逆行のサシャ   作:木棒徳明

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第二話 逃げた先

 トロスト区から故郷のダウパー村まで一気に駆けた。人が通る道では馬を飛ばせないので、できるだけ草原を行く。途中で村をいくつか越え、山もいくつか過ぎた。ここまで来れば安全と言い切れる場所まで行っても、サシャの焦燥感は消えることなく残っていた。

 疲労困憊の馬のために何度か休憩を取りながらも、サシャの意識は常に目的地のダウパー村と出発地のトロスト区に向いている。休憩もそこそこに、水すらろくに飲まず走り出した。

 いよいよ故郷に近くなってきたところで、サシャは緊張で息が荒くなった。ダウパー村に行くには、どうしても通らなければならない道がある。しかしそこはサシャが食われたまさにその場所だ。できれば通りたくなかった。

 馬を降りれば遠回りして行けないこともないが、森や山を何の装備もなく越えなければならないことになる。危険だし時間がかかるだろう。

 はやく父が生きていることを確かめたいサシャは通過することを選択した。巨人などいないと自分につぶやいて言い聞かせた。

 覚悟を決めるのに時間はかかったが通るのは一瞬の出来事だった。ほとんど目を閉じて駆け抜けた。ヘタをすればどこかに衝突して落馬していたかもしれない。

 そのような危険な行為にまで及んだにもかかわらず、またあの光景が脳裏をかすめ、サシャを苦しめた。

 今はまだ大丈夫かもしれないが、そのうちウォール・ローゼ全体は巨人の領域になってしまう。この付近も無論例外ではない。

 トロスト区から離れたとて安全ではないのだ。シーナまで逃げねばならない。故郷を捨てるのは悲しいことだが、命あっての物種だ。

 サシャはさらに馬の速度をはやめた。

 夕刻になろうかという時間だった。馬で揺れる視界に父の姿が飛び込んできた。

 サシャの生家はもっと奥のほうにあったはずだが、こちらのほうに引っ越したのだろう。木はだいぶ少なくなり、記憶とは様子の違う故郷。そのひらけた土地にポツンと小さな家がある。隣の馬小屋の大きさに比べると、どちらが家畜の小屋かわからない。そんな場所の片隅で、馬の一頭をブラシでなでてやっている父を発見することができた。

 やはり、生きていた。

 体の内から喜びで震えた。舞い上がり、最高速度で突っ込む。

 

「お父さん!」

 

 サシャの呼びかけに、父はブラシの手を止めて何事かと振り返る。目に映ったのは、ここにいるはずのない娘の姿。

 

「サシャ?」

 

 娘がなぜかいることもそうだが、とんでもない速さで突撃してくる馬にまず驚いた。

 馬は徐々に速度を落としたが、やはり急すぎたのか勢い余って父を通り過ぎていった。

 止まるか止まらないかのところでサシャは無理やり飛び降りると、その勢いのまま父に抱き着いた。

 その温かさに、血の通いを感じる。やはり生きている。ミーナと違ってやわらかくはない。男の固さ、泥の汚れ、獣の臭い。そのどれもが懐かしくうれしかった。

 

「ただいま!」

 

 胸に頬ずりをして全身で喜びを表しているサシャ。

 しばらく呆然としていた父だったが、状況が理解できると戸惑いの表情から父親らしい厳しい顔つきに変わる。サシャを引きはがし、突き放した。

 かわいくないわけではない。むしろ自分の子がかわいいからこそ、一度は追い出したこの娘を易々と受け入れるわけにはいかなかった。

 それでもにこにこと喜ぶサシャに毒気を抜かれながらも、向ける言葉には咎める鋭さがあった。

 

「サシャ、お前何しに帰ってきたんや」

「やめてきた!」

「何?」

「私は兵士向いとらん。やからやめてきた!」

 

