Fallout4 Gunslinger of the Commonwealth   作:Ciels

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第十五話 レキシントン、コルベガ組立工場

 

 

深夜、レキシントンのはずれにあるコルベガ自動車組立工場。核戦争前は国産自動車の工場として、街の資金源を支えたこの場所も、今ではならず者たちの住処になっていた。それでもかつて使用されていた発電機や照明等は生きており、数マイル離れた先からでも光と稼働音でその存在をアピールしている。

 

工場はレイダー達の要塞と化していた。

外周には歩哨が巡回しており、工場自体や煙突に伸びる足場には、見張りが複数付いているのに加えてサーチライトもある。

時折、工場の資源によって一攫千金を狙ったスカベンジャーや、大物になりたいはぐれレイダー達が忍び込もうとするものの、ほとんどが彼ら警備に見つかって八つ裂きにされる運命にある。

だから、正面玄関を守備しているこのレイダーに至っては、まじめに守る気すら起きない。だって、敵は大体抜け穴を狙ってくるものだし、もし正面から来ようものならすぐ横に設置されている防衛タレットが火を噴く。そうなれば、相手は5.56mmの弾丸に引き裂かれて犬の餌と化す。だから、自分は突っ立っていればいい。

 

「ふぁ〜あ」

 

椅子に腰掛け、大欠伸をする。交代の時間まであと数時間もあることを考えると、どうにもやる気が起きないものだ。

いっそ誰か侵入者でも現れないものか。

呑気にそんなことを考えていると、土嚢の裏に置かれた無線機が音を起てた。ザザー、っというノイズののちに、警備隊長であるレイダーの声が響く。

 

『おい、街の奴らと連絡が取れなくなったぞ。だれか何か見えねぇか』

 

どうやら通信相手は自分だけではないらしく、無線機を持っている全員に話しかけているらしい。レイダーは椅子に座ったまま無線機のマイクを手にすると返信する。

 

「みえねぇ」

 

『他はどうだ?おい、誰か応答しろ、遊びじゃねぇんだぞ』

 

やや神経質な警備隊長はイラついた様子でほかの仲間に連絡を取ろうとするが、答えは帰ってこない。このレイダーは、どうせまたいつもの故障だろうと思い込む。200年も前に作られたのだ、もうそろそろ使い物にならなくなってきてもおかしくない。

 

『ああクソ、また故障か。ジャレドに報告しないと』

 

警備隊長がボヤく。ジャレドとは、彼らレキシントンに巣食うレイダー達を纏めるボスの事である。少々、というよりも神経質すぎるこのボスは、最近のおかしな言動と行動のせいで一部のレイダー達からは非難の声が上がり始めている。

彼ら不穏分子を抑えていたサブリーダーも死んだらしく、いつ下克上が起きてもおかしくなかった。

 

『おい、誰か確認しに行け!おい、誰もいないのか!クソ、どいつもこいつもサボりやがって、ただじゃうぐ』

 

と、唐突に無線機から流れていた声が途切れた。流石に不審がったのか、レイダーも椅子から立ち上がって無線機にかじりつく。そしてマイクを握って呼びかけた。

 

「おい、どうした?返事しろ」

 

だが返事はない。あるのはノイズのみ。レイダーは訝しむ。これはもしや、異常事態かもしれない。

 

と、バコンッ。

不意に、タレットが大きな音を上げた。驚いてタレットを見てみれば、銃身部がもぎ取られたように消えている。すぐ横を見てみれば、千切れた銃身が転がっている。レイダーはこの異様な光景に理解が追いつかない。

 

刹那。後ろから手が伸びて、レイダーの口を塞いだ。そして何かを考える前に、レイダーの喉にナイフが突き刺さる。血がピューピュー噴き出る。だが、それでは済まなかった。ナイフに力が篭ったかと思えば、一気に前へとナイフが突き進み、レイダーの首を掻き切ったのだった。

 

 

 

 

 

 

レイダーの後ろから音を発てないよう忍び寄る。手には拳銃やライフルの代わりにナイフがあった。

正面玄関は警備が薄い……見ただけでそれがわかるほど、彼らの戦術はガバガバだ。だからこうして、裏から侵入することはせずに正面から堂々と入ろうとしている。

タレットは脅威である。センサー類の感度は低いが、見つかれば正確な射撃によって相手を蜂の巣にするからだ。だが、それに過信しすぎてもいけないわけだ。

だからこうして俺が来てしまうわけで。

 

『ハーディ、タレットは任せて』

 

イヤホンからアルマの声が鼓膜に響く。俺は物陰でバレないようにじっとその時を待つ。バコンッという音と共に、タレットの銃身は吹き飛んだ。あのタレットには攻撃手段がもう無い。その証拠に、タレットのランプが青く点灯している……あれはエラーと待機状態を意味していたはずだ。

今度こそ、俺はレイダーを仕留めにかかる。2メートルほどの距離を音もなく一瞬で詰め、後ろから手を回してレイダーの口を塞ぐ。そしてすかさずレイダーの喉元へとナイフを突き刺した。

 

「がふっ」

 

レイダーは痙攣しているが、そこで終わらせることはしない。前へとナイフを押し込み、レイダーの喉を掻き切った。丁度、レイダーの首は半分ほどぱっくり割れてしまっていた。

