Fallout4 Gunslinger of the Commonwealth   作:Ciels

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第十一話 コンコード、デスクロー

 

 

忘れているものがなんであるにせよ、パワーアーマーを動かすのに必要な物は揃った。老婆に懐いている犬を残し、俺とアルマは屋上へ向かい、おもちゃの具合を確かめに行く。

 

「状態も確認しないでお婆さんと話し込んでたわけ?」

 

アルマは相変わらず先ほどの事で機嫌を損ねていた。悪かったよ、と始めながら、

 

「でも休んでていいって言ったろ?」

 

「あら、SEALsでは休めって言われたらその言葉通り休んじゃうの?」

 

「勘弁してくれよ……」

 

ああ言えばこう言う、とはまさにこの事だろう。一家の主人はすっかり彼女のペースに乗せられていた。しかし、あまりの俺のたじろぎ具合に少し心配したのか、彼女は困ったように笑う。

 

「ちょっとちょっと、冗談だからね?もう、すぐ本気にしちゃうんだから」

 

「あぁ、うん」

 

昔から冗談が通じないとは言われてた。

そのせいでよくからかわれていたのはいい思い出だ。……いや、あんまり良くないのも混ざってるな。憲兵沙汰になりそうだったりしたし。

と、そんな俺を見て流石に不憫に思ったのか、アルマは少し申し訳なさそうな顔をして言った。

 

「……ごめんね。なんかちょっと思い詰めてたみたいだから」

 

あぁ、やっぱりこの子は天使だ。

さっきのママ・マーフィとの会話のせいでどうにも考え込んでしまっていた。彼女はそんな俺を励まそうとしたのだろう。

グローブを外して彼女の頭を撫でる。サラサラとした、艶のある質感が手に伝わった。

 

「ありがと」

 

それだけ言って、俺は扉を開けた。

 

 

 

 

屋上に着くと、目的のものはあった。

錆だらけのパワーアーマーと、同じく朽ち果てたベルチバードだ。きっともうベルチバードは回収しても使えないだろう。これは整備に苦労していたらしいし、このモデルは内陸の輸送用でEMP(電磁パルス)対策が不十分だと聞いた事がある。核爆発の副次効果であるEMP(電磁パルス)にやられている事は想像に難くない。

だが、パワーアーマーは違う。骨格兼マッスルスーツとなっている、いわば核であるフレームは相当にタフで、壊れている所をあまり見たことがない。装甲は錆びてはいるものの、目立った傷は無いから問題なさそうだった。

 

「アルマ、フュージョン・コアを」

 

アルマから燃料であるフュージョン・コアを受け取ると、それをパワーアーマーの背中にあるリアクターに差し込み、捻って固定する。すると、すぐさまリアクターの起動音が鳴る。

 

「エネルギーは問題ないみたいだな」

 

「みたいだね。それで、どうする?ハーディが乗るんでしょ?」

 

「ああ。機甲部隊じゃなかったが、扱った経験はある。アルマは屋上から狙撃で援護してくれ」

 

了解、と答えるアルマ。サブマシンガン(UMP.45)で狙撃は中々難しいかもしれないが、彼女なら問題ないだろう。

俺は邪魔な物をPip-boyに格納し、リアクター兼ハッチハンドルに手を触れる。ええと確か……これも捻るんだよな。

ぐいっとハンドルを捻ると、ゆっくりとパワーアーマーの後部全体が開く。ここから搭乗するのだ。

 

「アーマーあるとキツイな……」

 

プレートキャリアがフレームに干渉するが、大柄の人間でも着られるフレームだ。比較的小柄な俺ならプレートキャリア有りでもなんとかなる。クッソ狭いけど。

搭乗すると、自動で背中のハッチが閉まる。どうやらPip-boyと連動しているようで、ヘッドアップディスプレイにその事が表示され、Vault boyがテクテク歩いていた。

接続が完了し、燃料計や各部パーツの状態が表示された。どうやら問題無いらしい。

 

「これより行動に移る」

 

アルマにそう言い伝え、足を動かす。

何やら錆びていて動きが遅いが、それも最初だけだった。ドシン、ドシンと力強くて鈍い足音がコンクリートの足場に響く。

 

