【完結】ファイアーエムブレム 烈火の剣~軍師と剣士~   作:からんBit

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間章~最後の小休止~

【魔の島】のあちこちに散乱している遺跡群。巨大な【竜の門】を見上げるような場所に佇む遺跡の一つにハング達は野営地を築いていた。

 

ここから【竜の門】までは目と鼻の先だ。

おそらくここが最後の小休止になるであろうことを告げ、ハング達は腰を降ろしていた。

 

野営の時に『首輪』を外してもらう許可をようやく得たハングは、ロウエンと共に荷物降ろしを手伝っていた。

エリウッドやヘクトルが率先して指揮を執ってくれているおかげで、ハングは身体が空く時間が増えていた。

 

「ハングさん。そっち抑えてください」

「はいよ。っと、重いな。なんだこれ?」

「私の保存食袋です!ハング殿もお腹が減っていたらいつでもここからお好みのものをいただいてください!私はこの部隊の誰にも空腹など覚えさせません」

「ああ、なるほど・・・これが例の・・・」

「食料は大事ですよ!『腹満たされずして心もまた満たされず』格言にもあるでしょ?」

「悪いそれは初耳だ。誰から聞いたんだよ?」

「マーカス将軍です」

 

ハングの口が真一文字に結ばれる。

マーカスがそのような格言を真面目な顔で言っている様子が今一つ頭に浮かばなかったのだ。

 

眉間に皺を寄せ、ロウエン相手に「よいか、ロウエン。昔の格言に、こうある。『腹満たされずして心もまた満たされず』よいな、ゆめゆめ忘れるでないぞ」とでも言っているのだろうか。

 

ハングは保存食袋を地面に降ろして、口を開けてみる。

 

「・・・マジで保存食が詰め込まれてるんだな・・・」

「そりゃそうですよ。保存食袋なんですから!」

 

袋の中には干し肉から魚の干物、ドライフルーツ、乾パンなどのありきたりな保存食から、饅頭やクッキーなどの軽食までより取り見取りであった。

 

そして保存食袋の奥底にはハングが最も嫌悪する非常食も入っていた。

 

「うわ・・・これもあんのかよ」

「これもご存知ですか?『鉄の板』ですよ。食料がつきたときの最後の手段です」

「これでも一応海賊船に乗ってたからな・・・」

 

それはクッキーの一種であった。

長距離航海を行う帆船の倉庫に常に常備されている保存食だ。

 

帆船という場所は潮風が常にあたり、湿気が多いために食料が腐りやすい。

海に出て三日もすれば、野菜や肉はすぐさま腐臭を放ちだす。

通常の保存食もある程度はもつが、二週間が限度だ。そして、最後に船員が頼るのはこの『鉄の板』なのだ。

 

小麦粉をガチガチに固めて焼きを入れたもので、まともにかじりつけば歯が折れる程の硬さを誇る、まさに『鉄の板』だ。

食べる時は唾液でふやかしながら食べるのだが、船の上のこのクッキーは常に蛆がたかっているので、なかなかに難易度が高い。

ハングもこの食事に慣れるのに随分の時を要した。

 

さすがにロウエンが管理している保温食袋だけあって蛆がたかっているようなことはなかったが、それでも苦い記憶が消えるわけではなかった。

 

ちなみに『苦い』というのは蛆虫の味のことである。

 

「しかし、ロウエン。今更といえば今更なんだが、戦場でもこれを背負うのはどうなんだ?マリナスさんにでも預けた方がいいんじゃねぇのか?」

「えっ!それじゃあ、お腹がすいた時はどうすればいいんですか!?」

「耐えろよ」

「そんなっ!!」

 

その時のロウエンはまるで身内に不幸があったかのような衝撃を受けた顔をしていた。

 

「いやいや、そこまで衝撃を受けることか?」

「受けることですよ!お腹がすいたら力がでないでしょ!次第に目が回ってきて、ついには失神!戦場でそのような失態をおかすわけにはいきません!」

「えっ?それじゃあロウエン・・・お前、今まで戦闘中に飯食ったりしてたのか?」

「・・・そうですけど・・・」

 

ハングは思わず目頭を押さえた。

 

