君の名は。〜after story〜   作:ぽてとDA

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この話は、かたわれ時のBGMを流しながら書きました


第25話「after story」

振り返ると、君がいた

 

 

 

 

 

叫んだ君の名前は、ただ空の中に消えて行く

 

 

 

 

 

そして、かたわれ時が終わり、月が顔を覗かせ、空には星が瞬き始める。そんな透き通った夜空の下で、2人は出会った

 

 

 

 

 

初めて…

 

 

 

 

 

再び出会うことができた

 

 

 

 

 

 

「三葉…」

 

 

そう呼びかけると、三葉の目にみるみる涙が溜まっていく

 

 

「瀧君?瀧君?…瀧君や…」

 

 

馬鹿みたいに繰り返しながら、三葉は俺の両手を握る

 

 

「瀧君がおる…!」

 

 

絞り出すようにそう言って、ぽろぽろと涙を流す。

 

 

「お前…前と言ってること同じじゃないか」

 

 

俺は微笑んで、三葉の手を強く握り返す。

 

 

 

「だって…だってぇ…」

 

 

三葉は地面に大粒の涙を落としながら、俺の胸に飛び込んできた

 

 

やっと逢えた

 

 

俺も三葉も、全てを思いだして、世界や運命、そんなものを全て乗り越えて、ここで向き合っている。俺は本当にホッとする。心の底から、穏やかな喜びが体中に満ち溢れてくる。そして、ただ俺の胸の中で泣きじゃくる三葉に、俺は言う

 

 

 

「待たせて、ごめんな」

 

 

 

それにしても、いつも思うけど、三葉の涙はまるでビー玉みたいに透き通ってコロコロしているな。俺は笑いながら続ける

 

 

 

 

「ホント、こんなに時間がかかるとは思わなかったな…」

 

 

 

そう、俺は5年、三葉は8年かかった。俺たちがあの日、電車で目が合わなければ、きっと、この今はないのだろう。今ここで、こうして三葉と抱き合っている今は、本当に奇跡だ

 

 

 

「でも、瀧君はちゃんと私を見つけてくれたよ?」

 

 

 

涙で顔を濡らしながら、三葉はそう言う。

 

 

 

「当たり前だろ。前にここであった時、言おうと思ったんだ。お前が世界のどこにいても、俺が必ず、もう一度会いに行くって」

 

俺がそう言って笑いかけると、三葉はさらに涙を流す。もう止まらないのだろう。なんせ、三葉にとっては8年ぶりの恋人なのだから

 

「うん…うん…ほんと、かっこいいんやから…」

 

 

「ほら、もう泣き止めって、泥だらけの顔がもっとひどいことになるぞ?」

 

 

俺は言いながら三葉の涙を拭ってやる。三葉は目を閉じて、嬉しそうにそれを受ける。だが、やがて何かを思い出したのか、俺の方をジーっと見る

 

 

「どうした?」

 

 

「そういえば…口噛み酒…やっぱり犯人は瀧君やった…」

 

 

今度は完全にジト目になって俺を睨む

 

 

「げっ…お前…それは前に許してくれたはずだろ?」

 

 

「許しとらん!口噛み酒飲んだことも、勝手に胸触ったことも、まだゆるしてないんやから!」

 

 

三葉は、フンっとそっぽを向いてしまう

 

 

「えぇ…胸触ったのは、一回だけだって…」

 

 

「前も言ったやろ!何回でも同じや!あほ!それに…絶対一回やないやろ…?」

 

 

また、三葉が俺を睨んでくる。俺は考える。どうやったらこの窮地を乗り越えられるか。とにかく謝るしかないか?だが待て、何回も胸を揉んでたことがバレたら、きっとグーパンが飛んでくる。それは避けたい

 

 

「ど、ど、どこに証拠があるんだよ」

 

 

動揺からか、俺はつい口ごもってしまう

 

 

「動揺しとるやん…あんた、夢の中でも私の胸勝手に揉んでたの…覚えてるんやからね」

 

 

「ゆ、夢は!ノーカンだろ!」

 

 

「違います!ほんっとにこの男は…」

 

 

そのとき、そっぽを向く三葉の髪に、赤い組紐が揺れるのが見えた。あれはさっき、御神体のお供え物として置いてきたはずだが…

 

 

「その組紐…」

 

 

「あぁ、これ…もう大丈夫やから、持って行きなさいって」

 

 

「そう、なのか…じゃあ、これからも大事にしろよ」

 

 

誰に言われたか、聞かなかった。けど、わかるんだ。なんとなく…

 

 

「もちろんやよ、実はこれ、もし子供ができたら、その子にあげようかなって思ってるんよ」

 

 

