【完結】ファイアーエムブレム 烈火の剣~軍師と剣士~ 作:からんBit
ハング達がフェレ城に向かうと、既に城門でエリウッドが待ち構えていた。
「ハング!久しぶりじゃないか!」
「諸侯会議以来だ。まだ半年だぞ、そこまで大声をあげることか?」
「そう言われればそうかもね。今まで毎日のように顔を突き合わせていた反動かな」
少し興奮気味のエリウッドと握手をかわし、ハングは城内へと招き入れられた。
「フェレは随分落ち着いたな」
「そう見えるかい?」
「町の人達の表情を見てたらすぐにわかる。治安も良いし、税金も安い、そして暮らす人々が笑顔で元気。これが善政と言わずになんという・・・ま、豪華絢爛には程遠いがな」
「質素倹約は徳に結びつくよ」
「そりゃそうなんだが、もう少し内装に気を使えないのか?」
フェレの城内は石壁がむき出しで寒々しい。
廊下に装飾品は何もなく、便利ではあるが少し味気ない。
「お前の目標は賊が会心するぐらい豊かな土地にすることだろ?」
「贅沢は心の敵だよ」
「・・・お前はそのうち宗教開けるぞ」
久々のエリウッドとの雑談にハングの口も軽くなる。
そしてハングは談話室のような部屋に案内された。謁見の間や応接室よりも簡素で気楽な雰囲気の場所だ。身分を気にせずに人と会いたい時にはこういう場所へと招き入れるのは、全ての国で共通である。
「座ってくれ。来てくれてうれしいよ」
「ハウゼン様からの正式な祝辞も預かってる。とはいえ、まずはリンの奴から伝言だ。『おめでとう。出席できないのは残念だけれど、キアランから祝福する』とさ」
「ありがとう」
「俺からも祝いの言葉を送らせてくれ。おめでと」
「いや・・・ハングのおかげさ」
「俺は何もしてないよ。特にここ一年はな」
「いや、君は僕にいろいろなことを教えてくれた。ハングの授業が無かったら、僕はまだ色々と悩んでしまっていただろう」
エリウッドはハングの眼をまっすぐに見る。
「でも、僕は決心できた。父の後を継いでフェレ侯になる」
その純粋で真っ直ぐな力強い眼。
その目はどこかエルバートに似ているようで、やはり全然違う瞳であった。
そんなエリウッドを見てハングは楽しそうに笑う。
「俺がいなくてもお前は決心していたさ。俺はそれぐらいお前のことを買ってるんだ。旅の軍師の評価だがな」
「世界を救った軍師の褒め言葉だ。ありがたく頂戴しておくよ」
「相変わらず口の減らない奴だ」
『狸貴族』
何度そう呼んできたことだろうか。
腹の内が読みにくく、笑顔で息を吐くように嘘をつけるくせに、誠実過ぎる程に真っすぐ。
そんなちぐはぐな男だからこそ、ハングも話をしていて楽しいのであった。
もし、自分が女であればエリウッドに惚れていたかもしれないと思ったりもするが、残念ながらハングは男で惚れた相手は女性であった。
「即位式に出席してくれるんだろ?」
「そのために来たんだ。遅れなくてよかったよ」
「どうせまた行き倒れたんだろ?」
「行き倒れてねぇよ」
「その直前かい?」
「・・・まあな」
「でも、渓流に流されて食料を失ったり、黒の森で道に迷ったり、山賊に追い掛け回されたりしたハングが、行き倒れなかったというのはすごいと思うよ」
ハングの口元がわずかに痙攣した。
「おや、図星かい?」
「てめ・・・なんで知ってる?」
「さぁ、なんでだろうね?」
「この狸貴族め・・・」
ハングは脱力して背もたれに体を預けた。
「見てたなら助けろよ」
「違うんだ、ラガルトがベルンに抜ける時に教えてくれたんだよ」
「ラガルト?・・・ああ、そっか・・・ニノやジャファルの様子でも見に来てたのか?」
「そうだね。彼はまた義賊としての【黒い牙】を復活させるつもりだと言っていたよ」
「ふぅん・・・ま、それの善悪はよくわからないな」
「・・・うん、それに関しては僕もよくわからない」
