第8話「再開」
それから、私と瀧君の日々が始まった
楽しくて、幸せな、三葉との日常が
瀧君は都心の建築会社に勤める普通の社会人で、お父さんと2人で住んでいるみたい
三葉は、アパレル企業に勤める普通のOLで、妹の四葉ちゃんと2人暮らしをしているそうだ
まだ、四葉を瀧君には合わせてないけど、きっと四葉も瀧君のことなら気に入ってくれるだろうな
きっと俺は、妹からただのナンパ男だと思われていそうで、実はちょっと会うのが気まずかったりする
あの日、私と瀧君が出会った日から、私達は毎日仕事終わりに、瀧君オススメのカフェで会うことにした
名目上は、良いカフェを巡るっていう話だけど、本当は、俺はただ、三葉に会いたいだけだった
瀧君も、きっと会いたいと思ってる
そんな確信があった
私より3歳も年下の瀧君だけど、なんだか年下って感じがしなくて
三葉とタメ口で喋るようになってから、俺たちはすぐに遠慮なく喋れるようになった。
知り合ってまだ一週間くらいだけど、私たちはまるで、昔からの幼馴染みたいに仲が良い
なんでかはわからない、きっと昔、どこかで、三葉とは会ってたのかもしれない、それがいつなのか、俺たちが小さい頃に会って、忘れてしまったとか?
もしかしたら私達は、前世の記憶があるのかな?そんな話もした
もし前世の記憶が残ってるんだとしたら、きっと俺たちは相当愛し合ってた恋人なんだろうな
だって私は
だって、俺は
こんなにも君が愛おしいんだから
「それでさー、高木のやつ、俺がスーツ似合ってないからって、わざわざ誕生日プレゼントで新しいスーツを買ってきやがったんだぜ」
「ふふっ、高木君と、司くんやっけ?なんだかとっても良い人やね、私も会ってみたいな」
金曜日の夜、この前とは別のカフェで、俺たちはまた会っていた。ここはいつも混んでいるのだが、金曜日だからか、結構な客が居酒屋に流れているのか、そんなに人は多くない
「あぁ、今度2人には紹介するよ」
「…でも、なんて紹介するん?俺の友達ですって?」
「あー、そりゃ、できれば…かの…」
「かの?」
「うっ、三葉!歳下をからかうなよ…」
「あら、お互い遠慮なく話そうって言ったのはどこの誰やっけね」
そう言って三葉はくすくすと笑う
「ったくこの女は…」
俺も三葉につられて笑い出す。なんだか、三葉といると常に笑っていられる気がする。
ふと、時計を見ると、すでに時間は9時を過ぎていた
「そろそろ出るか、三葉ももう帰るだろ?」
「そうやね、明日は、10時に新宿でいいんやっけ?」
前に約束した土曜日のデートも、明日に迫っていた、とりあえず、待ち合わせを新宿にしたのはいいのだが、実はデートプランは何も考えてなかったりする。いや、考えには考えたのだが、頭がパンクしそうになって諦めたって言うのが本音だ
「あぁ、大丈夫だよ」
「どこに連れてってくれるん?」
「あー、秘密だな」
「あっ、嘘やね、ほんとは何にも考えてないんでしょ」
「う、うるさい」
たわいもない話に花を咲かせながら、店を出ると、春の暖かい風が俺たちを優しく撫でた
「風、気持ちいいね…」
横を見ると、三葉の黒髪が風で柔らかくたなびいていた。その横顔はとても綺麗で、美しくて、でも、そんなことはとても口には出せなくて、どこかもどかしい
「…なぁ三葉、あの、俺達が出会った階段、この近くだよな?ちょっと、行ってみないか」
「うん…ええよ、私も、行きたいかも」
「じゃあ、行こうか」
俺は、三葉の手を取って、歩き出す。
「あっ…」
瀧君が、私の手を取って歩きだした。今まで、瀧君は私に触れなかった。あの日、瀧君の家で一晩明かしたときも、こんなに仲良くなった後でも