「わぁ、やっぱり凄いね。ロボットみたいだよ」

 

「強ち間違っちゃいないよ。さて」

 

ベルチバードに向かう。具体的には、それに備え付けられているミニガンに。

俺は吹き抜けになったハッチからベルチバードに乗り込み、反対側にあるミニガンを掴む。実際には直接掴んでいるわけではない。パワーアーマーの腕部分内部において、手を動かすと、その動きをフレームが模倣するのだ。

ミニガンは固定されていたが、マウントがボロくなっていた事もありすぐに取り外せた。もちろん、強引に。

 

「状態は悪くないな」

 

言葉の通り、意外にもミニガンはまだ稼働できるようだった。200年経っても動くとは恐れ入る。専用の5mm弾もフルで装填されている。これならレイダーの一個分隊くらい一瞬で片付けられる。

このミニガンは元々パワーアーマー用に開発されたものではない。ヘリのガンナー用に開発されたものだ。しかしながら、パワーアーマーが開発された後は、単体での運用も視野に入れ、持ち運び用の取っ手とグリップ兼射撃スイッチが備え付けられたのだ。

 

「回転正常」

 

ミニガンの砲身を回転させる。

ウィーン、という小気味良い音がパワーアーマー越しに伝わる。準備は良し。これで奴らを狩れる。

俺はとうとうベルチバードから飛び降りようとする。パワーアーマーには非常に優秀な衝撃吸収装置があり、低高度からのヘリボーンなら余裕でこなせる。

 

「おいボス!屋上に誰かいる!」

 

ふと、向かいの建物の屋上にレイダーが見えた。彼もこちらを視認して、ボスと名乗る誰かに存在を知らせている。

手始めに、奴から排除する。

ミニガンの砲身を回転させ、奴に向ける。

 

「死ね!この野郎!」

 

罵声を吐いてこちらに銃弾を浴びせるレイダー。しかしパワーアーマーの装甲はたかが銃弾ごときならば容易に弾いてみせた。弾いた音が耳に響くのを除けば、とんでもなく優秀なパワーアーマー。それが手にしたミニガンから、銃弾が放たれる。

 

「うわ」

 

それがレイダーの最後の言葉になった。

絶え間なく放たれる銃弾は、まるでレーザービームが如く。1秒にも満たない射撃で、レイダーの身体は四散した。

 

「パ、パワーアーマーだ!」

 

路上にいたレイダーがこちらを見上げる。同時に俺はベルチバードから飛び降り、道路へと着地した。問題ない、さすがアメリカ製。

上を見上げると、プレストンがあの部屋から援護してくれていた。ただ、彼が持つエナジーウェポンはあまり精度が良くないらしく、ことごとく外している。

 

「クソ!撃ちまくれ!火炎瓶も投げろ!」

 

ボス格らしいレイダーが指示を飛ばしている。ターゲティングHUDを使用し、そのレイダーをロックした。これなら逃げてもバイタルを追跡できる。

 

「投げるぞ!」

 

レイダーが火炎瓶を投げようと火をつける。しかしその行動はアルマの狙撃によって阻まれた。腕を撃たれたレイダーは火炎瓶を足元に落とし、自分を燃やす。悲痛な叫び声が響くが、この場にいる全員がそれどころではなかった。

 

Beautiful(美しい)

 

狙撃を称賛しつつ、レイダー達を狙う。

だが、さすがにやられてばかりではいられなかったのか、土嚢の後ろや建物の中へと隠れてしまう。

だが、秒間3000発を撃ち出すミニガンの前では無意味だった。

再びミニガンが火を噴く。威力に関しては5.56mm弾に劣る5mm弾ではあるものの、それが絶え間なく続けば話は変わる。

土嚢を破り、それでも叩き込まれる弾丸はとうとう裏にいたレイダーをミンチにした。

 

「クソ!化け物か!」

 

建物に隠れているレイダーが悪態を吐く。銃声でかき消されそうな声も、パワーアーマーの集音能力ならば聞き取れる事ができた。銃声はしっかりとフィルターで消えている。

今度は建物にミニガンを向ける。建物は木造で、貫通させるのは容易だ。

 

「やばい、逃げ」

 

