Fallout4 Gunslinger of the Commonwealth   作:Ciels

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Story of the Century
第二十一話 ダイアモンド・シティ、パイパー


 

 

それはアークジェットでの出来事から数日後。連邦最大と言われる都市、ダイアモンド・シティの外壁において。

元は野球場であったこの場所は、周りにビルやアパートメントが立ち並んでいたせいか核の被害も比較的少なく、200年経った今もなお、経年劣化以外で変わることなく存在している。唯一変わった事といえば、スポーツを楽しむ場所であるのが居住地と化した事くらいだろうか。今では外壁の外を、野球のプロテクターとバットや銃で武装したセキュリティが防御し、中では活気付いた市場が営業中。

しかし、今回ピックアップするのはそれら町の人々の営みではない。その中でも一際異端視されている、赤いコートに身を包んだ女性記者についてだ。

 

「開けろこの!ダニー!私だ、パイパーだ!」

 

自らをパイパーと名乗った女性は、外壁入り口に取り付けられたインターホンに怒鳴り、時折蹴りを緑色の壁に打ち込む。一見すれば不審者以外の何者でもないが、彼女はれっきとしたダイアモンド・シティの住人であり、入る権利はあるらしい。それに加えて彼女は地元の人間から、その仕事と性格によって遠ざけられており、外で見張りをするセキュリティも関与しようとしない。

 

「だぁああああ!お前分かってるだろうな!セキュリティが市民を中に入れないのは大問題だぞ!」

 

『すまないパイパー、市長から君を中に入れるなと言われてるんだ……だから、その』

 

気の弱そうな男の声がインターホンから聞こえる。どう聞いても彼の声はパイパーにビビっているようにしか聞こえない。そんな向こう側の彼に、パイパーは更なるイラつきをぶつけた。

 

「開けろッ!ダニーッ!マクドナウの言いなりになる必要はない!早く!開けろぉ!」

 

必死に食い下がるパイパー。だが、彼女自身もこのままでは中へと入れてもらえないことは理解していた。まるでモングレルのように唸るパイパー。せっかくいいネタを仕入れたのに、このままでは新聞の発行どころか記事も書けない。

と、その時だった。ふと、背後に伸びる道から、見知らぬ姿の男女二人組と小綺麗な犬が歩いてくる。思わずパイパーはその姿に見とれた。

一見するとただの傭兵に見えるが、その二人の武装はそんじょそこらの傭兵とは一線を画している。それは、長いこと修羅場を経験してきたパイパーだからわかることだった。

服は迷彩服。一見すると戦前の軍隊が使用していたものに似ているが、細部の色合いや備え付けられた膝パッドなどが違うし、何より彼らが着ているアーマーなんて見たことがない。

そして銃。女性が手にするのは恐らく大口径の狙撃銃。連邦において多くが使用している猟銃ベースであることは分かるが、ストックが木製ではない。恐らく、強化ファイバーだろう。それに、腰のホルスターには拳銃が差してある。

男の方もそれはそれは重武装。迷彩色に塗られているライフルには、様々な器具が取り付けられている。スコープのようなものは、近年普及してきているドットサイトだろうか。ハンドガードには謎の機材……銃口にはサイレンサー。

だが、それ以上に気になるのは、彼らの立ち振る舞い。訓練された歩き方なのは言うまでもないが、それでも他の傭兵にはない気品のようなものがある。いくらバックパックを背負っていたとしても、あそこまで背筋を伸ばしているのは、Vaultで育った人間くらいだ。

 

「ネタ発見」

 

先程までの不機嫌が一転し、彼女の仕事スイッチに火が灯る。

 

 

 

 

 

 

俺たちがダイアモンド・シティに着いたのは、ダンスと別れてから5日後の事だった。途中道ですれ違ったキャラバンに道を聞いたり取引しながら、時折襲い来るレイダーや変異した生物を撃退し、橋に追突して動かない橋を渡り、これでもかというくらい戦い抜いてようやくたどり着いた。

連邦最大の街というのに、周りは随分と物騒な事だ。まぁ当たり前か、隙あらばここを襲って来るんだろう、奴らレイダーやスーパーミュータントは。

ドームを見た俺たちは、その変わり様に足を止めないまでも唖然とした。

 

「あぁあぁなんだよこれ、もうやきゅうできねぇじゃん」

 

ガービーから古い野球場跡にあるとは聞いていたが、やっぱりここだったか。クソ、たまに同僚と見に行く野球が密かな楽しみだったのに。俺野球よく知らねぇけど。

 

「すごいねこれ。ほんと世紀末」

 

半笑いでアルマがそんなことを言う。確かに世紀末って言葉がお似合いの光景だ。しかし、これを当時の熱狂的な野球ファン……いや、ソックスファンが見たら発狂するだろうなぁ。

