Fallout4 Gunslinger of the Commonwealth   作:Ciels

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第二十六話 パーク・ストリート駅、トリガーマン

 

 

 ボストンコモン。かつてはボストンの経済を担い、忙しい人々でごった返していたこのビル街も、核戦争後の夜となっては聞こえてくるのは精々銃声くらいだ。

 俺はしょっちゅう派兵されていたからここに来ることは少なかったが、それでもここまでめちゃくちゃではなかったはずだ。そこらでビルは崩れて瓦礫が散乱し、コンクリートはヒビ割れて200年という時の重さをヒシヒシと感じさせる。

 かつては街の明るさで見えなかった星々も、今では空を見上げればそれぞれがお互いの輝きを主張し合っている。なんとも皮肉な話だ。

 

 俺はナイトビジョン越しにその星空を見上げていた。こんなに綺麗な星空なのに、世界は残酷な程に荒れ果てている。これもまた皮肉って奴なんだろうか。だとしたら、カルマってのは随分と捻くれているもんだ。

 

 グッドネイバーでの初仕事が終わり、俺たち三人は店主から得た情報を元に再びボストンコモンの激戦区へとやって来ていた。どうやら探偵は近くの公園にあるパーク・ストリート駅という地下鉄に向かったというのだ。

 アルマによるマクレディのためのスナイパースクールの初授業が、その地下鉄入口の偵察だ。そのため俺は近接する低いビルの5階付近にて待機中。必要があれば援護する予定だ。ちなみにパイパーはホテルでお留守番。

 

 双眼鏡でアルマ達を探せば、彼女達はいた。マクレディが先行し、アルマはその後ろを追従している。俺も昔通った道だが、彼女のスカウト能力はそんじょそこらのスナイパーとは比べられない。一度隠れて仕舞えばまず見つけられないし、気付いた時には離脱しているのだ。そんな彼女に教わったとなれば必然的に偵察能力も上がるものだ。俺も戦場で散々助けられた。

 

 彼女らの偵察が終わり合流すると、マクレディはやや疲れた様子で座り込みながら水筒の水を飲んでいた。対してアルマはいつも通り元気いっぱい。

 

「池には近づかないほうがいいね」

 

 観光用の地図を開き、公園中心にある池を指差すアルマ。

 

「何かいたのか?」

 

「でっかい何かがスワンボート被って就寝中」

 

 どうやら正体は分からないが、概ねミュータントの類いだろう。ならば近づかない方がいい。俺はバックパックを背負って前進の準備を整えると、ゆっくりとした動作で立ち上がるマクレディに言った。

 

「うちの嫁さんは怖いだろ?俺も同じ事されたんだ」

 

「異常じゃないかあいつ」

 

 何を言う。それが可愛いところだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 地下鉄にはすぐに侵入できた。入口に敵はおらず、トラップの類いも無い。しかし電気は通っているようだから地下鉄内に何が潜んでいるのか分からないので慎重に、ゆっくりと進んでいく。

 

「噂じゃこの地下鉄にはVaultがあるって話だぜ」

 

 マクレディが呟けば、アルマが軽く彼の足を蹴ってシッー!と黙れと言うジェスチャーを繰り出す。マクレディの情報は有難いが、こういう建物内では声が響きやすい。もうちょい早く言ってくれれば蹴られずに済んだのにな。

 

 階段を降りると、当たり前だが改札にたどり着いた。そこで人の気配を感じて俺たちは暗闇に身を潜める。やはりと言うべきか、電気が通っている時点で予想はしていた。トンプソン短機関銃で武装した二人組が、改札の奥から姿を表した。あれはトリガーマンだ。

 

「しかしマローンはいい場所を見つけたよな。あいつはやっぱり頼り甲斐があるぜ」

 

「そうか?俺からしてみればあいつはただの臆病もんさ」

 

 俺たちには気がついていないらしい。壁にもたれかかって話し込んでいる……タバコを吸っているが、やっぱり人が吸っているのを見ると吸いたくなるな。

 その間にも俺たちはポジションを変える。駅構内の狭さから考えてやり過ごすのは得策では無いから、始末するべきだ。彼らの真横にあるゴミ箱へとそっと移動する。試しにPip-boyの生体センサーを使用してみれば、どうやら隣の駅員室にも一人いるようだ。アルマとマクレディに駅員室の掃討を命じると、俺はライフルを静かに背負ってナイフとコンバットアックスを両手に持った。

 

「なんだってそんな事言うんだ?」

 

「ハッ、あの探偵さ。さっさと殺しゃいいのにマローンと来たらずっと閉じ込めてるだけだ」

 

 どうやら探し物はここらしい。有益な情報を手に入れた俺は、ゴミ箱から飛び出して手前のトリガーマンの喉元目掛けて左手のコンバットアックスをぶっ刺した。

 

「うわっ!」

 

 もう一人のトリガーマンが驚く。俺はそのまま右手のナイフを奴の首へと投げる。

 

「うぐっ!」

 

 苦しそうに首元を押さえて倒れこむトリガーマン。俺はコンバットアックスを死体から抜き取ると、ナイフが首に突き刺さったトリガーマンの頭をアックスでカチ割った。駅員室を見てみれば、アルマもトリガーマンを排除したらしい、彼女の手には血に濡れたナイフが握られていた。

 

「どうやらバレンタインはここの連中に囚われているらしい」

 

「トリガーマンが?へ、そいつはいい。前からあいつらの態度は気に入らなかったんだ」

 