戦場を常に見渡してきたつもりでいたハングだが、ロウエンがそんなことをしているなんてまるで気が付いていなかった。自分の観察眼はまだまだ未熟だと思い知らされた気分であった。

 

「あ、あの。ハング殿?どうかされました?」

「いや、いいんだ・・・それより、今日の晩飯だけど」

「はい、レベッカさんとウィルさんが狩りに出かけていまして・・・」

 

ハングはロウエンの話を聞きながら、保存食袋の口を縛り、背中に担ぎ上げた。

その時、保存食袋の口から中の余分の空気が抜け、『くぅ』という犬の鼻息のような音がした。

 

ハングは特に気にもとめずに、非常食袋をどこに置くかを見渡した。

 

「おい、ロウエンこれ・・・ロウエン?」

 

ふと、ハングが振り返ると、ロウエンの顔から血の気が引いていた。

 

「ロウエン、どうかしたか?」

「は、ハングさん!敵襲かもしれません!!」

「はっ?」

「お、俺!レベッカさんの様子を見てきます!できれば警戒態勢を!!」

「はっ?お、おい!ロウエン!!!」

 

ロウエンは最早ハングなど眼中にない様子で脱兎のごとく森へと駆け出していった。

残されたハングは参ったように頭をかく。

 

敵襲もなにも、既に斥候から異常なしの報告を受け取ったばかりであり、ネルガルによる転移魔法はパントに封じてもらっている。

 

ロウエンが何を基準にそんなことを言いだしたのかはまるでわからなかったが、さすがに一人の意見で軍全体を動かすわけにはいかなかった。

 

ただ、あれほどの慌てようは只事ではない。

 

ハングはどうしたものかと、眉間に皺を寄せる。

 

「・・・とりあえず、念のために再度斥候を放っておくか」

 

ここがネルガルの本拠地のすぐそばであることには変わりなく、念には念を入れておくべきであるとの結論を出した。

その後、ハングはマーカスを探してそのことを伝えた。

再度斥候を放つことにはマーカスも異論はなかったが、その根拠については苦笑いをしていた。

そして、ハングはマーカスからロウエンの『保存食袋が『くぅ』と鳴いた時のジンクス』の話を聞かされたのだった。なんでもそれが起きると、ロウエンにとって一番大切な人に悪いことが起きるらしい。

 

「あぁ・・・それでレベッカを探しにいったのか・・・」

 

その時のハングは蛆虫を10匹程噛み潰したような顔をしたそうだった。

 

 

 

――――――― ※ ――――――― ※ ―――――――

 

 

野営地の仕事も落ち着き、ある程度の自由時間が与えられた彼等。

そんな人の輪から離れていこうとする人がいた。

 

「イサドラ・・・!待ってくれ、イサドラ!」

「ハーケン・・・」

 

婚約を交わした二人。

だが、ハーケンが戻ってきてからというもののイサドラはは明らかにハーケンを避けていた。

今日もハーケンが探して居ることを察して、いち早く見回りに出ようとしたのだが、今日はハーケンの方が一枚上手であった。

 

イサドラの手をハーケンは掴んだ。

 

その手からは『もう離さない』という強い意志が宿っていた。

 

「君に心配をかけたことは謝る。その償いは、どれだけ時間がかかってもするつもりだ。置いて行ってしまったことも、約束を違えてしまったことも・・・私は・・・」

 

握りしめたイサドラの手。

やけに冷たいその手は振り払われることはなかったが、握り返してくれることはなかった。

イサドラはハーケンに背を向けたまま言葉を紡ぐ。

 

「ハーケン・・・あなたは、本当にここにいてくれるの・・・?また、私を一人にしたりしない?」

 

ハーケンは一瞬答えに詰まってしまう。

 

自分は『帰ってくる』と約束し、それを破った。

 

それでもハーケンはもう一度約束を交わそうとした。

 

「ああ、もちろんだ。約束・・・」

「いや・・・言わないで!」

「イサドラ・・・?」

 

ハーケンからはイサドラの表情はわからない。

それでも、彼女が泣いているのはすぐにわかった。

 