世の中はいつだってままならない。
許容してはならない殺しがあり、殺すことでしか救われない人がいる。
いつだって力と善悪は歪な秤の上だ。
「ベルンで起こることはできるだけ情報を流してくれるそうだ」
「ほう・・・」
「代わりに金銭を要求するそうだけど」
「高くつくぞ、それ」
「ある程度は覚悟してるさ。でも、ベルンに密偵組織を一つ作る労力に比べれば随分ましだと思わないか?」
「そりゃな」
その時、扉がノックされた。
戸が開き、入ってきたのはニニアンであった。
「エリウッド様、エレノア様がお呼びで・・・あっ、申し訳ありません。お話し中でしたか?」
「気にしないでくれ。ハングと話してただけだ」
「おい、それどういう意味だよ」
据わった目でエリウッドを睨みつけたハングを見事に黙殺し、エリウッドはニニアンを呼び、自分の隣に座らせた。エレノアからの案件はどうやら急ぎではないようだった。
「お久しぶりです・・・ハング様」
「『さん』付けでいい。なんだかこそばゆい」
「はい、ハングさん」
ニニアンと会うのは【魔の島】からの帰り道で別れた時以来であった。
だが、一年という歳月程度は竜の娘の容姿はそう変わらないようだった。
ただ・・・
「少し、ふくよかになったか?」
頬や腕の肉付きが少し良くなっているような気がして、ハングはそう言った。
だが、その言葉を受けてニニアンは酷くショックを受けたような顔をした。
「えっ!?」
「ハング・・・君は・・・」
怪訝な顔をするエリウッドの顔を見てハングは自分が何を言ったのか少しの間考えた。
そして、ニニアンが元々は神に仕える踊り子であったことを思い出したのだった。
「あ・・・いやいや!良い意味だぞ!今までのニニアンはちょっと痩せすぎだったぐらいだから!それが少し健康的になったと・・・」
「言い訳は見苦しいよ」
「だから話を聞けっての!!」
必死に言い訳を繰り返すハング。からかわれているだけだというのはわかっていたが、ハングはあえてその役割を甘んじた。抵抗する術もあるにはあったが、最終的にはニニアンが笑ってくれたのでまぁよしとしておいた。
「ああ、そうだ・・・リンディスからもう一つ伝言があるのを忘れてた。『ニニアンとお幸せに』だってさ」
「・・・あ・・・ありがとうございます・・・」
「俺からも同じ言葉を送らせてもらうよ・・・結婚するんだろ?」
その言葉にエリウッドは頷き、ニニアンの手を取る。
「即位式もあるし・・・またしばらく騒がしくなるから、その後にでも結婚式を挙げるつもりだ。まぁ、一年後か二年後になるかもしれない」
「・・・そうか・・・そこには出席できないかもな・・・」
そのハングの言葉だけでエリウッドはキアランの状況を大まかに察した。
ハウゼンがもう長くはなく、その後の統治はオスティアに任される。
その時、ハングはもうリキア同盟内にはいないだろうという意味であった。
「また旅に出るのかい?」
「ああ・・・引き留めるか?」
「無駄なことはしない主義だ」
「そいつは初耳だったな」
「僕も初めて言ってみた。違和感がありすぎるな」
「自覚してるならいい」
ハングとエリウッドの会話を聞きながら、幸せそうに微笑んでるニニアン。
ハングは少しだけ先程の意趣返しをしてみることにした。
「それで?後継ぎはいつごろ誕生の予定なんだ?」
「なっ!」
「は、ハングさん!!」
その言葉には二人揃って顔を赤く染めてくれた。
「ははっ、照れるな照れるな。あれからもう一年だ。そろそろじゃないのか?」
ニニアンの顔が耳の先まで真っ赤になっていく。
エリウッドが焦ったように動揺してくれた。
悪戯としては成功だった。
「くっ・・・ハングも随分とヘクトルに似てきたね」
「なっ!!それは言いすぎだろ!」
「いや、ヘクトルも必ずそう言うと思うよ」
