Fallout4 Gunslinger of the Commonwealth   作:Ciels

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山で寒い思いをしながら夜通し歩いたりスキーで走ったりしていて遅れました


第十二話 サンクチュアリへ、移動

夕暮れ時。レイダーとデスクローという厄介な脅威を退けた俺たちは、歴史博物館内で束の間の休息を得ていた。

ちなみにパワーアーマーはデスクローとの取っ組み合いのせいでフレームごと破損しているため、もう使い物にならないだろう。修理もできそうにない。

 

「それでガービー、これからの行動は?何かあてはあるのか?」

 

歴史博物館のエントランスにて、俺はミニットメンと名乗るガービーに尋ねる。コンコードは住むには困らないかもしれないが、いつまたあのレイダーが襲撃しに来るとも分からない。それに、デスクローが下水道に住んでいたとなっては安眠できないだろう。

俺の質問にガービーは、かなり古い地図を広げて俺たちが良く知るポイントを指差す。

 

「ママ・マーフィーからの提案で、ここから北西にあるサンクチュアリと呼ばれる町に向かおうと思う」

 

なるほど、と思う。確かにコズワース以外誰もいないサンクチュアリは、身を潜めて拠点とするにはもってこいかもしれない。だが、あそこは俺たちの拠点でもある。問題を抱えた余所者はあまり歓迎したくはない。したくはないのだが……まぁ、助けた以上それなりに面倒を見てやってもいいとも思っていた。

アルマとも顔を見合わせ、それで良いか確認する。彼女は静かに頷く。

 

「なら俺たちが案内しよう。元々あそこから来たんだ」

 

そう言うと、ガービーは少し驚いたような顔をした。

 

「そうだったのか……それはいい。となると、サンクチュアリの安全は確保されているんだな?」

 

「数匹の虫が勝手に住み着いてるくらいだ」

 

「なるほど、レイダーに比べれば可愛もんだ」

 

俺は少し笑って彼に同意してみせた。

確かに、今となってはあの虫どもは驚異にはならない。最初こそ、あの生理的にきついフォルムに吐き気を催したが……

 

と、そんな時。懐いているドッグミートを撫でているママ・マーフィが口を開いた。

 

「言ったろうプレストン。サンクチュアリは存在するって。サイトがそう知らせているんだ」

 

またしても出てくるサイトと呼ばれる超能力。

 

「便利なもんだな、俺たちが来るのもお見通しだったみたいだし」

 

「そうとも坊や。あの暗くて寒い箱に閉じ込められていたのも……坊やの赤ちゃんのこともね」

 

まるでこちらを試しているかのような言い回しをするママ・マーフィ。だが、今はそんな鼻に付くことはどうでもよかった。今さっき言ったこと。それが、俺たち夫婦の興味を引いてみせたのだ。

 

「え、ショーンの事なにか知ってるの?え、どうして、あの子は今どこに!?」

 

アルマが取り乱す。彼女としては珍しい事態に、俺はそっと肩を抱いて制する。

確かにショーンの事は気になるが、こういう時こそ落ち着くべきなのだ。

……それを教えてくれたのは、昔のアルマである。

 

「ママ・マーフィ、どんな些細なことでもいいから教えてくれ。ショーンについて何を知っているんだ?」

 

アルマが落ち着いてから再び質問する。

すると、ママ・マーフィは先ほどからの笑みを消して真剣な眼差しになる。

 

「聞いて坊やたち、あなたたちには時間も余裕もない。でも向かう場所は見えたわ。連邦の緑の宝石(グレート・グリーン・ジュエル)……ダイアモンド・シティよ」

 

「ダイアモンド・シティ?そこにショーンはいるのか?」

 

そう質問すると、ママ・マーフィの息が荒くなる。

 

「はぁ、はぁ、もう1人見えるわ。長く生きた鬼が、一緒にいる。今にも死にたくて、それでも生きていて……はぁ、はぁ」

 

「わかった、もう十分だママ・マーフィ」

 

どうやらサイトというのは相当体力を使うらしい。この老体に無理をさせてしまっては今にも死んでしまいそうだった。確かにショーンの事は心配で居ても立っても居られないが、それで善良な(薬物中毒)他人を死なせるのは間違っている。

そこまで生き急いではいないし、そんなことをしてショーンに会うつもりもない。

……情報源は怪しいが、手がかりを掴んだだけでも良しとしよう。

 

