【完結】ファイアーエムブレム 烈火の剣~軍師と剣士~   作:からんBit

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5章~国境を越えて(前編)~

砦での一夜を越え、リンディス傭兵団は進路について大幅な変更を余儀なくされていた。

 

「しかしまぁ、あんな道通ることになるとは・・・」

 

頬に小さな切り傷をつくったセインが林の中を歩きながらそうボヤいた

 

「そんなに辛かったですか?獣道だって立派な道ですよ」

 

矢筒を担ぎ直したウィルは軽い足取りだ。

 

砦での一件で山賊を確実に敵に回した以上、追撃は確実に迫ってきているはずだ。大きな道を行くのは危険と判断したハングは森を抜けて最短で国境を抜ける道を選択した。

草原育ちのリン、上空から見張りを務めるフロリーナ、旅が長いハングとウィル、様々な場所を渡り歩いたドルカス。森だろうが山だろうが楽に踏破できる連中の中で馬を連れた騎士二人は苦戦を強いられることとなった。

 

特に問題だったのは馬である。木の根や岩で凹凸の激しい地形では馬の行軍速度は格段に落ちてしまう。普段は凛々しいケントも今日は顔に疲れを浮かべていた。

 

「森の中の行軍訓練はしてきましたが、ベルンの山々は思っていた以上に険しいですね」

 

そんなケントのほうを前方で談笑していたハングとリンが振り返った。

 

「それでも予定通りに森を抜けれたんだから上々じゃない。ねぇ?」

「そうそう、ドルカスさんがいてくれたおかげで邪魔な木々も楽に退けれたからな」

 

話を振られたドルカスは無表情のまま小さく頷く。

森を抜けるのにあたって斧は結構便利な品なのである。

 

「それより・・・ハングは肩は大丈夫なの?」

「お前、何回それ言ったか覚えてるか?」

 

少しの間があってリンが答える。

 

「かれこれ13回目かしら?」

「数えてたことには素直に感心するが、自覚があるならもう少し改善できるんじゃないのか?」

「あなたがはぐらかしさえしなければ今回で聞くのをやめられるのだけれど?」

 

リンがハングの怪我の話を聞いたのは砦から出発する直前であった。それ以降、リンは事あるごとにハングにこの話を振っていた。

 

「だから、怪我は浅かったんだから、気にすんなって言ってるだろ」

「ハング、草原の民に嘘ついたらどうなるかわかってて言ってるんでしょうね?」

「部族内で嘘をついた罪は重い。知ってるよ、お前から教わったんだからな」

「なら・・・いいけど」

 

納得がいかないながらも渋々引き下がるリン。

このようなやり取りも同じく13回を数える。

 

「お、みんな!そろそろ林を抜けるぞ!」

 

そう言って駆け出したウィルに続いて皆の足取りも速くなる。

足元の腐葉土を踏みしめ、馬を駆けさせ、上空のフロリーナに合図を送りつつ、彼らは林の中を駆け抜けた。

 

強い光に目が眩む。それが林を抜けた合図だった

 

「抜けたぁ!」

「やったぞぉ!」

 

はしゃぐ弓使いと緑の騎士の後ろで残りの団員は地図と周囲の景色を見比べていた。

 

「湖が向こうに見えてる、少し東に流れたか?」と言って、ハングが首を捻る。

「いやハング、あれはこの地図に載ってる湖とは別のものだ」と、ドルカスが湖までの距離を目測で測りながらそう言う。

「ここに載ってる湖はもう少し巨大なものです、おそらく・・・向こう側ですかね?」周囲に見える山から場所を探るケント。

「でもフロリーナにある程度先導してもらったのよ。そんなに大幅に進路がズレてるとは思えないんだけれど」上空のフロリーナに手を振りながらリンもそう言う。

 

しばらく頭を捻っていた面々であったが、ハングはさっさと地図を放り投げた。

 

「フロリーナに聞いたほうが早いな」

 

ハングは色のついた布地で合図を出した。

フロリーナはペガサスを螺旋状に走らせながら降下してくる。彼女を迎えて早速意見を聞く。

 

