Fallout4 Gunslinger of the Commonwealth   作:Ciels

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第十話 コンコードから、ママ・マーフィ

 

 

 

部屋の中に入ると、プレストンが疲れた笑顔で出迎えてくれた。

周りを見渡すと、彼の仲間だと思わしき人達が、それぞれの事をやっている。ターミナルをいじるメカニック風の男、何やら座り込んでこの世の終わりといった表情を浮かべる男、その男に付き添う妻らしき女。極めつけは、こんな状況にあってもまるで何事もないような老婆だった。

なるほど、プレストンが疲れるのも理解できる。誰一人として戦闘には向いていなさそうだ。

 

「完璧なタイミングだったよ。支援に感謝する」

 

プレストンからの感謝を受け取ると、俺は質問に出る。

 

「それで、あんたらは一体何なんだ?」

 

コモンウェルス・ミニットメン。

独立戦争時代の民兵集団を自称するプレストンは答える。

 

「さっきも言った通り、ミニットメンのプレストン・ガービーだ。その様子じゃ、ここいらの人間じゃないらしいな」

 

何も事情を知らない俺に、彼は余所者という感情を抱いたらしい。信用できるか分からないし、下手なことは言えないので、とりあえずは頷いて肯定してみせた。

 

「居住地の住民から要請があれば駆けつけ、問題を解決する。まぁ、ざっくり言えば平和の使者さ。……もうバラバラになってしまったが」

 

やや自嘲気味にプレストンは笑った。

その笑みと目が、どうにも俺の経験と重なる。この目は追い詰められすぎて死にたいと思っている奴の目だ。

質問を変える。彼らが自称民衆のための軍事組織であることは何となく分かったから、今現在の目的が聞きたかった。

 

「それで、あんたらはなんでここに?」

 

「あぁ、少し前にクインシーで虐殺があってな。それから逃れて来た。一ヶ月前は20人いて、昨日は8人。今じゃ5人だけ。俺、そっちのスタージェス、ロング夫妻と老人のママ・マーフィだけだ」

 

「じゃあ、ここにはたまたま流れ着いて来たの?」

 

今度はアルマが尋ねる。

 

「ああ。少し前まではレキシントンにいたんだが……グールの連中に追い出されてしまってな。その際にレイダーに見つかって、この有様だ」

 

「グール?」

 

また聞きなれない単語が出て来た。

 

「あぁ。あんたらの所にもいなかったか?放射能で汚染され、見た目が酷くなった人間だ。見た目だけだから基本は人間と変わらない。長生きな点を除けばな。だが、俺たちを襲ったのは違う。放射能で脳みそをやられて獣と化してしまっている。生きてる人間を見つけた途端に襲ってきて、バラバラにされるぞ」

 

つまりゾンビか。

確かに放射線には様々な副作用や後遺症がある。中東でも、ヌカランチャーの使用によって被爆した隊員がその後のケアを怠って重度の放射線被害に遭っていたはずだ。

 

「だいたいの状況は分かった、プレストン。だが奴らの増援がもうこの街に入ってきているぞ。どうするつもりだ?」

 

状況は理解できたので、新たに質問する。もう先程発見したレイダー達は町の入り口か、もしかすると死体を確認できる位置まで来ているかもしれない。するとプレストンは力強く頷いて答えた。

 

「あぁ、考えはある。スタージェス、説明してくれ」

 

プレストンは話題をメカニック風の男に振る。スタージェスと呼ばれた男はターミナルから離れると、机に腰掛けて得意げに口を開く。

 

「どうもお二人さん。じゃあさっそく説明させてもらうよ」

 

なんだなんだ、オタクっぽい感じがする。

 

「屋上にベルチバードが泊まってる。昔ながらの奴さ、見たことはあるだろう?」

 

「ああ、何度も乗ってる」

 

「そりゃ珍しい。なら話は早いな。ベルチバードは戦前の輸送任務だか何かで、パワーアーマーを運んでいたのさ」

 

パワーアーマー。俺も使用したことがあるアメリカ製のパワードスーツで、よほどの事がない限り負けはしない。

なるほど、彼らの考えが読めて来たぞ。

 

「タイプは?T-60か?」

 

この辺りには工場やミサイルサイトがやたらあるせいか、最新型のT-60が多く納入されていた。

 

「残念、T-45の方だ。だが45でもレイダー相手なら問題はない。奴らには個人携行型のロケットなんてものは無いからな」

 

確かに、小銃で武装した歩兵程度ならたわいもないだろう。パワーアーマーはその強さから歩く戦車と呼ばれ、一機あれば街を制圧できるとさえ言われた。

問題は200年経った今でも稼働するか。

 

「動きそうか?」

 

「テストはしてある。多少錆びてはいるが、機能テストは問題なし。ただ、その、燃料がないんだ」

 

「おいおい、一番大切じゃないか」

 

まさかの問題を前にしてケチをつける。

メインの動力源が無ければパワーアーマーは棺桶と一緒だ。売りのパワーアシストが働かないと言う事は、あの鉄の塊を自分の力だけで動かすに等しい。

それなら普通に撃ち合っていたほうがマシ。

 

「フュージョン・コアの場所は分かってる。この建物の地下一階だ」

 

