君の名は。〜after story〜   作:ぽてとDA

26 / 42
この話は、かたわれ時のBGMを流しながら書きました


第25話「after story」

振り返ると、君がいた

 

 

 

 

 

叫んだ君の名前は、ただ空の中に消えて行く

 

 

 

 

 

そして、かたわれ時が終わり、月が顔を覗かせ、空には星が瞬き始める。そんな透き通った夜空の下で、2人は出会った

 

 

 

 

 

初めて…

 

 

 

 

 

再び出会うことができた

 

 

 

 

 

 

「三葉…」

 

 

そう呼びかけると、三葉の目にみるみる涙が溜まっていく

 

 

「瀧君?瀧君?…瀧君や…」

 

 

馬鹿みたいに繰り返しながら、三葉は俺の両手を握る

 

 

「瀧君がおる…!」

 

 

絞り出すようにそう言って、ぽろぽろと涙を流す。

 

 

「お前…前と言ってること同じじゃないか」

 

 

俺は微笑んで、三葉の手を強く握り返す。

 

 

 

「だって…だってぇ…」

 

 

三葉は地面に大粒の涙を落としながら、俺の胸に飛び込んできた

 

 

やっと逢えた

 

 

俺も三葉も、全てを思いだして、世界や運命、そんなものを全て乗り越えて、ここで向き合っている。俺は本当にホッとする。心の底から、穏やかな喜びが体中に満ち溢れてくる。そして、ただ俺の胸の中で泣きじゃくる三葉に、俺は言う

 

 

 

「待たせて、ごめんな」

 

 

 

それにしても、いつも思うけど、三葉の涙はまるでビー玉みたいに透き通ってコロコロしているな。俺は笑いながら続ける

 

 

 

 

「ホント、こんなに時間がかかるとは思わなかったな…」

 

 

 

そう、俺は5年、三葉は8年かかった。俺たちがあの日、電車で目が合わなければ、きっと、この今はないのだろう。今ここで、こうして三葉と抱き合っている今は、本当に奇跡だ

 

 

 

「でも、瀧君はちゃんと私を見つけてくれたよ?」

 

 

 

涙で顔を濡らしながら、三葉はそう言う。

 

 

 

「当たり前だろ。前にここであった時、言おうと思ったんだ。お前が世界のどこにいても、俺が必ず、もう一度会いに行くって」

 

俺がそう言って笑いかけると、三葉はさらに涙を流す。もう止まらないのだろう。なんせ、三葉にとっては8年ぶりの恋人なのだから

 

「うん…うん…ほんと、かっこいいんやから…」

 

 

「ほら、もう泣き止めって、泥だらけの顔がもっとひどいことになるぞ?」

 

 

俺は言いながら三葉の涙を拭ってやる。三葉は目を閉じて、嬉しそうにそれを受ける。だが、やがて何かを思い出したのか、俺の方をジーっと見る

 

 

「どうした?」

 

 

「そういえば…口噛み酒…やっぱり犯人は瀧君やった…」

 

 

今度は完全にジト目になって俺を睨む

 

 

「げっ…お前…それは前に許してくれたはずだろ?」

 

 

「許しとらん!口噛み酒飲んだことも、勝手に胸触ったことも、まだゆるしてないんやから!」

 

 

三葉は、フンっとそっぽを向いてしまう

 

 

「えぇ…胸触ったのは、一回だけだって…」

 

 

「前も言ったやろ!何回でも同じや!あほ!それに…絶対一回やないやろ…?」

 

 

また、三葉が俺を睨んでくる。俺は考える。どうやったらこの窮地を乗り越えられるか。とにかく謝るしかないか?だが待て、何回も胸を揉んでたことがバレたら、きっとグーパンが飛んでくる。それは避けたい

 

 

「ど、ど、どこに証拠があるんだよ」

 

 

動揺からか、俺はつい口ごもってしまう

 

 

「動揺しとるやん…あんた、夢の中でも私の胸勝手に揉んでたの…覚えてるんやからね」

 

 

「ゆ、夢は!ノーカンだろ!」

 

 

「違います!ほんっとにこの男は…」

 

 

そのとき、そっぽを向く三葉の髪に、赤い組紐が揺れるのが見えた。あれはさっき、御神体のお供え物として置いてきたはずだが…

 

 

「その組紐…」

 

 

「あぁ、これ…もう大丈夫やから、持って行きなさいって」

 

 

「そう、なのか…じゃあ、これからも大事にしろよ」

 

 

誰に言われたか、聞かなかった。けど、わかるんだ。なんとなく…

 

 

「もちろんやよ、実はこれ、もし子供ができたら、その子にあげようかなって思ってるんよ」

 

 

