Fallout4 Gunslinger of the Commonwealth   作:Ciels

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第二十八話 Vault114、スキニーマローン

 

 

 近代戦はベトナム戦争から対中国に映るまで、非対称戦争の繰り返しだった。対ゲリラ戦もそうだし、その逆でゲリラ的活動もしょっ中あった。閉所での戦闘が盛んだったのもこの頃だ。当然戦闘の一番激しい部分を担う特殊部隊にとって、CQBという屋内戦闘は必須科目であったわけで。その特殊部隊の中でも最も闇を抱えたDEVGRUには馴染みの深いものでもある。

 アンカレッジでの戦いを振り返れば、あの厳しい雪原やだだっ広い草原での戦いと、市街地や施設での戦闘の比率は五分五分だった。広いところでは装甲車両と歩兵を時間をかけて相手にし、閉所ではスピーディに人員を相手にするのだ。

 だから今回のようなVaultでの戦いは慣れている。むしろ後半は拠点奪還に伴う暗殺が主眼だったために、こういうCQBはいつものことだった。

 

「Reloading!」

 

 遮蔽に隠れながら射撃し、アルマに叫ぶ。

 

「Okay!!!!!!」

 

 アルマの了承を得ると、俺は残り少ない弾倉を交換した。その間にも敵からの射撃が盛んに行われている。

 広場を脱出した俺たちを待ち構えていたのは、俺たちを逃がさないと意気込んだトリガーマンの群れだった。一人一人の練度はそれほど高くなく、単体での脅威はそれほど高くない……が。それが群れているとなれば話が変わる。

 遮蔽から銃と頭だけ出して狙い、アルマに引きつけられたトリガーマンをダブルタップで撃ち殺す。

 

「Forward!」

 

 俺の号令でアルマと前進する。アルマが今手にしているのは、トリガーマンから奪ったM1928、通称トンプソン。シカゴタイプライターと呼ばれるこのマシンガンは、大口径の拳銃弾を使用しているために反動は凄まじいが、火力に長けている。

 通路を制圧し、扉の横に張り付く。そして扉の開閉パネルを弄るが、ロックがかかっているのか開かない。

 

「待った、こういうのは俺の仕事だ」

 

 と、火力的に後衛に徹していたニックがその機械的な手と人間らしい仕草でパネルを弄る。そしてものの数秒で解錠してみせた。

 

「探偵をやってると日常茶飯事でね」

 

 冷静な軽口を聞き流しながら扉を開けると、俺はカッティングパイの要領で慎重に扉の奥を確認した。

 

「クリア」

 

 俺は安全を呟く……が、同じくトンプソンを手にしてぼけっとしているマクレディが動かない事に気付いた。ああ、こいつは軍事的な訓練を受けていないんだった。

 

「あんたが行くんだよッ!」

 

 アルマがマクレディの尻を蹴飛ばすと、渋々彼は雑に扉を超えていく。

 

「あんたの奥さん、随分とあの男に厳しくないか?」

 

「色々立て込んでてね」

 

 

 

 

 次のフロアにもやはりトリガーマンはいた。だが先ほどの連中と異なり、彼らは俺たちの事をちっとも警戒していないようだった。どうやら無線機等の通信手段を確保していないらしく、俺たちの襲撃を知らないようだ。

 これ幸いと、俺はライフルを背負い拳銃とナイフを抜いて室内へと真っ先に突入する。そして手近なトリガーマンの喉元をナイフで切り裂きつつも胸に刃を突き刺すと、驚いた残りのトリガーマンに向けて発砲した。

 胸と顔に一発ずつ、理想的なダブルタップだった。そうして室内を制圧すると三人を呼び寄せる。

 

「あんたは敵にしないほうがいいってことは理解できたよ」

 

 皮肉交じりにニックがそう言う。リボルバーだけでここまでやる奴がよく言うもんだ。俺は拳銃をホルスターに収めるとライフルを手に奥へ進む。だが通路の先から気配がした。トリガーマンだ。

 

「おい、今音がしなかったか?」

 

「気のせいだろ。でなきゃラッドローチさ」

 

 五人ほどトリガーマンが道を塞いでいる。俺はポーチからフラッシュバンを取り出すと、ピンを抜いて通路へと投げ込んだ。

 すぐさま轟音と閃光。トリガーマンたちの悲鳴が響く。一気に通路へと雪崩れ込み、まるで競技のように早撃ちしてどんどん殺していく。たかが五人殺すのに時間はかからなかった。弾倉の残弾を確認すると、俺たちは階段を登っていく。

 

「ここの設計者はフィットネスインストラクターか何かか?何だってこんな階段が多いんだ」

 