「ママ・マーフィ、あまりサイトを使うといつか本当に死んでしまうぞ」

 

と、心配そうに見守っていたプレストンが口を挟んだ。

 

「いいえプレストン。人はいつか死ぬ。なら、その寿命を役立てたほうがいいに決まってるわ」

達観したように言うママ・マーフィに、プレストンは言葉を返せないでいた。彼はまだ若い。年齢的には近いかもしれないが、思想が若いのだ。だからこそ、ああやって人を気遣える。崩壊した世界で、彼みたいな存在は貴重なのではないだろうか。

しばらく沈黙が続く。いい加減にここを出発しないと、いつまたレイダーや危ない生物が襲ってくるとも分からない。そんな状況で声をあげたのは、技術屋のスタージェスだった。

 

「さて、話もまとまったようだし……そろそろ移動しようじゃないかプレストン」

 

ああ、と我に返ったように頷くプレストン。

 

「その通りだな。みんな聞いてくれ。これからママ・マーフィが言っていたサンクチュアリと呼ばれる場所に移動する。新しい友人によれば、あそこは安全らしい」

 

なんとも他力本願な情報だった。仕方のないことではあるが。しかしそれに噛み付く人間もいる。マーシー・ロングだ。

 

「はっ、またそれ?明確な情報もないのにママ・マーフィが言ってたからってふらついてまた襲われるの?もうごめんよ!だいたいなによママ・マーフィって!マが多すぎるのよ!」

 

後半から論点がズレ始めているが、まぁ彼女が言いたいことも何となくわかっていた。そりゃヤク中の婆さんの言うことに従って襲われ続けてたら嫌になる。

プレストンはなだめるように、しかし強く反論した。

 

「これ以上悪くなるなんてありえないさ、マーシー。そうだろう?」

 

だがそれで彼女の意見を止められるわけでもなく。2人の口論は続く。それを止めたのはまたしてもスタージェスだった。

 

「おいおい落ち着けって2人とも!それじゃあマーシー、代わりに何か案があるなら言ってくれ。ん?」

 

マーシーは不服そうにしていながらも黙る。

 

「決まりだな。よし、暗くなる前にここを出よう!……それでいいなプレストン?」

 

「ああ……助かるよ」

 

笑顔で答えるプレストン。だが、どうにも疲れて見える。俺も助けになるとしよう。乗りかかった船だしな。

 

「道中の警戒は任せろ。アルマ、俺が前衛に着くから後方を……アルマ?」

 

警戒を名乗り出たのはいいが、アルマがどこか上の空だ。名前を呼んでも反応が薄い。もう一度強く名前を呼ぶ。

 

「アルマ!大丈夫か?」

 

「え?あ、うん。大丈夫だよ。後方の警戒だよね?任せて、追ってきた奴ら全員ぶっ殺すから」

 

すぐに笑顔で物騒な事を言い出すが、やはりどこか様子がおかしい。理由はわかっていた。やはりショーンの事だろう。

母親としては、息子が気になるのは仕方のない事なのだ。

俺は彼女の頭を撫でる。元気がないときは、こうするのに限る。

 

「無理はするなよ、アルマ」

 

「うん。大丈夫だよ。そっちも無理はしないでね」

 

「はは、アラスカじゃあ無理しっぱなしだったからね。今更だ」

笑って、彼女を励ます。でも、多分一番勇気をもらっているのは俺なのだ。

ショーンはいないが、少なくとも彼女がいれば戦える。さて、そろそろ愛しの我が家に帰るとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サンクチュアリに着いたのは朝方だった。思ったよりもロング夫妻が疲弊していたため、前進の速度が遅れたのだ。

俺とアルマは軍での経験から長距離の移動には慣れているし、自称民兵のプレストンも、健康的な成人男性のスタージェスも歩くのには問題ない。一番ビビったのは、よぼよぼのママ・マーフィが特に疲弊もせず当たり前のように着いてきていることだった。昔は何かスポーツでもやっていたのだろうか?