「えと・・・東にもっと大きな湖が見えました・・・多分予定通りだったかと・・・」

「と、なるとだ」

 

ハングはもう一度周囲を見渡した。

 

「目の前の湖の東側の森を越えていけば明日には国境に辿り着けるはずだ」

 

その言葉を聞いてリンが安堵のため息を吐いた。

 

「そこを抜ければ山賊たちともお別れね?」

 

度重なる奇襲に張り詰める毎日だった。それが、やっと終わるのだ。

 

「多分そうだろ。さすがに国境をこえてまで山賊も追ってはこないだろう。あまり自分達の寝ぐらから離れたがらないのはどの獣も一緒だ」

 

もっとも、それで安全が保障されるわけじゃないけどな。

 

ハングは今後想定される事態に頭を巡らせていたが、その内容を口に出すことはしなかった。

 

「やっと、リキアか!長かったなぁ」

 

盛大に伸びをしながらセインが叫ぶ。

 

「これで、明日の夜には名物のタル酒とあぶり肉を口にできるぞぉぉ!」

 

槍を振り回さん勢いで気分が高まってるセインに対し、ケントの視線が徐々に剣呑になっていく。

 

「それに国境の宿の女主人は評判のリキア美人だったな。酌をしてもらいながらゆっくり疲れをとって・・・」

 

少しの間空を見上げて自分の空想に浸るセイン。口の端に滴る涎が間抜けさを五割増しにしていた。

 

「うーん、これはたまらん!なぁ、ケント!!」

 

よく、今のケントに話題が振れるよな・・・

 

この場にいた全員がそう思っていた。

青筋を立てた今のケントにはハングでさえ避けたくなる程の炎がまとわりついて見えた。

 

「なぁ!なぁ、そうだろ!ケント!」

「貴様がそのつもりなら宿は別の場所にとる。我々は物見遊山の旅をしているわけではない」

「そっ、そんなぁ!あんまりだぞ、おまえ!た、頼む!後生だから!」

「貴様の『後生の頼み』は聞き飽きた。今回で何回貴様は生き返ってくる予定になるんだ?」

「そ、そんなには使って無いだろ!せいぜい・・・3回ぐらいだ!」

 

後生の頼みとは本来は一生に一度するものだ。それが3回あるだけで十分であろう。

 

「いや、士官学校内でさえ8回は使っている。特に勉学のことについてな」

「い、いや・・・まぁ・・・うん・・・だが、相棒!これまでブルガルを出てからろくな宿に泊まってないんだ。今回ぐらいいいだろ?」

 

セインはもはや泣き出しそうである。

いいのか?誇り高き騎士がこんなことで?

 

その姿はあまりにも滑稽だった。そして、哀れであった。

 

リンがクスリと笑い、助け舟を出した。

 

「ケント、私たちはいいわよ、その宿で」

「・・・リンディス様がそうおっしゃるのでしたら」

 

渋々といった感じで認めるケント。

 

「リ、リ、リンディス様!!あなたは女神様です~~!!」

 

舞い上がり、拝め倒すセイン。

 

「いいのよ、気にしないで」

 

苦笑するしかないリン。

 

「ハング殿、今日の俺は最高ですよ!どんな敵にも負ける気がしません!さぁ、指示を!」

「じゃあ、さっさと移動の準備をしろ!」

 

セインが一喝されている場所から少し離れ、リンとフロリーナが小さな声で会話していた。

 

「・・・これで、夜ゆっくり眠れるね」

「毎晩、毎晩忍び込もうとする根性は認めるけどね」

 

セインがまだ生きているのが少し不思議である。

 

「さぁさぁ!皆の衆!いざ行きましょうぞぉ!!」

 

元気満点のセインを前に皆は苦笑しながら、荷物を担ぎなおした。

 

「ほんと、現金なんだから・・・ハング、行きましょ」

 

リンはハングに声をかけた。だが、ハングはその場から動こうとしなかった。

 

「ハング?」

 

