Fallout4 Gunslinger of the Commonwealth   作:Ciels

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将軍、居住地から連絡が入った


The First Step
第十四話 レキシントン、はじめの一歩


 

 

それから更に2日が過ぎた昼のことだった。

無線ビーコンでラジオ上に飛ばした居住者募集広告により、サンクチュアリ・シティに数名の新たなメンバーが加わったり、強迫性の精神疾患並みに警備の増強を主張するジュンが警備隊長になったり、スタージェスが小さな工業学校を作ったりしていた、この世界では平和な日。そろそろ本格的にショーンを探さなければと思い、自宅にてアルマと装備を整えていたところに、プレストンがやって来る。

 

「市長、ちょっといいか?」

 

と、なにやら話がしたい様子のプレストンをリビングに通し、淹れたてのコーヒーを出してやる。

 

「それで?今日はどうしたんだ?」

 

アルマと共に机を挟んで彼に対面し、話を聞く。プレストンは少し何かを躊躇っているようだったが、ブラックなコーヒーを一気飲みすると決心がついたようで、口を開いた。

 

「折り入って相談があるんだ」

真面目なプレストンの顔を見て、俺は2日前に彼と話した時を思い出す。今の彼の顔は、仕事モードの顔だ。

 

「ミニットメンを復興させたいと思うんだ」

 

ミニットメン。この時代における、市民のための自警団であり、民兵組織のことだ。話を聞いてからまだ日は経っていない。

正直なところ、何となくそんな事を言ってくるとは思っていた。今でこそ街の復興やらで盛り上がってはいたが、元々彼は善人で、困っている人を放っておけないタイプ。ならば、この街の復興がある程度進んだ今ならば、改めて自分の使命について考える事もあり得たのだ。

 

「そうかガービー。俺もその意見には賛成だ」

 

そしてそのミニットメンという存在については、俺も肯定的だった。いくら国が崩壊し、秩序が失われたとしても、人間がやっていく以上ある程度の治安維持組織は必要なのだ。だから、もしもガービーがミニットメンを建て直したいと言ってきた際には快く賛同し、協力するつもりだった。この街で経済が発達した後、彼らに経済的な援助をする……これ以上ない協力だろう。それはアルマと話していたことでもある。

 

だからこそ、次にガービーが言い出した言葉には心底度肝を抜かれた。

 

「それは良かった。なら、あんたたち2人にリーダーをやってもらいたいんだ」

 

「は?」

 

2人して、心の底から疑問の声が漏れた。そりゃそうだろう。急に武装組織のリーダーをやってもらいたいだなんて、誰が言われると思う?

 

「ちょ、ちょっと待てガービー。リーダー?俺たちが?」

 

「そうだ。市民のための組織、ミニットメン。そのリーダーにあんたたちは相応しい。ずっとミニットメンだった俺が保証する」

 

頭を抱えた。お前がリーダーじゃないのか……

 

「なんで自分でやらないのさ?」

 

急に不機嫌になったアルマが質問する。

 

「適材適所ってやつだ。俺には指揮官や補佐の能力はあっても、トップには向いてない。だがあんたたちは違う。この街を復興させたじゃないか!俺はその間ずっとあんたたちの指揮を見てきた。だから分かるのさ。2人ならミニットメンをまとめられる。俺はその補佐をする」

 

「俺たちは単なる夫婦だ。買いかぶりすぎだぞガービー、正義の味方には向いてない」

 

「あんたたちはコンコードで助けてくれたじゃないか!見返りなんてない、なのに俺たちを救ってくれた。そういう善意の心は長い間この辺りでは失われてきた。だからこそ言える。文句一つ言わないで人を助けられるあんたたちに是非ミニットメンをまとめてもらいたい」

 

やや興奮したようにプレストンは言う。一方で、俺たちは渋ったように唸った。

たしかに、彼らを助けたのは善意だ。だが、それは成り行きでそうなっただけである。もし俺たちがピンチであるなら、問答無用で彼らを見捨てていたに違いない。

 

「あんたも奴らを見ただろう!ああいう奴らが居住地を襲い、罪のない人々を殺していくんだ!あんたたちが愛したアメリカは違ったはずだ!こうして力のある人間には弱き者たちを助ける義務がある!」

 

それに、とプレストンは話を続ける。

 

「もし他の居住地を救えばサンクチュアリの評判も上がる!そうなればトレーダーたちもここを無視できなくなるさ!経済も潤う!」

 

「そりゃ金は必要だが、別に権力者になりたいわけじゃない」

 

現在進行形で市長を名乗っている奴が言うことじゃないが。だがプレストンは止まらない。

 

「顔が効けば情報も入りやすくなるし手助けも増える。息子さんの情報だってそうだ」

 

むむむ、と今度は違う種類の唸りを見せてしまった。それが良くなかったらしい。プレストンはチャンスと思ったのか、最後の決め手を繰り出した。

 

「アメリカ軍人だったんだろう?俺には戦前のことはよく分からないが、軍の仕事は国民を守ることだ。その任務を放棄するわけじゃあるまい?」

 

そこには弱かった。確かに、俺は今でもアメリカ軍人であるつもりだ。仕える国は無くなったが、除隊した覚えはないし、させられた覚えもない。

それに。

死んでいった奴らのことを考えてしまう。彼らは家族と国のために戦い、そして死んだ。なら、俺がここでミニットメンとして活動しなければ、それに背く事になるんじゃないのだろうか。

 

ーー|戦争が変わらないのであれば、人間が変わるしかない。《Courier’s Mile》

ふと、遠い記憶の、誰かの声が蘇る。

 