 

何はともあれ、道中襲撃がなかったのは幸運だろう。コズワースには新しい友人たちを丁重にもてなすように言っておいた。

 

「食料まで分けてもらってすまないな」

 

そして昼過ぎ、一眠りした後にリビングで共にくつろぐプレストンが礼を言ってくる。ちなみにロング夫妻とスタージェス、そしてコズワースは今ローザの家にて別に休憩中だ。アルマは……先のデスクロー戦の結果から、サブマシンガンだけでは物足りないと言い出して、地下の部屋で自前のライフルを調整している。

 

「味は保証しないけどな」

 

「そうか?結構満足したんだが」

 

そういえば彼とは生きていた時代が違うんだった。きっと各戦争後の世界ではまともなものは食えなかったんだろう。どうにもレーションは不味いはずなんだが……

それを思うと、今のは失言かもしれない。

 

「さて。助けてもらったあんたには、なんで俺たちがここに来たのかを説明する義務があるな」

 

「クインシーから来たんだったか?虐殺があったとか」

 

プレストンは真剣な眼差しで頷く。

 

「ミニットマンの役目は前に言った通りだ。その時俺たちはたまたまクインシー近くにいてな、エズラ・ホリス大佐がミニットマンを率いていた。ガンナーと呼ばれる傭兵集団にクインシーが略奪されそうだと聞いて駆けつけたんだ」

 

「当時のミニットマンの規模は?」

 

「二個分隊ほどだ」

 

大佐が率いているわりには少なすぎる。

通常であれば大佐は大隊長や連隊長クラスを率いているはずだ。ミニットマンとやらは全体の規模が小さいのだろうか。

 

「通報の通り、ガンナーはクインシーを狙っていた。それもかなり大規模な部隊を率いてな。ホリス大佐は援護を要請したが……臆病風に吹かれた他のミニットメンは誰も来ることはなかったんだ」

 

俺は黙って彼の話を聞いていた。部隊が壊滅することに対する気持ちは痛いほど分かる。アラスカでも、中東でも……俺たちが駆けつける前に味方の部隊が皆殺しにされたことが何度かあった。

 

「それに裏切り者もいた。今思えば、あの通報も仕組まれていたのかもしれない」

 

「……それで、どうなった?」

 

それから沈黙が始まる。

よほどクインシーでの出来事はプレストンの心を抉っているらしい。

そして数分して、ようやく重い口を開いた。

 

「ホリス大佐は戦死。生存者は住民13名とミニットメンの生き残り7名だけだった。……それもコンコードに来るまでに半分になってたが」

 

守れなかった、という自責の念を感じた。彼のような、少し話しただけでも善人だと分かる人間には辛い現実だろう。

 

「とにかく、クインシーの虐殺は世間に知れ渡り、ミニットマンは信用を無くし、瓦解した。当たり前だよな、助けを呼んでも来ないんだから」

 

自嘲気味に笑うプレストンは見てて痛々しかった。彼はすっかり冷めてしまったコーヒーを口に含む。

 

「……俺も同じような経験があるからその気持ちは痛いほど分かる」

 

「……そうか、あんたもか」

 

同情し、安っぽい言葉をかける。

それ以外に言葉が見当たらない。あまりコミュニケーションが得意ではないし、そういうのは妻に任せっぱなしだった。

でも、目の前の男を放っては置けなかった。

 

「俺はな、プレストン。戦前の人間なんだ。爆弾が落ちる前は軍人をしていた」

 

「なに?」

 

驚くプレストン。

 

「爆弾が落ちた日に家族でVaultへ逃げ込んだんだ。んで、クソッタレな実験に巻き込まれて200年も冷凍されてた。目が覚めたのは一昨日だ」

 

事実を言う。何か悲しみを共有できれば彼の気を紛らわせるかもしれないと言う考えか、もしかしたら単に自分の不幸を自慢したいのかもしれない。

 

「なんてこった……古株のグールたちと同い年ってわけか」

 

見た目は良いけどな(スムーズスキン)。……まぁ、息子は奪われるし、帰る家はボロボロだしで最悪だけどな」

 

俺はプレストンにショーンの事を話す。ミニットマンとして、常に人々のために尽力して来た彼にとって、この話は聞き捨てならないものだったらしい。先程とは打って変わって、目が輝く。仕事を生きがいとしている人間の目だ。

 

「なるほどな……ハゲ頭の男か。すまないが、知らないな。だが、なるべく力になれるように努力しよう」

 

すっかり彼はミニットマンだった。

いつの間にか、ミニットマンが自分しかいないと言う事実を忘れるほどに聞き入っていたらしい。

さて、それでは今後のことを考えるとしよう。

 

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