ハングは周囲へとせわしなく目を動かしていた。平原に目を細め、空を飛ぶ鳥を見つけ、今しがた通ってきた林を振り返る。

 

「・・・くそっ・・・」

 

小さく悪態をついたハング。彼は剣の柄に手を置いていた。ハングだけではない。ドルカスとウィルもまた、その林を見つめていた。3人がみつめる一点。林の奥の茂みの中。

 

その茂みが不自然に揺れた。

 

「ドルカスさん!」

 

ハングに言われるより早くドルカスの手から手斧が飛んでいく。

 

「みんな!構えろ!」

 

指示を飛ばすハングの腕をリンが半ば強引に引っ張った。

 

「ちょっ、ハング!今の本当に山賊なの?もし、普通の人なら・・・」

「細かいことは後で話してやる!いいから剣抜け!来るぞ!」

 

その言葉通りに林の中から斧が飛んでくる。

ケントが剣で弾き飛ばして、馬に飛び乗った。

 

「林に戻ろうとか考えるなよ!タコ殴りにされるぞ!」

 

飛び出す気満々だったセインにかけられた言葉は他の数名の動きも止めた。

そんなハング達に林の中から矢や斧が次々と飛んでくる。

 

ハング達は林から距離を取らざるおえない。だが、ハングはその山賊達の動きに違和感を覚えていた。

 

「ハング殿!このままではなぶり殺しにされます!平原に逃げましょう!そこなら騎馬の機動力も存分に生かせます!!」

 

ケントの意見は正しい。が、今回の場合それはあまり有効な手とは言えない。

ハングは平原を見渡す。地図の上からでもそうだったが、単純な平原に見えて起伏が大きく、ところどころに雑木林が点在している。

 

「奴らは林から出てきやしねぇよ・・・」

 

ハングはそう言った。ケントがハングを横目に見ると、そこには不敵な笑みが浮かんでいた。

 

「何か策があるのですか?」

「むしろ、山賊側に策があるってことだ。そこに俺の策を乗っける」

 

ケントには疑問を口にする余裕は無かった。林の隙間を切り裂いて、再び矢が駆け抜けてきた。ケントは籠手で矢を弾く。

 

「くっ!」

 

自分達の後方にフロリーナやリンがいる以上、回避という選択肢はない。

だが、このまま守勢に回っていても埒が明かないのも事実。

 

「ウィル!敵を狙えるか!?」

「無茶言うな、どっから射られてるのかもわかんないんだぞ!」

 

それでも手当たり次第に矢を放つウィル。

ただでさえ狙いが定まりにくい上に木々が邪魔で有効打とはならない。

 

もちろん、それは想定内。

 

そろそろいいか・・・

 

ハングは乾いた唇を舌で湿らせる。

 

「リン!セイン、ケント、フロリーナを連れて離れろ!姿勢を低くして最速で丘を越えろ!伏兵を蹴散らせ」

「伏兵?」

「いるんだよ。どこにいるかは・・・」

 

ハングは矢を左手で受け止めて振り返り、楽しそうに笑って言った。

 

「教えたろ?」

 

リンは一瞬、ハッとした表情になる。

 

「わかった!セイン、ケント行くわよ!」

 

リンはそう言ってフロリーナのペガサスの後ろに飛び乗った。

矢の届かない距離にまで3人が達したのを確認して、ハングは手の中の矢をへし折った

 

「さぁて、お前ら。ここの山賊を一人でも行かせたら、あいつらが挟撃を受けることになる。気張れよ!」

「たった3人でかよぉ!しかもハングはほとんど戦力外みたいなもんじゃん!!」

 

ウィルが悲鳴を上げる。

 

毎晩毎晩リンに打ちのめされているハングを見ているウィルからすれば、ハングの剣技はまったく信用ならないのだ。

 

「うるせぇな・・・どうせあいつらは林から出てこないんだよ!いいから集中しろ!」

「しょうがないなぁ!」

 