「それでも取り行かないってことは、あれでしょ?またなんかあるんでしょ?」

 

ジト目でアルマが言う。

あぁその目良いね、なんて思うが口にはしない。

 

「その通り。フュージョン・コアがある部屋は錠がかけられている。それもターミナル制御の、だ」

 

なるほど、それなら彼らがつまずくのも仕方ないだろう。ターミナルは勉強していないとあんなのハッキングしようがないし、鍵に関しては当てずっぽうにやって開くものでは無い。

 

「あら、じゃあ私がやるわ」

 

と、ここでイタズラとターミナルが好きなアルマが名乗り出た。確かにこの手の作業で彼女の右に出るものはいない。

勝手にターミナルを盗み見たり、鍵付きロッカーの中に虫のおもちゃを仕込んだりするくらいだから余裕だろう。

 

「お願いできるか?」

 

「ええ。じゃあ、ちょっと待っててね。それまで働き過ぎの旦那様は休憩」

 

あくまでマイペースを崩さない彼女は、いつものように飄々としながら元来た道へ向かう。

 

「あんたの奥さんか?随分とタフだな」

 

「まぁな。……さて、俺はパワーアーマーを確認させてもらうか」

 

アルマの配慮に甘えていられない。

そういえば、犬がさっきから大人しい。どうしたのだろうか。

俺は犬を呼ぼうとして、老婆の前でリラックスする彼を見つけた。

 

「なんだ、もう懐いたのか」

 

呆れたように言う。この犬、俺とアルマにも初対面であれだけ懐いていたからなぁ。

 

「それは違うわ坊や。ドッグミートは元々私たちと一緒にいた犬なのよ」

 

唐突に、まるで心を読んでいるかのような発言をする老婆、ママ・マーフィ。

 

「そうなんですか?」

 

「えぇ。飼い主は死んでしまったけどね。どうやらドッグミートは新しい飼い主を見つけたようね」

 

犬を撫でる老婆。ていうかドッグミートって……すげぇ名前だな。

 

「随分個性的な名前なんですね」

 

そう言うと、ママ・マーフィはその発言がおかしいといったように笑った。

 

「確かにね、坊や。でも、あなたには言われたく無いかもねぇ、ふふふ」

 

「どう言う意味です?」

 

なにか意味深なその言葉を、どうしても聞き流せない。

 

「だって、これで4回目よ」

 

「え?」

 

俺は固まる。記憶の何かに触れられたように。

 

「いいえ坊や、分からないなら良いわ、今はね。それに、やらなきゃいけない事もあるでしょう?」

 

一体何を言っているのか分からなかった。でも頭のおかしな老婆の狂言で片付けてしまう事は、何故だかできない。

何かを忘れているような気がしてならないのだ。俺自身の、古い古い、奥底にある何かを……

 

そういえば、レイダー達老婆を狙っているとか言っていた。きっと、ママ・マーフィのことに違いない。

 

「坊や、そんな顔しちゃダメよ。とにかく今は……そうね、ジェットをくれないかしら」

 

「ジェット?飛行機か?」

 

「ああ違うわ、ジェットは、あれよ。使うとハイになって、スッキリして……薬よ薬」

 

「えぇ……」

 

ドン引きする。

散々神秘的な何かを醸し出していたのに、発言からして彼女はヤク中だ。

となると、今までの発言も薬によって見た幻覚なのだろうか?

 

「お願い坊や。サイトを使うにはジェットが必要なの」

 

「なぁおばあちゃん、薬は体に悪いよ」

 

ヨボヨボのおばあちゃんが薬漬けになっているという事に、俺は良心が痛んだ。

だが、彼女は首を横に振る。

 

「サイトは単なる幻覚じゃ無いわ。未来や過去を見通せるの」

 

「ばあちゃん、病院あるかわからないけど、行った方がいいぜ」

 

「信じて無いねぇ。じゃあ、あなたの赤ん坊の事とかはどうかしら?」

 

俺は一歩下がった。ショーンの事は話していない。なのに、彼女にはショーンの件が分かっているようだった。

 

「なんでそれを」

 

「だから、サイトよ。他にも分かるわよ。あなた達2人が、長い間氷の機械に閉じ込められていた事もね」

 

言葉を失った。アラスカのシャーマン(預言者)とか、超能力者の話はよくテレビで見ていた。だがあれは、単なるオカルト話で現実では無い。

だが、目の前にいる老婆は、少なくとも本物だった。

 

「息子がどこにいるのか分かるのか?なぁママ・マーフィ、頼む教えてくれ!」

 

思わぬ手掛かりに俺は彼女に迫った。

 

「あの坊や、悪いけど、サイトを使うと疲れるの。それに、これ以上はジェットが無いとできないのよ。課金システムなの」

 

「え、なにそれは」

 

唐突なワードにまたもや困惑する。

そして、突然俺の肩にかけられた手にも驚いた。

振り向いてみれば、心底見下したジト目でこちらを睨むアルマが。

 

「なに?人が探し物してる最中に浮気?しかも相手はおばあさん?」

 

「馬鹿な事言うんじゃ無いよ!ちょっと世間話だよ……」

 

頭がこんがらがる。何が起きているんだろう。ショーンの事も、俺自身の事も……一体、俺は何を忘れている?

 

 

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