君の名は。〜after story〜   作:ぽてとDA

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君の名はのその後が気になりすぎて、だったら自分で書いてしまえということになりました。よろしくお願いします。


〜プロローグ〜
第1話「君の名前は」


朝、目が覚めるとなぜか泣いている、そういうことが、時々ある。

 

 

 

 

 

 

 

見ていたはずの夢はいつも思い出せない。

 

 

ただ…

 

 

 

 

 

 

 

ただ、何かが消えてしまったという感覚だけが、目覚めてからも、長く、残る。

 

 

 

 

 

 

 

ずっと何かを…誰かを、探している。

 

 

 

 

 

 

 

そういう気持ちにとりつかれたのは多分、あの日から。

 

 

 

 

 

 

 

 

あの日

 

 

 

 

 

 

 

 

 

星が降った日

 

 

 

 

 

 

 

 

それはまるで

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まるで夢の景色ように

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ただひたすらに

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美しい眺めだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

君の名は。 〜after story〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いつのまにか、癖になっていた。ふと右手を見て、そこにあった何かを思い出しそうになる。でも、思い出さないといけない、忘れちゃいけないその何かは、頭の中からすっぽりと抜け落ちて、そこに空白を作る。どんなに思考を凝らしても、その空白はまるで桜の花びらのようにするりと抜け落ちていく。私はいつもそこで諦めてしまう。

 

4月も中頃を過ぎ、社会人としての生活にも慣れたころ、俺はいつもの携帯のアラームで目を覚ます。見慣れた天井、見慣れた部屋。普通のことなのに、何故か悲しい気持ちが溢れてくる気がした。あぁ…またか、頰をつたる違和感を感じて手を当てると、何故か涙を流している。何度目だろう。こういうことが、時々ある。もう、そんなことも気にしなくなってしまった。

氷のように冷えた水で顔を洗う。顔を上げて鏡を見ると、自分の顔がまるで誰か違う人のように感じる。何かを思い出しそうな、でも、思い出せない。終わりのない螺旋階段を登り続けるような、そんな感覚に襲われて、俺はまたそこで諦めた。

 

 

玄関を開けて外へ出ると、見慣れてきた東京の街並みが広がっている。大小様々に立つ高層ビル群は、そのガラスに春の暖かい日差しを反射して、幻想的な光のアーチを描いている。あぁ、なんでだろう…ここに引っ越してくる前にも、この景色を見たことがある気がする。そんなわけはないのに、私の中の何かが、この景色に懐かしを感じさせる。もう、こんなことを思うのも何回目だろうか。

 

 

朝日を浴びながら人混みの中を歩く。東京の朝は人が多い。俺はあの日から、いつも誰かを、何かを探している。何故だろうか?赤いゴムで髪を留めている女性を見かけ、少しだけ心が跳ねる。でも、すぐに違うとわかり、目を伏せる。あの人じゃない、答えは今日も見つからない。

 

 

 

 

ただ、私には1つだけ分かっていることがある。

 

 

 

 

それは

 

 

 

きっと、答えは

 

 

 

 

一目見ればすぐにわかる。

 

 

 

 

きっと…

 

 

 

月曜の朝の駅は、いつもより少しだけ混んでいる気がする。電車に乗ると、乗り口とは反対側のドアまで移動し、そこに寄りかかる。俺が降りる駅までこのドアは開かない。だから、俺はいつもここに立つことにしている。

 

 

私がいつもの場所に移動すると、ゆっくりと電車は動き出す。それに合わせて、快速電車だろうか、向かい側の電車も並走するように動き出す。いつもの、何も変わらない、そんな日々が、また始まろうとしている。

 

 

 

ふと、顔を上げると

 

 

 

並走する電車のドアに寄りかかる男性が見えた。

 

 

 

何かが、はまりそうになかったパズルのピースが、あるべきところにはまろうとしている。そんな感覚だった。

 

 

 

あぁ、そうか…あの人だったんだ…

 

 

 

やっと、やっと、

 

 

 

見つけた

 

 

 

 

 

いつも、誰かを探している

 

 

 

 

 

 

 

その答えが、見つかった気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

まるで、世界の時が止まってしまったように、2人は見つめ合った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「降ります!すいません降ります!」

 

電車が止まった瞬間、俺は駆け出した。あの人だ!きっと!

会ったことはない、見たこともない、それでも、俺の体全身があの人だとそう告げていた。

 

 

あの人が、答えだと。

 

改札を駆け抜けて、彼が乗っていた電車が止まったであろう駅に向けて走りだす。タクシーだとか、バスだとか、そんなことを考えている余裕なんてない。

こんなに走ったのは何年振りだろうか、ヒールを履いた足が悲鳴をあげようとも、御構い無しに私は走り続けた。

 

 

「あっ」

 

 

見上げると、階段の上に彼女は立っていた

 

 

 

 

 

桜の花びらが2枚、木から落ちようとしている

 

 

 

 

階段を上る、ただ、ただ、君に会いたくて

 

 

でも、会ったことも、話したこともない

 

 

どうしてだろう、何故こんなにも、嬉しいのだろうか

 

 

すれ違う

 

 

だめだ、あと少しだけでいい、もう少しだけでいいから、君と一緒にいたい。

 

 

声をかけないと…

 

 

たった一言、それだけでいいから

 

 

 

 

 

「あの!」

 

振り向いた彼女は、その顔を涙で濡らしていた。どうして泣いているのだろう?あれ?

 

 

声をかけてくれた彼の顔は、涙を流していた。どうして泣いているのだろうか。私も、とても嬉しいはずなのに、幸せな気持ちなのに、どうして涙が出てくるのだろうか。

 

 

 

 

「…俺…君をどこかで…」

 

 

声をかけた彼女は、その言葉に少しだけ驚いた顔をした。そして、微笑む。

 

 

「…私も!」

 

 

 

 

 

 

 

 

いつも誰かを探している。その答えが、やっと見つかった。きっと、君がそうだ。だから、また、ここから始めよう。

 

 

 

 

 

 

二人で、まるで、せーのっと掛け声を合わせたように

 

 

 

 

 

始まりの合図を

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「君の名前は」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桜の花びらが2枚、ふわっと地面に落ちた。

 

 


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