何気なくそういう三葉の言葉が、一歩遅れて俺の耳に入ってくる

 

 

「こ、子供か…まだ、ちょっと早いんじゃないか?」

 

 

「んなっ!だ、だ、誰も瀧君と作るなんて言っとらんよ!!」

 

 

俺の言葉を聞いた三葉は顔を真っ赤にして怒る。俺じゃないのかよ…

 

 

「えぇ!!?お、俺じゃないの!?」

 

 

「え!?えっと…えっと……えっとね…」

 

 

徐々に小さくなっていく言葉の最後に、ボソリと、三葉が呟く

 

 

「瀧君がいい…」

 

 

 

その言葉を聞いた俺は、三葉を抱きしめる。可愛すぎ、反則だな。

そして、三葉も、俺に負けないくらいの強さで抱き返してくる。2人で、窒息しそうなくらい、お互いの温もりを感じ合う

 

 

「三葉、もう離さない…逃がさないからな」

 

 

「どこにも逃げんよ…あほ」

 

 

もう、俺達の間を邪魔するものは何もない。俺達の愛を止めるものは何もない。だからこれからの人生を、三葉と2人で生きていきたい。ずっと一緒に…

 

 

「なぁ三葉、もう2度と忘れないようにさ、名前、書いとこうぜ」

 

 

俺は、ペンを取り出してそう言う。三葉はキョトンとした顔になるが、すぐに笑顔になり、頷く

 

 

「ふふっ、もう忘れんって」

 

 

「一応な、一応」

 

 

「あ、そういえば瀧君!あの時瀧君がちゃんと書いてくれなかったから、名前忘れちゃったんよ!」

 

 

俺が三葉の手を取ると、思い出したかのようにまた三葉が怒り出す

 

 

「あー、いや、気持ち、伝えたくて…」

 

 

「口でいいなさい!」

 

 

「すきだ」

 

 

「もう遅いわ!」

 

 

笑いながら、そんなことを話しながら、俺は三葉の手に文字を書き入れる。もう、忘れないように

 

 

今度は三葉がペンを取って、俺の手に文字を書く

 

 

「今度は、途中で消えるなよな」

 

 

「消えへんよ。それに、あれは瀧君がモタモタしとるから間に合わなかったんやからね」

 

 

「全部俺のせいか…」

 

 

俺は、笑いながらため息をつく。そして、書き終わった三葉からペンをもらう。

 

 

 

「み、見ていいよ…」

 

 

 

何故か顔を赤くして、もじもじとしながら三葉が言う。ただ名前を書いただけで、そんなに恥ずかしがることはないだろうに

 

 

 

「いや、先見ていいよ」

 

 

 

「じゃ、じゃあ一緒に」

 

 

 

「おう」

 

 

 

俺達は、二人で同時に手のひらを見る。

 

 

まず始めに、笑いが出てくる。そして、その後に涙が溢れ出てきた

 

 

 

お互いに、泣いて、笑いながら、手のひらを見せ合う。

 

 

 

 

 

俺の手には『結婚してください』

 

三葉には『結婚しよう』

 

 

 

 

そう、書いてあった

 

 

 

 

笑いが止まらない、でも、涙も止まらない。嬉しくて泣くってのは、きっとこういうことなんだろう

 

 

「くくっ、俺達、やっぱり相性いいな」

 

 

「ふふふっ、なんで同じことしよるんよ」

 

 

 

俺は三葉の手を取る。そして、その目をしっかりと見て、言葉を紡ぐ

 

 

「三葉、これからの人生、お前と一緒に歩いていきたい。何があってもお前を守る、何があっても必ず側にいる。だから、」

 

 

そこで、一度言葉を区切る

 

 

俺は5年、三葉は8年待った

 

 

 

でも、この時間は、決して無駄ではなかったと思う

 

 

 

なぜなら、俺達は今ここで、こうして出会えたのだから

 

 

 

もう一度、三葉の目を見る、涙を浮かべるその目を、そして…

 

 

 

 

「三葉…結婚しよう」

 

 

 

「はい…」

 

 

 

その唇に、キスをする

 

 

今までで一番熱く、一番愛のあるキスを

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空には星が瞬き、三日月に欠ける月は、この世界を優しく照らしていた。まるで2人を祝福するかのように。

 

 

 

 

 

その世界で、2人は恋をした

 

 

 

 

 

 

決して叶わぬと思われたその恋は

 

 

 

 

 

 

世界の運命や理屈、そんなものを全て吹き飛ばして、ここで叶った

 

 

 

 

 

 

この2人に、もう邪魔をするものはない。きっとこれから、新たなる物語を、紡いでいくのだろう

 

 

 

 

 

 

2人で始める、その後の物語(after story)を

 


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