 いい笑顔だ。いっそ清々しい気持ちにさせる。父は悪びれもせず報告するサシャを怒鳴ろうか迷った末に、ただ頭を抱えてため息をついた。

 サシャには臆病なところがあった。仲間内だけの安心安全な関係を大切にし、外の世界を避けていた。そんな内向きな娘の視線を外に向けさせたい。自分が世界と繋がっていることを知ってほしい。そんな気持ちで出したにも関わらず、目の前の呑気な娘は当たり前のように逃げ帰ってきたのだ。いったい三年間何をしていたのか。怒る気力もなくなる。

 

「サシャ……お前は何のために兵士になった。何のために外に行った。何か学んできたんか」

「巨人は怖いし、兵士には向いてない。やから帰ってきた」

「あきれて物も言えん……」

「それよりお腹すいたし、ごはんは?」

 

 いい意味でも悪い意味でも本当に変わっていないと父は思った。突然帰ってきてそんなものあるかと言いたかったが、腹の虫が鳴く音に止められた。

 サシャの期待の目に降参する父。さすがに父親、娘のことはよく分かってる。このまま何も与えないとそのうち盗み食うのは目に見えていた。

 

 

 サシャは起きてから何も食べず、急いでここまで帰ってきた。恐怖やら緊張やら心配やら、様々な感情に支配されて食事のことなど頭から抜け落ちていた。

 けれど父の安否も確認できて故郷に帰れたことにひとまず安心すると、忘れていた空腹がよみがえる。

 それを取り戻すようにパンも肉もスープも豪快に平らげた。長距離を走り終えた馬に水をやったときのような勢いだ。

 食事を終えると黙ってみていた父に再び抱き着いた。父は、自立するどころか甘えん坊になって帰ってきたサシャを離して、木製の無骨な椅子に無理やり座らせた。

 話し合うことはまだまだあるのだ。

 

「兵士をやめたことはわかった。それで、これからどうするつもりや」

「そんなん、お父さんとまた一緒に暮らすだけ」

 

 当たり前やろ。そう言うサシャにためらいはない。本気で兵士に向いてないと思っている。故に三年の訓練兵生活が無駄になるという後悔もなかった。父親と仲睦まじく生きられれば他に言うことはない。

 父は椅子に腰かけ、視線を家の壁に隔てられた先の馬小屋へと移した。

 

「もう前のように狩りはできんぞ……今は馬を育てとる」

 

 大事に育て上げ、主に商人を相手に取引している。巣立っていった馬たちは、荷馬車や辻馬車として活躍しているだろう。

 

「そうやね……でもいい。お父さんと一緒ならそれでいい」

「何があったんや」

 

 父の目が鋭くなった。サシャは一族の伝統である狩りを大切にしていたはずだ。また狩りを始めようなどと我儘を言うと思っていた。しかし目の前のサシャにそのこだわりは見えない。悲しんでいるようだがそれだけだ。

 狩りが嫌いになったのなら別にそれでいい。しかし、そうではないだろう。生きるだけで満足している、ある種無欲な状態のサシャが父には危険に見えた。

 

「いったい何があった。どういう理由で帰ってきた」

「……」

 

 話さないわけにはいかないが、サシャは憂鬱な気分にならざるを得ない。あの光景を思い出すのも嫌なのに、それを当人の父に話すことになるからだ。そしてサシャ自身もよく分かってないこの現状についても話さなければいけない。

 躊躇していたサシャだったが、やがてぽつぽつと話し始めた。自分がおそらく未来から来たこと。ここはあと約ひと月も経てば人が住める土地ではなくなること。未来でサシャも父も巨人に食べられたこと。

 

「本気で言うとるんか」

 

 父の言葉にサシャは口をとがらせた。これが突拍子もない話なのは話してる本人が一番よくわかっていた。

 

「私だって意味わからん。でも嘘やない」

「うーん……」

「信じてお父さん。今はまだ大丈夫やけど、ここも危ない。はよ逃げんと。シーナに行こ」

 

