Fallout4 Gunslinger of the Commonwealth 作:Ciels
急な事だった。
コンコードへ着いた途端、自由博物館の方から銃声が響いてきた。
それも一つじゃない。少なくとも10程度の銃声が、ひっきりなしに空を舞っていた。
銃声というのは思っている以上に響くもので、障害物が無ければ数キロは軽く届く。
おそらく銃撃が始まったのはついさっき、コンコードへ到着してからなのだろう。
音からして、多分小口径の拳銃弾。
それに加え、時折エナジーウェポンの音が混ざっている。
Pip-boyを見てみても、複数の生命体がいる事は間違いなかった。
「離れるな」
完全にスイッチが入った俺は、姿勢をなるべく低くして先頭を歩く。
下手にアルマを待機させているよりは連れていた方が守りやすい。まぁ、彼女もそんなヤワじゃないんだが。
犬はまるで人語を理解しているように、俺のそばで黙っていた。
道路の端を進み、メインストリートが見えてくる。
すると、人影も確認できた。
近くに破棄されていた車の陰に身を潜め、双眼鏡で確認する。
およそ100メートル先のT字路にいるその人間は男で、何やら粗悪な銃を手にして自由博物館方面に発砲している。
「なんだあいつは……」
思わず声を漏らす。
身なりは汚い。髪や髭は伸びっぱなし、服はボロボロでアーマーのようなものは廃材か何かから寄せ集めた物だろう。
品性のかけらもないし、友好的にも見えなかった。
一先ず双眼鏡をしまい、ライフルの
銃は撃てる状態にはある。あるのだが、どう考えても相手の方が数は多いし、やり合う必要性は無かった。
危ないやつらが居るってわかっただけでも良しとしよう。一度サンクチュアリ・ヒルズに戻って、対応を考えるのも悪く無い。
だが、
「ハーディ
すぐ後ろで後方を警戒していたアルマが何かを見つけたと知らせてくる。
振り向き、後方の、俺たちが来た道とは違うアスファルト上を眺める。
はっきりと確認するために双眼鏡を使うと、いた。
およそ二個分隊規模の人影が、400メートル後方を、かなり遅いスピードでこちらに向けて進軍していた。
発見されるのを恐れ、2人と1匹ですぐ傍の小道へと入る。
「クソ、退路が断たれたな」
完璧に誤算だった。
まさかそっちからやって来るとは思ってもみなかった。
見たのは一瞬だけで遠目だったが、武装していたのは分かった。
早くても10分はかかりそうだが、このままではいずれ接触はするだろう。
「あいつら友好的には見えなかったね」
俺よりも優れた視力のアルマが言う。
もしかしたら、最初に見つけた奴の増援か何かかもしれない。
どうするか、やり過ごすか?いや、あの規模の武装した集団だ、もしサンクチュアリに来られたら困る。排除してしまいたい。だが俺一人ならともかくアルマがいるし……
待てよ。
そもそも、奴らは一体何に向けて銃を撃っていたんだろうか。
的当てにしてはヤル気満々だったし、銃撃戦にしては隠れなさすぎだった。
一番最初に見つけた奴もそうだ。
なにかを一方的に銃撃していた。
「……」
もしかしたら、まだコンコードには普通の人間もいるんじゃないか?
さっきのやつらは略奪者で、今まさに略奪して市民を殺そうとしているのではないだろうか?