「俺はあいつほど下品じゃないぞ!!」
とばっちりでヘクトルが貶められたことは余談である。
――――――― ※ ――――――― ※ ―――――――
即位式の当日。
ハングは城内を歩き、城壁の上という最も人の少ない場所を見つけて足を進めた。
だが、階段を上がった先には先客がいた。
「あら、ハング殿ではありませんか」
「エレノア様・・・あ、自分は失礼します」
「構いませんわ・・・というより、よろしければここにいてくださいませんか?話し相手が欲しかったところです」
「・・・仰せのままに」
仰々しい言葉使いをしつつもハングは笑顔でそう言った。
「ハング殿はどうしてこんなところにいらしたんですか?」
エレノアの質問にハングは肩をすくめた。
「談話室にいたんですが・・・痴話喧嘩に出くわしまして」
「痴話喧嘩?」
「イサドラさんとハーケンさんですよ。しょうもないことでああだこうだ。聞いてるこっちの腹が膨れそうだったので退散してきた次第でして」
「それで城壁まで?」
「自室には仕事が山になってますから、帰りたくないんです」
「あらあら・・・」
上品に笑うエレノア。ハングはその笑顔を見ながら『この人いくつだろ?』との疑問を持っていた。
エリウッドを産んだとは思えない程の若々しさだ。
「そうでした。ハング殿に言っておきたいことがあったのです」
「なんでしょうか?」
すると、エレノアはハングに向けて深々と頭を下げたきた。
「・・・ありがとうございます」
「あっ、ちょ・・・どうしたんですか。顔をあげてください」
「・・・息子を・・・エリウッドを支えていただいたこと・・・まだ、礼も言っておりませんでした」
「いや・・・自分は・・・」
何もしていない。
そう言おうとして、ハングは慌てて口をつぐんだ。
エレノアから礼は尽くされてしまった。ならば受け取らない方が失礼にあたる。
ハングは片膝をついて頭を低くして、仰々しい言葉を並べようとした。
「謹んでお受けし・・・」
「ハング殿、謙虚も度が過ぎれば失礼ですよ」
ハングの言葉が喉奥で止まる。顔を上げるとエレノアは腹の内を読ませない微笑を浮かべていた。
さすがはエリウッドの母親だった。
つくづく軍師としての自分の能力を疑わせてくれる一家であった。
ハングは騎士の真似事をやめ、改めてエレノアに向き直った。
「・・・では・・・なんといいましょうか?」
「お礼を言われた時は?」
「『どういたしまして』」
「よくできました」
完全に手玉に取られている。
エレノアにとってはハングもまだまだ雛というわけだろうか。
「ふふふ・・・冗談はさておき・・・本当にありがとうございました」
「礼も過ぎれば・・・なんて言葉もありますよ」
ハングの精一杯の切り替えしは笑顔で迎え撃たれた。
どうにもこうにも、勝てそうにない。
ハングはもう抵抗することを諦めた。
「ハング殿・・・あなたから見てこの領地はどう思いますか?」
「・・・俺の独断の意見ですよ」
「それはそうでしょう。私はその意見を聞きたいのです」
「・・・マーカス様が率いる騎馬部隊を中心とした軍部はとても充実してます。財政面もマリナス様が頭角を現してきていますし、人材としてはリキアの片隅に収まりきらないものはあると思っています」
「過大評価では?」
「一応、これでも文官の仕事もこなしてきてますから。土地を見る目はあるつもりです」
「・・・そうですか」
ハングはそのまま意見を続けた。
「土地は豊かで、サンタルスを統治することにより物流もまた豊かになりつつある。そして、なにより・・・」
ハングは城壁から下を見下ろした。
そこは既に今日の即位式の為に周囲の村々から集まった人達であふれかえっていた。
「そしてなにより・・・人望に優れ、責任感を持ち、成長する意気込みにあふれる人物が今日侯爵として即位します・・・ここの未来が明るくないわけがない」