 

「目標排除、建物内に侵入する」

 

レイダーの死体をそっと寝かせて小型無線機で告げる。

 

『了解、気をつけてね。こっちはもう皆殺しにしちゃったからさ』

 

アルマとは今、別行動中である。先程見つけたレイダー達を片っ端から眠らせた後、今アルマは先程の看板のある建物の屋上に陣取っている。ちなみにパワーアーマー装備のレイダーだが、こっそり後ろからフュージョン・コアをアルマが抜き取ると動けなくなったので、剥き出しの頭にナイフを突き立てて終わらせた。

彼女が持っているライフルはサプレッサー付きの狙撃銃なので、ある程度距離が離れていれば工場の騒音に銃声はかき消される。

 

「何かあれば連絡する、アウト」

 

無線を切ってナイフをしまい、拳銃を取り出す。ちなみにライフルは背負っているのですぐには使えないが、それで構わない。そんな状況になる前に終わらせればいいのだ。

 

玄関に侵入すると、敵の姿は無かった。あるのは粗末なワイヤーと、それに連動した即席の爆弾。それを無視して進もうとすると、不意にPip-boyの生体センサーに反応があった。すぐ横の扉、その奥だ。

 

「ふい〜、最近小便が近いな」

 

レイダーが用をたし、こちらに向かってきているのだ。俺はすぐに扉の横に張り付いてレイダーが来るのを待つ。そして、扉が開くと酔っているのか、アルコール臭い男が玄関へとやって来た。俺はバレる前に、男の膝裏を蹴りつける。

 

「うおっ!」

 

死角からの蹴りに対応できない男は容易に膝をついた。俺は首に腕を巻きつけ、一気に捻る。

ゴキンッ。鈍い音と共に、男の首の骨は折れる。腕を解放すると、男はそのままゆっくりと倒れてピクリとも動かなかった。

 

「死体を隠す時間はないな」

 

1人呟く。敵は大勢いるのに加え、いつ外の異変に気がつくとも分からない。なら、このまま進んだ方がいいだろう。

 

玄関から先へ進むと、廊下になる。簡易的なバリケードが施された廊下は、いちいち脇の部屋へと迂回しなければ通り抜けできないようになっており、それも一本道だ。警備は杜撰だが、こういうところは厄介だ。

警戒し、壁沿いにゆっくりと歩いていく。この建物は防音素材をふんだんに使っているのか、あれほどうるさかった工場の騒音がほとんどしない。ということは、こちらはもちろん敵が発する音も聞こえにくいということになる。

 

「ああ、また負けた!イカサマしてんだろ!」

 

と、突然入ろうとしていた部屋から声が響いた。どうやらレイダー達がカードで遊んでいるらしい。

 

「お前は単調すぎるんだよマヌケ」

 

「なんだとコラァ!」

 

言い争うレイダー達。物凄くこの中にグレネードを投げ入れたいが、さすがに爆音はバレるに違いない。俺はこっそりと扉を少し開け、中の様子を探る。ゲームに興じているのは3人だ。……いけるな。

 

「それにしてもあいつ、便所から戻ってこないな」

 

「どうせ飲みすぎて吐いてるんだろ。ほら、カード混ぜるからよこしな」

 

どうやらそれなりに酔っているようだ。俺は拳銃のスライドを少し引いて薬室を確認する。すでに弾薬は装填されている。

 

「おい、お前は信用できない。俺が混ぜる」

 

「馬鹿言うな、混ぜ方知らないだろ」

 

拳銃を斜めに構える。そして言い争うレイダー達を無視して、俺は扉を押し開け一気に室内へ突入した。

驚いて固まるレイダー達。全員と目が合う。

俺は止まらず、一番近いレイダーの胸と頭に射撃する。サイレンサー付きの銃身から放たれた9mm口径の亜音速弾は、確実にレイダーの息の根を止めた。

 

「うわっ!」

 

反応し、テーブルの上の武器を取ろうとするレイダーの胴体に二発撃ち込む。するとレイダーは武器を取る前に崩れ落ちた。続けざまに最後のレイダーを狙う。

 

「ま、待て!」

 

何か言いかけたレイダーの顔面に弾丸が二発命中した。それだけでレイダーの命は散ってしまった。これでこの部屋は全滅だ。

 

「うう……」

 

いや、まだいる。二番目に撃ったやつだ。俺はまだ息の根があるレイダーのそばに寄ると、ナイフを取り出してレイダーの首を引っ掻く。頚動脈を切られたレイダーは今度こそ事切れた。腕は落ちてないようで安心だ。

 

「おーい、うるせえぞ」

 

反射的に、奥の扉から突如現れたレイダーを撃ち殺す。やはりここも二発撃ち込んでいた。胸と頭。今度のやつは胸に防具を仕込んでいたが、剥き出しの頭には穴が空いていた。つまり死んだのだ。

 

「……ふぅ」

 

危なかった。まさかすぐ近くにいたとは。いくらサプレッサーが付いているとはいえ、銃声を消すことはできない。戦前では科学の発展により、サプレッサーの消音効果は飛躍的に上がったが、それでも40から50デシベルの音は発生してしまうのだ。

もっと慎重に。確実に。

そうでなければ、凡ミスして死ぬことだってありえる。

 

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