君の名は。〜after story〜   作:ぽてとDA

13 / 42
第13話「親友」

「初めまして、瀧君と付き合ってる宮水三葉です」

 

 

三葉が、自己紹介の言葉とともに頭を下げる

 

 

「…」

 

 

「……」

 

 

が、こいつら、俺の学生時代からの親友、高木と司は目を見開くばかりで一向に言葉を発さない

 

 

今日の朝、司から電話があって、昼飯でもどうかと誘われたんだ

 

 

で、せっかくだから三葉を紹介しようと思い4人でとあるカフェに来ているのだが…

 

 

「お、おい」

 

 

「あっ、!すまん!俺は、瀧とは高校のときからの友人で、高木真太っていいます!」

 

 

「同じく、藤井司です。今日はすいません。お二人の時間を邪魔してしまって」

 

 

「いえ、いいんです!お二人のお話は前々から聞いていたので、一度会ってみたいと思ってたんです!」

 

 

司と三葉が話し出したとき、2人には背を向けるような形で高木が俺に肩を組んできた

 

 

「な、なんだよ?」

 

「んで?どうやってあんな超絶美人手に入れたんだ?まさかお前…金か?」

 

「ばっ!ちげーよ!」

 

「じゃあ、やっぱり美人局か…」

 

「だぁーかぁーら!!」

 

ほんとこいつ、いつかぶん殴ってやる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺と三葉の出会いを話したら、高木も司も目を丸くしていた。まぁしょうがないと思う。こんな話、そうそうないしな

 

「はぁー、そりゃたしかに、運命的な出会いだなぁ」

 

「瀧も成長したな…初めて会った女性に声をかけるなんて、昔からしたら想像できない」

 

「え!昔の瀧君の話、聞きたいかも…」

 

「あぁ!いいから聞かなくて!司!余計なこと言うなよ」

 

三葉は、高木と司の2人とすぐ仲良くなった。ほんとに初めて会ったのか?って思うくらい

 

 

そして、俺を蚊帳の外において、かってに俺の話をし始めた

 

 

 

「んで、ラブレターもらった瀧がどんな反応したかわかります?」

 

「んー、顔が真っ赤みたいな?」

 

「残念、瀧のやつ、いきなり逃げ出したんですよ」

 

「えぇー!嘘!女の子可愛そう…」

 

「そう、こいつは昔からヘタレなんです」

 

「お前らうるせーぞ!かってに人の過去を言いふらすな!」

 

「…瀧君、ヘタレやったんやね」

 

「ちげーよ!」

 

「私にはあんなにカッコいい言葉を言ってくれたんやけどねぇ」

 

「「三葉さん!その話詳しく」」

 

高木と司の2人とも身を乗り出して三葉に詰め寄った

 

俺はため息をついて手を額に当てる

 

ダメだこいつら

 

三葉は、俺のことをペラペラと話すし、司は何故か携帯でメモ帳を開いてそれを記録している。

 

司曰く、お前の弱みはいくつあっても困らない、だそうだ

 

ちなみに、高木は三葉の話を聞いて必死に笑いを堪えている

 

こいつらと友達、やめようかな

 

「君が、世界のどこにいても」

 

「必ず会いに行く」

 

「ぶっ飛ばすぞ」

 

高木と司は、まるでミュージカルのように俺の耳元で、いつか俺が三葉に言ったセリフを言い出す。

 

当の三葉は、手を合わせて、目でごめんと言っている

 

俺、たまには怒ろうかな…

 

「瀧よ、お前がこんなにも成長してくれてお父さん嬉しいぞ」

 

「誰なんだよお前」

 

高木がまた俺に肩を組んでにひひと笑う

 

「三葉さん、こいつはどっか抜けてるところがあるんで、よろしく頼みますね」

 

「うん、よろしく頼まれました」

 

「お前ら俺の保護者か」

 

「「みたいなもんだろ」」

 

2人同時に、そう言い切った

 

「お前はたまによくわからん行動をするし、危ないんだよ」

 

「そういえば、五年前の秋頃、急に岐阜まで1人で行くって言い出したよな?結局俺達が付いて行ったけど」

 

高木と司の話に、俺と三葉は思わず反応する

 

「高木君、司君、その話、詳しく覚えてる?」

 

「いや、俺は瀧のために代わりにバイト入っただけで、実際に行ったのは司と、当時のバイトの先輩の奥寺さんって人なんすよ。あ、もうすぐ藤井か」

 

「え?藤井?」

 

「あー、そうですね、実はそのとき一緒に行ったその奥寺さんって人と婚約しましてね」

 

「そんなんだ…奥寺さんって、女性なんやね…」

三葉が俺をジーっと見てくる

 

「いや、昔の話だろ」

 

「ふんっ」

 

ほんとに三葉はわかりやすい。拗ねるとすぐにそっぽを向くのが癖なようで、こういうときはだいたい三葉のことを褒めれば機嫌が直る。のだが…

 

「いやいや、三葉さん。瀧に女性に手を出す度胸なんてありませんよ」

 

「う、うるせえ!」

 

思わぬ邪魔が入ってしまった

 

「…まぁ、瀧君ヘタレやもんね」

 

「だから!ヘタレだったら三葉に声をかけてないっての!」

 

「あぁ、だから俺たちは非常に驚いたんだよ瀧君」

 

「三葉さんが脅されてるのかと思ったほどだ」

 

「お、お前ら…」

 

きっとこいつらは、俺をからかうことに楽しみを見出している。三葉はさっきからクスクスと笑っているし

 

「ま、冗談はこの辺にして、あのときは、結局最後に瀧1人がどっかに行ってしまって、俺達は先に帰ったんです。だから俺達に聞くよりも、瀧本人が一番知ってると思いますよ」