ハングはそのまま視線をエレノアに戻した。
「俺は・・・そう思いますよ」
「・・・そうですか・・・ハング殿のお墨付きがあるなら・・・大丈夫ですね」
そこまで信用されても困る
そう思ったがハングは何も言わなかった。
なぜなら、ハングは自分の意見が間違っているとは思っていなかったからだ。
「エレノア様!ここでしたか!」
「あら、マーカス」
「女中が探しておりました。儀礼用の服の準備をお早くお願いしますぞ」
「ええ、そうするわ・・・すぐに行きます」
「はっ!」
敬礼をして去っていくマーカスを見送り、エレノアは最後にハングを振り返った。
「ハング殿」
「はい」
「・・・お話・・・楽しかったです。また、時間があれば・・・」
「ええ、今度はエリウッドとニニアンも交えて」
「それは楽しそうね・・・それでは、即位式でお会いしましょう」
「はっ!」
ハングは太陽の位置でおおよその時間を確かめる。
そろそろ痴話喧嘩も収まったかと思い、ハングも城内に戻って行った。
――――――― ※ ――――――― ※ ―――――――
即位式の為の儀礼用の服を身に纏ったエリウッドが談話室を訪れたのはもう間もなく即位式が始まるという頃だった。だが、まだオスティア侯爵が来訪しておらず式の開始を遅らせるかもしれないという話になっていた。
エリウッドが談話室の扉を開けると、そこには椅子に深々と腰かけて疲れ切っているハングがいた。
「ハング、どうしたんだい?」
「よう」
ハングは呆れたような顔をして右手をあげる。
「さっきイサドラとハーケンが手を取り合ってここから出てきたが・・・それと関係あるかい?」
「・・・聞くな・・・バカバカしい・・・」
ハングは大きくため息を吐いて顔を覆った。
結局、喧嘩はなかなか収まらず、ハングが仲裁に入った。
そのはずなのに、途中からはハングは蚊帳の外。勝手に仲直りして、勝手に絆を再確認して出て行った。
仲が良いのは構わないが、できれば自分の目の届かないところでやってくれというのがハングの本音であった。
「・・・そういや、昔からよく喧嘩してはすぐ仲直りしてたな・・・あの二人」
二人と最初に会った時のことを思い出し、ハングはそう呟いた。
「そうか、ハングは僕と会う前にも彼らに会っていたんだね」
「エルバート様の手伝いをした時にな・・・まぁ、なんというか・・・遠い昔のような気がするな」
「実際、遠いだろ」
ハングはあの頃のエルバート様を思い出し、目の前のエリウッドと見比べようとした。
そして、それが無意味だと気付く。
エリウッドはエルバートの息子だ。外面や内面が多少似てるのは当然だろう。
その上で、エルバートを越えられるかどうかはこれからのエリウッド次第だ。
先代と比較するのはまだ先の話だ。
そんなエリウッドを頭からつま先まで見下ろし、ハングは腕を組んだ。
「それにしても、似合わないな」
「え?この服?やっぱり似合わないかな。儀礼用の服は堅苦しくて苦手だよ・・・」
「お前、ヘクトルに似てきたな」
ハングがそう言うとエリウッドは先日のやりとりを思い出して声をあげて笑った。
「で、ヘクトルは到着したのか?」
「さっき付近の村についたと連絡があった。今、迎えの馬を走らせた」
「まったく慌ただしい、即位式の当日に到着ってどういうことだよ」
「彼も忙しいんだよ」
「だからってな・・・」
談話室の窓の外からは既に大勢の人が集まっている雰囲気が伝わってくる。
城内でも色んな人が準備に奔走している。
そんな時、再び談話室の扉が開いた。
「・・・エリウッド様、ハングさんは・・・」
「ここにいたよ、ニニアン」
エリウッドが彼女を呼ぶと、開いたドアからやはり礼服に身を包んだニニアンが現れた。