 軽口を叩くマクレディ。アルマはナイフに付着した血を死体の服で拭うと、鞘に収めた。

 

「どんぱち賑やかにならなきゃいいけど」

 

「なるべくならそうしたいが、必要とあれば躊躇う必要はない。行くぞ二人とも」

 

 そう言って俺たちは進んでいく。こういう場合に備えてマクレディにもサイレンサー付きの銃を持たせた方がいいかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 バレンタインは暇していた。駅の奥底に造られたVaultに閉じ込められてもう一ヶ月は経つだろうか。幸いにも自分は食事を必要としないので餓死することはないが、それでも感情がある以上退屈を誤魔化すことはできない。今自分がいる監督室にある本も読み終えてしまったし、ターミナルはネットワークに接続されていないスタンドアローン。もっとも、このご時世ネットワークなんてものは壊滅してしまっているのだが。

 バレンタインはタバコに火をつけて椅子で寛ぐ。最悪タバコを吸っていれば暇は潰せるからこうしている。

 

「ようニック。元気か?」

 

 と、部屋の外に取り付けられているインターホンを経由して声が聞こえてくる。やれやれまたかと辟易しながらも、皮肉屋でお人好しな彼は古びたフェドーラ帽を被りなおすと答えた。

 

「お前が来なけりゃ最高だったよ」

 

「そう言うなって。何か必要なものはないか?」

 

 物好きなトリガーマンもいたものだと嘲笑しながらも、バレンタインはタバコの箱が軽くなったことを思い出す。

 

「タバコが底をつきそうだ」

 

「わかった、持ってこよう」

 

「どうも」

 

 立ち去るトリガーマン。バレンタインはため息を吐くとまたやってくる暇を満喫する。少なくとも、さっきのやつにつまらない話を延々とされるよりはマシだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 駅のホームでは激しい銃撃戦が展開されていた。複数の短機関銃がけたたましい音を発てながら、廃車と化した電車を挟んだ反対側のホームに弾丸をばら撒く。

 

「スモークッ!」

 

 コンクリートでできたベンチに身を隠しながら、俺はスモークグレネードを投げる。もくもくと上がる煙は視界だけでもホームを分断する。その隙に、射撃によって釘付けにされていたアルマがこっちに走りこんでくる。

 

「ああもう!ほんと最悪!」

 

 アルマは狙撃銃の弾倉を変えると、その美貌を苛立ちに塗れさせた。それについては同意見だ。まさかこんなに早く見つかるとは思いもしなかった。

 発端はマクレディだ。ホームへと侵入した俺たちは、手始めに近場にいたトリガーマンの殺害をマクレディに命じたのだが……殺害こそ成功したが、奴が死体を隠す瞬間を見られたのだ。当然トリガーマンはその名の通り発砲、混戦状態となった。

 

 俺はポーチからグレネードを取り出すと、安全ピンを抜いて向こう側へと投げる。爆発音が聞こえ、少しだけ射撃が止んだ。

 

「マクレディ、アルマと援護しろ。ポジションは変えた方がいい」

 

「あんたはどうすんだ!」

 

「突っ込む」

 

 そう告げれば、俺はライフルとスタングレネードを手にバリケードを乗り越える。そして一気に煙の中へと走り、廃車の中へ乗り込んだ。

 

「クソ!煙が邪魔だ!」

 

「おい誰か突っ込めよ!」

 

「お前が行けこの!」

 

 こっそりと窓からトリガーマン達の状況を覗く。数は8人ほどで、全員がトンプソンで武装していた。俺はスタングレネードのピンを抜いて投げる。間髪入れずにそれが炸裂、轟音と閃光が薄暗いホームに広がった。

 

「なんだよ!」

 

「クソ、目が痛い!」

 

 怯んだ隙に俺は車内から近場にいるトリガーマン4人に弾丸を撃ち込む。このまま残りも倒そうとして、電車に撃ち込まれた事で中断した。すぐに車内に隠れてバレないように移動する。拳銃弾といえども電車の薄い鉄板くらいなら貫通するからだ。

 

「クソ!あそこだ!」

 

「殺せ!」

 

 先ほどまでいた空間が蜂の巣になる。俺は弾倉を交換すると、タイミングを伺った。刹那、後方から狙撃銃の発砲音。音的に、アルマのライフルだろう。彼女にはFLIRという赤外線スコープを持たせてあるから暗闇だろうが煙越しだろうが問題なく発砲できる。

 

「狙撃だ!クソ、煙越しだぞ!?」

 

 驚くトリガーマンに俺も発砲する。その時にはもう奴らの数は3人まで減っていた。加えて俺からの射撃。残りの素人どもを殺すには十分過ぎた。

 

 また駅のホームが静まり返り、アルマ達と合流する。

 

「マクレディ、気にするな。あれは見つかってもしょうがない」

 

 俺はマクレディを慰める。いくら薄暗いとはいえ、ひらけた場所の敵をバレずに殺害するのは難しい。そして終わりよければ全て良し、今のところ損害は出ていないから大勝利だ。

 

「いいや、全然ダメだね」

 

 俺が許してもアルマは許してくれないらしい。そしてマクレディはそれも予想していた。

 

「首搔き切るだけなのに時間かかり過ぎだし、引きずるのも遅い。あんた今度補習するから」

 

「マジかよ……」

 

 かわいそうにマクレディ。俺ではこの鬼教官を止めることはできない。

 

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