【完結】ファイアーエムブレム 烈火の剣~軍師と剣士~ 作:からんBit
夢は見ない。
ただ、真っ黒で、真っ暗な世界で朝を待つ。
自分が眠っているのか起きているのかもわからない。
朧気な世界で俺はいつも意識の淵を漂っていた。
そんな夜は自分が【モルフ】だと知ってから、納得いくものではあった。
結局、俺はどこまで行っても化け物なんだ。
そう思ってた。
そんな世界に佇み、ハングは顔をあげた。
そこに誰かがいた。
そいつが口を開く。
『お前・・・人になったつもりか?』
聞こえてきた声は紛れもない自分の声のはずなのに、どこか別人のように感じる。
ハングは唇の端で笑ってみせた。
「俺は俺だよ、変わりはしない」
『化け物が人の振りをして生きていけると思ってるのか?」
「そんなつもりはないさ。でも、あいつらは俺がそんな『化け物』でも受け入れてくれた。そんな人がいればそれでいい」
『それは誰だ?』
「知っているだろ?」
『知ってる?』
「知ってるだろ?ずっと一緒にいたんだから」
【モルフ】は【エーギル】から生まれた。
つまり、誰かの命を奪って産まれた化け物だ。
だから、ここにいるのは多分・・・
「そんで、お前は誰なんだ?」
『さてな・・・世の中には知らなくていい事実ってのも多い』
「ははは・・・やっぱお前は俺だな」
ふと、風が吹いた気がした。
振り返ると、暗いだけの世界に光が見えた。
「・・・一緒にいくか?」
『お前は俺だ。付いてくよ・・・永遠にな』
「おお、怖い・・・でも、付き合ってくさ。永遠にな」
『お前は俺を抱えて生きていけ・・・例え【モルフ】でなくなっても』
「ああ・・・でも、俺は俺だ・・・俺として生きていくよ」
誰かが笑った気がした。
『勝手にしろ』
「そうするさ・・・でも・・・これからどうしようか?」
『わかってるくせによ』
ハングは溜息を吐いて、歩き出した。
光に近づいていく。
その向こう側に何があるのかわかる気がした。
『アフアの雫』は彼女のもとにあった。
だったら、この先に待っているものは決まっている。
ふと、ハングの視界が開けた。
そこにあったのは青い空と白い雲。
一面に広がる緑の草原。
「・・・・ありがとな・・・リン」
――――――― ※ ――――――― ※ ―――――――
ゆっくりと、目を開ける。
自分の眼の前に右手を持ち上げた。
五本の指がついた手のひらが見えた。
握り、開く。ひっくり返して、ながめる。
覗き込んできた顔はどれも泣き出す一歩手前だった。
「・・・ハング・・・だよね?」
エリウッドに向け、ハングは皮肉げな笑みを浮かべた。
「・・・また死に損ねたな・・・」
周囲に歓声が沸き起こった。
「ハング!!」
誰かが胸元に飛び込んできて、起き上がることもできない。
ただ、自分の胸の中心で音をたてる心臓が果てしなく心地よかった。