俺は黙った。

アルマは俺の様子を時折見守っている。どうやら、俺に事の成り行きを託すようだった。

 

「……本格的に軍事組織を再編するなら、生半可なことは許さないぞ」

 

「……!ああ、それでいい。あんたが決める事だからな」

 

遠回しの肯定はプレストンに伝わったようだ。彼は希望を掴んだといったような笑みを見せる。

 

「プレストン。期待はするなよ。俺だってこういうのは初めてだ」

 

「問題ない。そのために俺がいるんだ。だから安心していい……将軍」

 

将軍。プレストンが俺に向けて言い放った。俺は笑って、

 

「俺は大尉だ」

 

「歴代のミニットメンのリーダーは皆、将軍の称号と共に歩んできた。ふ、皮肉だな、ミニットメンが瓦解したせいで後継者争いが起こらなくて済むとは」

 

「違いないね。それで?私も将軍なの?」

 

ニヤニヤとアルマがプレストンに尋ねる。

 

「2人も指導者がいたことがなくてな……なら、嫁さんは大佐でいいか?ミニットメンでは大佐が次に偉いんだ」

 

「ふーん。ま、いいよ。面倒なことは全部ハーディに押し付けるから」

 

そして彼女は俺に意地悪そうな笑みを向けた。うーん、あくどい事に関しちゃ彼女は将軍なんだけどな。

何はともあれ、こうしてミニットメンは生まれ変わった。新たなリーダーを手にして。

この時はまさか、将軍自らが戦場に飛び込むとは思っていなかったが。

 

 

 

 

 

 

 

レキシントンは歴史のある都市である。

開拓当初、バージニア州の植民地であったこの都市は、独立戦争においてレキシントン・コンコードの戦いで一躍有名になり、最終戦争が起きる直前でも工業都市としてアメリカ人の間でその名を知らない者はいなかった。コンコードとは違い、工業で発展していたこの都市は人口も多かった。しかし核が落ち、200年。今となっては都市一帯が廃墟と化している。

 

コンコードからさほど遠くないレキシントン。なぜこの街の説明をしているのかというと、俺たちが今いる場所だからだ。正確には、レキシントンの北西、約300メートルの位置にて、周囲の木々に紛れて観察している。

 

「あー、スローカムズジョーの周囲に地雷の埋設を発見」

 

双眼鏡でドーナツ店の廃墟周辺を観察しながら、隣でライフルのスコープを覗くアルマに言う。

 

「やけに埋設されてるね。警備がいるわけでもないのに」

 

「それに埋設のやり方が雑だ。埋めてすらいなければ隠してすらいない」

 

地雷とは本来、敵を通したくなかったり妨害したい場所に置く、防御装置である。だから埋設するときにはバレないように地面に埋めるし、アスファルトで舗装されている道に仕掛けるのであれば障害物等で隠すのが基本である。

しかしあれはどうだ。隠すどころか、ただ適当に置いてあるだけだ。あれを置いたのは相当な馬鹿だろう。

 

「確かあのドーナツ屋の下にDIAの支部があったはずだ。その防衛機能が働いたのかな?まあいい、あそこは無視だ」

 

DIA、Defense Intelligence Agency(国防情報局)。国防総省の隷下のこの組織は、はっきり言ってしまえばCIAみたいな事をしている。核が落ちる前は国内における対中作戦を展開していたのを記憶している……海軍の闇とも言われた部隊にいれば、嫌でもああいった奴らと関わらざるを得ないのだ。まぁ今となってはどうでもいいが。

 

「敵発見。正面、建物と建物を繋いでる看板の裏」

 

と、アルマが敵を見つける。言われた通りにそちらを見てみれば、いた。大きな穴だらけの看板、その裏にチラチラと誰かが見える……あれはパワーアーマーか?継ぎ接ぎだらけのパワーアーマーのライトが、闇夜を照らしている。

 

「レイダーだな。パワーアーマーで武装してるぞ」

 

「頭は剥き出しだから一撃でやれるよ」

 

「今はまだいいよ。はぁ、ようやく現場から離れられると思ったんだけどな」

 

思わず愚痴を漏らした。それもそうだろう、まさかミニットメン将軍のとしての初仕事がレキシントンにいるレイダーの排除なんだから。しかも実働メンバーはトップ2人。まぁ、まだメンバーが3人しかいないから仕方がない。

 

事の経緯は、プレストンが無線にて救難信号を拾ったことから始まる。サンクチュアリの東に半日ほど行った場所に、テンパインズの断崖と呼ばれる場所がある。そこを小さな農場にしている居住者から、レイダーに脅されているという報告があったのだ。使命に駆られたプレストンはさっそく3人で向かおうとしたのだが、俺たち3人はサンクチュアリの市長、副市長、そして秘書であり、さすがに長がいないのはヤバイとなった。そこで、実質的に街の財政やらなにやらを管理している副市長のプレストンが残る事に。

 

「プレストン落ち込んでたなぁ」

 

今日の朝のことを思い出す。

ようやく新たな一歩を踏み出そうとした矢先の待機だったので、プレストンは心底ガッカリしたのだろう。

 

「ま、仕方ない。さっさと片付けてしまいますか」

 

「そだね。2人で相手できるか不安だけど」

 

相手のレイダーは聞くところによれば数十人。通常ならとても2人で相手できるものではないが、もっと酷い状況も経験してきた。

やれないことはない。暗闇に紛れ、サイレンサー付きの銃とナイフで殺せば、手間はかかるが皆殺しなんて簡単にやってのけるさ。

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