わずかな仕草からでもお互いの調子がわかるぐらいにまで深く愛し続けた二人だからこそ、イサドラの胸の痛みが手に取るようにハーケンにはわかってしまう。

それは痛い程にハーケンの胸に突き刺さる。

 

「怖いの・・・『約束』が・・・怖いの・・・思い出してしまうから。あなたがエルバート様とフェレを旅立った時のこと・・・」

「イサドラ・・・」

「エルバート様とあなたがいなくなってから・・・フェレはまるで、死んでしまったようだったわ・・・あなたと一緒に、エルバート様に同行すればよかった・・・私、何度も何度もそう思った。あなたを失ったまま生きるくらいなら、いっそ・・・そう思ったこともあった」

 

気丈にふるまってきたイサドラであったが、その身の内には数々の心労が溜まっていた。

エリウッド達がフェレを旅立ってからの空虚なフェレ城。そして、届けられたエルバートと精鋭部隊の悲報。エリウッドの部隊に合流してハーケンには再会はできたが、そこからも怒涛のような日々だった。

ニニアンというエリウッドの想い人にしてイサドラの良き友であった人の死を経験し、頼れる軍師が軍を離れ、そして世界の滅亡がかかった戦いへと差し掛かっている。

 

一つ一つの出来事が過去の悲劇を思い起こさせ、後悔を蘇らせ、未来に恐怖の影を落とす。

その中ですり減ってしまった彼女の心。

 

ハーケンはそんなイサドラを見ていた。

見ていたはずなのに、まるで見柄えていなかった。

 

イサドラを掴むハーケンの手から力が抜けていく。

 

「イサドラ、もし君が望むのなら・・・私は君の前から姿を消そう。私の存在が君にとって重荷となるのなら・・・」

「違う・・・違うわ!」

 

イサドラが振り返る。

やはり、その頬は涙に濡れていた。

 

「重荷なんかじゃない。あなたは私の大切な人・・・私はあの時からずっと・・・あなたのことだけを思ってきた・・・」

「イサドラ・・・」

 

愛しい人からの言葉。

なのに、ハーケンの胸には冷たいイサドラの体温が染みこんでいくようだった。

 

その理由ははっきりしていた。

 

「ハーケン・・・あなたが出発の前、私に言ってくれた言葉・・・まだ、覚えてる?」

「ああ、もちろんだ。私はきみに約束した。必ず無事で戻ると。そして、フェレに帰還したら、二人で式をあげようと・・・」

「私、信じてたわ。不安でたまらなかったけれど、でも・・・ずっと信じてた」

 

ハーケンは言葉を返せなかった。

それは負い目だった。

 

ハーケンはその約束を破ったのだ。

 

主君を失い、【黒い牙】に身をやつし、刺し違える覚悟をして命を投げだしていた。

 

唇を噛みしめるハーケン。

 

『オレたちも、あんたたち騎士も、根っこは人間だ。たまには恋人のことも考えてやんな。戦うためだけに生きるなんて、悲しいだろ?』

 

ラガルトにかけらた言葉が今更ながらに蘇る。

 

仇を追いかけ、死を覚悟して戦おうとしていたハーケン。

あの言葉の意味はここにあったのだ。

 

では、今のハーケンは何をすべきなのだろうか。

 

ハーケンはイサドラを握る手に渾身の力を込めて、引き寄せた。

そして、涙を流す彼女を胸の内で強く抱きしめる。

 

抱きしめらた腕から伝わってくるイサドラの痛みも喜びも、全てを受け止める覚悟でハーケンは口を開いた。

 

「イサドラ・・・もう一度だけ、私に機会をくれないか?この旅が終わり、二人とも無事にフェレに帰還したら・・・二人で式を挙げよう。一度は果たせなかった約束だが・・・今度こそ、守ってみせる」

「信じて・・・いいのね?」

「ああ、もうどこへも行かない。私はずっと、きみと一緒だ」

 

抱き合う二人。

 

それを木陰で見ていた人がいた。

 

「くくく、これでようやく元鞘ですね」

「ラガルト、悪党みたいな笑い声が出てんぞ」

「これでも悪党ですし」

 

ラガルトと彼に連れられてきたハングであった。

 

