大広間で食事をしているとき大抵は隣に座るロックハート先生が話し、私やフリットウィック先生がそれに相槌を打っていたのだがある事を思い出してロックハート先生に話しかける。
「あ、そう言えばロックハート先生も冒険家なんですよね?フリットウィック先生に教えて頂いたんです」
そうですよね?と視線を投げかけると大きく首を縦に振って応えてくれた。朝食のパンケーキにかけるシロップが口元についていたのでソッと伝えるといそいそとナプキンで拭っていた。
「え?あ、あぁそうです。フォード先生も教職に就かれる前は冒険家としてあちこち旅されていたようで噂をよく耳にしていましたよ」
返答に僅かなぎこちなさを感じさせるがそれも一瞬のこと
「そうなんですか?良い噂だと良いんですけど。今度是非オススメの場所を教えてください」
「え、えぇ。私で良ければいつでも喜んで」
ロックハート先生は微笑みを一つ浮かべてナプキンで口元を拭うとやる事があると言い残して一足先に大広間を去っていった。珍しい事もあるものだ、普段は最後の最後まで先生方と話して帰るというのに。意外にも今日から始まる授業に緊張しているのかもしれない。
ないか。ロックハート先生の事はあまり知らないがいつも自信に満ちているというか、人の前に立つことが好きなタイプに見える。冒険家なだけあって肝が座っているように思えるのだ。
「おや、ロックハート先生が先に戻るなんて珍しいこともあるもんですね。先生でも初めての授業は緊張されるのかもしれませんね」
「ロックハート先生が緊張しているところなんてスネイプ教授が不安で震えているところくらい想像できませんけどね」
それもそうですね、と返すフリットウィック先生と笑っていると背後にぬっと確かな気配を感じた。
「なにやら楽しそうですな。良ければ私にもお聞かせ願いたい」
「おはようございます、スネイプ教授。丁度教授の寝癖について話していたんです」
は?と馬鹿にしたような目で見下ろされるが構うことなくいつまでも突っ立っている後ろの彼に席に座るよう促す。
「ちなみに、今朝は左側が一束跳ねてますよ」
すかさず左手で頭の側面を抑える教授に澄まし顔で一言告げる。
「冗談ですが」
何事だと前の方に座る生徒たちが辺りを見渡すほどに周囲の気温が下がった。ピキッと額に青筋が浮かび上がりギロリと睨まれるが、無言で何事もなかったかのように朝食に手をつけ始めてしまった。この短期間で教授の反応を楽しんでいるとバレつつあるのかもしれない。それは非常に困る、私のホグワーツ 生活の楽しみの一つなのだ。
余談だが、私がスネイプ教授と会話を楽しんでいるときは大抵スリザリンとグリフィンドールのテーブルの前の方に座る生徒達は耳をそばだてているらしい。それぞれ考えることは違えど気になるのだそうで。
「そういえば、フォード先生も緊張されていないのですね?」
スルーされて仕方なく黙々と朝食を腹に詰め込んでいた私に再び言葉を投げかけてきたのはフリットウィック先生。食後の紅茶を楽しんでいる。
「いえ、緊張してますよ?ただ楽しみという思いの方が大きいだけで昨晩はなかなか寝つけませんでした」
「子供ですな」
さっきまでうんともすんとも言わなかった薬学教授がポツリと呟くが私の地獄耳は勿論それを拾った。拾ってしまったものはしょうがない、聞かなかった水に流すわけにもいかないのだ。
「喧嘩なら言い値で買いますよ」
「せめて決闘と言いたまえ」
「まぁまぁ、落ち着いてください。先生方同士の決闘なんて聞いた事ありませんよ」
「なら第1号になりましょう」
これには苦笑いを返され既に完食していたスネイプ教授が付き合いきれん、と席を立ったことでその話はパッと打ち切られた。元々お互い本気で決闘するなんて考えていない……筈だ。