 ニックが文句を垂れるが、シンスも階段を登れば疲れるのだろうか。そんな疑問を抱きつつも、俺たちはようやくVaultの出入り口に繋がるであろう扉の前へとたどり着く。そしてPip-boyの生体センサーを起動してこの先に潜む反応を確認した。

 

「気をつけろ、太っちょの重い足音がする」

 

 ニックが言う通り、どうやら数人ほどこの先で待ち構えているようだ。グレネードとフラッシュバンの残りは無いため、このまま突入するしかない。俺は周辺を警戒するアルマを呼び、簡単に指示をする。

 

「ボタンフック、俺は右で」

 

「了解」

 

 俺とアルマで扉に張り付き、操作パネルを弄る。今回はすんなり開き、俺たちは一気に扉を超えて突入した。

 案の定、トリガーマンがいた。すぐに俺たちが撃たなかったのは、中心にいた太ったスーツ姿の男が彼らを制止したからだ。どうやら話があるようだ。

 

「待て、ちょっと話をつけよう」

 

 そう言ってニックが遅れてやってくると、太った男は口を開いた。

 

「ニッキー!何してやがる、不法侵入だぞ!しかも子分殺しまくりやがって、おかげで予定が狂っちまった!」

 

「誰かさんの浮気女のためじゃなきゃここには来なかったよマローン。彼女にもっと家に手紙を書くように躾けてやってくれ」

 

 呆れたように言うニック。ということは、あの太っちょがスキニーマローンか。皮肉が効いている。するとスキニーマローンの横にいる、派手なドレスを着た女が嫌味ったらしく言った。

 

「可哀想なバレンタイン、女に殴られて気絶して恥ずかしいって?……パパの待つ家に戻ればいいんでしょ」

 

「ほっとけば良かったのになぁニッキー。このVaultではな、俺が王様なんだ。おい聞いてんのかニッキー?」

 

 ん?ああ、と聞き流していたニックが反応する。

 

「ようやくうまくいくようになったのに、探偵ごときに終らせられてたまるか」

 

「さっさと殺せっていったのに、そしたら感傷に浸っちゃってさ!古き良きなんちゃらって」

 

「おいダーラ、そんなこと言うな!こいつは任せておけ!」

 

 何やら男女で言い争いを始めた。俺たちどころか後ろの部下までも早くどうにかしてくれといったうんざり顔で二人の会話を待つ。

 

「ああ、そ。ならその探偵の後ろの奴らは何よ!バレンタインが皆んなを殺すために連れてきたに違いないよ!」

 

 ダーラという家出娘が俺たちを指差す。

 

「あんたね、若いから冒険したい気持ちは分かるけど!そんな中年の肥満親父と付き合ってもいいことないからね!」

 

 すかさずアルマが口を開いた。どうやらそれがマローンの琴線に触れたらしい。

 

「ふっざけんな!誰が肥満体の親父だって!?」

 

「お前じゃい!」

 

 当人そっちのけで罵り合うアルマとスキニー。俺とニック、そしてマクレディが呆れたような顔で見合わせた。話が進まない。

 

「おいダーラ、死にたくなけりゃさっさと家に帰れ。マローン!俺たちの目的はニックだ、それ以外に興味はない!」

 

「めちゃくちゃやっといて今更何言ってやがる!そう言われてやすやす返すと思ってんのか!?」

 

「なら……どうすんだ!お前ら全員死ぬぞ」

 

 今度こそお互い睨み合う。そんな中、ニックがため息をついて物陰に隠れた。どうやら説得は諦めたようだ。やるしかない。

 

「お前らまとめて」

 

 スキニーマローンが何かを言う前に、俺はすぐさまライフルを構えて彼の胸と頭を撃ち抜いた。一秒もかかっていない。驚くトリガーマンが俺だけに銃を構え、アルマとマクレディがすかさず彼らを蜂の巣にする。

 結論だけ言えば、トリガーマンは完敗だった。ダーラは突然の殺戮に泣き喚いて逃げ出してしまったし、なんとも後味の悪い結果になる。

 

「ふん、穴が空いた分体重が軽くなったろ、マローン」

 

 皮肉交じりに、ちょっぴり悲しそうな物言いで死体に語りかけるニック。周辺の安全を確認した俺はニックに話しかけた。

 

「これからどうする?ダイアモンドシティに帰るのか?」

 

 ニックはタバコを取り出すと、それに火をつける。

 

「そのつもりだ。優秀な助手の給料も払わなくちゃならないんでね。一緒に行くか?あんたらがいりゃ道中トラブル続きで暇しなくて済みそうだしな」

 

 俺は一瞬言葉に困ったが、頷いて同行することにする。何だか突然色々起こってめちゃくちゃだが、目的は果たしたのでよしとしよう。今はショーンの事だけを考えよう。

 

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