「それで、なんで俺をここに連れてきた」

「わかってるくせに。あの二人、どっかの誰かに似てませんか?」

「・・・この野郎・・・」

 

『約束』を交わした男女。そして、一方的にその『約束』を破って死に向かっていった男。

ハングには思い当たる節が多すぎて、ため息も出ない。

 

「ハングさんに、こういうのをもう一度見せておこうと思いまして。最後の最後にネルガルに特攻されても困りますし」

 

ハングは木の幹にもたれかかりながら、ラガルトを横目に見やる。

 

「まったく・・・お前はいい奴か、それとも嫌味の権化かどっちかだな」

「くくく、いいでですねそれ『嫌味の権化』ですか」

 

楽しそうに笑うラガルトであったが、ハングが手を振るって追い払うと森の影の中に消えていった。

ハングは抱き合う二人を一度振り返り、そっとその場から離れた。

 

部隊へと帰ってきたハング。

 

野営地の中では皆が思い思いに過ごしている。

 

焚火を囲んでカードに興じている人達。

こんな時でも鍛錬を欠かさない人達。

最愛の人との時間を大事にしている人達。

 

そんな時、ハングは陣地の端で一人佇んでいる、ヘクトルを見かけた。

その背中は少しふさぎ込んでいるようにも見えた。

 

ハングはその背中に何か声をかけようとしたが、すんでのところで口を閉じた。

 

ヘクトルの兄の身に何が起き、今のヘクトルが何を思って行動してるのかをハングはおおよそ察している。

そして、ハングが気づいていることにヘクトルもまた気づいているのだ。

 

だから、ハングとヘクトルの間ではこの話は『既に終わっている』話だ。

今更ハングが何か声をかけたところで、話を蒸し返すだけに過ぎない。

 

だから、今のヘクトルは『まだ終わっていない人』に任せる方がいいとハングは思ったのだ。

 

ハングは近くでヘクトルに声をかけようとして縮こまっているフロリーナから視線を逸らし、野営地の中を歩いて行った。

 

遠ざかるハングの足音を聞きながら、ヘクトルは声をかけられなかったことに少し安堵していた。

感傷に浸ってしまっていた今の自分をハングには見せたくなかったのだ。

 

ヘクトルは大きく息を吐きだした。

 

ふと、後ろから足音がした。

足音の質は軽い。おそらく女性であり、ヘクトルに声をかけてくる女性はほとんど限られている。

足音が駆け足ならセーラであり、躊躇うように静かなものならフロリーナしかいない。

 

ヘクトルはなんとか普段の声を取りつくり、背中を向けたままフロリーナに声をかけた。

 

「・・・おう、なんだ。もう飯ができたのか?」

 

ニニアンを失って以降、フロリーナがふさぎ込んでいたことをヘクトルは知っていた。

だが、その時のヘクトルにも彼女に構っている余裕はなかった。

 

こうして、彼女と2人になるのはアルマーズを取りに行った時以来であった。

 

「お前はそろそろ元気になったのか?戦えはするらしいけど、あんま無理すんじゃねぇぞ」

「・・・ヘクトル様・・・」

「で、飯か?」

「・・・ヘクトル様・・・」

「・・・なんだよ?」

 

フロリーナはヘクトルの名を呼ぶばかり。

だが、ヘクトルは振り返らない。

振り返ったところで自分が情けない顔をしていることがわかっていたからだ。

 

「・・・ヘクトル様・・・」

 

何度もヘクトルを呼ぶフロリーナ。その彼女の声がわずかに涙ぐんでいた。

 

「なんで・・・泣いてんだよ?」

「・・・ぐすっ・・・だって・・・」

「・・・ったく・・・」

 

ヘクトルは自分の隣を手でたたいた。

フロリーナはそこに歩いていき、腰かける。

ヘクトルは彼女を見ることはなく、ただ夕刻が迫ってくる森の奥を見つめていた。

 

「・・・ぐすっ・・・えくっ・・・」

「だから、泣いてんじゃねぇって」

「・・・だって・・・」

「だってって・・・お前なぁ・・・」

「・・・だって・・・ヘク・・・トル様・・・泣いて・・・る・・・」

「あぁ?俺がか?」

 

