【完結】ファイアーエムブレム 烈火の剣~軍師と剣士~ 作:からんBit
リキアは大小様々な領地が色分けされた地図のように隙間なく土地を埋めている。
この世に誰の物でもない土地は存在せず、どの大地にも権利書による取り決めがなされている。その中には細長く伸びた領地や、飛び地になっている領土も存在する。
エリウッド達が通過しようとしてるのも、そんな領地片隅にある村だった。
そこはキアラン侯ハウゼンの治める土地である。
「暗くなっちまった」
舌打ちと共にそう吐き出したのはヘクトルだ。
サンタルスとラウスはさほどの距離があるわけでもない。
だが、一日足らずでたどり着くのは土台無理な相談だ。
それでも、一刻でも早くたどり着きたい身ではその距離さえも苛立ちに変わる。
「今夜はここに泊まるしかないな」
ハングの判断にエリウッドも同意する。
「マーカス、宿の手配を頼む」
エリウッドの指示には素直に返事するマーカスに苦笑して、ハングは視線を少し北の方に向けた。その先にはキアラン侯の居城があるはずだった。
「キアランを通過するわけだが、ハウゼンの爺さんには挨拶抜きでいいよな?」
ヘクトルがそう言い、ハングの中に思い出が蘇る。
あれから一年が経った。ハングはあれから一度もキアランを訪れることはしなかった。
あちこち飛び回るのに忙しかったのもあるし、また行き倒れたのかと皮肉を言われるのも嫌だったのだ。
「領地の端を通過するだけだ。問題ないだろう」
ヘクトルにエリウッドがそう答えていた。
「リンディスがどうしているかは少し気になるが」
「リンディス?」
ヘクトルには聞きなれない名前だったのだろう。
だが、ハングからすれば呼びなれない名前だ。
ハングにとっては彼女は今もサカの部族の一人『リン』だ。
「キアラン侯の孫娘だよ」
「ああ、あれか。一年前の相続争い。お前が俺の伝記に残るぐらいの大遅刻の原因の」
苦笑するエリウッド。
ハングは二人の声を聞きながら、リンもこういう貴族の一人なのだなぁ、とも思う。
「確か、お前も一役買ったんだろ?」
「ああ」
「で?その孫娘ってなぁ美人か?」
ハングはエリウッドとヘクトルの会話を聞き流しながら彼女のことに思いを馳せる。リンが貴族だからといっていつものサカの装束ではなく、綺麗に着飾ったドレスを身に纏ってる姿を想像しようとしたが、どうにも上手くイメージが出来ずに諦めた。
彼女にはどう頑張っても村娘の恰好がお似合いだった。
「美人・・・なんだが・・・なんというか・・・サカ人の血を引くせいかとても印象的な子だった」
エリウッドはハングの方を少し見やる。だが、彼はいまだ一つの方向を見つめているだけだ。エリウッドは彼の考えていることが手に取るようにわかり、肩をすくめた。
そんなエリウッドにヘクトルは逆に少し軽薄そうな笑みを浮かべた
「ふーん・・・残念だったな」
「なにが?」
ヘクトルは親友の肩を抱き、意味もなく耳打ちする。
「今は会いにいってる暇はないぞ、色男」
「なっ!」
エリウッドは顔を少し赤くする。だが、月と星の明かりだけでは周りには判断できないだろう。
「リンディスとはそんな仲じゃ・・・」
「照れんなって」
からかわれているのはエリウッドもわかっていた。
昔からこの手の話でやられたことは何度もある。そして、この話でヘクトルに口で勝てた試しがないのもわかっている。
だから、エリウッドは矛先を変えることにした。
「ハングがいるのに、僕とリンディスがそんな関係になる訳が無いだろ」
「なに?ハングと孫娘はそういう間柄なのか?」
「はぁ!?お、おい!エリウッド!!」
今までの会話を聞くともなしに聞く程度だったハングは話題をふられて急に現実に引き戻された。