だとすれば。
アメリカはどうなったかは分からないが、俺は今でも軍人のつもりだ。
軍人の使命は、善良な国民の安全を守る事。
まだそうと決まったわけではないが、可能性は十分にあった。
もしかしたらあの品のない奴らこそ守るべき対象なのかもしれない。
ならその時はその時で、話してみるのも手だろう。
何にせよ、接触する必要性が出て来てしまった。
「……アルマ」
「大丈夫。一応予備役だから。あんた、考えてる事だだ分かりだよ」
呆れるように笑うアルマ。
やはりこの奥様は頼りになる。
俺は決心したように頷く。
「これより正体不明の集団と接触する。俺が先頭、アルマと犬は物陰から援護しろ」
端的に指示を出すと、アルマは親指を立てて了解した。
建物の陰から通りを覗く。
先ほどの連中は、自由博物館にかなり近いところまで来ていた。
全員が博物館に銃を向けている。
俺が思い描いていた善良な市民なんてどこにも見当たらない。
そっと、物陰から通りへ出て向かいに放置されている車の後ろに隠れた。
興奮状態の中でいきなり接触するのはまずいかもしれない。少し様子を見たかったのだ。
「おい、扉を破れ!」
「クソ、見てないで手伝え!」
数人が自由博物館の扉をこじ開けようとしていた。
どうやら何かがあそこにいるらしい。
と、ようやく扉が開いたのか、奴らが数人入っていく。
同時に、博物館の玄関真上、最上階にあるバルコニーのドアが開いた。
黒人の男が下の様子を伺っていた。
「いたぞ!殺せ!」
誰かが叫んだ瞬間に、外にいた人間たちが一斉にバルコニーめがけて発砲する。
黒人の男はすぐに扉を閉め、消えてしまった。
よく見れば、博物館近くの建物にスナイパーもいる……かなり組織化されてはいるが、やってることはかなり幼稚だった。
「クソ、あいつらを皆殺しにしろ!ババアだけは生け捕りで、後は好きにしていい!」
一人が叫ぶ。
どうやら中にはお婆さんがいるらしい。
しかし、それ以上に奴らの言葉に引っかかる。
やっぱり奴ら、
しかしこちらとしても、先手必勝が如く撃ち込むことは躊躇われる。
喧嘩を先に仕掛けてしまっては、後でどういった問題が起こるか分からないからだ。
口実が欲しい。その時。
「おい!後ろになんかいるぞ!」
奴らの一人がこちらに気がついた。
しまったと思った。しかし同時に、なぜ見つかったのかと。
「くぅ〜ん」
「……」
なぜかすぐ横に犬がいる。
おかしいぞ、アルマと一緒にいたはずなのに。
アルマの方を見てみると、犬に向かって必死に戻れとジェスチャーしていた。
こんの犬っころめ。
「あの犬ミニットメンと一緒にいたやつだ!殺せ!」
誰かが叫んだのを発端に、銃口がこちらへ集まる。
俺はバレた様子はないが、こうなったらバレるのは時間の問題だった。
「おい、こっちへこい!」
犬を引っ張って車の陰へ隠れさせる。
「おい手だ!車の後ろに誰かいる!」
「殺せ!」
刹那、発砲音と共に銃弾が車に突き刺さった。
犬を抱え、すぐに車から離れ、なぜか積まれている土嚢に隠れる。
車の装甲は薄っぺらい。
拳銃弾程度でも貫通できるほどだ。
「クソ!アルマ!」
撃たれないように横になり、耳栓をはめて妻の名を呼ぶ。
するとアルマは半身だけ物陰から出て、
乾いた.45口径の、連続した発砲音。
それに驚いたのか、奴らの銃撃の手が一瞬止まる。
ここぞと言わんばかりに俺は上半身を起こし、
引き金を二回引く。
今度は耳は痛くならない。
胸と、その直後に頭に5.56mm弾を受けた男は地面に崩れ落ちる。
すぐにまた土嚢に隠れるように寝そべると、うつ伏せになって頭を博物館の方へ向けた。
匍匐して対面している状態だった。
「なんだあいつら!?」
「知るもんか!殺せ!」
奴らの間で怒号が飛び交い、土嚢に弾丸がめり込む。
いつまでもここに居たくないので、俺はミノムシのように横へ転がって場所を変えることにした。
上手いこと土嚢に隠れつつ、建物の陰に隠れる。