 サシャの言葉に黙ってしまう父。サシャはやはりこんな話は信じてもらえないかと肩を落とす。

 そもそもサシャだって確信できているわけではない。あの恐ろしい光景がただの夢である可能性も、今見ている現実がただの幻覚の可能性もある。だがどちらも可能性の話だ。何もわからないサシャは、今の状況を未来から来たような状態と形容して受け入れるほかない。

 

「仮にお前の言うことが本当だとしても、逃げるわけにはいかんな」

 

 サシャは顔をあげた。何を言っているのか理解できなかった。額にしわをよせて唸る父を信じられないとばかりに凝視した。

 

「なんで……」

 

 サシャとしては今すぐにでも逃げたかった。だが準備が必要なのは分かっていたし、遅くても明日か明後日にはシーナに行くことを考えていた。逃げないという選択肢はなかった。

 問題はどうすれば父が自分の話を真剣に受け止めてくれるかだと思っていた。けれど真剣に受け止めた上で、父は逃げないと言う。

 

「そもそも逃げるなんて簡単に言うとるが……壁を越えるのは楽やない。用事があって一日行くならまだしも、そこで暮らすとなると仕事もいる」

「仕事なんて後で見つければいい。命が一番大事やろ!」

「もちろん大事や。けどその命は自分たちだけにあるわけやないぞ。他の人はどうするつもりや」

 

 サシャは目をぱちくりさせる。考えてもいないことだった。自分と父が助かることしか考えていなかった。

 しかし父はそうではない。サシャは、あのとき父が大勢の人といっしょだったことを思い出す。そしてみんな馬に乗っていたことを。あの馬は父が育てた馬だろう。きっと彼らを助けていたのだ。

 

「見捨てるわけにはいかん。この話して今からシーナに引っ越すて言うてくれる人はおらんやろうしな」

「じゃあどうするの……」

「とりあえずやれるだけのことやる。その日が来たらみんなで逃げる。あとはトロスト区が破られたときの模擬訓練通りにするだけよ」

 

 それではあの時とほとんど変わらない。また巨人に遭遇する可能性がある。そしてまた死ぬ可能性も。

 助かる道があるのに、確実に生きていける道があるのに、それを選ばない父にサシャは苛立った。

 立ち上がり、必死の形相で父に詰め寄る。

 

「嫌や! お父さんは巨人を見たことないからそんなこと言える!」

 

 サシャは巨人の恐ろしさを知っている。目の前に立たれると足が震えて動けなくなる。体を掴まれるとその握力に悲鳴をあげる。実際に食われるとその理不尽さに絶望するしかない。

 

「お前、私が巨人に向かって行ったて話したん、もう忘れたか」

 

 サシャは息を飲んだ。父の強い瞳がぶれることなくサシャだけを射抜いていた。

 あの時、サシャを助けに巨人に立ち向かった父の姿が、目の前の父と重なる。

 

「サシャ、助けられる命があるのに助けないのは殺すんと同じぞ」

「っ! で、でも……」

「ブラウスさん!」

 

 突然ドアが開け放たれた。入ってきたのはサシャの見知らぬ男だ。おそらく父の知り合いであろう男はサシャに目を留めた。一人で暮らしているはずの彼の家に若い女性がいることが気になったようだ。しかしそれも一瞬のことで、男は父に近づくと時間を惜しむように急いで言った。

 

「馬をかしてください!」

「どうしましたか」

「トロスト区が破られました! すぐそこまで巨人が来てます!」

 

 サシャの頭が一瞬で真っ白になる。暖かい部屋の中なのに背筋からガタガタと震えた。

 ありえない。何故。はやすぎる。

 確かに今日はトロスト区の壁が壊される日だ。しかし壊されるのは外側に面した門だけだ。内側の門は無事のはずだった。

 それにエレンが巨人化し、トロスト区内にある大岩で穴を塞いでくれるはずだ。だから結果的にトロスト区で被害はあっても、ウォール・ローゼ内での被害はまずないはずだ。だから、ここはまだ安全なはずではないか。