そう言いつつもウィルは手あたり次第に矢を放つ。ドルカスもまた隙あらば手斧を投げ込むつもりでいた。

ハングは2人が戦いに集中できるよう、その左腕で飛んでくる矢や手斧を片っ端から叩き落としていった。

 

 

 

――――――― ※ ――――――― ※ ―――――――

 

 

 

リキアとベルンの国境付近。湖の側に広がる森は深いとは言えない。だが、そびえ立つ木々は天高く、伸びるままに任せた枝葉は容易に空を覆ってしまう。暗がりの中の景色は行けども行けども変わることはなく、何の備えの無い人を惑わすのは容易なことであった。

 

そして、ここにもそんな旅人が二人

 

「うーん・・・迷っちゃったかなぁ。もう!やんなっちゃう!!」

 

誰へとなく文句を垂れるのはツインテールに髪をまとめた女性。

シスターの服を着ているものの、未だ幼さが顔に出ていることからさほど神聖には見えない。むしろ、活動的な印象を周囲に与えている。

 

そんな彼女のそばに呆れた顔の男性が一人。

 

「・・・君がこっちの道だと自信満々に言ったんだよ」

 

黒に近い癖のある髪と上等そうなマント。ローブのような服は魔道士の特徴である。その顔は明らかに美形の範囲に含まれるのだが、今日は疲労が色濃く出ていた。

 

「何よ、エルク!文句でもあるの?」

 

凄んでくるシスター。本当に神に仕えてるのか疑わしい程の迫力だった。

それを楽々と受けながす魔道士。そこに慣れた様子は無いものの、どうも諦めているような溜息がこぼれた。

 

「・・・君の護衛なんて引き受けるんじゃなかった」

「なによ!どういう意味!?」

 

説明する程のことでも無い気がするが、エルクと呼ばれた魔道士は律儀にも答える。

 

「リキアの "かよわい" シスター がオスティアに戻るための護衛を探してるって・・・聞いた」

 

オスティアとはリキアの中の領地の一つである

 

「あら、その通りじゃない」

 

堂々と言い切った"かよわい"シスター。

 

「・・・かよわい?セーラが?」

 

そのシスターはセーラという名のようだ。

 

エルクの言葉は続く。

 

「大丈夫、君のその性格を知ればどんな悪者も逃げ出すよ。お金は返すから、一人でオスティアに戻ってくれないか?」

 

散々な言いようであったが、セーラは全く応えた様子も無かった。

 

「いやよ!エルクはやっと見つけたむさくるしくない護衛なんだもの!第一、高貴な女性が一人の共も連れてないなんて、おかしいでしょ?」

 

高貴な女性が誰なのかを聞きたそうにしたエルクだったが、藪から蛇を掴みとる趣味は彼には無かった。それを良いことにセーラは更に喋り続ける。

 

「あんた、性格はイマイチだけど。見た目は、まあまあだから」

 

エルクの深い溜息は深刻さを帯びていた。

 

「それは、こっちの台詞だよ・・・このままリキアまでなんて、僕の神経がたえられない・・・」

「なにブツブツ言ってんの。暗いわねっ!あら?」

 

森の中に金属が響き渡る音や気合の声が響いていた。

何か嫌な予感を感じたエルクを他所に、セーラは既に興味津々であった。

 

「向こうがやけに騒がしいわ。行ってみましょ!」

 

そう言って駆け出すセーラ。

 

「あっ・・・ちょっ・・・はぁ・・・」

 

森の奥へ進んでいく背中に言いようのないため息を吐きだすエルク。このまま見捨ててしまう案をつい実行してしまいたくなるが、エルクの中の責任感が邪魔をする。

自分の中で折り合いをつけるために、エルクはひたすらに文句を並べたてた。

 

「・・・ついでに、その、すぐにやっかいごとに首を突っ込むところ・・・追加料金をもらってもいいぐらいだ・・・」

 

何度目かもわからない溜息を吐き出してエルクはセーラの後を追っていった。

セーラとエルクが音を頼りに向かうと、たどり着いたのは森の端だった。まったくの想定外の方法で森を抜けることには成功したが、エルクの胸中は決して平穏にはならなかった。

