四月もそろそろ終わりを告げ、ゴールデンウィーまであと一息、三葉と出会ってからは、もう2週間ほどの日が経っていた。たった2週間、今までの自分だったら、ただ毎日をなんとなく過ごす、それだけの日々だったと思う
けれども、今は違う、この2週間、俺の隣にはいつも三葉がいた。三葉と一緒に笑って泣いて、怒って、そんな日々が、楽しかった
三葉と出会って、ねずみ色に染まっていた俺の人生は、なんの色だか、パステルカラーに染められてしまった
いつも元気で、でも真面目で、と思ったらどこか抜けている。そんな三葉が可愛い
ほんとはもっと距離を縮めたい
もうキスはした。だけど、俺たちは高校生じゃない。いや、今時高校生だってもっと先に進んでるだろう
だが、まだ出会って2週間、付き合って1週間だ。そんなに急ぐことはないんじゃないかと思う自分もいれば、早く三葉の全部を奪ってしまえと思う自分もいる。
なんだろうか、まるで、いままでの時間を埋めるために急かすような、そんな自分がいるのだ。
記憶の中の、どこかに、もう1人の自分が…
「どうしたん?瀧君?」
はっとして、急速に考え事の世界から戻ってきた俺の目の前には、可愛い三葉の顔があった
「また、考え事しとるん?最近多いよ、1人で考えてること」
「あ、すまん…大したことじゃないんだ」
「私たちの記憶のこと?だったら、私も考えるよ?」
三葉は、心配そうに、まるで自分だってできると言いたげな子供のような顔で、俺を見つめる
「いや、違うんだ、それは、今度糸守に行ったときにきっとわかる。だから実は、そんなに心配してないんだ。それより、今は三葉との時間を楽しみたくてさ」
そう言って俺は三葉を抱き寄せる
三葉は、この急に抱かれるのが好きだ。本人に聞いたわけじゃないけど、反応を見たらすぐにわかる。顔を真っ赤にして俯く、そして、しばらく何もしないと、物欲しげに俺を見つめる。そして、キスをしてあげると満足するのだ
ほんとにわかりやすい
ちなみに、今は俺の部屋で三葉と2人っきりで、金曜日の仕事を終えたあと、俺の家に泊まるという予定だった
父さんは例のごとくいない、夜勤だろうか、徹夜だろうかわからないけど、今日も帰らないから、飯は勝手に食ってくれ、というLINEが届いた。だから、今日のお泊まりデートを考案したのだ。
ちなみに、ゴールデンウィークは来週の火曜からだ。そこで、三葉と、妹の四葉と一緒に糸森に行くことになっている。
「瀧君…」
ふいに、三葉が俺に声をかける
「どうした?」
「…なんもせんの?」
「して欲しいのか?」
俺は、ちょっとからかい気味に言葉を返す。そして、キスをする。いつからかするようになった。熱いキスを。
お互いに求めあうように、激しく舌を絡め合う。ときおり三葉の妖艶な声が聞こえてきて、それが俺の本能を奮い立たせる。もっと求めたい。そんな思いで、俺は三葉の唇を奪い続けた。
「あぅ…はぁ…はぁ…瀧君」
長い口付けが終わり、三葉は酸素不足で息切れしているように吐息を漏らす。
「大丈夫か?」
優しく声をかけて、その頭を撫でる。すると、三葉も俺にしなだれかかってきて、その体をあずける。
「ねぇ…瀧君」
「ん?」
頭を撫でながら、俺は答える
「もっと、しても、ええんよ」
思わず、動かしていた手を止めてしまう。三葉の顔を見ると、今までにないくらい真っ赤で、目はウルウルとしている
「それって、いいってことか?」
「…うん」
コクリと、三葉は頷いた
「手加減しないぞ?」
「ちょっとは、手加減してよ…」
顔を赤くして俯く三葉、その顎に手を添え、無理矢理上を向かせる、そして、プルプルと震えるその口にキスをする
ついばむように、三葉の唇を甘く挟み込む、そして、お互いに舌を絡ませあった
ときおり恥ずかしげに、でも大胆に、三葉の舌が自分の中に侵入してくるのがわかる
「んっ、瀧君…」
「どうした?」
「…好き」
今度は三葉が、攻めに回る、でも、まるで割れ物に触れるかのような、そんなキスをしてくる。恥ずかしいのだろうか、それがまた可愛くて、すぐにこちらが攻め返す。が、なんだか三葉が不満そうな顔で見てくる
「たまには、歳上にリードさせてくれてもええんよ?」
「三葉は歳上な感じしないからだめだな」
そう言うと、三葉は頰を膨らませて赤くなる
「うるさい、瀧君が大人びすぎなんやよ…」
「三葉が子供すぎるんだよ」
今度は三葉の頭を撫でる。すると、すぐに三葉の顔がにやけてくる。ほんと、わかりやすい。
また、キスをする。本日何度目だろうか。前は1日何回キスできたか数えていて、その回数が増えるごとにニヤニヤしていた。今考えると気持ち悪いと思う。三葉には死んでも言えない
そして、三葉の膨らみに手を伸ばす
「あっ…瀧君」
「いいんだろ?」
「…うん」