 

「実は俺、あのときのことがよく思い出せないんだ、何か、大事な事をしに行ったはずなんだけど、そこだけすっぽり記憶が抜け落ちてる」

 

「不思議だな、わざわざ岐阜まで行ったんだろ?そんな大事な事、そうそう忘れやしないだろ」

 

高木がそう言いながら、頭をひねって考え出す。

 

たしかに、そんな大事な事、なんで忘れたんだろう

 

糸守のこと、俺は、あそこに何を、誰に会いに…

 

「…だめだ、やっぱり思い出せない」

 

「瀧君…無理しなくてええよ?」

 

三葉が、心配そうな顔をしている

 

「すまん…でも、俺と三葉のこと、なんかわかるかもしれないのに…」

 

「瀧、どうゆうことだ?」

 

「いや…」

 

「ええんよ、瀧君、この2人なら、大丈夫」

 

三葉が俺の言葉を遮って、頷く

 

「実は私、その瀧君が行った岐阜の糸守町出身なの」

 

「それは…糸守って、あの彗星の…」

 

「そう、今から8年前に、私の故郷は彗星の落下によって消えた。でも…瀧君がその糸守に興味を持っていたっていうのを聞いて、何か、私と瀧君が惹かれ合う理由でもあるのかと思ったの」

 

その話を聞いて、司は顎に手をあてて何かを考える

 

「…瀧は、あのとき、誰かに会いに行くと言っていた」

 

「え?」

 

三葉が驚きの声をあげる

 

「覚えてるのか!司!」

 

俺も思わず大声を出してしまう。でもしょうがない、俺が、無くした記憶、それを思い出せるかもしれないんだ

 

「あぁ、図書館で、糸守町彗星被害に関する本を瀧は必死に読んでいた記憶がある。ただ、何故だ…俺もそのときに瀧と何を話したのか、全く思い出せないんだ…」

 

「…そうか、司も」

 

でも、これは大きな一歩だ、俺は糸守に、誰かを探しに行った

 

それは、思いつく限りでは、1人しかいない

 

俺は、三葉を見る

 

「もしかしたら、瀧は、三葉さんを探しに行ったんじゃないか?」

 

さっきから黙って話を聞いていた高木は、俺が思っていたのと同じ言葉を発した

 

「あぁ、2人の、はっきり言って運命的だが、異常な出会い。消えた糸守。それに瀧が会いに行った誰か。バラバラのピースを合わせていくと、謎が解けるかもしれない」

 

そう言った司に、三葉が反論する

 

「で、でも、私は瀧君が糸守に行った頃には、もう東京にいたんだよ?なのに、どうして瀧君が私を糸守に探しに来るの?」

 

そうだ、何かが、何かが足りない。大事なパズルの一欠片が。

 

「わからない。でも、俺が探していたのは、三葉だと、俺も思う…確証はないけど、いままで、ずっと探していたのは三葉だったんだ、今はそう思ってる」

 

「瀧君…」

 

「すまないな瀧、俺も記憶が曖昧なところがあって、的確な言葉が言えない」

 

司は眼鏡を拭きながら、申し訳なさそうに謝る

 

「いいんだよ司、お前のおかげで、一つ思い出せたんだ」

 

「まぁ、とりあえず、2人で一緒にいれば、何か思い出すんじゃないか?」

 

「あぁ、そのつもりだよ」

 

「それに、瀧君とは今度糸守に行く約束もしてるからね」

 

「そうなのか、なら、そこで、お前の答えを見つけてこい、今度こそな」

 

「応援してるぞ、瀧」

 

2人が、ニッと笑い親指を立てる。俺もそれに応える

 

こいつらは、いつもふざけてるけど、なんだかんだ、俺のことを気にかけてくれている

 

それは学生時代からよく知っている

 

俺が気づいてないと思ってるだろうけど、高木と司に、何度も助けられていることは俺が一番よくわかってる

 

だからやっぱり、こいつらは親友だ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

店の外に出たときには、すでに時刻は3時を回ろうとしていた。どうやら話し込みすぎたようだ

 

「んじゃあ、俺たちはこの辺で」

 

「また、今度、4人で飯でも行きましょう」

 

「うん!今日はありがとう!高木くんも藤井くんも、またね!」

 

「じゃあな、高木、司」

 

三葉はぶんぶんと手を振り、俺は軽く手をあげる

 

 

それに答えるように高木が手をヒラヒラと降り、司は軽く頭を下げて歩き出す

 

 

 

 

「高木くんも、藤井くんも、いい人やね…」

 

「まぁ、あいつらには色々と世話になったかな」

 

就活で苦戦したときも、あいつらなりに冗談で励ましてくれた。それに、誕生日にはわざわざ2人でスーツまで買ってくれた。だが、今までありがとうなんて言ったら、それこそ頭を心配されるから、口が裂けてもそんなことは言えない

 

「大事にしないよ、友達は」

 

「おう」

 

「そうや、私にも高校のときからの親友が2人いるんやけど、今度紹介させてくれる?」

 

「あぁ、いつでもいいよ」

 

三葉は、俺の答えに嬉しそうに微笑んだあと、何か思いついたようにこちらを見る

 

「あ、そうだ、2人よりも先に紹介しないといかん人がいたんやった…」

 

「ん?誰?…まさかお父さんとか言うなよな…」

 

「言わへんよ、お父さんは今岐阜やし…ところで、瀧君この後時間大丈夫やよね?」

 

「あぁ、日曜だし、なんもないよ」

 

「んじゃ行こっか」

 

「今から?どこへ?」

 

その言葉で、三葉はいたずらっぽく微笑んだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「決まっとるやろ、私の家やよ」

 

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。