まぁ、それはいいか。それよりも、ママ・マーフィー曰くここにショーンの手掛かりがあるのだそうだ。問題は、この壁で覆われた敷地にどう入るかだが。見たところ、交通制限されているようだ。

 

「ねぇ、ちょっと。そこのお二人さん」

 

ふと、ゲートの付近で先程まで怒鳴っていた女性が怪しい笑みを浮かべてこちらに手招きしていた。俺とアルマは顔を合わせ、家長である俺が対応する。ドッグ、唸るな。

 

「なんだあんたは」

 

「ねぇ、あんたたち中に入りたいんだよね?」

 

こちらの質問を無視してそう問うてくる。あぁ、まぁ、と曖昧に答えると、赤いコートを着た、よく見れば美人な女性はインターホンを押す。

 

「ダニー!聞こえる!?トレーダーが入りたいんだとさ!これじゃあ開けるしかないよねぇ!?それとも開けずにあの狂ったマーナがあんたんところに押しかけて来るのを待つ?」

 

そう言うと、インターホンから気弱な声がする。

 

『ああクソ、分かったよ!開ける!』

 

その言葉を待ってましたと言わんばかりに、女性はガッツポーズをしてみせた。うーむ、いかにも気が強そうな女だが、こういう活発さもいいよね。もううちのかみさんで足りてるけど。黒髪も中々……

 

「ハーディ」

 

「ハイ」

 

なにかを察したアルマが名を呼ぶ。やっぱりうちのかみさんが1番や。

と、いつものくだりをやっているとゲートが開く。大きな音を発てて開くゲート……あぁ、なんだか懐かしい。

ゲートが完全に開くと、女性が笑顔を向けて言った。

 

「さ、いきましょ」

 

小さくウィンクする女性は、中々に魅力的だ。続けて俺はアルマに振り返ると、彼女も小悪魔的な仕草でウィンクしてくれる。

 

「ホテルとかってあるかな、ここ」

 

「あるんじゃない?あんたって単純だよね」

 

うるさいんじゃい。男は単純でなんぼのもんよ。なぁドッグ?

 

 

 

 

 

 

 

「パイパー!この嘘つきの新聞屋め!誰だこいつを入れたのは!」

 

ゲートを潜るや否や、そんな罵倒が俺たちに向けられる。いや、隣で急に不機嫌そうな顔を見せる女性に対し、だ。

それを言ったのは恰幅の良い、いかにも政治家な身なりをした男だ。こんな御時世だというのに、スーツなんて着てやがる。

 

「おおこれはこれはマクドナウ市長!自らお出迎えとはご苦労様!」

 

そんな市長とやらを煽るように、パイパーと呼ばれた女性は叫んだ。ああ、着いて早々トラブルに巻き込まれそうだ。

二人はお互い気が合わないらしく、あーでもないこーでもないと言い争っている。勘弁してくれよ……

そんな二人を無視してもいいが、俺としてはこの場を利用したい。今現在、ショーンの手掛かりはダイアモンド・シティに何かがあるというだけだ。ならば、市長をその気にさせれば有用な情報を引き出せるかもしれない。

 

「あーちょっと失礼、市長」

 

俺は二人の口喧嘩に横槍を入れる。すると市長は我に返ったように愛想笑いを作り、堂々と答えた。

 

「あぁ失礼、新しい友よ。ダイアモンド・シティはいつでも君らのような隣人を心待ちにしているよ」

 

「そいつはどうも。こっちもこんなに発展した街に尽力している市長と会えて光栄だ」

 

あくまで営業トークだ。だが、そんな俺たちの会話が気に入らないのか、パイパーが噛み付いて来る。

 

「騙されちゃダメだよ!そいつはこの街で一番の大悪党さ!」

 

「でたらめを言うなパイパー!君も騙されるな!この記者はマスメディアという力を振りかざしいつも我々上流階級を蹴落とそうとしているんだ!」

 

話が進まねぇ。ちょっとパイパー黙ってろ!

 

「マスコミは時と場合によっては世論の味方にも敵にもなるだろうさ。判定をするのは当事者じゃない」

 

そう言うと、マクドナウ市長は難しい顔をして黙った。今のは噛み砕いて言えば、どっちでもいいという事だ。

市長は咳払いをし、

 

「まぁいいだろう。では、私はこれにて失礼するよ。これでも忙しくてね」

 

そう言ってそそくさと去ってしまう。クソ、聞き出す機会を失ったな。まぁいい、このパイパーってのに聞けば何かしら情報は得られるだろう。記者だし。

俺はため息をつくと、こちらを見ているセキュリティ達と目が合った。その目が言ってくる、お前らどっからどう見てもトレーダーじゃねぇだろ、と。おいハゲ野郎、何ニヤついてやがる。