何気なくそういう三葉の言葉が、一歩遅れて俺の耳に入ってくる

 

 

「こ、子供か…まだ、ちょっと早いんじゃないか?」

 

 

「んなっ!だ、だ、誰も瀧君と作るなんて言っとらんよ!!」

 

 

俺の言葉を聞いた三葉は顔を真っ赤にして怒る。俺じゃないのかよ…

 

 

「えぇ!!?お、俺じゃないの!?」

 

 

「え!?えっと…えっと……えっとね…」

 

 

徐々に小さくなっていく言葉の最後に、ボソリと、三葉が呟く

 

 

「瀧君がいい…」

 

 

 

その言葉を聞いた俺は、三葉を抱きしめる。可愛すぎ、反則だな。

そして、三葉も、俺に負けないくらいの強さで抱き返してくる。2人で、窒息しそうなくらい、お互いの温もりを感じ合う

 

 

「三葉、もう離さない…逃がさないからな」

 

 

「どこにも逃げんよ…あほ」

 

 

もう、俺達の間を邪魔するものは何もない。俺達の愛を止めるものは何もない。だからこれからの人生を、三葉と2人で生きていきたい。ずっと一緒に…

 

 

「なぁ三葉、もう2度と忘れないようにさ、名前、書いとこうぜ」

 

 

俺は、ペンを取り出してそう言う。三葉はキョトンとした顔になるが、すぐに笑顔になり、頷く

 

 

「ふふっ、もう忘れんって」

 

 

「一応な、一応」

 

 

「あ、そういえば瀧君!あの時瀧君がちゃんと書いてくれなかったから、名前忘れちゃったんよ!」

 

 

俺が三葉の手を取ると、思い出したかのようにまた三葉が怒り出す

 

 

「あー、いや、気持ち、伝えたくて…」

 

 

「口でいいなさい!」

 

 

「すきだ」

 

 

「もう遅いわ!」

 

 

笑いながら、そんなことを話しながら、俺は三葉の手に文字を書き入れる。もう、忘れないように

 

 

今度は三葉がペンを取って、俺の手に文字を書く

 

 

「今度は、途中で消えるなよな」

 

 

「消えへんよ。それに、あれは瀧君がモタモタしとるから間に合わなかったんやからね」

 

 

「全部俺のせいか…」

 

 

俺は、笑いながらため息をつく。そして、書き終わった三葉からペンをもらう。

 

 

 

「み、見ていいよ…」

 

 

 

何故か顔を赤くして、もじもじとしながら三葉が言う。ただ名前を書いただけで、そんなに恥ずかしがることはないだろうに

 

 

 

「いや、先見ていいよ」

 

 

 

「じゃ、じゃあ一緒に」

 

 

 

「おう」

 

 

 

俺達は、二人で同時に手のひらを見る。

 

 

まず始めに、笑いが出てくる。そして、その後に涙が溢れ出てきた

 

 

 

お互いに、泣いて、笑いながら、手のひらを見せ合う。

 

 

 

 

 

俺の手には『結婚してください』

 

三葉には『結婚しよう』

 

 

 

 

そう、書いてあった

 

 

 

 

笑いが止まらない、でも、涙も止まらない。嬉しくて泣くってのは、きっとこういうことなんだろう

 

 

「くくっ、俺達、やっぱり相性いいな」

 

 

「ふふふっ、なんで同じことしよるんよ」

 

 

 

俺は三葉の手を取る。そして、その目をしっかりと見て、言葉を紡ぐ

 

 

「三葉、これからの人生、お前と一緒に歩いていきたい。何があってもお前を守る、何があっても必ず側にいる。だから、」

 

 

そこで、一度言葉を区切る

 

 

俺は5年、三葉は8年待った

 

 

 

でも、この時間は、決して無駄ではなかったと思う

 

 

 

なぜなら、俺達は今ここで、こうして出会えたのだから

 

 

 

もう一度、三葉の目を見る、涙を浮かべるその目を、そして…

 

 

 

 

「三葉…結婚しよう」

 

 

 

「はい…」

 

 

 

その唇に、キスをする

 

 

今までで一番熱く、一番愛のあるキスを

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空には星が瞬き、三日月に欠ける月は、この世界を優しく照らしていた。まるで2人を祝福するかのように。

 

 

 

 

 

その世界で、2人は恋をした

 

 

 

 

 

 

決して叶わぬと思われたその恋は

 

 

 

 

 

 

世界の運命や理屈、そんなものを全て吹き飛ばして、ここで叶った

 

 

 

 

 

 

この2人に、もう邪魔をするものはない。きっとこれから、新たなる物語を、紡いでいくのだろう

 

 

 

 

 

 

2人で始める、その後の物語(after story)を

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。