【完結】ファイアーエムブレム 烈火の剣~軍師と剣士~   作:からんBit

166 / 176
終章~光 ④~

夢は見ない。

 

ただ、真っ黒で、真っ暗な世界で朝を待つ。

自分が眠っているのか起きているのかもわからない。

朧気な世界で俺はいつも意識の淵を漂っていた。

そんな夜は自分が【モルフ】だと知ってから、納得いくものではあった。

結局、俺はどこまで行っても化け物なんだ。

 

そう思ってた。

 

そんな世界に佇み、ハングは顔をあげた。

 

そこに誰かがいた。

 

そいつが口を開く。

 

『お前・・・人になったつもりか?』

 

聞こえてきた声は紛れもない自分の声のはずなのに、どこか別人のように感じる。

ハングは唇の端で笑ってみせた。

 

「俺は俺だよ、変わりはしない」

『化け物が人の振りをして生きていけると思ってるのか?」

「そんなつもりはないさ。でも、あいつらは俺がそんな『化け物』でも受け入れてくれた。そんな人がいればそれでいい」

『それは誰だ?』

「知っているだろ?」

『知ってる?』

「知ってるだろ?ずっと一緒にいたんだから」

 

【モルフ】は【エーギル】から生まれた。

つまり、誰かの命を奪って産まれた化け物だ。

 

だから、ここにいるのは多分・・・

 

「そんで、お前は誰なんだ?」

『さてな・・・世の中には知らなくていい事実ってのも多い』

「ははは・・・やっぱお前は俺だな」

 

ふと、風が吹いた気がした。

振り返ると、暗いだけの世界に光が見えた。

 

「・・・一緒にいくか?」

『お前は俺だ。付いてくよ・・・永遠にな』

「おお、怖い・・・でも、付き合ってくさ。永遠にな」

『お前は俺を抱えて生きていけ・・・例え【モルフ】でなくなっても』

「ああ・・・でも、俺は俺だ・・・俺として生きていくよ」

 

誰かが笑った気がした。

 

『勝手にしろ』

「そうするさ・・・でも・・・これからどうしようか?」

『わかってるくせによ』

 

ハングは溜息を吐いて、歩き出した。

 

光に近づいていく。

 

その向こう側に何があるのかわかる気がした。

 

『アフアの雫』は彼女のもとにあった。

だったら、この先に待っているものは決まっている。

 

ふと、ハングの視界が開けた。

 

そこにあったのは青い空と白い雲。

一面に広がる緑の草原。

 

「・・・・ありがとな・・・リン」

 

 

 

――――――― ※ ――――――― ※ ―――――――

 

 

ゆっくりと、目を開ける。

自分の眼の前に右手を持ち上げた。

 

五本の指がついた手のひらが見えた。

 

握り、開く。ひっくり返して、ながめる。

覗き込んできた顔はどれも泣き出す一歩手前だった。

 

「・・・ハング・・・だよね?」

 

エリウッドに向け、ハングは皮肉げな笑みを浮かべた。

 

「・・・また死に損ねたな・・・」

 

周囲に歓声が沸き起こった。

 

「ハング!!」

 

誰かが胸元に飛び込んできて、起き上がることもできない。

 

ただ、自分の胸の中心で音をたてる心臓が果てしなく心地よかった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。