レイダーの声がミニガンの銃声にかき消される。5秒ほどミニガンの銃声が響いたのち、沈黙が訪れた。奴らがどうなったかは……言わずもがな。これで残りのレイダーはボス格の1人のみ。

 

 

 

 

 

騒がしかった。

騒がしいのは今に始まったことではないのだが、それにしても今、地上はとてつもなくうるさい。ひっきりなしに銃声が聞こえ、ただでさえ能力の高い耳に響く。

今の感情を表すならば、怒りだろう。

彼は人間ではないからそれを言葉にすることはできない。しかし、別の表現ならば怒りをとても明確に表すことができた。

たとえば、こっちへ向かってくる甲殻類のバカ。この下水道の主人が誰とも知らずに、まるで自分が強いと思い込んで挑んでくる。

 

「キシャー!」

 

甲高い唸り声をあげて手のハサミを振るってくるが、彼はそれごと、自慢の爪で甲殻類の化け物を切り裂く。

 

「……」

 

彼は無言で、一瞬にして死体と化した甲殻類のバカを殺してしまった。

しかし、それでも怒りは収まらない。ならばこの溜まった鬱憤はどうしてくれようか。彼は考え、決める。

 

地上にいるうるさい奴らを殺して鎮めよう。単純明快な結論だった。

 

 

 

 

 

 

「ああちくしょう!こっちに来るな!」

 

レイダーのボス格が、逃げながらこちらに発砲する。

 

「止まれコラ!ぶっ殺すぞ!」

 

口調を荒げ、レイダーを追う。

どっちがレイダーか分からないが、少なくとも俺は正義だ。

意外にレイダーの足は早く、鈍足なT-45では追いつけない。あのレイダーからは情報を聞き出したいので、できれば捕まえたい。

 

レイダーがT字路に差し掛かった時だった。突然、レイダーの目の前の道路……正確には下水道工事のために被せられていた鉄板が、下から突き上げられて吹っ飛んだ。

 

「な、なんだ!?」

 

驚いたのはレイダーだけではなく俺もだった。突然起こった事態に緊張が走る。水道管の破裂ならば、水が吹き出る。でも、水なんて一向に出てこない。

 

その時。咆哮が響いた。

銃声なんて生ぬるい、心の底から震えるような大声が町中に響き渡る。

まるで怪獣映画のようなその咆哮の主は、俺の想像を遥かに超えていた。

 

下水道から姿を表したのは、3メートルはゆうにある怪獣。一体何がどう変異したらこんな怪物になるのだろうか。

悪魔のようなツノに凶悪な顔面。異常な筋肉に、鋭い爪……とても現実味がない。

 

「で、デスクロー!?」

 

驚くレイダーが名前を呼ぶ。デスクロー……確かにぴったりの名前だった。

 

「グゥアアアアアアアア!」

 

デスクローが叫び、目の前にいたレイダーを引き裂く。まるで紙を破くように、レイダーの身体は真っ二つに引き裂かれた。

 

「マジかよ!」

 

感想を漏らし、ミニガンを向ける。

 

「気をつけろ!デスクローだ!足を狙え!」

 

バルコニーからプレストンが叫ぶ。

俺はそのアドバイス通り、足を狙ってトリガースイッチを押した。砲身が回転し、弾丸が放たれようとした、刹那。

 

デスクローが、とんでもない速度で横へ飛び、銃線から逸れる。少し遅れて弾丸がデスクローのいた場所を通り過ぎていった。

 

目で追いつけなかった。

誰だ、恐竜は鈍足だったなんて言った奴。奴はあんなにデカいのに、とんでもなく素早いぞ。

 

「うらぁ!」

 

気合を入れながらデスクローを再び狙う。今度は銃弾を放ちながら。

だが、デスクローは横へと走り、建物へと突き当たるとあろう事か壁を強引に走り出した。重力さえ無視したその走りは、こちらへと向かってきている。

 

「ああクソ!」

 

さっきのレイダーのように悪態を吐く。

必死に狙うがことごとく避けるデスクローの反射神経はとんでもない。

あっという間に距離を詰められ、奴の射程圏内に入ってしまった。

 

「グアアアアア!」

 

