【完結】ファイアーエムブレム 烈火の剣~軍師と剣士~   作:からんBit

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間章~キアラン城にて(前編)~

戦いは終わった。だが、残念ながらそれで全てが終わったわけではなかった。もちろん、それはキアランの文官や武官の仕事。彼らにはあまり関係は無い。

 

「それじゃあ、もう行ってしまうの?」

「ええ、かなり寄り道しちゃったから早くオスティアに帰らないと」

「色々とお世話になりました」

 

城門前ではセーラとエルクがリンとハングに別れを告げていた。

 

「他の連中も見送りにくればよかったんだが。悪いな」

「いえ、いいんですよ。昨晩済ましましたから」

 

エルクがそう言って笑顔を見せる隣でセーラが腰に手を当てていた。

 

「マシューは戦いの最中にどっか消えちゃったし!まったく、団体行動のできない奴よね!」

 

お前が言うな!

 

と、言いたかったがやめておくことにしたハングである。

 

「んじゃ、道中気をつけてな」

「ありがとうございます。ハングさんはしばらくキアランに?」

「ああ。まだラングレンがめちゃくちゃにしちまった税率やら訴訟やら整備やらが大量に残ってる。働けるもんが働かないとな」

 

ハングはそう言って肩をすくめた。

 

「また、お会いしましょう」

「ああ、またな」

 

エルクがハングに手を差し出す。ハングは迷わずその手を握り返した。

その隣でリンにセーラが耳打ちしていた。

 

「いい、あんなこと言ってるけどハングは少しでも長くあなたの側にいたいだけなのよ!絶対に逃がしちゃだめだからね!」

 

国境の宿からセーラのこの話題はリンは聞き飽きていた。

そして、あしらい方もよくわかっていた。

 

「忠告は聞いておくわ」

「実行しなさいよ、いいわね!?」

 

リンは明確に返事はせずに曖昧に頷いた。嘘をつかずにやり過ごす方法はハング仕込みの賜物である。

 

「お前らは何話してんだ?」

「なんでもないわよ!ハングはエルクと漫談でもしてなさい!」

 

むしろ、お前の会話の方が漫談に近い。

 

そうは思ってもやはり、ハングは何も言わなかった。

ハングはセーラにエリミーヌ教流の礼を送った

 

「それじゃ、またどっかで会えることを祈ってるよ」

「ええ。リンもまたどこかでお会いしましょう」

「うん、またどこかで」

 

手を振って二人は西方面、オスティアへと向かって行った。

二人の後ろ姿を見送りながら、ハング達は最後の最後までエルクがセーラに向けてため息を何度も吐き出しているのが見て取れていた。

 

「仲いいわね、あの二人」

「本人達は否定してるけどな」

 

ハングはそう言って、城内に戻って行った。笑いながらリンもそれに続く。

 

「そういえば、ラスを見なかった?まだ、私お礼を言ってないんだけど」

「ああ、ラスなら戦いの後でキアラン城に入らずにどっかいっちまったよ・・・お前に『よろしく』だってさ」

「そう・・・」

 

彼女もなんとなく予想をしていたのだろう。リンはそっけなくもそう言った。

 

ハングは森で別れた彼との最後の会話を思い出した。

 

『いくのか?』

『ああ・・・もう、リンに命の危険は無い』

『そっか、お前とはまたどっかで酒でも酌み交わしたいもんだ』

『そうだな・・・同じ人間を信用した者同士・・・な』

 

ハングとラスの初めての会話。

お互いをなぜ信用するのか?

答えは簡単だった。

 

『リンに信頼された者同士・・・か・・・話のネタは尽きることは無いだろうな』

『彼女によろしく言っといてくれ』

『ああ、また会おうぜ』

『その話だが、酒は断らせてもらう』

『なんでだ?』

『俺は下戸だ、酒の入ってる物は基本苦手だ』

 

ハングはキアラン城の石畳みを歩きながら思い出し笑いをした。

 

「何笑ってるの?」

「ちょっとな。それよか、俺はこの辺でな」

「あ・・・」

 

一瞬、リンの手がハングを呼び留めるかのように動いた。

だが、すんでのところでそれを思いとどまる。

 

「どうかしたか?」

「ううん・・・なんでもない」

「悪いな、まだ仕事が残っててな」

「うん、またね」

 