許可は得た。今度はグーパンはされないだろう。いや?ビンタだったっけ?あんまり覚えていない。
「うぅ…たきくぅん…」
柔らかいその膨らみを揉むたびに、三葉の口から嬌声が漏れ出す
「頭変になりそうやよぉ…」
「こんなことされるのは初めて?」
実は気になっていたが、今まで聞けなかった。三葉に彼氏がいたか。いや、俺はきっといたと思っている。だって、こんな美人を世の中の誰がほっておくというのだろうか。だから俺が付き合えたのは本当に運が良かったと。だが、三葉の口から告げられたのは、俺の思いとは正反対のものだった
「初めて…やよ。彼氏も、瀧君が初めてやもん」
「ほ、ほんまか?」
「瀧君…なまっとる…」
驚いた、まさか俺が初めてとは…三葉の顔を見るに、とても嘘をついているとは思えなかった。おそらく本当なのだろう
「瀧君は?」
「え?」
「瀧君は、私が初めて?」
少しだけ、ジトッとした目で見られた。これは信じてくれるのだろうか。だが、神に誓って、三葉が初めてだった。彼女ができたのも、キスをしたのも、その先も…
「三葉が初めてだよ、本当に」
しばらく、見つめ合う。
「…本当やね、瀧君、嘘ついたらすぐわかるから」
「ほんとか?」
「うん、耳が赤くなるんよ」
そんな癖は、初めて知った。そういえば、高木と司にはいつも一瞬で嘘がバレていた。あいつらがおかしいのかと思っていたが、どうやら俺のせいだったようだ
パチンっと音がする
「ひゃっ!待って!」
三葉は慌てて胸を抑える
実は、話してる間に、三葉のシャツのボタンを外し、ブラのホックも外していた
「うぅぅ、瀧君のエッチ…」
「あのな、男にそういうこと言っても喜ばせるだけだぞ」
そう言って、三葉の腕を取って、広げる
大きすぎず、小さすぎず。形の整った綺麗な胸が、そこにはあった
「は、恥ずかしすぎて死ぬぅ…」
三葉は恥ずかしくて顔を真っ赤にしてあらぬ方向を向いている
「綺麗だよ、三葉」
そして、三葉の胸に、口付けをする。その膨らみの先端に、舌を這わせる
「あっ、だ、だめ瀧君っ」
体をくねらせて、逃げようとするが、俺はそれを腕で押さえる
最初は右、次は左と、その膨らみを口に含む
「はぁ…もうだめ…頭変になりそうやよぉ」
「いいんだよ、三葉」
今度は唇にキスをする
「…愛してる、三葉」
「…私も愛してるよ、瀧君」
そして、もう一度、深く、愛のこもった口付けを交わした
この夜、俺たちは初めて1つになった
それは
ただ、ただ、幸せな時間だった…
「瀧君…」
「どうした?」
俺たちは、1つのベッドに入り、三葉は俺の腕枕で横になっている。アレの後だから、もちろん2人とも生まれたときの姿のままだ
「もうすぐ、糸守に行くやろ?私たちの答え、見つかるかな?」
「…わからない。正直、俺たちが何を求めているのかも、わからない。三葉に会ったことで、俺の中の何かが埋まった。大きな空白が埋まった気がした。けど、まだ足りないんだ、俺の空白はボコボコの穴だらけで、一番大きな穴が埋まっても、他が残ってる。その穴を埋める答えを見つけに行きたい。今はそう思ってる」
俺は、三葉に思いの丈をぶつける。そうだ、確かに三葉に会って、いつも俺を蝕んでいたあのよくわからない虚無感は無くなった。けど、まだ思い出したい、思い出さないとだめなことが残っている気がする。
「私も、同じなんよ。沢山の空白が、私の心の中を彷徨ってる…その答えを見つけに行きたい。でも、糸守に行ったらどこに行けばいいんやろ…」
「そういえば、糸守町の中は立ち入り禁止なんだっけな…」
「まぁ、入ろうと思えば入れるけど…」
俺は、しばらく考えて、ふと思い出す
「…そうだ、あそこだ、俺が昔行った、糸守の山の上。あそこに行きたい」
そう言って俺は起き上がり、しまってあったスケッチブックを取り出してパラパラとページをめくる。そして目的のページを開くと、それを三葉に見せる
「ここは…御神体…」
「御神体?」
聞き慣れない言葉に、思わず聞き返す
「そう、この山の中心にあるのが、宮水神社の御神体なんよ。でも、ここは宮水の人間しか知らないのに、どうして瀧君が知ってるんやろ…やっぱり、私と瀧君は昔、何かで繋がっていた?」
今度は三葉が考え出す。確かに、この絵は見れば見るほど、俺と三葉に何か繋がりがあったことを示唆しているとしか思えない
「…わからない。でも、間違いない。俺たちは繋がっていた。じゃないと、この絵は説明できない。その答えを見つけに行こう。2人で、この御神体のところまで行くんだ」
「そうやね、わすれてしまった何かを、大事な何かを見つけに」
そして、2人で、頷き合う。きっと答えはある。だから、それを探しに、迎えに行こう。
「でもね、瀧君…」
「ん?」
「それは…隠した方が、ええかも…」
そういえば、俺は素っ裸だった…