
要は、人手はいくらあっても困らないと言うわけだ。
「手伝っていただいて、すみませんね先生」
「いえいえ、これも仕事の一環ですから。それにしてもこの量を毎年先生方だけでこなしているんですか?」
「これも慣れですね」
教授という職業がこれ程までに忙しいとは知らなかった。ホグワーツ出身でも学校に通っていた訳でもない私が知る由も無いことだが。
キーキーと甲高いフリットウィック先生の声に耳を傾けつつ両手には手紙の山を抱えてフクロウ小屋を目指す。
というのも職員室に向かう途中で聞こえた悲鳴のもとへ駆けつけ、慌てた様子で床に散らばった手紙を拾う小さな後ろ姿を目撃したことから始まった。ホグワーツへの入学資格を得た子供たちへの手紙を届けるためにフクロウ小屋を目指していたフリットウィック先生を見つけたピーブズとかいうポルターガイストが悪戯し、それに驚いた先生は手紙を放り投げる形で尻もちをついてしまったらしい。
一枚一枚丁寧に拾っているのを黙って見ている訳にもいかず、こうしてフクロウ小屋までご一緒することにした。
「ホグワーツにはもう慣れましたか?」
「えぇ、お陰様で。あ、でも動く階段に慣れるのは当分先になりそうです」
ホグワーツにきて二週間ほど過ぎたが方向音痴のきらいがある私は、毎度絵画たちの世話になっている。毎回道が変わるこの階段になす術なく、今もフリットウィック先生が進む後をついて行っているだけだ。絵画たちがひそひそとかわす言葉の中にある迷子先生という言葉は聞こえなかったことにしておいて。
これは声を大にして言いたいのだが私は何時如何なる場所でも迷う訳ではないということだ。私は例え地球の裏側に居たとしても家に帰り着く自信がある。
「それにしても、魔法で飛ばせばよかったのでは?」
「確かに。これは、失念しておりました」
目を丸くして小さな体をピョンと跳ねさせたフリットウィック先生の手にあった手紙は再び宙を舞った。フクロウ小屋までの道の先導役を先生に任せて、浮遊魔法で全ての手紙をふよふよと浮かすことで無事到着した。
そう、到着するまでは良かった。嫌な予感はしていたがホグワーツなら大丈夫だろうと何処からともなく湧き出てきた自信に、それを無視してフクロウ小屋へ足を踏み入れたら大惨事となった。それはもう、驚いたフリットウィック先生がひっくり返って死んだフリをするくらいの。
「アリシア、フクロウには私達が手紙を持って行きますので貴女はこちらに行ってきて貰えますか」
騒ぎを聞きつけたミネルバから、戦力外通知を宣告されていつの間にやら来たばかりのホグワーツ城の前に立ち尽くしていた。
1つの手紙と添えられた1枚の羊皮紙を手に。
フリットウィック先生、可愛いですよね。髭がチャーミングでお茶目でハリポタでも好きなキャラの1人です。