「一年前もハングは一役どころか準主役を演じていたんだから」
「ほうほう、貴族の姫としがない旅人か。どこかで詩になりそうな二人だな」
「ち、ちげぇっての!別にリンとはそういう関係じゃねぇ!」
エリウッドとヘクトルはこんな夜闇の中でもわかるくらいに顔を真っ赤にしたハングに最初は少し驚いた。
普段から全く隙を見せずに『軍師』を保っていたハングの意外な一面。
その弱点を発見した二人は喜々としてそこを責め立てる。普段冷静すぎる奴ほど取り乱した時は案外隙だらけだ。
「ほう?ハングはその貴族の姫様を略称で呼ぶ許可をもらってるわけか?」
ヘクトルがニヤニヤと笑ってハングに詰め寄る。
「しかも、敬称も付けず」
エリウッドも悪乗りしながらハングの顔を覗き込んだ。
「だ、だから。それは・・・」
ハングはしどろもどろになりながらもなんとか言葉を探す。
だが、そうしている間にも二人の話はどんどん進んでいく。
「それで、ハングと孫娘はどれくらいの付き合いなんだ?」
「確か、彼女が自分の出自を知る前からの出会いだったはずだよ。彼女の旅を最初から最後まで明に暗に支えてきたんだ」
「エリウッドぉぉおぉ!」
ハングは我慢できずにエリウッドの胸倉につかみかかった。
「なるほどな、そりゃあ友情が愛情に変わるのはそんなに時間はかからん訳だ」
「彼女が運命の階段を登って行くのを、時に手を引いて、時に背中を押して、時にきつい一言を言いながら隣で奮闘していたんだ。本当に後世に伝わるような物語だ」
「馬鹿野郎!!そんなんが残るわけねぇだろ!」
胸倉を掴まれているエリウッドは涼しげだ。ヘクトルも笑いを堪えるのに必死。
慌てたハングはからかっていてとても楽しい。
「まぁ、旅の伴侶が生涯の伴侶になった話なんざいくらでもあるしな」
「愛で身分を乗り越えた話もね。そして、ハングはそれができるだけの能力もある」
「は、はぁ!?け、けけ結婚だと!!それこそ、あり得るか!!だいたい、あいつが俺を相手にするわけないだろ」
「相手にしてきたら?」
蛙が潰れたような声を最後にハングが黙り込んだ。
「お、確かにそうだな。向こうが求婚してきたらどうすんだ?ん?ん?」
言葉が返せないハングの後ろからヘクトルが覆いかぶさるようにじゃれつく。
「そ、そんときは・・・」
「その時は?」
「その時は?」
途端、ハングの目がゆっくりと細まる。
エリウッドはその瞬間に攻防が入れ替わったことに気がついた。
「そりゃあもうエリウッドがニニアンにしたみたいに両腕でしっかり抱き上げて応えてやることにするさ」
「ニニアン?誰だ?」
「ちょっ!ハング!!」
かつて、知略で国を五つ滅ぼした神策鬼謀の軍師は自らの葬式を用いて敵国を罠に嵌める策を遺したという。朽ちるなら一人でも多い道連れを。
ハングはエリウッドとニニアンの一件をさんざん誇張し、かつ嘘ではない範囲の内容をぶちまけた。
その後、騒ぎを聞きつけてきたセーラに連れられてマシューやドルカス、レベッカという者たちもやってきてハングとエリウッドはさんざんからかわれる羽目になった。
やっと解放されたのは、マーカスが宿の手配を終えて戻ってきた時だった。
「ふぅ~・・・」
「ため息つくなよ、色男」
ヘクトルはさっきからハングのことを『色男』と呼ぶ。
「お前も大丈夫か?優男」
ちなみにエリウッドは『優男』である。ハングとしてはエリウッドを完璧に巻き込めたので満足だった。
「だから、ニニアンとは話したことも・・・」
「やめとけ、エリウッド。またからかわれるだけだぞ」
ハングは少し労いの意味を兼ねてエリウッドの背中を叩いた。
そのせいで飛んでくるマーカスの鋭い視線も最近は慣れてきた。