ヘクトルは怪訝な顔をしてみせるが、それが無理やり取り繕った顔であることは誰の目から見ても明らかだった。涙を流し続けるフロリーナの横でヘクトルは頭をかく。

 

「・・・バカ野郎・・・だからって・・・お前が泣いても仕方ないだろうが」

「・・・えっく・・・でも・・・」

「まぁ・・・なんだ・・・」

 

そんなフロリーナをヘクトルは傍に抱き寄せた。

 

「ありがとな」

「・・・ひっく・・・」

 

ヘクトルは今は泣いてる場合じゃない。

 

だから、代わりに涙を流す。

 

ヘクトルは溜め込んでいた気持ちを吐き出すように大きくため息をついた。

 

まったく、なんでこんな面倒な女がいいんだろうな?

まぁ、やっぱり、こういうとこがいいんだろうな

 

そんなことをヘクトルは思っていた。

 

 

――――――― ※ ――――――― ※ ―――――――

 

 

陣地での食事。

 

ハングは振る舞われたスープを食べながら空を見上げた。

太陽は沈みかけ【竜の門】へたどり着くころにはもう夜だろう。

 

夜にかけて遺跡内に突入するのは気が引けるが、どうせ内部は元々真っ暗だ。ハングは明日の朝を待つのは時間の無駄だと判断した。

 

だからこれは最後の晩餐だった。

そんなハングの後ろからエリウッドが声をかけてきた。

 

「ハング、隣いいか?」

「空いてるよ、いつもな」

 

エリウッドにそう言うと、エリウッドより先にハングの隣に別の人物が座った。

 

「こっちは私が埋めておくわね」

「そいつはありがたいね、両手に花だ」

 

ハングがそう言うと、エリウッドとリンディスは笑って木の実を口にいれた。

赤い実を咀嚼しながら、エリウッドが呟いた。

 

「これ美味しいな」

「そうか?俺には臭いがきつい」

「じゃあ私がもらうわね」

 

ハングの取り分から木の実を取りあげ、リンディスは一息に食べてしまった。

 

「はしたねぇ」

「いいでしょ、城にいる時は雁字搦めなんだから」

 

そんなリンディスにエリウッドが苦笑する。

 

「リンディスってつくづく『姫』って言葉から縁遠いよね」

 

そう言ったエリウッドにハングも同意する。

 

「ま、『族長』の方が似合ってるよな」

「でしょ」

「褒めたつもりはねぇよ」

 

何気ない会話。

それが本当にかけがえのない大事なものであることをこの旅で知った。

 

「長い旅だった」

 

ハングがそう呟いた。

 

「あっという間だった気もするがな」

「ほんと・・・いろんなことがあったわ・・・」

「そうだね」

 

いろんなことを乗り越え、いろいろな人と出会い、そしていろんな人と戦った。

 

「それも、もう終わる」

「違うわ」

 

リンディスがそう言い、エリウッドが頷く。

 

「そう、僕達が終わらせるんだ」

 

そう言ったエリウッドの肩に太い腕が回った。

 

「そして、全員で帰る!そうだろ!」

 

ヘクトルが何かを吹っ切ったような顔でそう言った。

 

「単純ね、ヘクトルは」

「声が大きいだけだ」

「それがヘクトルのいいところだよ」

 

この扱いももう慣れたもんである。

ヘクトルは自分の食事をとり、ハングの前に胡坐をかいた。

 

「決戦だ」

「気負うなよ」

「このぐらい屁でもねぇ」

「お前も大概『侯爵』って言葉が似合わないよな」

「うるせぇ」

 

昂ぶってるるわけでも、委縮してるわけでもない。

 

ただ、いつも通りに剣を振る。

自分の信念を貫き、大事なものを守るために武器を取る。

 

ただ、それだけなのだ。

 

「さぁ・・・やるか!」

 

ハングの短い言葉に皆は笑顔で頷いた。

 




長らくご愛読いただき、誠にありがとうございます。
いよいよ、次回最終章でございます。

タイトルは『終章~光~』

ただ、師も走る忙しい時期なので、今年中に完結は無理そうかな・・・

ただ、有終の美を飾れるよう精一杯気合を込めて書きますので、どうかよろしくお願いいたします。
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