そして、ハングは西棟の方へリンは中庭の方へと向かっていった。

 

リンが向かった先、そこでは彼女の祖父であるハウゼンがニルス、ニニアンと談笑していた。

 

「ふっふっふっ、そんなことがあったのか」

「うん!僕はねやっぱりあの二人は怪しいと思ってるんだ」

 

三人は丸テーブルを囲み、お茶を楽しんでいた。その中でニルスとハウゼンが何やら楽しそうに笑っていた。

 

「あ、リンディス様」

 

ニルスが気づき、すぐにニニアンがリンに椅子を勧めた。

 

「ちょうど、リンディス様のこと話してたんだよ」

「私のこと?」

「うん、ハングさんにお説教をされてた時のこと」

 

リンの表情が曖昧に固まった。できればあまり思い出したく無い旅の思い出だ。

 

「ハングくんは怒るとそんなに恐いのかね?」

「はい、それはもう」

 

ニニアンが微笑みながらそう言った。

 

「恐いなんてもんじゃないよハウゼン様!僕は初めて聞いた時、本当に雷が落ちたかと思ったもん」

 

ニルスもそう言い、ハウゼンはより一層に笑みを深めた。

 

「リンディスが一番雷を受けていたと聞いたが本当かね?」

「はい・・・」

 

リンの渋い顔を見て、ハウゼンはますます顔の笑みを深めた。

 

「そうか、そうか・・・どれ、ニルスくん。もう一曲お願いしてもいいかね?」

「うん、任せてよ」

「ニニアンさんも歌を頼みます」

「はい、喜んで」

 

ニルスが唇に横笛をあて、ニニアンが優雅に喉を振るわせれば、キアラン城はたちまち劇場と化した。歌声は城壁に反響し、廊下に木霊し、城の中で根を詰める人々に潤いを届けていった。

 

その音楽が届く西棟の一画。

 

「ハング殿、イーグラー邸付近の村々から申請書が届いてます」

「ハング殿、城壁の修理の件でお話が・・・」

「これが昨年の予算の書類ですハング殿」

「ハング殿!」

 

右から左からと次々に飛び込んでくる書類と格闘しながらハングは必死に羽ペンを走らせていた。

 

「レーゼマンさんにこの書類を回してくれ。ああ、あとワレス様に城の警備隊の再編成を頼め」

「ワレス将軍は昨日消えました」

 

周りの文官達と共に文机に向かって書類を片付けていたハングはその言葉に顔をあげた。

 

「消えた?あの巨体がか?」

「なんでも、血が騒いだので戦いの勘を取り戻すために旅に出るとか・・・」

 

ハングはもう少しで頭を掻き毟りそうになった。

 

「あんの人は、今の状況わかってんのか!まぁ、いい。なら・・・ダントレン将軍に頼め!今は訓練所にいるはずだ」

「わかりました!」

「ハング殿、この訴訟について告訴が出ておりまして」

「あん?」

 

ハングはその羊皮紙に書かれた内容を一読し、噴煙をあげた。

 

「っざけんじゃねぇよ!なんだこの訴訟!ラングレンが下した裁判か!しかも、極刑だと・・・ラングレンの野郎!もっぺんぶっ殺してやろうか!!」

 

目の前の書類を引きちぎってやりたい衝動を抑え込み、ハングはため息を吐きだした。

 

「この保証、国庫から出すしかねぇよな・・・店一つ潰すとか何考えてんだよ・・・あぁ、なるほど資財没収してんのか」

 

ハングは新たな書類を作成しながら、周囲の人達に向かって的確に指示を出していく。

そして、荒々しい仕草で書き上げた羊皮紙を突き出した。それは契約書なので、もう少し丁寧に扱って欲しいのが周囲の人の本音なのだろうが、今はそんなことを言う余裕など誰にもなかった。それほどの殺人的な忙しさを乗り越えながらハングは新たな仕事をこなしていく。

 

彼等の耳にも中庭からの音楽は聞こえているのだが、残念ながらゆっくりお茶を飲む気分にはなれなかった。

 

「ハング殿!宝物庫から『力のしずく』が・・・」

「そいつはほっとけ!必要経費だ!!」

 

ハングは口の中だけで「マシューの野郎・・・」と呟いて羽ペンをまた動かしはじめた。

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