 

「ふん、マクドナウの奴め」

苛立ちながらそう言うパイパーを、アルマはまぁまぁ、となだめた。こっちとしてはあんたにも問題があると言わざるを得ない。

 

「まぁいいや。それよりもさ、あんたたち!」

 

コロッと表情を変え、俺に迫るパイパー。目と鼻の先に彼女の顔が迫る。おう、久しぶりにアルマ以外の女の人の顔が目の前にあるぞ。待てアルマ、これは浮気じゃない。

 

「良かったらうちの新聞社に来ない?是非とも取材させて欲しいんだけど!ただとは言わないよ、お茶でも出すから!」

 

「え、あ、おい!」

 

楽しげなパイパーは、それだけ言うと球場内へと走り出す。

 

「じゃあ待ってるから!」

 

それだけ言うと、彼女は光の先へと消えていく。なんともまぁ、マイペースで騒がしい奴だ。嫌いにはなれないが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドーム内は、これまたすごい光景が広がっていた。中は色々な簡易的な小屋が乱立し、人々が住み着いている。もはや野球をするスペースは無いが、それでもこれだけの人が生活している空間というのは良いものだ。サンクチュアリ以外で久しぶりに見たもんだから、少し感動する。

まぁ戦前の価値観からすればスラムみたいな感じだが、それでも治安は良さそうだった。市場では色々な人が物を売り、買っている。

 

「へぇ、中々良いじゃん」

 

横で椅子に腰掛けるアルマが口にする。

 

「人は案外強いってことを再認識させられるな……さて、ちょっくら腹減ったな。飯でも食うか?」

 

「賛成」

 

市場中央に位置する屋台から、良い匂いがする。店主はコックの帽子を被ったプロテクトロンで、どうやらラーメンを売っているようだ。おお、久しぶりにラーメンが食えるのか。アメリカじゃ、ラーメンはあまり食えなかったからな。

 

『ナニニシマスカ?』

 

カウンター席に腰掛けると、プロテクトロンが言った。しかも、懐かしい日本語で。すげぇな、どうやら日本のラーメンチェーン店が元になっているようだ。

答えようとして、となりの席から声がかけられる。

 

「ごめんね、タカハシはそれしか言えないの。ただはいって言ってあげて」

 

どうやらここの常連の女性のようだ。俺は彼女に感謝しつつ、

 

「醤油ラーメン二つね。あ、一つネギ抜きで、いいでしょ?」

 

忠告を無視して日本語で言った。しかも、思わずアルマにもそれで尋ねた。

 

「あー、醤油ラーメン……ネギ抜きって言ったんだよね?日本語難しいから聞き取るの難しいや」

 

一応、アルマも日本語を聞き取るくらいはできるのだ。伊達に大学行ってないね。

 

『ナニニシマ……醤油ラーメン二つ、かしこまり』

 

流暢な日本語でタカハシが返答する。なんだ、喋れるじゃん。

 

「ちょっと!?タカハシになにしたの!?」

 

驚く女性。いや、何したって……日本語使っただけだよ。

 

 

 

 

 

 

久しぶりのラーメンで腹を満たし、武器店に寄る。渋い男性が店主なようで、カウンターから呼び込みをしていた。

ショーケースには様々な銃が並んでいる……うーむ、男心をくすぐるな。

 

「よう、あんた新入りだろ」

 

ふと、店主が話しかけてきた。俺は頷き、

 

「あぁ。よく分かったな。客全員記憶してんのかい?」

 

店主は笑う。

 

「HK416にP226を持ってる客には会ったことなくてね」

 

おお、どうやら相当銃に対しての知識が豊富なようだ。こいつは面白い。

 

「詳しいな。さすがは銃砲店の店主だ」

 

褒めると、店主は力強く頷いた。

 

「昔は銃を求めて旅した事があってな。知識はそこで。それで?立ち話しに来たわけじゃ無いんだろう?」

 

「何かオススメは?」

 

そう尋ねれば、店主はニヤリと口を歪め、ケースの中にある銃の数々を指差した。

 

「こいつらだね。今日入荷したばかりの武器だ……どれも一級品、かなりの高品質だが値段はリーズナブル」

 

そう言われて、並べられている銃火器を眺める。あれ、よく見ればこれ、サンクチュアリで作った奴だぞ。もうこっちまで行き渡ってたのか。

.308口径の狙撃銃に.45口径のライフル、それに10ミリ口径の拳銃……見れば、どれも一手間加えられている。出荷時には無かったスコープやコンペンセイター、マズルブレーキなど、店主が付けたであろうものが装着されていた。

 

「へぇ、こいつはいい」

 

これには俺も思わずにっこり。そんな男の世界に夢中な俺を、後ろからアルマとドッグがつまらなそうに眺めていた。

 

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