犬もその身の低さを利用してこっちにやって来た。
立ち上がり、
そして未だに土嚢に向けて銃を撃っている男を狙うと、引き金を二回引いた。
パンパン、と甲高い音が響き、男が地面に沈む。ヒットした部位は先程と同じ。
200年経ってもやる事は変わらない。
「いつのまに!」
慌ててこちらを狙って来る奴らだが、今度はアルマがそれを妨害した。
二方向からの射撃は、彼らを混乱させるのには十分だった。
「
「
俺の掛け声にアルマが応え、彼女の射撃がより激しくなる。
こちらへの射撃が弱くなると、俺は一気に建物の陰から飛び出し、前進した。
アルマが奴らを抑えていてくれているおかげで(何人かアルマに殺されているのもある)、かなり近くまで前進できた。
また土嚢があるので、そこへ身を隠す。
今度は俺の番だった。
隠れた位置より半歩横へ移動し、頭と
頭を出すときに射撃するときには色々とコツがある。
近距離ならば、普通に構えるよりもこうして銃を水平に倒して構えた方が、前方投影面積が減る。つまり、撃たれづらくなるのだ。一般的にSBUプローンとかとも言う。
一気に撃ちまくるのではなく、指切りで3発程度に抑えながら奴らを牽制、あるいは射殺した。
「
「
アルマが全力ダッシュで前進する。
彼女は持ち前の足の速さで、俺の近くの大きなゴミ箱へとたどり着いた。
鉄製のゴミ箱ならば、多少の弾丸は止めてくれる。道のど真ん中にあるという事は、バリケードとして使われていたんだろう。
「
「
アルマの弾倉交換を援護する。
すると、バルコニーのドアが開いて、さっきの黒人が奴らに銃を向けた。
エナジーウェポン特有の音が響き、建物の屋上にいたスナイパーの背中をレーザーが貫く。
さらには地上の敵も一人討ち取っていた。
どうやら援護してくれているようだった。
「ワンワンッ!」
同じくして、銃撃がほとんど止んだ頃に犬が後ろから突撃して来る。
あまりにも素早いその動きは、
犬は飛びかかって押し倒すと、真っ先に男の首へと噛みつき、食いちぎる。
「この犬!」
最後に残った
だが、俺がいることを忘れている。
親指で単発に切り替え、男の上半身を狙わずに射抜く。
1発目は胸、2発目は口。
2発目は、口を通って脳幹を破壊したようだった。
力を失った身体は、地面へと吸い込まれるようにして倒れた。
「アルマ、
弾倉交換を終えたアルマに指示を出すと、土嚢から飛び出て自由博物館の真ん前まで行く。
その間も、
敵か味方か分からない以上、すぐに対応できなければならない。
「待て!撃つな!」
そんな俺に、黒人は叫んだ。
エナジーウェポンを上に向け、敵意が無いことを示していた。
丁度いい、ここで正体を確かめさせてもらおう。
「アメリカ海軍のカハラ大尉だ!そちらの所属を言え!」
はっきりと聞こえるように声を上げ、男に尋ねる。
「コモンウェルス・ミニットメンのプレストン・ガービーだ!」
やばいぞ、歴史でしか知らない組織が出てきた。
だが、それよりも男の名前がよく聞き取れなかった。
「ファービー!?」
「ガービーだッ!!!!!!おい、あんたの腕を見込んで手を借りたい!レイダー達が押し寄せてきてる!中へ入って掃討してくれ!」
名前を間違われて若干キレ気味の男は、初対面の俺にそう頼んで来る。
服装や話し方だけでも、この男は奴らとは違ったものがあった。
「ハーディ、
後ろに回ってきたアルマが耳打ちする。
同時に銃を下げ、彼女と目を合わせた。
どうやら、彼女は乗り気らしい。俺もだが。
「良いだろう!ちょっと待ってろ!」
男に言い放つ。
何にせよ、情報が欲しい。
彼らが何者であるにせよ、助けて損は無いだろう。
俺は弾倉を交換して扉の横へと張り付く。
「絶対に離れるな。
「了解」
アルマの準備が整うと、俺は扉をゆっくりと開けて中の様子を伺う。
少なくとも玄関ホールには誰もいない。
俺が先頭で中へと入る。
続いてアルマ、犬が侵入した。