東方文桐録   作:あぽろ

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※少し道徳的、というか暗い描写があります。苦手な方は、見なくても話の上で大丈夫ですので、読まないことをおすすめします。


第7話  葉っぱの気持ち

 今はまだ朝と呼べる時間帯。空気が澄んでいて、かなり涼しく感じられる。

 

 ふと空を見上げる。すると、紅葉した葉がひらひらと舞い落ちてきた。

 

 思わず指で掴み取る。乾燥した葉は脆く、崩れやすい。しかし、その葉はその儚さとは真逆に感じられる、燃えるように情熱的な赤をしていた。

 

「わぁ、こうようがすごいですね、桐!」

 

「うん、すごいきれいだね」

 

 俺と文は今、文の屋敷のまわりを散歩している。

 文の屋敷がある山には、紅葉する木がたくさんある。だからかもしれないが、朝食を食べているときに文のおばさまが『食後に散歩はどうでしょう?』と言っていたのだ。

 

 赤、橙、黄。ひとつ舞い落ちてくるだけでも美しいのに、色とりどりの葉が見渡す限り並んでいる様は、圧巻のひと言で表せられるだろう。

 しかも、空は雲ひとつない快晴で、青い空とのコントラストが、よりその魅力を引き立てている。

 

「桐、なんではっぱはこうようするんでしょう」

 

「ん?なんで?……それは考えたことがなかったな」

 

「……わたし、思うんです。はっぱは、こうようしたら、ちってしまうでしょう?だから、ちってしまうまえに、だれかにじぶんはここにいる、って知ってほしくて、見てもらえるように、少しでも楽しんでもらえるように、きれいにこうようするんだって」

 

 そう言う文の瞳が寂しげに伏せられているのを見て、きっとずっと寂しかったんだろうと思った。

 誰かに自分を見つけてほしかったんだろうとも思った。

 

「…………そうだな。じゃあ、俺達は葉っぱがここにいて、こんなにきれいなことを知ってるから、葉っぱの思いはちゃんと届いたってことだよな」

 

 文の瞳が、驚きに少し見開かれる。本当はどうなのか分からない。けれど、それでも嬉しかったのだろう、次の瞬間にはふわりと唇が笑みを形作っていた。

 

「っ、はい、そう、ですね。…………わたしたちは、はっぱを見つけられましたから、きっと……はっぱも、よろこんでいますよ」

 

 ひらり、と葉が落ちてくる。その葉は橙色をしていて、文が手に収まった。

 

「あ……はっぱが」

 

「……その葉っぱは自分のことを真剣に考えてくれた文に、嬉しいって伝えにきたんじゃないかな」

 

「そう、なんですか?でも、えだからはなれたら、はっぱが……」

 

「文。葉っぱは枝から離れてもなくなる訳じゃないんだ」

 

「なんでですか?だって、はっぱはじめんにおちてしまったら、それでおわりでしょう?」

 

「ううん、違うんだよ。葉っぱは葉っぱだけで終わる訳じゃないんだ。……葉っぱは地面に落ちるだろう?そうすると、土の中の生き物がその葉っぱを食べる。そして土の中の生き物も他の生き物に食べられて、そうやって葉っぱは続いていくんだよ」

 

 他にも、山に木が、葉があるからこそできていることもある。たとえば、雨水の濾過などもそうだ。

 山に降った雨が落葉に濾過され、木や土でせき止められているから、洪水がおさえられる。

 

「じゃあ、これはかなしいことじゃないんですか?」

 

「いや、悲しいことだよ。でも、始まりの先には終わりが必ずあるんだ。どんな物にも、終わりは等しく訪れるんだよ。だから、それは悲しいことだけど、当たり前のことで、拒絶したらだめなんだよ。そして、前を向かなきゃいけない」

 

 そう。前を向かなくちゃいけないんだ。終わるのは悲しいことだけど、ずっと終わらないのはもっと悲しいことだと知っているから。

 

「……少し、むずかしいですね。でも、がんばってみます」

 

「俺としては、葉っぱについてそこまで考えられる文がすごいと思うよ」

 

「…………はっぱだって、今を生きていますから」

 

「うん、そうだね」

 

 自然も、生きているんだよな。

 

 

 文の考え方が、直視できないほどまぶしく思えた。




 文ちゃんの考え方は、あくまでもこの作品の文ちゃんの考え方です。ですので、似ている考え方の絵本があっても、関係していませんし、本当にそうなのかは全く分かりません。この作品独自の考え方だと思ってください。
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