 

平原で戦いが起きていた。

 

丘の近くに陣取った騎士二人とペガサスナイトが正面の森から飛び出してくる山賊達を次々になぎ倒していた。

3人の動きは軽快そのもので、平原においてその機動力を存分に生かして山賊達と渡り合っていた。

あれでは有象無象が挑みかかっても勝機はない。

 

だが、それ以上にエルクが感心したのは3人の位置どりであった。

 

森から絶妙な距離を保つ布陣。

あの位置では森からの矢や手斧は届かない。だが、走れば一瞬で距離を詰められそうな位置に見える。

森から出てくる山賊達はそんな距離感に騙されて次々と森から飛び出しているのだろう。

 

山賊達もいざとなったら森に逃げ帰る想定ぐらいはしているのだろうが、騎馬やペガサスの機動力がそれを許さない。

 

指揮をとっているのは、どうやらあのサカの民族衣装を着ている女性らしい。

 

このままなら、彼女達が森に潜む山賊達を全滅してくれるだろう。

しかし、自分達が先にあの山賊達に遭遇してなくてよかった。

 

などとエルクは考えていたのだが、そんなことを意に介さずに喋り出すシスターが隣にいることを失念していた。

 

「うっわー!やってる、やってる。ねぇ、見てよエルク!山賊と戦ってるの、若い女の子よ!」

「バカ!そんな大きい声で・・・」

 

慌てて口を無理やり塞ごうとしたのだが、後の祭りだった。

 

「おっ!なんだ?おまえらも、あの女の仲間か!?」

 

彼女達が森の中にまだ伏せていた山賊に目をつけられるのは当然の結末だった。

 

「へ?」

「あー・・・もう、いやだ・・・」

 

間抜けな声を出したのは当然セーラで、疲れきった声はエルクのものだ。

 

「うらぁっ!一撃で始末してやるよ!!」

 

気合の入った構え、山賊にしては隙の無い、いい構えだった。

その姿には老若男女誰を問わずに震え上がり、次の瞬間には斧の錆びと化すだろう。

 

「テめぇらの墓場は・・・」

 

まだ何か続けようとした山賊。それを遮るように大音量の悲鳴が響き渡った。

 

「キャーキャーキャーキャァーーーーッ!」

 

セーラの悲鳴だ。絹を裂くような悲鳴。

だが、なぜかそこには恐怖が欠片も感じられなかった。明らかに形だけの悲鳴だとわかる声。

セーラは悲鳴をあげながら、エルクの後ろに逃げ込んだ。

 

そして・・・

 

「ちょっとエルク!私が悲鳴あげてんのよ!早く助けなさいよっ!」

 

まったく悲壮感のない台詞を吐いてくれた。

少しは怯える態度を見せるとか、神妙に震えてくれるとか、〝かよわい”シスターらしくしてくれればエルクも守りがいがあるというのに。

 

「うるさいなぁ・・・」

 

エルクはため息とともにそう言った。

山賊でさえ、肝のどっかり座ったシスターに動揺を隠せないでいた。

 

「そこの人!僕が相手だ!!」

「お、おう!一撃で始末してやるよ!!」

 

他に言い回しが無いのか?

 

そんな感想を胸に秘めてエルクは魔道書をその手に開いた。

 

中に描かれた幾何学模様と幾重に張り巡らされた古代の文字。

そこに秘められているのは精霊との契約の印。

 

エルクの口から紡がれる言葉の渦が、不規則な風と共に魔道書をめくりあげる。

 

聞き覚えのないはずの言葉

聞き覚えのあるはずの言葉

 

彼の調べは精霊の歌声。彼が開く魔道書に赤い光を宿す。

 

「燃えて無くなれ」

 

エルクの手から突如として現れた火球。

 

「なっ!お前、魔道士か!?」

「遅いよ」

 

打ち出された炎が周囲を焼き尽くさん勢いで山賊の身体にぶつかった。

 

「ギャァーーーーーーー!」

 

断末魔をまだ焼き尽くせないことが、エルクには不満であった。

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