咆哮とともに恐ろしい爪が迫り来る。

反射的にミニガンを掲げてそれを防ごうとする。

 

「ぐわ!」

 

ミニガンが爪に吹き飛ばされた。

飛んでいったミニガンを見てみれば、銃身の根元からひしゃげてしまっている。もうあれは使えない。

 

「ッ!」

 

そうこうしているうちにもう1発が来ようとしていた。あんな攻撃を食らったらパワーアーマーもただでは済まないかもしれない。

そう判断し、咄嗟に前へ走る。

デスクローの胸に身体がぶつかり、爪が空振る。が、奴の腕は確実に俺の腕にぶち当たっていた。

 

「いでぇ!」

 

日本語で叫ぶ。

凄い衝撃だった。こいつから一撃を貰うのはヤバイ。

 

「だったら!」

 

今度はこちらから仕掛ける。

パワーアーマーの拳で、奴の腹に一撃をかましたのだ。いくら変異して化け物になろうが、パワーアーマー渾身の一撃は効いたらしい。少しよろめいてみせた。

 

「オラァ!」

 

続けざまに殴る。今度はストレートで、怯んだ顔に一撃をお見舞いした。

 

「グオオオオオオ!」

 

だが、それが良くなかったらしい。

怒ったデスクローは強引にこちらに組みついてきたのだ。つまり、身動きが取れないのだ。

 

「離せコラ!」

 

膝蹴りをするも、デスクローは耐えてこちらに頭突きしてくる。その度にHUDが歪んだ。その隙を狙い、デスクローは爪でこちらの腹部を引っ掻いてきた。

体勢的にあまり強くはなかったものの、今の引っ掻きはかなりのダメージだったらしく、胴体パーツの補助機能が死んでしまった。ということは、衝撃吸収機能が逝かれた事も意味するわけで。

次に爪を食らったら、衝撃がモロに来て、俺は死ぬ。

 

「ヤバイ!」

 

爪攻撃がまた迫る。今度は腰が入った一撃だった。冷や汗が止まらない。

 

「させないよ」

 

集音機能が、アルマの声を拾った。

次の瞬間、デスクローの片目が吹き飛ぶ。アルマが狙撃したのだ。

 

「ギャアアアアアアアアオオオオ!?」

 

目を押さえて怯むデスクロー。

このチャンスを逃すような俺ではなかった。

今度はこちらからデスクローに組み付く。まるでレスリングのような状態だ。

 

「パワーアーマーなんてな!アラスカじゃ使ってなかったんだよッ!」

 

そう言い捨て、俺は緊急離脱装置をオンにした。刹那、パワーアーマー背面のハッチがすべて開く。俺はすぐさまパワーアーマーから抜け出して、腰に差していたコンバットアックスを取り出し、空のパワーアーマーと取っ組み合うデスクローの背後に回った。

 

「グオオオオオオ!」

 

まだ俺が脱出したことには気づいていないらしい。だって、潰れた目の方向から背後に回ったのだから。

 

俺は少しの助走をつけてデスクローの背中に飛び乗る。そこでようやく俺が脱出していることに気がついたらしいが、もう遅い。

次の瞬間には、手にしたアックスでデスクローの頭をカチ割っていた。

 

「ギャオオオアアアアア!?」

 

叫び、暴れるデスクローだが、パワーアーマーのせいで腕が使えないらしい。

俺は突き刺さった斧に片手でしがみ付きながら、ホルスターから拳銃(P226)を抜いた。そして、これでもかとばかりにデスクローの脳天に撃ち込む。

 

「死ね!死ね!死ねッ!」

 

我ながら熱くなりすぎたと思うが、それでも人差し指は引き金を引き続けた。

そして弾が切れ、拳銃(P226)のスライドが後方で止まる。俺は斧を引き抜き

後ろへ飛び降りた。

 

「グゥオオオ……」

 

ようやく。

ようやく、力尽きたデスクローが地面に横たわる。それでも警戒は解けなかった。すぐに弾倉を交換し、拳銃をデスクローに向ける。

 

1分経った。

デスクローは動かない。

 

「……はぁ」

 

そこでようやく緊張の糸から解放され、俺は尻餅をついた。

 

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