その姿にハングは関心したように口笛を吹いた。
美しい髪や真っ白な肌に儀礼用の装飾が素晴らしく調和していた。
それなのに、エリウッドと並ぶと見事にエリウッドから一歩引く色合いにになっていて主役をきっちりと引き立ている。名のある絵描きに彼女を見せれば金を払ってでも描きたいという人が現れるかもしれない。
「ほう・・・こりゃまた見違えたな」
「驚いたかい?」
「いや驚いた」
「だろう?」
なぜか自慢げなエリウッドと褒められてる自覚のないニニアン。
「母が八方手を尽くして作らせた力作だよ」
「なるほどな・・・」
ハングはあの元気なエレノアのことを思い出し、さもあんなりというように頷いた。
「そういや、二人共、俺を探してたのか?」
「ああ・・・できれば即位する前に・・・まだ公子であるうちに君に会いたかったんだ」
「・・・つまり。まだ俺がお前の軍師であるうちに・・・ってことか?」
「察しがよくて助かるよ」
エリウッドとニニアンは目でお互いの意志を再確認し、話を切り出した。
「二人で話し合ったんだが・・・その、僕達二人の最初の子供の名前は・・・ハング、君に付けてもらいたいんだ」
「・・・お願いします」
ハングは困ったように右腕で頭をかいた。
「ダメか?」
「いや、それは構わないんだが・・・ヘクトルもお前も・・・なんで俺に頼むんだ?」
「それは決まってるだろ。君が僕らの軍師だからだ」
そう言われては何も返せない。
ハングは紙とペンを渡してもらい、男と女と両方の場合の名前をいくつか書こうとした。
だが、最初の名前を書こうとした瞬間にペンが止まった。
そして、こちらを見る二人の顔を交互に見やる。
「・・・そうだな・・・」
そして、ハングは一つの名前を書いた。
「これは・・・男の子の名前かい?」
「ああ、そうだ・・・なぜかこれが頭に浮かんだ。女の子だったら俺はお手上げとさせてもらうよ」
「ニニアン、どうだい?」
「・・・素敵な名前だと思います」
「僕もそう思うよ」
【Roy】
「ロイ・・・良い名前だ。ありがとう、ハング」
「お安い御用さ」
ハングは笑ってそう言った。
その時、盛大に扉が開け放たれ、礼服を着たヘクトルが現れた。
「おう!エリウッド!ニニアン!!・・・と、ハングもいんのか」
「ついでか。俺は?」
「そりゃついでだ。今日の主役はエリウッドだからな」
「ヘクトル、来てくれて嬉しいよ」
「親友の晴れ舞台なんだ。何があったって駆けつけるさ」
途端に部屋の中が騒がしくなる。
「ヘクトル様・・・おひさしぶりです・・・」
「ニニアンも久しぶりだ。そうやって二人並んでる姿、よく似合ってるぜ」
「はい・・・ありがとうございます・・・」
会釈をするニニアンの隣でエリウッドが微笑を浮かべる
「世辞が言えるようになったとは、随分成長したねヘクトル」
「お前の皮肉も随分成長したなエリウッド。ハングに似てきたぞ」
その評価にハングは眉間に皺を寄せる。
「おい、俺はここまで狸じゃない」
「どうだか、俺からいわせりゃハングもエリウッドも大して変わらねぇよ」
そんなものだろうか、ハングとエリウッドは顔を見合わせた。
そして同時に肩をすくめる。
本人同士にはよくわからない話だった。
「それで、エリウッド。後継ぎはいつごろ誕生の予定だ?」
「・・・ほらね、ハング」
「・・・・・・・・・はぁ・・・」
「くすくす・・・」
「あぁ?どうしたんだ三人とも」
「なんでもないよ。さぁ、そろそろ時間だ。いこうか」
部屋を出ようとするエリウッド。
ハングはその肩を右腕で叩いた。
「しっかりな」
「・・・ああ」
余計な言葉は不要。
ヘクトルもまた、エリウッドの背中に張り手を叩きつけた。
「頑張れよ」
「ありがとう」
「おう!」
前に進むエリウッド。
今日はハング達は一歩下がったところからそれを見ていた。