東方文桐録   作:あぽろ

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第13話 妖怪がいるところ

 文の屋敷を抜け出すことには成功した。

 しかし、ここからが問題だ。

 

 まず、文の屋敷のある山を抜けなくてはならない。大体、1時間もあれば抜けられるだろう。……何もなければ。

 今の時間帯は深夜。妖怪達の活動時間なのだ。

 俺達は天狗だから、少しでも知能があるものは寄ってこないだろう。天狗は妖怪の中では結構な強さをもった種族なのだから。寄ってくるものは、知能があまりない弱い妖怪か、自分が天狗に勝る力を持つと確信したそれなりの妖怪だけだ。…………それなりの奴が来ないことを願うしかない。

 

「文、まずはこの山を降りよう」

 

「はい、分かりました」

 

 言葉は短く交わす。これも一つの作戦だ。

 

 

 

 

 文と一緒に山を降りていく。出発してから30分ほど経っているが、まだ妖怪には会っていない。

 

 もともとこのあたりは妖怪が少ない。文達が住んでいたからでもあるが、近くに人里や村がないというのがその理由だろう。

 

 妖怪という存在は、人間の恐怖という感情から生まれた、もとはといえば、人間が恐れる対象に姿形と名を付けたものなのだ。必然的に、力の弱い妖怪は人間のいないところに存在はできない。

 逆に天狗ほど有名であれば、どこにいても恐れられる。というか、山自体が信仰対象であるため、山の神とも呼ばれる天狗も存在を信じられている。つまり、どこでも存在できるのだ。

 

 天狗は妖怪としての力も、神としての力も持っている種族だ。

 

 そのことを本能的に分かっているから、あまり他の妖怪が近付いてこない。

 

 ひとことで表すならば、『天狗って運良いな』だと思う。

 

 その存在が生まれたときから恐れられ、山に住むうちに神に祭り上げられた。

 『運も強さの内』という言葉をものすごい体現している。

 現に、天狗の数は妖怪の種族の中でも多い方だ。

 

 

 

 

 

 さくさくと山に残った腐葉土を踏みながら進む。

 

 油断はいけないと思うが、この調子だと、文の屋敷がある山を抜けるまで妖怪に出会うことはないだろう。

 

 そう思うと、少し肩の荷が降りた気がする、

 

「文、このあたりは妖怪がいないと思う。油断したらいけないけど、少し気楽に行こう」

 

「はい、そうですね。私も私たちいがいのようかいに会ったことがないので、ここにようかいはいないと思います」

 

「……最初から言ってくれたらいいのに」

 

「うぅ……すみません。わすれてました……」

 

「ううん。そんなに気にすることはないよ。やりすぎなくらい警戒していた方が安全だし」

 

「そうですか?でも、これはそこまで思いあたらなかった私がいけませんし」

 

「大丈夫だよ。ここが安全だって気付けたんだから、どちらにしてもあまり変わらないし」

 

「……そうですね。よかったです」

 

 

 とりあえず、あと10分くらいでこの山を抜けることができる。

 

 もっと気をひきしめていかないと。

 

 

 




 メリークリスマスです。
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