 

「サシャ!」

 

 青ざめて震えたままのサシャは何とか父のほうを見た。

 

「お前は逃げろ」

「お、お父さんは……」

「馬を与えて回る。巨人から逃げるんには必要や」

 

 父らしい行動に思えた。けれどしてほしくない行動だった。助けるなら自分を助けてほしかった。一緒に逃げてほしかった。

 

「嫌や……嫌や……」

「ここでそうしてても死ぬだけぞ」

 

 そう言って出ていく父。サシャは力の入らない足を鞭打って、なんとか追いかけた。

 巨人は日光がなければ著しく活動が衰える。外に出ると空には見事な夕日が輝いていた。日光がある。つまりまだ人間を食うために活動している。

 逃げなければならない。

 

 

 今日という日は人類にとって大変な日というだけでなく、馬にとっても今までで一番忙しい日になりそうだった。父の丹精込めて育てた若い馬たちはは人を乗せて群れになり、砂埃の舞う中をずっと走っている。

 サシャの乗ってきた馬は疲れて眠ってしまったので置いてきた。馬は巨人に狙われることがないので、人間がいなければ気楽なものだ。

 付近の住人に馬を与えて回り、幾ばくかの時が過ぎた。もうほとんど配り終え、与える馬もいない。そろそろ潮時だろう。

 

「逃げ遅れた人は……」

「たぶんもう大丈夫でしょう」

 

 それを聞いて、やっと逃げられるとサシャは思った。

 もうすぐ夜になるとはいえ、家に引きこもったまま避難しないのは論外だ、一番危ない。かと言って一人で逃げることもできなかった。父が心配だったし、何より一人でいるのが怖かった。それで結局ついてきてしまったのだ。他人がいる前で堂々と父を説得することもできず、逃げたいのに逃げられない状態が続いた。

 いつ巨人が現れるかとひやひやしていたが、無事にここら一帯の人々の避難を手伝い終えたらしい。サシャは安堵のため息つく。これで自分たちもここから一番近いウォール・シーナの突出区へと真っ直ぐ行くことができるだろう。

 ここから近いのはヤルケル区だ。集団はその方角へ走り始めた。人を探して声をかけることも、見回ることもなく進んでいく。これでもう助けなければいけない人はいないと確信して。

 しかしサシャはふと思い出した。サシャは死ぬ直前に一人の女の子を助けた。足の悪い母親を誰にも助けてもらえず、巨人に食べられている母親の横で一人絶望していた女の子。彼女はどこにいるのだろうか。

 この集団の中にはいない。避難を手伝った人たちの中にもそれらしき子供はいなかった。もうすでに逃げている可能性もあるだろうが、それならあの時も逃げられたはずだ。まだ避難できず、あの時と同じように母親の食われる横で座っている可能性は高い。

 

「ああ……」

 

 サシャはそのことに気づき、半ば呆然とする。

 助けにいかなければ間違いなく死んでしまうだろう。しかしその子のいた村はとうに過ぎた。今から戻るのか。せっかく逃げられるのに。やっと逃げられるのに。

 サシャの顔はだんだんと張りつめていった。その様子に父は訝しげに問いかけた。

 

「サシャ。どうした?」

「なんでもない。はよ逃げよ」

 

 先ほど父が言った言葉が頭を駆け巡った。

 ――助けられる命があるのに助けないのは殺すんと同じぞ

 サシャは必死に否定する。

 あの子を助けようとすれば来た道を戻らなければいけない。誰が死んでもおかしくないこの状況は一秒でも短くするべきだ。あの子のために戻って、そこで巨人と遭遇したらどうするのだ。

 あきらめるしかない。それは悪いことではない。こんな状況だ。あの子はそう、運がなかったのだ。運命だ、仕方のないことだ。

 

「あ!」

 