そんなマーカスに対し、ロウエンは気さくに話しかけてくれる。
「でも、意外ですね。ハング殿が純情だなんて」
「俺が遊んでるようにでも見えてたか?」
「なるほど、そう言われれば納得かもしれません」
そんな時、ハングはふとロウエンの持ち物に気がついた。
「あれ?松明ってこんなにあったか?」
ロウエンは「あぁ・・・」と、呟いてから従騎士らしい顔つきになった。
「報告が遅れて申し訳ありません。ハング殿がこのところ忙しそうであったので、報告が後に回ってしまい・・・」
「前置きはいい。どうしたんだ?」
厳しい言葉だが、ハングの声は苦笑混じりだ。
こういう生真面目な性格なのが騎士のあるべき姿なのかとも思うし、やはり自分には向かないとも思う。
『休め!』と、言われた騎士のようにロウエンは姿勢を崩した。
「サンタルス領の北の村にて拾いました」
「拾った?」
「はい」
松明といっても、それが一本ずつ売られていることは稀である。
だいたいは五本から十本単位でまとめて売り買いされる。
そして、今回増えていた松明もそういった類の商品であることは一目見ればわかる。
そんな木の束が街に落ちてたというのは、ちょっと考えにくかった。
「なんで、落ちてたんだ?」
「わかりません」
ロウエンは前髪が長く、ハングはいまいち彼の表情が見ることができなかったが、彼も困惑している様が見て取れた。
「戦闘中であったので村の人々に尋ねる余裕もなく、エリウッド様が『何かの役にたつかもしれない』と・・・」
ハングはもっともな判断だと思う。
だが、エリウッドがそれを言っている姿を想像したら笑いがこみ上げて来た。
多分、ネコババすることに罪悪感を覚えながらも急がなくてはという焦りを浮かべつつそう言ったのだろう。
ハングは前をいくマントを身につけた背中を見た。
「ん?どうしたんだい?」
視線に気づいて振り返ったエリウッドにハングは笑ってひらひらと手を振った。
「なんでもねぇよ」
エリウッドは頭の上に疑問符を浮かべていた。だが、どうせまたさっきの話だろうかとあたりをつけたのかすぐに前を向いた。
そんな時だった。不意に風が変わった。
向きの話ではない。風の中の雰囲気が変わった。
今までの静かな夜の中に突如として、不穏な騒ぎが混じり出した。
ハングは頭の中を軍師としてのそれに切り替えた。
「ん?なんか、聞こえねぇか?」
先頭を歩いていたヘクトルが歩みを止める。
ヘクトルの視線の先には松明の明かりが複数見えていた。
そして、男の人の悲鳴も聞こえてくる。
ハングは眉を顰めた。
「二人とも、迂闊な行動をするんじゃ・・・」
「助けるか?」
「もちろん」
ハングが何事か言い終わる前に走り出した二人。
「全く、仕方ありませんな」
「相変わらずです」
慣れた様子のマーカスとオズイン。
だが・・・
「っ!」
「・・・!」
二人は突然、武器を手にして振り返る。
「あいつら・・・」
そこから聞こえてきたのは腹の底に響くような深いハングの声だった。
熱気というか殺気というか、簡単に言うと怒気に包まれたハングがいた。
普段は薄い茶色の瞳が今は爛々と輝いており、まるで暗闇の中で光る二つの火球である。
既にマシュー、セーラ、ドルカスといった以前の旅の仲間はどこかへと消え失せている。
取り残された者たちは突然に豹変したハングを前に動くことができない。
レベッカは涙目で、ギィは腰を抜かしかけ、バアトルはなぜか斧を振り上げたまま固まっていた。
さすがに騎士の名を持つ者たちは無様を晒すことはなかったが、皆自然と直立の姿勢になっていた。
「さて・・・」
そんなハングの口から聞こえた声は不気味な程に朗らかだ。
「あいつらに追いつくか」
ハングは笑顔だ。
「はっ!」
