Fallout4 Gunslinger of the Commonwealth   作:Ciels

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第十七話 USAF衛星基地オリビア、ミニットメン

 

 

兵士を実戦にて使い物にするには、最低でも半年はかかるものだ。体を鍛え、頭に知識を詰め込み、一人前の兵士にする。それがどれほど難しいことか。だから、今俺が主導でやってるミニットメンの訓練は、兵士を育てるという点に関してはまるで時間が足りない。

 

「見えた、あれがオリビアと呼ばれる戦前の基地だ」

 

早朝、草むらに潜むガービーが、真横の俺にそう知らせる。前方200メートル先には彼が今しがた言っていた基地、USAF(空軍)衛星基地オリビアが、今もなおそびえ立っていた。

俺は双眼鏡を取り出し、匍匐しながら状況を偵察する……奴らはいた。レイダーだ。歩哨が数名、塔の上に2名と犬が1匹。それなりに歯ごたえのあるであろう編成だった。

 

「ミニットメン、集合」

 

小声で言いながら、人差し指を上に上げて回す。すると、同じように匍匐しながら身を潜めていた新兵達が、周辺を警戒しながら俺の周りに集まった。

将軍、準備良し。そう、ファイアチーム(射撃班)を任せている新兵二人が言ってくる。一人はあのジュンだった。

 

「命令を下達する。ブルーチームと俺は前衛、合図で攻撃を開始したらレッドチームは横隊、この場にて周囲を警戒しながら援護しろ。攻撃は今から1分後、フレンドリーファイアなんてするなよ」

 

「り、了解」

 

そう言うと、彼ら新兵は配置に着く。俺も戦闘がいつでもできるように、持ってきたライフル(AR-15)の槓桿レバーを半分引いて弾薬が装填されていることを確認する。それに便乗するように、ガービーも手にしたライフル、 SA58の状態を確かめた。

 

「実戦で実弾を使うのは久しぶりだ」

 

今彼が手にしているのは、過去のミニットメンを象徴するエナジー武器、レーザーマスケットではない。強力な7.62mm弾を使用する、空挺部隊向けのバトルライフルだ。ミニットメン指揮官として、特別に俺の武器庫から与えたものだった。

 

「俺から言わせて貰えば、レーザー武器よりよっぽど信頼できるさ」

 

静かに笑いつつ、ちょっと緊張気味な副官を宥める。

彼が緊張するのも無理はない。何せ、今から行う戦闘は、新兵を含めた新生ミニットメンの初陣なのだから。この戦闘の結末が、俺たちの行く末を決めると言っても過言ではなかった。

そして、時間は迫る。時計の針が、予定していた時刻を指したのだ。

 

「ブルーチーム、隊形ライトヘビーウェッジ(右重視楔形隊形)。前へ」

 

「前へ」

 

静かに、しかしちゃんと届くように指示すると、俺の動きに合わせたように新兵達が動く。さあ、一狩行こうじゃないか。

 

 

 

 

 

アバナシーファームという場所がある。サンクチュアリから南に数キロ下った場所にあるアバナシーファームは、数人の家族が営んでいる農場である。

つい3日前、ミニットメンの無線にて、この農場から救援要請があった。ガービーと新兵を向かわせたところ、どうやら数週間前にレイダーの襲撃を受けたようで、農場の主であるブレイク・アバナシーの娘が死亡、農作物の一部と娘の遺品を奪われたのだとか。

憤慨したガービーはこのレイダー達の排除を引き受けた。新兵の訓練はまだ不十分だが、経験を積ませるにはもってこいの事案だと思った俺は、彼らを率いてレイダー鎮圧に乗り出たのだった。

 

 

 

 

 

「右へ回り込め!建物の陰を利用しろ!」

 

怒鳴りつけるように俺は指示を飛ばした。ブルーチームの少し後ろで木に身を隠しつつ、最低限ライフルと頭だけを出してレイダーを狙い、射撃する。横ではブルーチームが銃弾の中を掻い潜り、レイダーの左側面にある建物へと猛ダッシュで進軍していた。

 

「撃つのをやめるな!交互前進で常に制圧し続けろ!」

 

「うう、了解!」

 

あの弱気なジュンが必死にコンバットライフルを撃つ。さすがにレイダーも、自分たちよりも多い人数に襲われたせいか反撃が弱まっていた。つまり制圧できているのだ。

これを好機に、俺は一気に前進する。移動の際も、ライフルの銃口は常に敵方に向け、適度に撃ちながらブルーチームの隠れている建物裏へと移動した。

 

「ブルー3と4は俺に続け!塔を制圧するぞ!ジュン、お前と2、5は援護!」

 

「了解、わかった、わかったよ!」

 

己を奮い立たせるようにジュンは頷いた。

 

「頼むぞ警備隊長!……2、4、続け!」

 

真っ先に俺が飛び出し、その後ろをブルーチームの二人が追従した。

 

 

 

 

 

 

 