 サシャが頭の中で戻らない理由を確認していると、前方のほうから声が響いた。サシャの位置からでは、ちょうど曲道になっていて先で何が起きているのか見ることができない。

 しかしすぐに何が起きたのか分かった。

 瞬間、サシャは叫びそうになった。馬とは違う、地を響かせる音。忘れたくても忘れられないその音は、サシャの苦痛を呼び覚ます。いる、巨人が、すぐそこに。

 気づいたのはサシャだけではなかった。集団は何が起きたのかを理解し始める。

 

「前にいる! 止まれ! 下がれ!」

 

 前方にいる名前も知らない誰かが叫んだ。サシャにはほとんど悲鳴のように聞こえた。

 集団はなんとか止まろうとするが、群れで走っている馬が一斉に急転回できるはずもない。落馬でもしたら目も当てられない。結局ゆっくり止まるしかなかった。

 目の前には巨人がいた。一匹だけだ。調査兵団や、駐屯兵団の精鋭なら、しっかりした装備でもあれば勝てるだろう。しかしこの集団は、数は多くても田舎の生産者集団でしかなかった。巨人が腕を振りぬき、最先頭にいた男を捕まえる。

 

「わあああ!!」

 

 恐ろしい光景だった。巨人の大きな両手でがっちりと掴まれた彼は絶望の表情で全員を見ていた。しかしその絶望も頭を砕かれれば消え失せる。

 一瞬だけの静寂。その後には悲鳴が上がり、先程までの連帯はどこへやら、群れていた馬が一斉にバラけた。どちらの方角がヤルケル区かなど誰も気にしていない。誰もが必死に逃げることを考えていた。サシャも同じように逃げ出した。

 しかしサシャは運に見放された。前方にいた馬が巨人から離れようとしてサシャの馬と突撃してしまう。混乱状態だったサシャはその衝撃を流すことができず、馬から放り出されてしまったのだ。乗り手を失った馬は自由を得たとばかりに走り去ってしまった。

 その一瞬のできごとにサシャは呆然とするしかない。こんなことになるのは女の子を助けない理由を運命のせいにしてしまったからだろうか。

 ここで死ねとばかりに巨人の前に放置されたサシャ。近づいてくる巨人を見て、立つことすらできなかった。

 

「サシャ!」

 

 蹄の音も鳴り止み、残っているのはサシャと巨人。ここまでかと思っていると、事態に気づいた父が慌てて戻ってきた。

 同じだ。前と同じ。巨人を目の前にして恐怖でまともに動けない。もうすぐ食われる。そしてサシャを助けようとして父も食われてしまうだろう。

 

「お、おと……」

 

 サシャは逃げろと言おうとした。けれど言えなかった。助けてほしかった。このまま見捨てられたくなかった。けれどもやっぱり逃げてほしかった。

 父が馬から飛び降りる。そしてサシャを持ち上げて馬に乗せようとした。

 しかし恐怖で体が固まっている人間を乗せるのは簡単ではない。サシャもなんとか動こうとしたが、もう遅かった。

 真上に影ができる。巨人が掴んだのは、父だった。

 

「あああ……」

 

 沈痛な声をあげたのはサシャだった。持ち上げられていく父を見ることしかできない。

 逃げろと叫ぶ父が巨人の口に入り、その声もぷつりと止んだ。また死んでしまった。

 サシャは動けない。怖かった。そして悲しかった。涙がとめどなく溢れた。こんなことになるなら自殺でもするほうがどれだけ楽だろう。

 やがてサシャも巨人の口の中に入れられた。人の手が歯と舌の間に挟まっているのが見えた。父のものだろうか。サシャはその手を掴んで泣いた。二度も死なせてしまった父に、謝りながら泣いた。

 刹那、視界は闇につつまれた。

 

 そして、目覚めた。

 二段ベッド。花瓶。揺れるカーテン。やわらかな風。ミーナ。

 

「いったいどうなって……」

「サシャ起きた? いっしょに固定砲まで行かない?」


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