「了解です!」
ほぼ、反射的に答える騎士の面々。
「それで、お前らもいつまで固まってんだ?ん?」
やはり、ハングは笑顔だ。
「は、はひぃ!」
「わ、わかりましたあ!」
「う・・・うおおぉお!」
ハングは駆け足になる部隊の人達を見ながら笑みを深める。
それはまるで、仮面を無理やり曲げたような恐ろしい笑顔だった。
ハングが後方で静かに怒りをつのらせている間にもヘクトルとエリウッドは騒ぎの元へと向かっていた。
周囲は夜の闇に支配されていたが、剽軽な叫び声が聞こえているので方向を見失うことはなかった。
「ひぇーーーー!お、お、お、お助けーーー」
「ちっ、このオッサン!チョロチョロ逃げまわんじゃねぇ!!」
そこでは、ガラの悪い二人がちょび髭の中年のオッサンを追い回していた。
だが、逃走虚しく、オッサンは背負っている大きな荷物を奪われてしまった。
「わ、わしの大事な荷物になにするんじゃー!」
取り返そうと奮闘するも、容易に片手で突き飛ばされ尻もちをつく。
ゴロツキ共はそれを尻目に奪った荷物の中身を確かめていた。
「おい、これを見ろよ。このオッサン結構金持ちだぜ」
「へっへっへっ、ついてましたねぇ」
「返せ!返さんかーー!」
簡単にあしらわれながらも未だ荷物を取り返そうとするその姿勢。
彼は行商人のようだ。
「うっせぇなぁー!こいつ、もうやっちゃいましょうか?」
「そうだな、別に生かしとくこともねぇか」
ゴロツキ共は武器を持ち上げる。
それを見て、ちょび髭のオッサンは額に冷や汗を流した。
「ひっ!ひっ!!ひぇ~~~!」
そして、いよいよオッサンが捕まった時、ヘクトルがその騒ぎの中に躍り出た。
「おい!その手を放せ!」
いい鎧を着ているヘクトルだが、この夜闇ではよくわからない。
「なんだあ?」
「てめーらに用はねぇ。用があるのはそこのオッサンと、荷物だ。命が惜しけりゃ全部置いてさっさと消えろ!」
それを斧を構えて言うものだから、その姿はどこから見ても二人組の同業者である。
「な、なんだと!てめぇ、どこの組のもんだ!」
ヘクトルは一瞬だけ驚いたが、すぐに抗議の声をあげた。
「ばか野郎っ!俺のどこをどー見たら賊に見えんだよ!」
「多分、その姿と台詞じゃないかな?」
追いついてきたエリウッドは開口一番そう言った。
「くっそ!こいつら、仲間を連れてやがる!てめぇら、出て来い!縄張を荒らされて黙ってられるか!」
その声と共に二人組闇へと消えていく、そしてすぐに粘り気のある殺気が周囲に現れた。
おそらく囲まれているが、この暗がりでは敵の数は確認できない。
だが、エリウッドはそんな状況などまるで気にもとめずに腕を組んだ。
「しかし、僕も賊の仲間なのかな?」
「おまぇなぁ・・・そんな呑気なことを・・・」
本気で悩んでいるようなエリウッドにヘクトルは眉に皺を寄せた。
「呑気はどっちだい?」
不意に聞こえたのはとても柔らかな声だった。
なのに、エリウッドとヘクトルはほぼ同時に背中に氷塊を滑り落ちたような感覚が襲っていた。
「やぁ、二人とも」
夜闇の中から後ろに仲間を引き連れてやってきたハング。
彼の顔は笑っている。
笑っているはずなのに、エリウッドとヘクトルは無形の圧力を確かに感じた。
エリウッドとヘクトルはこの顔を拝むのは初めてのことだ。その意味は知らない。知らないはずなのに、それが危険だと本能が知らせていた。『逃げろ!』と、叫ぶ身体の骨肉達を叱りつけてエリウッドはハングに一歩歩み寄った。
「ハング・・・その・・・」
「ん?」
「・・・えと」
「ん?」
「・・・・」
「ん?」
ハングが声を出すたびに彼の体が膨れ上がったような気がした。
エリウッドとヘクトルは自分達の顔が引きつっていくのを自覚した。