ものの数分で基地の地上兵力は沈黙した。奴らの番犬や、どこから来たのかわからない地雷付きのモールラットも含め全て殺したのだ。

なんてことはない、ただ訓練と同じように敵を狙い、殺せばいいのだから。俺という存在抜きにしても、ウェイストランドの荒っぽい日常に慣れている新兵達にとっては朝飯前だったようだ。

 

「やったな将軍。こうもあっさりと、被害も無しで地上を制圧できるとは」

 

合流したガービーが喜ぶ。

 

「まだだ。地下が残ってる。そっちが本隊だろう」

 

そう。元空軍の衛生監視基地だったこの場所は、地下にそのメイン施設がある。今の戦いは前哨戦に過ぎなかった。

アバナシーの報告によれば、ここのレイダーを率いているボス、アックアックは携行用ミニガンを手にしているらしく、苦戦は免れないだろう。

 

「ああ、だがこの調子なら行けるさ。皆の動きも想像以上だ、そうだろう将軍」

 

意外と楽観的な副官。確かに今の勢いを潰すのは良くないが、慢心も良くないだろう。油断して失敗した作戦なんて山ほど見てきた。

 

「気を引きしめろ。お前がそんなんでどうすんだプレストン。ミニットメン、集合しろ!」

 

俺は一切油断することなく、周辺を警戒するミニットメンを呼び寄せた。

 

 

 

 

 

 

 

 

基地内部は、不気味と言っても過言ではなかった。薄暗く、本当に人がいるのかと疑いたくもなるほど静かだからだ。

だからこそ、気が抜けない。地上でのドンパチがどれだけ彼らの気を引いているのかわからないし、罠がないとも限らない。慎重に、ポイントマン(前衛)として前を進む水平二連ショットガンを持つ新兵の肩を握りながらゆっくりと階段を進んで行く。

 

今現在、地下へと進行しているのは俺とレッドチームの五人だ。プレストンとブルーチームは地上の警戒を任せている。

不意に、前を進むポイントマンの足が止まる。丁度、下の階段が終わったところだった。

 

「将軍、罠だ」

 

ショットガンを構えながら、片手で2メートル前を指差す。そこには確かに、うっすらと感知式レーザーワイヤートラップが設置されていた。上には電流を流すテスラコイル……なるほど、元からここにあるのを再利用したのか。

 

「解除する」

 

そっと、俺は前に出て赤外線レーザーを出している装置に手を掛ける。どうやらそこまで複雑なものではないらしく、スイッチ一つで起動しているようだ。スイッチをオフにしてやると、レーザーは消える。解除した後、俺は拳銃( P226)を構えながら、ゆっくりと曲がり角をクリアリングして安全を確かめる。

 

「クリア、前へ」

 

俺はその場で拳銃を構えたまま、指示を出してレッドチームを前進させた。小刻みに、ポイントマンの新兵が次の曲がり角をクリアリングしていく。カッティングパイという近接戦闘の技術だ。

全員が室内に侵入したのを見届け、俺もポイントマンの後ろへと配置についた。どうやら今俺たちがいるのは管理室のようだ。ターミナルが設置されており、テスラコイルと奥の扉に配線が伸びている。

 

「コンタクト」

 

そっと、ポイントマンが呟く。コンタクト、接敵という意味である。

ポイントマンの肩からそっと前方を覗く。通気用の窓枠から、施設の奥が見えた。確かに、レイダーが一人手すりに寄っかかってタバコを吸っている。

姿勢を低くするようにハンドサインで指示し、全員をしゃがませる。そしてまた前へと進んだ。

部屋は通路にそのまま繋がっており、通路は左右に伸びている。チームを二つに分裂させ、慎重に、クロスオーバーという技術で、通路の左右を確認させる。通路に敵はいない。

 

「クリア」

 

「クリアだ」

 

ミニットメン達がそう言うと、俺は頷いた。そして再集合させ、右手に見える階段ではなく、左手の通路へと進む。

最後尾に後方警戒させて進んで行くと、また曲がり角。しゃがんだポイントマンの真上に、やや覆いかぶさるような体勢で、合図とともに一気に角を覗く。

いた。レイダーだ。通路の奥で犬と戯れている。かなり厄介だった。

 

「下がれ」

 

こっそりそうポイントマンに告げ、後方の隊員達にも敵と遭遇したことをハンドサインで伝える。

犬は鼻が効く上に、素早い。撃てば簡単に死ぬが、そうなれば敵にこっちの存在がバレる。

 

「1と3、4は窓枠付近で待機。こちらの発砲と同時に手すりの奴をやれ。右の階段の警戒は1がしろ。発砲後はその場にて敵を見つけ次第撃ちまくれ」

 

レッドチーム1が頷き、窓枠付近へと戻る。それを見送り、俺は仕事を待つポイントマン……フリードと呼ばれるショットガンを持つ青年に指示を出す。

 

「レイダーは俺がやる。犬が走ってきたらそいつで穴だらけにしてやれ」

 

「へへ、了解」

 