そんな瀧君が、私の手を取ってくれた、それがたまらなく嬉しくて、恥ずかしくて、下を向いてしまう
瀧君の顔、見れへんよ…
「なぁ、三葉」
歩きながら、前を向きながら瀧君は話しかけてきた
「俺、三葉に会えてよかった」
「急に、どうしたん?」
「いや…なんでもない…ただ、言いたくなって…」
瀧君も、恥ずかしいのか、下を向いてしまう。そんな瀧君が可愛くて、愛おしくて
この気持ちを、早く伝えたい
まだ、出会って1週間も経ってないけど、早く、瀧君と、結ばれたい。そんな気持ちが、瀧君に会うたびに溢れ出てくる
だから、明日のデートで、伝えよう
この気持ちを
「着いた…」
「うん…」
俺たちは、階段の上に立っていた。
横に立つ三葉を見つめると、それに気づいた三葉もこちらを見る
決めたんだ
ここから始まった
だから、ここで、もう一度始めたかったんだ
「なぁ、三葉、話したいことがあるんだ」
「…なに?」
そよ風が、俺達の間を通り過ぎていった
「あの日、ここで三葉と出会って、俺の中にあった空白が埋まった気がしたんだ。俺はいつの日からか、何かを、誰かを探しているような、そんな気持ちに取りつかれていて、三葉と出会うまで、ずっとその何かを探していた。でも、三葉と出会ってからは、そんな気持ちは消え去って、代わりに、楽しさとか、満足感がずっと俺の中を満たしてた。だから、きっと俺が探してたのは三葉なんじゃないかなって思うんだ。三葉といると、俺、幸せで、もう、三葉を失いたくないんだ、だから、三葉…」
「三葉のことが好きだ、俺と、付き合ってくれますか?
言えた、やっと言えたんだ、
気持ちを伝えられた。言った言葉は全部本心で、これ以上ないってくらい緊張したけれど、年齢=彼女無しの俺にしたら、上出来な告白だと思う
「…ばか」
「え?」
「言うのが…早いんよ。私…明日言おうと思ってたんに」
「えっ、そうだったのか、すまん!」
三葉は、目から大粒の涙を流しながら、笑っていた
「私も、今まで何かを探しているような、そんな感覚がずっとあったんよ。でも、瀧君と出会って、嬉しくて、楽しくて、言葉が見つからないくらい幸せで、そんな感覚は消えて無くなっちゃった。きっと私が探してたのは、瀧君なんよ。いま、そう確信できたの。だから、私ももう、瀧君とと離れたくない」
「瀧君が、好きだよ」
三葉は、今までに見た中でもとびきりの笑顔でそう言った
「じゃ、じゃあ、返事は?」
「…こんな女だけど、よろしくお願いします。」
「…三葉っ!」
泣きながら、俺は思わず、三葉を抱きしめる
「ひゃっ!」
驚いた三葉は、最初は俺に体を預けていたけれど、やがてゆっくりと、俺の背中に手を回してきた
一体どれほどの時間が経ったんだろうか、永遠にも感じるような、そんな時間だった
やがて、背中をポンポンと叩く感触で我に返った
「瀧君…くるしいよ」
「あっ!すまん!」
慌てて三葉を引き離して、謝る
「もう…付き合ってすぐ窒息死したら流石に笑えんよ?」
「その…嬉しくて、思わず…」
「しょうがないから、許してあげる」
「お、おう」
そうして、2人で笑い会う。嬉しくて、笑いながら泣きあった
「瀧君、これからずっと、よろしくね」
「三葉も、よろしくな」
どちらからともなく、また、抱きしめ合う
もう少しだけでいい、あと少しだけでいいから、くっついていたいんだ
俺達の物語は、まだ始まったばかりだけど、きっとこれからは幸せな日々が待ってる
だって隣には、君がいるんだから
たとえ、星が降っても、世界が消えようとも、君といれば平気だ
何があろうと、この愛は消えることはないんだから
だから、また、始めてみよう、2人の物語を
もう二度と、忘れることのない、君の名前とともに