今、目の前にしているのが、明らかに危険な存在であることを否が応でも思い知らされる。
「まぁ、今はこのくらいにしておいてやる。とにかく、今は賊を追い払おう。話は後だ」
ハングはそう言っていつもの表情に戻った。
動かない笑顔と刺すような雰囲気から解放され、一同は同時に息を吐き出した。
ハングは気を取り直し、さっきまで逃げ回っていたオッサンに声をかけた。
「さて、あんたは・・・戦える?」
「むむむ無理ですじゃ!このマリナスめはただの商人!ど、どうかお守りくだされぇ~~」
とりあえず、彼の名はマリナスという名らしい。
どこまでも、剽軽な人だ。
「さて、マシュー!」
「・・・なんすか?」
マシューがいつの間にか隣にいることにはハングはもう慣れていた。
「ここ一帯は川の中州みたいな場所だな?」
「えぇ、北に二箇所、南に一箇所橋がありますがそれ以外は川に囲まれています」
夜目の効くマシューに確認させてハングは戦術を組み立てる。
「さて、ギィ」
「へ、へい!」
未だハングの怒気にあてられて萎縮したままのギィ。
ハングはあえてギィと適度な距離を置いて話しかけた。
「マシューから聞いたけどギィはサカ一の剣士になりたいんだな?」
その話題が出た途端にギィの目に光が灯った。
「ああ、そうさ!今はとにかく手近な相手を打ち破って腕をより高めるのがその近道だと思ってる」
「楽な道じゃないぞ、手当たり次第に戦いを挑むのは」
その道は下手をすれば今はまだ届かない相手とも戦うことになる。時を重ねれば確実に勝てる相手だとしてもだ。目の前にいる敵に必ず戦うという覚悟は生半可なものではない。
「わかってる!だが、俺は・・・強くなりたいんだ」
いつものハングならその台詞に思うところもあっただろうが、生憎と今はそれどころではない。
抑えているだけで、彼は怒り心頭であった。
ハングは務めて冷静な振りをしてギィと会話する。
「なるほど、その為ならどんな苦労を辞さないと」
「そうだ!」
「戦えるならどんな状況にも飛び込むと」
「そうだ!」
「仲間の助けなんかいらない。一人で全てをなぎ払うと」
「そうだ!」
「守る者がいると余計燃えるよな?」
「そうだ!」
売り言葉と買い言葉。
だが、言ってしまってからギィは今言われた内容を思い返した。
「・・・え?あの・・・ハング?今のって・・・」
「さぁて、みんな!ギィがこの中州でマリナスさんを守りながら迫る敵を全てなぎ払ってくれるらしいから。残りの連中は遊撃部隊とする。近くの村々に片っ端から声をかけていけ。戦える者を叩き起こしてここら一帯から賊を叩き出す!」
ハングの声が中州に響き渡る。
「松明は全てここに置いておけ!ここに奴らをおびき寄せる!オズイン!マシューとバアトルを連れて南に向かえ!ロウエン、お前はレベッカとドルカスと共に北を任す!マーカスはセーラを連れて走り回り援護にあたれ。エリウッドとヘクトルは俺と来い!」
「あ、あの・・・ハング・・・」
有無を言わせぬハングの指示に皆は既に動き出していた。
「よし、ギィ!死にそうになるまでは耐えろよ。なるべく長く時間を稼げ!じゃあな」
駆け出して行く仲間達。
中州に残された大量の松明は火を付けたまま放置されている。
「あそこだぁ!あそこに奴らはいるぞ!」
「ぶっ殺せぇ!」
「ひぇ~~~!どうしましょう!どうしましょう!」
ギィは何がいけなかったのかを考える余裕すらなく、とにかく目の前に迫ってくる手斧を必死に躱すしか無かった。
「うひぁぁぁあぁあ~~」
マリナスの叫びは戦乱の中へと消えて行く。
「ちくしょーーーー!やってやらぁぁああああ!!」
ギィは剣を抜き放ち、必死の思いで敵に突撃していった。