訓練段階でかなりアグレッシブだという評価を下し、ポイントマンに任命した彼は笑って頷いた。俺は上半身だけ曲がり角から出し、拳銃を構える。腕はしっかりと壁に委託し、安定させた。

ゆっくりと、引き金を絞る。無意識のうちに完全に引かれた引き金は、シアーをリリースし、下がったハンマーは撃針を叩いた。

発砲音。弾頭は10メートル先のレイダーの首を貫き、ダウンさせた。

 

「ギャン!」

 

犬が驚き、次の瞬間にはこちらへと走りこんでくる。だが、フリードのショットガンはそれを許さない。

一際大きな発砲音と発砲炎が視覚と聴覚を刺激し、散弾が犬の顔面を蜂の巣にした。直後に背後から複数の発砲音。窓枠にいたレッドチームだ。

 

「なんだ!?」

 

「誰だ撃ちやがったのは!」

 

「仲間がやられた!上の階だ!」

 

騒がしくなる施設内。俺はフリードの肩を叩き、前進命令を下す。

 

Go hot(派手にやれ) !!!!!!」

 

そう叫ぶと、窓枠に待機させていたレッドチームの射撃が激しくなった。

足早に前進し、トイレへとつながる通路へと入り、クリアリング。トイレには敵影無し、今度は先ほど倒したレイダーへと向かう。

首を撃たれたレイダーはまだ息があったが、それも二発ほど頭に拳銃を撃ち込むことにより沈黙する。俺は背負ったライフルを取り出すと、通路からこっそり次のフロアを覗いた。

どうやらここは機械室らしく、電力供給用の原子力リアクターが稼働している。下の階と繋がっており、それなりに広い。うるさいと評判のリアクターの音は、レッドチームとレイダーの銃撃音でかき消されている。

 

「2、前へ」

 

「よしきた」

 

ショットガンのリロードを終えて待ってましたと言わんばかりにフリードは前進、先ほど手すりに寄りかかっていたレイダーの死体のあたりまで移動する。俺もその後ろを行った。

下ではこの部屋に飛び込んだらしいレイダーが蜂の巣にされていた。レッドチームは仕事を果たしているようだ。

 

「フリード、降りるぞ」

 

そう彼に告げ、手すりから下の階に飛び降りる。高さはそんなにないから、転がって受け身を取ることもない。

二人で下の階へとやってくると、レッドチームが誤射を恐れて発砲をやめる。俺は上の窓枠に向かって回り込めとハンドサインで指示を出すと、そっと隣の部屋を覗いた。そして、急いでまた身を隠す。

ミニガンを持ったレイダーとその取り巻きが複数。すでにいつでも撃てる状態だった。

 

「あぶねっ」

 

次の瞬間には、目の前の扉枠からミニガンの、雨のような弾丸が通り過ぎていく。拳銃弾より弱い小口径といえど、あれだけ撃ち込まれたら痛みを感じる間も無く死ぬだろう。

 

「ミニガンってことは、敵の親玉か」

 

俺の後ろを守るフリードが言う。

 

「ああ。お前、火炎瓶あるか?」

 

「ああ。用意するか?」

 

「頼む。回り込んできたレッド達に気を取られてる隙に投げ込め」

 

了解、と言うとフリードは背負ったバッグから火炎瓶とライターを取り出す。

 

「お前らタダで済むと思うなよ!」

 

女性の声が響く。おそらくアックアックの声だ。

 

「コンタクト!」

 

同時に、回り込んだであろうレッドチームの声が響いた。発砲音だけが聞こえる。

フリードは火炎瓶の口元に詰められた布にライターで火をつけると、それを扉枠の向こうへと投げ込む。

ミニガンの音で瓶が割れた音は聞こえなかったが、どうやら効果はあったらしい。ミニガンの音が止み、女の絶叫とライフルの発砲音が響いたのだ。俺は一気にアックアックがいるであろう室内へと突入する。

アックアックは火だるまにされた上にレッドチームに蜂の巣にされ。残るレイダーの取り巻きも、俺とレッドチームのライフルの前に沈んでいく。

 

「クリア!」

 

「クリア、誰もいない!」

 

排除と同時に室内を探索するレッドチーム。どうやら敵はいないようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「言っただろ将軍、やれるって」

 

夕暮れ時、隊列を組み帰路に着く中で、ガービーはそう言った。結果だけ見れば、ミニットメンの圧勝だった。だが俺は満足していない。戦前の、俺がいた部隊であるならば、この程度の敵は10分とかからずに制圧できただろう。まだ無駄が多い。

 

「課題はある。帰ってからミーティングして、次に備えなきゃな」

 

「はは、手厳しいな」

 

笑うガービー。だが、成功は成功だ。犠牲もなく、怪我もない。これ以上望むのは欲張りなのかもしれない。

俺は懐から回収したロケットペンダントを取り出す。例の娘の遺品だ。

 

「……連邦は残酷だな」

 

一人呟いた言葉は、吹いてきた風にかき消された。

 

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